• ホーム
  • 板坂 竜さん

板坂 竜さん
インタビュー公開日:2018.12.03

好きな機械と医療への関心、
両方活かせる仕事を見つけました。
病院など医療の現場では、手術や治療の時に人工心肺装置や人工透析装置といった医療機器が活用されています。
その医療機器を操作する専門職が、臨床工学技士です。
もともと手先が器用で機械が好きだったという板坂竜さん。
手に職をつけたいと医療の仕事に興味を持ち、調べていくうちに、自分の特技も活かせる臨床工学技士という仕事を知りました。
専門学校を卒業し、国家試験に合格して、板坂さんは総合病院に就職。
実際の現場での医療機器の需要は人工透析が多く、同級生の進路は人工透析を行うクリニックなどが8割、総合病院が2割で、他に医療機器メーカーに就職する人も数人いたそうです。
総合病院で経験を積み、
さらなる挑戦のため職場を移籍。
板坂さんが最初に就職した総合病院でも人工透析を必要とする患者さんが多く来院し、通院の患者さんや、手術中の人工透析を数多く経験しました。
その後、救急や人工心肺装置を扱ってみたいという思いを強くし、現在の市立札幌病院に移りました。
「心臓手術を行っている病院でないと、人工心肺を扱うことはできません。
前の病院での経験は3年で、少し早いかと思いましたが、ちょうど求人があったので挑戦しました」
市立札幌病院に移籍後は、臨床工学技士としての職域の幅を広げ、人工透析装置、手術中の人工心肺装置、心臓カテーテル、集中治療室での人工呼吸器など、さまざまな機械を扱えるようになりました。
複雑で緊張感の高い心臓手術。
担当できるまで3年かかりました。
人工心肺装置は、心臓手術の時に一時的に停止させた心臓の代わりに、血液を体に流すための機械です。
手術の間、臨床工学技士が、血液の中の電解質や血液の濃度、老廃物の状態などを、モニターを見ながら管理します。
10時間かかることもあるという長時間の手術では、メインで担当する臨床工学技士のほか1〜2人が立ち会い、交代しながら管理に当たります。
「人工心肺装置を扱うのは医学的な知識も必要でとても難しく、メインで担当させてもらえるまで3年かかりました。今も、上司に見てもらいながら操作をしています」
そんな難しい手術が終わって、患者さんが元気になり退院していく姿を見るのが、やはり一番うれしいといいます。
緊急の処置や手術にも対応。
現場では連携プレーを大切に
あらかじめ予定が組まれている手術や透析の他にも、緊急搬送された患者さんの対応をする場合もあります。
寒さの厳しい北海道では、冬に川に落ちた人などが低体温で凍死の危険がある状況で運ばれることも。
「救急の場では特に、わからないこともあるので医師の指示を受けながら機器の操作に当たります。他にも、処置をする看護師さんとの連携プレーも大切。
さまざまな専門職と関わるので、機械の知識や技術だけでなく、コミュニケーションも必要とされる仕事なんです」
臨床工学技士は病院の職員の間で「機械に強い人」というイメージを持たれており、他の職種の人から医療機器以外のことで相談されることも多いとか。
豊富な知識を持つ上司が目標。
新しい技術の習得にも励みます。
今後は、人工心肺の技術を極めたいと話す板坂さん。
「今は上司に見てもらっているので、まずはひとり立ちしたいですね。
人工心肺装置を使いこなせるようになれば、他の機械の操作にも活かせるんです」
板坂さんが目標にしている上司は、人工心肺に関して医師よりも豊富な知識を持っており、医師からも頼られ意見を述べることも多いといいます。
機械の開発やIT化が進み、臨床工学の世界は今後どんどん発展していく分野です。
板坂さんも新しい機械が導入された時に院内で行われる勉強会で学んだり、学会に参加して知識や技術をどんどん取り入れながら、理想の臨床工学技士の姿を目指して患者さんに向き合っています。
シゴトのフカボリ
臨床工学技士の一日
8:30
出勤、カンファレンス
8:45
診療開始
検査、治療、機器の保守点検など
12:15
昼休み
13:00
午後の診療開始
17:15
診療終了、退勤
手術や急患が入った日は、終了まで勤務
待機当番の日は、退勤後も呼び出しに応じる
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

臨床工学技士の仕事は、医師や看護師など、他の専門職との連携が欠かせません。チームで医療に取り組む中で、医療機器の力を最大限に発揮させるのが、私たちの役割です。

市立札幌病院

33の診療科がある総合病院。総合周産期母子医療センターやがん診療連携拠点病院の指定も受けるなど高度な医療を提供。2013年8月には自治体病院として道内初の「地域医療支援病院」に。また、救命救急センターは平成29年5月から三次救急以外にも対応を拡大。高度急性期医療を提供する地域完結型医療の実現を目指しています。

住所
北海道札幌市中央区北11条西13丁目1-1
TEL
011-726-2211
URL
https://www.city.sapporo.jp/hospital/

この企業の他のインタビュー

お仕事データ

高度な医療機器を扱う専門家!
臨床工学技士
臨床工学技士とは
命に関わる生命維持装置の操作や
保守、点検を担う重要な役割!

病院やクリニックといった医療機関で、医師の指示に従って患者の命や健康に関わる生命維持装置の操作を行うのが臨床工学技士の主な仕事。CE(クリニカル・エンジニア)やME(メディカル・エンジニア)とも呼ばれています。具体的には呼吸が十分にできない方に人工呼吸器を装着したり、腎臓の機能が低下している方の人工透析を行ったり、高度な医療機器を扱うスペシャリストです。ほかにも、手術室や集中治療(ICU)の業務、機器が安全に動かせるよう保守・点検するなど、「チーム医療」に欠かせない重要な役割を担っています。

臨床工学技士に向いてる人って?
医療だけでなく機械にも興味があり、
チームワークを大切にできる人。

臨床工学技士は、医療機械を操作するほか、時には自ら修理することもあります。そのため、機械に興味があることは重要な素養の一つです。また、最近の医療現場では「チーム医療」がますます大切になっていることから、医師や看護師とスムーズに連携できるチームワークも大切。もちろん、「人を助けたい」という気持ちを強く抱いている人もこの仕事に向いているでしょう。

臨床工学技士になるためには

臨床工学技士になるには、臨床工学技士国家試験に合格する必要があります。受験資格を得るには、高校卒業後、臨床工学技士養成課程がある大学、短大、専門学校で3年以上学び、指定科目を修了しなければなりません。そのほか、臨床検査技師や看護師の養成校を卒業していれば、臨床工学科などの専攻科に1年以上通うことで受験資格が得られます。

ワンポイントアドバイス
臨床工学技士は比較的新しい職業。
今後のニーズ拡大にも期待大!

臨床工学技士は医療専門職の中でも比較的新しい職業。かつて、医療機器は製造メーカーのスタッフがメンテナンスするケースがほとんどでしたが、臨床工学技士の登場によって、院内でスピーディに対応することができるようになりました。臨床と機械の両方の知識を持つ臨床工学技士は、ますますニーズが高まっていく見通しです。今後、大手総合病院やクリニックはもちろん、中小の個人病院でも採用の枠を増やしていくことが期待されています。