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大瀧 翔吾さん
インタビュー公開日:2020.01.16

どんな状態でもまずは診断し、
飼い主さんの不安を軽くする。
ペットの犬や猫の食欲がない、お腹をこわした、ぐったりしている……。そんな症状を診て注射をしたり、薬を処方してくれたり。動物病院の獣医師さんは心強い味方です。最近は、動物病院も人間の病院のように〝○○科〟と専門に分かれて診るところが首都圏などでは増えていて、今まで以上に高度な医療が行われるようになっているのだそうです。それは素晴らしいこととしながら、「緑の森どうぶつ病院」の獣医師・大瀧翔吾さんは、次のように話します。
「動物は、自分の症状や痛みなどを訴えることができません。それだけに、助けを求めてやって来る飼い主さんの悩みも切実。その不安を受け止め、どんな状態でもまずは診断を行ってそれを軽くしてあげることが、何よりも大切だと思っています」。
そのうえで必要に応じて専門医を紹介したり、病院内でその分野に明るい獣医師に相談しながら診療を行っているのだそうです。
獣医師を目指す+一人暮らしの夢。
自立を目指し、神奈川から北海道へ。
小さい頃から実家で犬を飼っていたりおばあちゃんの家には猫がいるなど、動物に触れる機会が多かったという大瀧さん。いつしか、〝動物のお医者さん〟になるのだと思うようになって、高校に入学してもその夢は変わることなく、獣医師を目指して北海道・江別市にある大学の獣医学部に進みました。
「獣医学部をもつ大学が少ないということもありますが、生まれ育った神奈川県から北海道に来たのは一人暮らしがしたかったという理由も大きかったですね。実は当時、親にも言っていませんでしたが(笑)」。
大学生活を通して、しっかり自立したい。そんな気持ちがあったそうです。いざ一人で生活してみると、とにかく1から10まで自分でやらなければならず、大変さを痛感します。
「今まで、どれだけ親に頼って暮らしていたかということが、よく分かりました。同時に、自分と向き合って考える時間のなかで、社会人としての自分を形成することができたと思っています」。
食べ物が美味しく、四季の自然が美しくて通勤ラッシュもなし――。北海道生活11年目。ここで働く魅力も語り出すと止まりません。
嘘をつかない・見栄を張らないこと。
飼い主さんにも教えてもらいつつ。
動物病院のほか、牛・馬・豚といった家畜の診療や病気予防、検疫・感染症対策・食品衛生検査などを行う公務員、動物園や水族館での動物のケアなど獣医師の仕事は多岐にわたります。動物病院での勤務を希望していた大瀧さんは、大学でペットの整形・神経外科を専攻しましたが、働き始めて、知識だけでは難しいことを痛感したといいます。
「最初は、健康な犬や猫のワクチン接種などから担当しますが、そこで関連のない質問をされた時、焦ったことを覚えています」。
元気だけど吐くことがある。黒目が少し白くなってきた気がする。病気によって起こる症状は学びますが、症状から病気を推察した経験はなく、わからないことも多かったと、大瀧さんは振り返ります。
「そこで学んだのは、嘘をつかないこと。見栄を張らないこと。自分は獣医師だから、と即答したい気持ちにかられるのですが、わからなければ先輩に聞く。自分でも調べる。そのうえで答えを見つけなければ、最悪の場合、動物の命に関わってしまいますから」。
毎日、ペットと一緒にいる飼い主さんでなければ気づけないこともあり、教えてもらうことも多いのだと大瀧さんは話します。
自分の力が命を救うことに役立つ。
そう実感できることがやりがい。
「変わった言い方かもしれませんが、動物の命はきれいだと思います。うそをつくわけでもなく、一心に生きています。それでいて、思いを伝えられない。だからこそ私は、そんな命と真摯に向き合いたいと思っています」。
自分自身の感情に左右されず、目の前の動物の状況を客観的に判断し、治療などを行うこと。そのためには、飼い主さんとしっかりコミュニケーションを図ることが大切になるのだと大瀧さん。信頼感が生まれ、理解が得られて初めて、よりベストな検査・治療が行える。しっかりと話ができる関係を築けることも、動物病院の獣医師には必要と話します。
「的確な検査と治療を施した結果、ぐったりして助からないようにさえ見えた犬が元気になり、ワクチンを受けに来るなど、自分の力が命を救うことに役立ったと実感できることがこの仕事のやりがいですね」。
治療が難しく、緩和ケア的な措置を提案し実施した結果〝先生のおかげで、穏やかな姿で看取ることができました〟と飼い主さんから手紙が届いたこともあるという大瀧さん。命に関わる仕事ならではの喜びを感じたそうです。
基礎を見直し、最新の動向を学び、
後輩獣医師の指導にも力をいれたい。
入社から6年目を迎える大瀧さん。専門分化する動物医療の知識も身につけながら、後輩獣医師の指導にも目を向け始めています。
「自分自身は、現場で見て覚えてきた部分も少なくありませんが、だからこそ、わからないうちは不安でした。忙しいながら、ある程度システマチックに教えられるような仕組みなども考えていければと思っているんです」。
必要なことを、興味をもって聞いてもらえるようなシステムづくり。それには、臨床で必要となる基礎的な内容をしっかり見直しつつ、疾病や治療に関する最新の動向、新しい薬の知識などを常にアップデートし、理解しておく必要があると大瀧さんは話します。
「帰宅すると、家のことをしながらWebで配信されている専門講座を流すなど、時間を有効に使って多くのことを学ぶ努力をしています。今後も幅広く学び、どんな病気でも救える獣医師を目指したいと思っています」。
大好きな北海道で活躍しながら先端の動物医療に関わっていきたいと、改めて意欲を燃やす大瀧さん。専門的に特化したプロフェッショナルよりも、幅広い知識を持つゼネラリストとなり、話すことのできない動物と飼い主さんとのいわば通訳の役割も果たしたいと話しています。
シゴトのフカボリ
動物病院 獣医師の一日
8:30
出勤。入院している犬や猫のバイタルチェック、投薬の指示
9:00
外来診療開始
13:00
昼休み(手術などがあれば対応)
15:00
外来診療開始
19:00
全ての診療が終わりしだい終了・帰宅
(夜の手術があれば対応)
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
獣医師として欠かせない、常に持ち歩いている道具
診療に使う聴診器、ペンライト、心拍数などを図る懐中時計のほか、薬の量を計算する電卓も必須。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

忙しいことも多い獣医師の仕事ですが、私は毎日、本当に楽しいですし、学ぶことも苦になりません。それは、ずっと就きたいと思っていた仕事、大好きな動物と触れ合えているからだと思います。みなさんも、まずは自分の「好き」を考えてみませんか?

株式会社グリーンフォレスト
緑の森どうぶつ病院 旭神センター病院

「寄り添う診療」をモットーに、飼い主さんの気持ちを大切にした診療を行っているほか、行政からの依頼による野生動物保護も手掛けている。

住所
北海道旭川市旭神3条2丁目 東神楽線沿
TEL
050-3138-3101
URL
https://midorino-mori.jp

お仕事データ

動物たちの健康を守る
獣医師
獣医師とは
大小さまざまな動物の
病気やケガを治療。

病気やケガをした動物を診察して治療するのが獣医師の主な仕事。犬や猫などの小動物はもちろん、牛や馬、豚、鶏など家畜の診察や病気の予防、動物園で暮らす動物の診療などさまざまなシーンで活躍しています。そのほか、畜産農家への衛生管理指導や伝染病の予防、食肉など食品の衛生管理・検査、医薬品の研究・開発なども重要な仕事。一般的にイメージされる「動物病院のお医者さん」だけではない役割も担っています。

獣医師に向いてる人って?
動物が好きで、
飼い主の気持ちも汲み取れる人。

動物が好きであることが第一条件に求められますが、生理や行動を深く理解し、観察力や判断力に優れていることも大切。飼い主の気持ちを汲み取れる温かい人柄も必要です。大型の動物の体を抱えたり、家畜の場合は夜中の出産に立ち会うことがあったり、体力を使うシーンも数多くあります。就職後もさまざまな病気や治療法、薬に関する幅広い知識を身につけなければならないため、勉強熱心な性格の人も向いているでしょう。

獣医師になるためには

獣医師になるには獣医師国家試験に合格しなければなりません。受験資格の条件は6年制の獣医系の大学に進学すること。大学では動物の解剖学や生理学、免疫学、病理学などを学びます。6年次に獣医師国家試験を受験し、合格すると獣医師の資格が得られます。その後は、動物病院などに就職。国家公務員・地方公務員の場合は、有資格者を対象とした採用試験を受けます。

※獣医師の国家試験については、詳しくは農林水産省のホームページをご確認ください。http://www.maff.go.jp/

ワンポイントアドバイス
私たちの暮らしを守っている、
産業動物獣医師や公務員獣医師。

動物病院で小動物を診察する獣医師は志望者が増えている一方、牛や豚、鶏など畜産の現場で働く産業動物獣医師、公衆衛生などに携わる公務員獣医師は不足傾向にあります。産業動物獣医師がいなければ安心・安全に肉類を食べられず、公務員獣医師が足りないことで動物による重大な感染症が広がるかもしれません。「人の暮らしを守る」という大きな視点から、産業動物獣医師や公務員獣医師を目指すのもオススメです。