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竹次 奈映さん
インタビュー公開日:2020.09.03

被災地支援が人生を変えた契機。
学生時代は活動に熱中しました。
子どもや児童向けの最新の本が、手書きの装飾で楽しく演出されて並べられ、大人でもワクワクするような場所が、江別市大麻の商店街の一角にあります。ここが、一般社団法人北海道ブックシェアリングの施設です。
ここで職員として働くのが、竹次奈映さん。北海道ブックシェアリング代表の荒井宏明さんが非常勤講師をしていた大学の講義を受け、東日本大震災で被災した地域で子ども図書室作りや読書環境づくりの活動をしていると聞き、自ら参加してみたいと手を挙げました。
というのも、竹次さんは高校生の時に、お父さんの誘いで被災地支援に訪れたことがあったのです。「そこで初めて学校以外の世界に触れました。全国各地からいろいろな職業の人が訪れ、自由に働きながらボランティアに参加する人を見て『こんな生き方もあるんだ』と視野が広がりました。思えばこれが、人生の契機になりましたね」
活動を仕事にすることを決意。
あらゆる場所で読書環境の支援を。
大学時代は半年に一度のペースで荒井さんと共に被災地支援に訪れ、団体との交流があった竹次さん。卒業後の進路を考えた時に、「これが仕事にできたらいいけれど、代表ひとりの小さな団体だから無理だろうな」と思いつつ荒井さんに相談してみたところ、「もし働くならマネージャー職として、団体の運営に関わることを何でもやらなければならない。それをイメージできるなら」と前向きな返事をもらい、就職することを決めました。
この団体で職員を採用したのは初めてで、これまではボランティアの方に支えられていました。一般の方から寄贈された本をクリーニングし、必要とされているところに提供したり、本に親しむための読書活動やイベントなどを随時開催しています。また、道内各地でイベントの企画や支援の要請があれば、図書館車輌「やまびこ号」で出向き、サポートします。
子どもたちの読書と学びを支えるために
充実した学校図書館づくりをサポート。
さらに、学校図書館の支援も主な活動の一つ。蔵書や設備を見て診断し、図書の更新や什器の修理を提案したり、地域の特色に沿った本の並べ方を考えたりしています。団体が運営する「北海道学校図書館づくりサポートセンター」は、学校図書館に対してこのような支援をする場所です。並べられた本は出版社から提供された見本で、学校図書館で本を購入するときの参考にしてもらいます。本を提案するだけでなく、小さな看板を付けて選びやすくしたり、「SDGs」「オリンピック・パラリンピック」など時事に沿ったコーナー作成のヒントも提供。
「学校図書館は先生や司書が担っていますが、意欲はあっても人手が足りなかったり、他の学校でどんな取り組みをしているのかを知る機会が少ないので活動に悩んでいる方が多いんです。そこで私たちが情報の橋渡しをして、充実した図書館づくりのサポートをしています」
本を読んで喜ぶ顔を見るため
新たなことにも恐れず挑戦します。
さまざまな場所で活動を行う竹次さんが最もやりがいを感じる瞬間は、「読み手に本がわたって喜んでもらえた時」。被災地で遊ぶ場所もなくストレスを溜めた子どもが、目を輝かせて本を読んでいる姿や、児童会館でお気に入りの一冊を見つけた姿。そして、「ある地域で赤ちゃんが初めて絵本を見た時、ニコニコしてずっと離さなかったんです。この子の中で何かが起こった瞬間に立ち会えたのだと、感動を覚えましたね」
地域からの要望もさまざまで、取材時は紙人形劇「ペープサート」の実演の準備が佳境に入っていました。「読み聞かせはやっていましたが、人形を動かしながら演じるのはまた勝手が違います。地域の読み聞かせ団体の方にアドバイスをいただきながら練習しています。こういった新しいことに挑戦するのは大変ですが、快く支えてくださる方がいるので楽しく取り組んでいます」
次の世代が豊かに暮らせるため
さらに本のことを勉強しています。
本に関して相談できる頼れる存在という印象が強い竹次さんですが、本人は「まだまだ知識不足です。もっと勉強して地域の方の要望に応えていけたら」と言います。代表の荒井さんと二人でフル稼働しているため多忙な合間を縫って、絵本・児童文学研究センターで開催されている連続講座に通ったり、司書教諭の資格を取得したりと積極的に取り組んでいます。
現在の主な財源は寄付金や助成金、チャリティイベント等の収益です。持続的な活動にしていくためには、収入とのバランスも考えなければなりません。
「次の世代が豊かに暮らせるための準備をすることが大人の役割。私たちは、本で次の世代にプラスになることができたら」と、使命をもって活動する竹次さんからは、仕事という枠を超えた情熱が伝わってきます。
シゴトのフカボリ
団体職員の一日
9:00
出勤、朝の打合せ
9:30
メールのチェックと返信
SNS更新(イベントの広報)
イベント・調査のための書類作成
12:30
昼休憩
13:10
学校図書館調査の準備
14:10
移動・現地で図書館調査
18:00
事務所に帰着、報告、打合せ
18:45
メールチェック、事務処理等
19:40
退勤
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
面積・人口が入った北海道地図
図書館の支援やイベント開催などで、道内各地から要請を受けて出動しています。地図上で位置関係や面積、人口などを確認し、あらかじめ地域の情報を想定して行くとスムーズです。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

私の活動も、本や読書に対する「おもしろい」が原点です。自分が一番「おもしろい」と感じることを見つけて掘り下げていけば、その分野のプロフェッショナルになれると思います。

一般社団法人 北海道ブックシェアリング

読み終えた本の再活用や図書館の支援、イベント開催を通して、すべての人が本と読書を楽しめる社会づくりに取り組んでいます。

住所
北海道江別市大麻東町13−45
TEL
011-378-4195
URL
https://booksharing.wixsite.com/bookshare

お仕事データ

営利を第一にしないシゴト。
団体職員
団体職員とは
公益性の高い事業に携わり、
広く社会に貢献する職業。

団体職員という名称は法律で定められた定義はなく、「営利を第一に追求せず」に公共のための事業や公益性の高い仕事に従事する人を指す通称。一般には企業や公務員以外の非営利団体で働く人をいいます。活躍の場は芸術施設を運営する財団法人や環境整備を担う団体、防災コミュニティネットワークなどのNPO法人、JAや生活協同組合など、幅広い組織。総務や広報、施設運営など所属団体によって仕事内容はさまざまですが、いずれも広く社会に貢献するという手応えを得られます。

団体職員に向いてる人って?
社会のために働く意欲があり、
細かな確認作業や接客が得意な人。

団体職員の多くが公益事業に関わる仕事をすることになるため、人や社会のために働きたいという意欲がある人に向いています。また、団体職員が担う仕事には、事務作業も少なくないため、PCの操作や確認作業が得意な人は馴染みやすいでしょう。所属によっては接客をすることもあり、コミュニケーション能力のある親しみやすい人柄が求められることもあります。

団体職員になるためには

団体職員になるためには、一般企業と同じように、高校や専門学校、短大、大学などを卒業後、求人情報を出している団体に応募するのが一般的です。団体の中には、学歴や年齢制限、特別なスキルや資格、ある程度の職務経歴を求められるケースもあるので、まずは就職を希望する団体の募集状況をチェックしてみましょう。

ワンポイントアドバイス
景気に左右されにくい、
安定性がある仕事!

団体職員は「準公務員」ともいわれ、事業の公共性が高いという点は公務員と共通しています。そのため、景気の悪化などの影響を受けにくく、安定して働くことができるところもメリットです。非営利組織や団体は日本全国にあるので、仕事に安定性を求める場合は選択肢の一つとしてオススメできます。