神谷 純平さん
インタビュー公開日:2021.05.06

JFLでプレーヤーとして活躍後、
クラブの営業部門で運営を支える側へ
1996年、北海道初のプロスポーツチームとして札幌市に誕生した北海道コンサドーレ札幌。クラブ設立から20周年を迎えた2016年にJ1昇格を果たし、2019年にはJリーグYBCルヴァンカップで準優勝を飾るなど、躍進が続いています。
「選手ではありませんが、またこのクラブのエンブレムを背負えるという、うれしさも大きかったですね。顔見知りのコーチなども在籍していたので、不安はありませんでした」
そう話すのは、クラブの営業部門に所属する神谷純平さんです。富良野市出身の神谷さんは、コンサドーレ札幌のジュニアユース(アカデミーU15)への入団が決まったお兄さんとともに家族で札幌へと移住し、その後、自らも同じジュニアユースに入団。中学校の3年間、プロの育成システムのなかで技術を磨きました。高校・大学も強豪校でサッカーを続け、卒業と同時に道外のJFL(日本フットボールリーグ)に入り、4年間にわたって第一線でプレーヤーとして活躍。そして、札幌へと戻ってきます。
「札幌は第二の故郷であり私の出発点。帰ってきたな、という感慨が湧いてきました」
それから丸3年。スーツ姿もすっかり板についた感のある神谷さんの仕事は、パートナー企業(スポンサー)の獲得と契約後の対応を通して支援の輪を広げ、クラブの運営を支えることです。
両膝の怪我によって現役を引退
育ててくれた恩返しに入社を決意
神谷さんが、かつてサッカー選手として所属していたのは、JFLのサウルコス福井(現・福井ユナイテッド)と、JFL栃木ウーヴァ(現・栃木シティフットボールクラブ)。サイドハーフを主なポジションに、闘争心あふれるプレーが持ち味でした。ところが、二度の怪我により現役を退くことになります。
「最初の怪我は左膝。リーグでトップクラスの選手のドリブル突破を阻止しようと身体を入れた時、上に乗られる体勢となり、前十字靭帯を断裂してしまったんです」
当時、コンディションは最高潮。Jリーグのチームとの練習試合でも、自分の実力が通用する手応えを感じていた時期だったといい、怪我を克服し、復帰することを目指します。けれども、復帰直前の練習試合で今度は右膝を怪我してしまいました。
「大学時代から怪我が多く、次に大きな怪我をしたら引退しようという気持ちは常にありました。それを含めて、プレーヤーとしての実力、才能ですから」
引退後は選手の指導をしたいという思いもあったそうですが、”古巣”の北海道コンサドーレ札幌から営業職として誘いを受けたことが現在にいたるきっかけとなりました。ただし、営業はまったくの未経験。
「ジュニアユースで3年間育ててくれたクラブに恩返しがしたいというのも、入社して未知の仕事にチャレンジしようと思った理由です」
イベント企画からコラボ商品の開発支援
試合観戦のアテンドなど幅広くサポート
神谷さんは現在、約30社のパートナー企業を担当して日々、さまざまな提案を行っています。そのなかには、トップパートナーとしてクラブの運営の屋台骨を支えてくれている企業も数多くあります。
「北海道を代表し、全国的にも知られる菓子メーカー・農業団体・ドラッグストアチェーンなども担当させていただいています。選手のユニフォームに大きくロゴマークが入っているビッグネームの企業ばかりです」
そんな神谷さんの業務内容は、パートナー企業が北海道コンサドーレ札幌とともにイベントなどを開催する際の企画やスケジュール調整、コラボ商品の開発支援など、多岐にわたります。
「契約に基づくチケットを入手するためのURLのメール送付、企業PR用の選手写真の提供、チームのイベント・キャンペーンの告知なども随時行うほか、直接、お伺いしてお話する機会も多いですね」
パートナー企業の代表・役員などがゲームの観戦に訪れる際には、招待席でアテンド(案内・接待)することも大切な仕事。また、パートナー企業と連携して社会活動などを実施することもあり、その際には連携協定を結ぶ内容の検討・作成も行うなど、大きな役割を担っています。
ゲームが終わったオフシーズンには
パートナー企業を獲得する営業活動
天皇杯が終了する12月から、開幕戦が行われる直前の2月下旬までは、選手にとってのオフシーズンとなるJリーグ。ゲームのないこの時期も、クラブの運営に直結する大切な業務が待っています。それは、パートナー企業を獲得するための営業活動。企業との契約は、基本、1年ごとなのだそうです。
「毎年、この時期に新たに契約していただくための活動を行います。前年の契約内容と、それにともなう成果などを分析し、次の1年間のサポート内容を提案していくのです」
コラボ商品の販売、企業イメージのアップ、社会貢献など企業によってパートナーとなる理由は異なります。シーズン中、それぞれの目的にプラスとなる提案を行い、自然と次の契約につなげていくことが理想なのだと神谷さんは話します。そのために普段から企業を訪問し、コミュニケーションを図ります。
「そこで、名だたる企業・団体のトップとの人脈を築いていけることが、この仕事の魅力であり醍醐味だと感じています。さまざまなことを学ばせていただいています」
人が好き、人と接することが好きという神谷さん。そうした方々から食事などに誘われることも多いそうです。物おじせずに、その場に飛び込んで行く。百戦錬磨のプレーヤーに囲まれながら自らをアピールする選手時代のマインドも、役立っているのかもしれません。
人と人とのつながりを大切にし、
クラブを支えるという仕事の魅力
「サッカーは自分にとって命と同じくらいかけがえのない、大切なものでした。ただ、同時に、現役でいられる時間は限られており、その後の人生の方がはるかに長いんですね。大学時代、自分の将来を見つめるなかで、そのことを強く意識するようになりました」
そして、もっと広い視点から大好きなサッカーを捉えられるようになったことも、今、クラブの運営に関わる仕事に就いている背景にあるのだそうです。入社4年目を迎えるなかで、クラブを支える側という仕事の魅力とやりがいを、強く実感するようになったと話します。試合が続くシーズン中は、イベントなどへの参加は選手にとって負担になります。元プレーヤーとして、そんな選手の気持ちも十分に理解しつつ、パートナー企業に支えられているという、プロとして大切な意識を選手にしっかりと伝えたいと思いを語る神谷さん。
「選手がいて、パートナー企業様がいて、北海道コンサドーレ札幌というクラブは成り立っています。そこで大切になるのはやはり、人と人とのつながりだと思うんですね」と神谷さん。将来的には、サッカーを通じて強い絆で結びついた高校の友人たちと、サッカーチームをつくりたい。そのためにも、クラブ運営のノウハウをさらに学びたいのだと、大きな夢も聞かせてくれました。
シゴトのフカボリ
プロサッカーチーム営業の一日
9:00
出勤、メールチェック、社内での打ち合わせなど
12:00
昼休憩
13:00
パートナー企業への訪問
17:00
帰社、メールチェック、リリース情報などのチェック、提案資料作成など
19:00
退勤
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

クラブには選手がいて、フロント陣がいて、活動を支えてくれるパートナー企業がいます。それぞれの思いを尊重し、伝えるべきことを伝えるには、人を大切にすることが何よりも重要になる。そのことを実感しています。

株式会社コンサドーレ

札幌市を中心とする北海道をホームタウンに、道内初のプロスポーツチームとして誕生した北海道コンサドーレ札幌を運営しています。

住所
北海道札幌市豊平区羊ヶ丘1番地
TEL
011-777-5310
URL
https://www.consadole-sapporo.jp

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お仕事データ

チームを支える縁の下の力持ち。
プロスポーツチーム職員
プロスポーツチーム職員とは
広報や営業、企画などの面から、
選手やファンをサポート!

野球やサッカー、バスケットボールなど、プロ選手が所属するプロスポーツチームの運営に携わるのがプロスポーツチーム職員。マスコミに対応する広報、スポンサーを開拓する営業、ファンの集客数アップにつながる企画、選手の契約管理、さらに経理といった幅広い業務を担います。選手の入団交渉や所属選手の処遇の変更など人事面もサポート。選手とお客様のために、チームの経営や試合を支える縁の下の力持ちです。

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第一にスポーツを楽しむ気持ちが必要。とはいえ、営業にはコミュニケーション能力やビジネスセンス、経理には金銭感覚が求められるなど持ち場によって適性は異なります。そのため、幅広いことに興味を持ち、自ら学べる積極性が高い人に向いているといえるでしょう。「どうしたら多くのお客様を楽しませることができるのか」を考えるには、ファンのニーズを理解できる視点も大切です。

プロスポーツチーム職員になるためには

プロスポーツチーム職員には特別な資格は求められません。大学や専門学校を卒業し、プロスポーツチームの運営企業に就職するのが一般的です。ただし、人気が高い職業である一方、採用人数が多いわけではないようなので、各チームのホームページなどの求人情報をこま目にチェックすると良いでしょう。種目やスポーツチームによってはインターンから職員の募集や斡旋をすることもあるようです。 

ワンポイントアドバイス
メディカルスタッフとして
プロスポーツチームに携わる道も。

プロスポーツチームの中には、スポーツトレーナーをはじめとするメディカルスタッフを抱えるところもあります。選手のコンディショニングや応急処置、リハビリ計画の作成などを担う責任のあるポジションであり、人数が多いわけではないので狭き門。スポーツトレーナー専門の学科を設ける専門学校や大学に進み、「アスレティックトレーナー」「柔道整復師」「鍼灸師」といった資格を取得すると有利です。

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