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日向 大樹さん
インタビュー公開日:2021.08.16

来訪者ごとの事情を汲みながら、
的確な駐車スペースに案内する。
フェスなど、大勢の人が集まるイベント会場。メガホンを使って誘導を行っている警備スタッフの姿をよく見かけます。混雑が集中するのを防いだり、スムーズな流れを作ったり。お客様が安全に入退場できるよう、常に見守っています。日向大樹さんの前職は、そんなイベント警備の仕事でした。
「警備ということでは同じ仕事ですが、今、担当している業務とは大きく異なります。イベント警備は、何万という人に大きな声で必要な情報を伝えるのが仕事です」
一方、キャリアフィットで日向さんが現在、担っているのは、大学病院の駐車場内の交通誘導。患者さんや家族の方々、病院関係者を、的確な駐車スペースに案内する仕事です。
「一台、一台の車に、ていねいにお相手をすることが大切になります。その意味で、接客業に近いと言ってもいいかもしれませんね。来訪される方の事情を汲みながら、対応を行っています」
イベント警備にも駐車場での誘導業務はありましたが、それは文字通り車の誘導がメイン。今の仕事も基本は同じですが、視点がまったく違うのだと日向さんは話します。
個別に声をかけ、話をしながら、
対応に必要となる情報を把握する。
高校卒業後、義兄の紹介でイベント警備を主業とする会社に就職した日向さん。5年ほど勤務して、警備業の基本を身につけ、その後、新たな環境にもチャレンジしてみたいと考え、転職したのがキャリアフィットでした。
「駐車場の交通誘導スタッフの募集だったので、経験を活かせそうだな、と考えたことがきっかけでした」
そこで痛感したのが、冒頭の話にもあった前職とのギャップ。具合が悪い患者さん、定期的な診察に来る人、付き添いの家族、お見舞いの人――。
「車を誘導することが仕事の基本ですが、そうした多様な方々がお見えになるなか、それぞれに合わせた的確な誘導をするには、必ず個別にお声がけし、来訪目的などの情報を把握することが大切なんです」
診察を受けに来たのか、入院患者の面会か、あるいは入退院のための荷物を運んでいるのか。なかには、重篤な状態となった家族のもとへ駆けつけて来るケースもあります。そうしたことを一つひとつ聞き取り、必要に応じて病院の入口に近い場所、入退院専用に確保されている場所などへと誘導を行います。
入場待ちで並んでいる車列にも、
スタッフを配置し、安全を確保。
交通誘導といえば、道路に立って通行規制の指示を伝えている警備員さんを思い浮かべますが、病院の駐車場では、話をするとともに来訪される方々の顔色、表情などを察知することも大事になるのだと日向さん。
「それらに合わせて、こちらも話し方、声のトーンなどを微妙に変えています。患者さん本人か、付き添いの方なのかによって、言葉遣いも変わりますね。同時に、歩行に支障がないかどうかもお聞きして、必要に応じて専用の駐車スペースにご案内しています」
とはいえ、あまり話し込んでしまうと、車の流れが滞ってしまいます。仕事はあくまでも車の誘導。そこで、障害者手帳を持っている人には予め提示してもらうようにお願いするなど、工夫を凝らしているそうです。
「担当している駐車場は、スペースの関係から毎日、満車になる時間帯があり、多い時は病院の建物をコの字に囲むように入場待ちの車が並びます。その際には、最後尾の辺りや横断歩道をまたぐ付近などにスタッフを配置し、待ち時間や進む方向をご案内しながら、安全確保に努めています」
実に細かな配慮が行われています。
担当する駐車場のリーダーとして、
スタッフの指導、病院との調整も。
日向さんは6年前、アルバイトとして働き始めました。その後、前職での経験とスキルを活かしながら頭角を現し、現場をまとめるリーダーに。そして、先輩から今の現場の責任者を引き継ぎ、社員となったそうです。
「時間帯によって、駐車場の混み具合など状況が刻々と変化します。それに合わせて、要所要所に、的確にスタッフを配置するのがリーダーとして大切な仕事の一つです」
また、自らも誘導を行いながらスタッフの動作に常に目を配り、時には指導しながらサービスの改善につなげています。同社では常々、警備員としての基本動作の研修が行われており、それらを全員が忠実に実践できるよう、現場で指導するのもリーダーの役割です。
「病院とのやりとりも重要です。その日の駐車場の状況を伝えたり、病院側からは『工事で大型車が来るけれど、停められますか?』といった問い合わせが来たり。駐車場のことは、私たちの方が詳しいので、安全を第一に、かつ誘導業務にも無理がかからないか考えながら、判断し、調整を行っているんです」
病院業務を担う一部門。まさに、そんな役割を日向さんの仕事は果たしています。
相手の気持ちになって接すること。
心温まる言葉にやりがいを感じて。
病院では毎年、患者さんへのアンケートをもとにした、部門ごとの評価結果がグラフで貼り出されます。受付や清掃、各科の病棟なども並ぶなか、日向さんが誘導業務を担う駐車場は常にトップの評価なのだそうです。
「5段階評価の『非常に良い』が、一番多いんです。これは、ちょっと自慢ですし、自分たちのやり方が間違いではないという証明になり、自信にもつながっていますね」
2018年の北海道胆振東部地震でブラックアウトが起きた際には、停電で診察できないなか駐車場が混乱すると病院に余計な負担がかかると考え、スタッフ全員が自主的に現場に出勤したそうです。責任感の強さが、ひしひしと伝わってきました。
「そのことにも通じるかもしれませんが、『相手の気持ちになって接しなさい』という先輩の言葉を大切にしています。患者さんとコミュニケーションを図り、気持ちに応える。そこに、仕事の魅力を感じています」
『ていねいに対応してくれてありがとう』。そんな心温まる言葉をもらうことも多く、やりがいを感じる瞬間なのだとか。さあ、また車がやって来ました。サッと駆け寄り、やさしく話しかける日向さんです。
シゴトのフカボリ
交通誘導員の一日
8:00
出勤、スタッフの配置、その日に予定されているイレギュラーな対応などを確認しつつ、誘導業務を開始
12:00
昼休憩
13:00
病院との連絡・調整、確認事項のすり合わせなど
13:30
誘導業務および、スタッフへの指示出し、管理・指導
18:00
退勤
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
誘導棒
道路の交通整理などでよく見かける誘導棒ですが、スペースの限られた駐車場内では車との接触の危険などもあり、使用しません。主に、入場待ちの車を整理する際に用いているそうです。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

さまざまな目的で病院にやってくる人たち。その一人ひとりに寄り添い、的確なサービスを提供することを、いつも心がけています。病院機能の一翼を担っているという意識で、日々、業務に取り組んでいます。

キャリアフィット株式会社

昭和60年設立。ビルメンテナンス業からスタートし、現在は人材派遣業、医療福祉施設等の給食受託、警備業など幅広い事業を展開しています。

住所
北海道札幌市中央区南1条東2丁目3-2 マツヒロビル2F
TEL
011-231-6355
URL
http://www.careerfit.co.jp/

お仕事データ

交通誘導からボディガードまで!
警備員
警備員とは
人命や大切な財産を守る
縁の下の力持ち。

施設や工事現場、駐車場などで人の警備・警護を専門的に行うのが警備員。その仕事は警備業法という法律で定義され、1号~4号に分かれています。1号警備業務は住宅や施設、駐車場などで、盗難や事故を防ぐための警備。「施設警備」や「常駐警備」、「巡回警備」などの職種が該当します。2号警備業務は、工事現場の交通誘導や不特定多数の人が集まるイベントの警備が主な仕事です。3号警備業務は、現金輸送や美術品の他、核燃料の移送時の警備などより強固な警備が求められます。4号警備業務はいわゆるボディガードと呼ばれ、高齢者の見守りやストーカー対処といった身辺警護がメインです。警備員は人命や大切な財産を守る縁の下の力持ちです。

警備員に向いてる人って?
人命を守る責任感と柔軟性があり、
さらに気遣いもできるタイプ。

警備員は依頼人や市民の安全と安心を守ることを最優先に行動しなければなりません。人の命をしっかりと守る強い責任感が求められます。こうした職務をまっとうするには相応の体力が必要であり、さらに不測の事態が起きた際でも臨機応変に的確に動くことが必要。また、警備員は人と接する仕事でもあるので、本来は業務外のことでも場所を案内するなどの気遣いができる人も向いているでしょう。

警備員になるためには

警備員になるために必要な資格はありません。ただし、警備業法により、18歳未満の人、破産宣告を受けた人、何らかの罪を犯して刑務所を出所してから5年未満の人などは警備員になれないという制限が設けられています。これらに該当せず、18歳以上であれば、学歴や性別などにかかわらず誰でも警備員になることが可能。入社後は、法令で定められた教育を30時間以上(基本教育15時間以上、業務別教育15時間以上)を受け、実際の現場で働くことになります。

ワンポイントアドバイス
警備員の仕事は需要が高まる見通し。
今後はITスキルを持つ人材も必要に。

最近では個人宅に警備会社のシステムを導入する「ホームセキュリティ」の実績も増えているため、警備員のニーズは高まっていく見通しです。また、最初は現場での仕事が中心になりますが、「施設警備検定」や「空港保安警備検定」、「交通誘導警備検定」といった資格を取得し、仕事の幅を広げることで、キャリアアップしていく道も開けます。人を必要とする業務は絶えず需要がある一方、防犯カメラやコンピューター制御、AIによる警備システムも進化中。警備業界にもIT化の波は押し寄せ、今後はシステムの知識が豊富な人材なども必要とされるでしょう。

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