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横路  琢磨さん
インタビュー公開日:2023.04.11

少年団の指導をする両親を見て、
子どもに関わる仕事を志望。
言語聴覚士とは、言葉を話す・聞くことや嚥下などに困難を抱える人を、リハビリテーションを通してサポートする専門家です。その言語聴覚士として、子どもの療育を行う事業所で働く横路琢磨さん。地元の少年団で陸上競技の指導員として活動する両親の背中を見ていたことが、今の道に進むきっかけに。「自分も少年団の一員として活動しながら親の姿を見て、漠然と子どもと関わる仕事がしたいと思っていました」。
横路さんが高校生の時に、姉は幼稚園教諭を目指して短大に進学。「姉への対抗心から同じ職種には就きたくないなと思っていた時に(笑)、作業療法士として働いていたいとこから、言語聴覚士のことを教えてもらいました。調べてみたら子どもに携わる仕事もしているということがわかり、目指してみたいと思ったのです」。
そうして、高校卒業後はリハビリテーションの専門学校へ。資格取得に必要な知識を身に付け、3年生と4年生の時は医療機関での実習に臨みました。
医療機関での実習を経験し、
縁がつながり町の言語聴覚士に。
言語聴覚士が働く現場は、病気や事故などで言語や聴覚の機能が損なわれた大人を対象とするところが圧倒的に多く、実習の場も脳神経外科、老人保健施設、耳鼻咽喉科でした。
耳鼻咽喉科の実習の際、指導してくれた言語聴覚士に「卒業後は子どもに携わる仕事がしたい」という話をしたところ、その人は休日を利用し、安平町の子どもの訓練をしに行っているということがわかりました。さらに、町で公的に言語聴覚士を雇用したいという話が出ているということも聞きました。横路さんはこれがチャンスと、「実は安平町がどこにあるかもわかっていませんでしたが、『やってみたいです!』と紹介してもらい、直接面談に行き採用が決まったのです」。
安平町では教育委員会の所属となり、小・中学生には学校に出向いて、未就学児には町の子育て支援センターで、言葉の発達や発音に課題がある小・中学生20人ほど、未就学児15〜16人にマンツーマンで訓練を行いました。
スキルアップのため医療法人へ。
組織の管理者としての経験も。
町に一人だけの専門職だった横路さん。自ら試行錯誤しながら訓練に臨みました。「手探り状態でずっと悩んでいましたが、論文を探したり勉強会に参加したりして知識を獲得し、翌日からの仕事に備える日々でした」。
3年間経験を積んだ後、「もっとスキルアップしたい」と考えた横路さんは、札幌の医療法人に転職、発達に困難を抱える児童が通う放課後等デイサービスで働き始めます。先輩や同僚からさまざまな訓練の方法を聞くことができ、現場の責任者として働ける「児童発達支援管理責任者」の資格も取得しました。
現場を任されるようになった横路さんは、上司の理解を得た上で、やり方を少しずつ変えていきました。「子どもたちが楽しんで取り組める遊びやゲームの要素がある活動をどんどん作りました。例えば、集団での振る舞い方を学ぶために、仲間に声を掛けて助け合わないとクリアできないゲームなどです。さらに、それまでアナログだった活動にデジタルも取り入れていきました」。
楽しみながら学べる活動を創作、
子どもの反応に常に注意を払って。
その後、経営についても学んでみたいと考えた横路さんは、医療法人から株式会社ジェネリカに移りました。横路さんが現在勤務している事業所イーライフジュニア・スマイルでは、発達に不安を抱える未就学児から小学校低学年子どもの言葉の訓練をしています。ジェネリカの社長は横路さんが創作する従来にない活動を理解し関心を示してくれたため、勤務する事業所でも後輩にそれを伝え、後輩も自分たちで活動を作れるようになっていきました。「子どもたちが、ここでしかできない活動を楽しみに来てくれるのがうれしい」と横路さん。
目に見えない言葉を扱うことは簡単ではありませんが、子どもの反応や表情から理解できているか、何を考えているかを推察するのも言語聴覚士の特徴。自分の言葉も注意を払って発するので、「子どもたちが標準語を正しく覚えられるよう、北海道弁が出ないよう気をつけています。家では、『なまら〜』とか『〜だべ』を多用していますけどね(笑)」。
子どもの言葉の発達に向けて
頑張る親子が楽になるお手伝いを。
通所している子どもは言葉を始めとする発達がゆるやかで、親御さん、特に関わりが多いお母さんがそのことを受け入れる葛藤の末に相談に来られる場合がほとんどだと横路さん。「私たちは、日ごろから頑張っているお母さんが少しでも楽になれるよう、事業所での訓練を通してお手伝いしたいと考えています。日常生活へのアドバイスも、求められる範囲で負担をかけないように。そして、子どもがそれまで言えなかった言葉を発することができるようになった時は、私たちもすごくうれしいですが、それはその子とお母さんの頑張りのおかげだと思っています」。
コロナ禍のマスク生活で口元が見えず、表情の理解が難しくなってしまったことは、言葉の発達支援にも大きく影響を及ぼしました。しかし、「時代によって変わる発達もある」と横路さん。変化を受け入れて支援する方法を前向きに考え、次世代の育成にも力を入れていきたいと力強く話してくれました。
シゴトのフカボリ
言語聴覚士の一日
9:30
出勤、車両の準備・清掃、ミーティング
9:40
送迎
10:00
事業所へ帰着、午前の療育
11:20
送迎
11:40
帰着、療育の記録、清掃・消毒
12:00
昼休憩
13:00
送迎
14:00
帰着、午後の療育
17:00
送迎(小学生がいない場合は16:00)
18:00
療育の記録、翌日の準備
18:30
退勤
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

「口は災いの元」と言いますが、言語聴覚士の職域である人と話すこと、おいしいものを食べることを通して人は楽しく幸せになれます。私はそのお手伝いをしています。

株式会社ジュネリカ

児童発達支援・放課後等デイサービス、介護予防支援スタジオを運営し、児童も高齢者も自信をつけて羽ばたける支援を目指し事業を展開しています。

住所
北海道札幌市東区北26条東4丁目1-1(本社)
TEL
011-790-7767
URL
https://junerika.co.jp

お仕事データ

自分らしく生きるためのサポートを。
言語聴覚士
言語聴覚士とは
「話す」「聞く」「食べる」の
リハビリを行う専門家。

「うまく話せない」「話が理解しにくい」といった言語障がい、声が出しにくくなるなどの音声障がい、食べものが飲み込みづらくなる嚥下(えんげ)障がい。病気や生まれつきの障がいなどから、「話す」「聞く(理解する)」「食べる」が不自由な人のリハビリを行うのが言語聴覚士の仕事です。話すことや聞くこと、食べることの障がいといっても人によって程度が異なるため、まずは検査やカウンセリングで状態を詳しく調べ、その原因まで遡ってメカニズムを把握。そして、病気やケガ、障がいに応じ、どのような訓練・サポートが必要なのか見極めてリハビリにあたります。時にはメンタル面が傷ついたことにより、「話ができない」というケースもあるため、内面にも目を向けて一人ひとりが自分らしく生きられるように手を携えるのも大切な仕事です。

言語聴覚士に向いてる人って?
相手の思いを汲み取り、
根気強く真摯に向き合える人。

言語聴覚士は伝えることが苦手だったり、言葉で表現するのが難しかったりする人をサポートするため、相手の思いを汲み取り、真摯に向き合える人柄が求められます。リハビリはすぐに成果に結びつくケースが少ないため、根気強いタイプにも向いているでしょう。患者さんが訓練に対してネガティブになることもあるため、人を明るく勇気づけられるようなポジティブさも必要。また、医師や看護師をはじめとする多彩な職種との連携が欠かせないため、コミュニケーション能力も大切です。

言語聴覚士になるためには

言語聴覚士として働くためには、言語聴覚士の国家資格を取得する必要があります。そのためには、文部科学大臣が指定する学校(大学・短大)、または都道府県知事が指定する言語聴覚士養成所(専修学校)を卒業しなければなりません。指定の養成所に進まなくても、大学で指定科目を履修したり、大学卒業後に文部科学大臣が指定する養成所で2年以上学んだりすることで、国家資格を受験することができるようになります。言語聴覚士の国家資格取得後は医療機関や福祉施設、教育機関などに就職するのが一般的です。

ワンポイントアドバイス
どんな人をサポートしたいのかで、
職場を選べるのも魅力!

言語聴覚士が主に活躍している職場は病院。けれど、超高齢化を背景に福祉施設でのニーズが高まっていたり、療育の必要な障がい児が増えていたりするため、高齢者施設や特別支援学校などでも言語聴覚士が求められています。そのため「子どもたちの健やかな発育に携わりたい」「ご年配の方が自分らしく生きるためのお手伝いがしたい」など、どのような人をサポートしたいのかによって、職場を選べるのも魅力です。