黒澤 秀平さん
インタビュー公開日:2023.07.20

「距離感」を覚えるところからスタート。
トラックのスケジュールを管理する仕事。
「北海道の地理、距離感などが、当初はまったく、わかりませんでした。とにかく先輩に聞いて、聞いて、というところからスタートし、覚えてきました」
そう話すのは、生鮮・加工食品、雑貨など幅広い商品の物流を手掛けるアイアイ・テー(本社・石狩市)で、トラックのスケジュールをコントロールする運行管理者を務める黒澤秀平さん。扱っている商品や業務の流れを覚えるため、入社から半年ほどは自社の倉庫業務を経験し、現在の業務に就きました。生まれは函館ですが、すぐに福岡へ。転勤族の家庭に育ち、その後も関西、中部、関東と全国を転々としていたのだそうです。
「最初は、たとえば稚内から北見に回り、そこから翌日には函館に行くというようなスケジュールを感覚だけで組んだりもしていましたね」そう言って、少し恥ずかしそうに笑います。
経験豊富なドライバーから、時には少し厳しい言葉も受けつつ、それでも持ち前のコミュニケーション力と人懐っこさでそのふところに飛び込み、わからないことは質問攻めにしながら、仕事のコツをつかんでいきました。ドライバーの経験がなければ難しいとも言われる運行管理の仕事。ようやく1年が経ったところですが、すでに落ち着きと、貫禄さえうかがえる黒澤さんです。
配送案件を組み合わせてコースを設定。
イレギュラー業務の手当などの計算も。
運行管理の仕事には、二つの大きな役割があるのだと黒澤さんは話します。
「一つ目は、配送のコースづくりとその管理。さまざまな店舗等から寄せられる荷物の配送依頼を地域ごとに組み合わせてルートを考え、ドライバーさんにお願いする仕事です」
どこからどこまで何を運び、どこで休憩するかといったスケジュール管理を行うことが、その業務。コースをつくる際は、移動時間の想定が必須となりますが、同じルートでも、ドライバーの熟練度などによって微妙に所用時間は変わるのだといいます。
「どのドライバーさんにお願いするかによって、スケジュールをカスタマイズし、なおかつ法定の労働時間を超えないように調整するのがポイントです」
同じドライバーでも、遠方への輸送を専門に担っている人、札幌近郊専門の人といった得意分野があり、単純に人員を割り当てるわけにかにはいかないところが、この仕事の難しさなのだと教えてくれました。もう一つの仕事は、ドライバーの勤怠管理。イレギュラーの業務を依頼した場合の手当などの計算も黒澤さんの仕事です。
ドライバーさんそれぞれの違いも加味し、
思わぬトラブルや事故を防止する。
黒澤さんが担当している営業所で走らせているトラックは、1日に約120運行(ルート)。黒澤さんは、運行管理チームの一員としてすべてのルート設定とスケジュール管理を行っています。
「ドライバーさんには、常時走っている〝レギュラー〟と呼ばれる方と、レギュラーの定休日などに走る〝代務〟と呼ばれる方がいます。複数のレギュラーが休日の日を順次、担当するため、代務者のシフト管理も大切な仕事になります」
ただし、代務のドライバーのなかにも、近距離専門と遠距離専門の人がおり、また函館には土地勘があるものの、稚内は経験がないため走れないという人がいたりします。そうした違いを加味した上でスケジュールを組みます。
「年齢を重ねたドライバーさんのなかには、長距離運転は問題ないけれど、重量のある積荷の扱いが難しいという方もいます。営業所で走っているドライバーさんは総勢150〜160名。一人ひとりとコミュケーションを図り、さらに、個々人のさまざまな事情も考慮しながら、シフトを作成しています」
これは、慣れない業務による、思わぬトラブルや事故を防止するための配慮でもあるのだそうです。
コロナ禍で急展開したガイドの仕事。
心機一転、チャレンジできる環境へ。
航空業界で働いていたお父さんの仕事の関係もあり、国内外を旅行する機会が多かったという黒澤さん。ある時、日本で知り合った外国人の友人を訪ねた際、現地を案内してくれた人たちの楽しそうなようすに惹かれます。
「観光で訪れる方々を案内するツアーガイドに憧れを持つようになるなか、インターンで訪れていた旅行代理店の方から、カナダで現地ガイドを募集しているという話を聞き、もう、飛びつきましたね」
大学4年生の後期でしたが、休学をしてカナダでガイドの仕事に就きます。けれども、夢が実現して間もなく断念を余儀なくされます。新型コロナウイルスの世界的な拡大です。
「観光客がゼロになり、やむなく帰国。いわば夢を一度クリアしただけに、そこから何をしていいのか、わからなくなりました」
ちょうど同じ時期に、お父さんが定年を迎え、終の住処として札幌へ移住。〝新しい実家〟に戻った黒澤さんは、自然が豊かで、食べ物もおいしいこの地で働こうと決意。求人情報を通して出会ったのがアイアイ・テーでした。
「私のようないわば第二新卒を募集していたこと、いろいろな挑戦ができるというアピールにも惹かれて、入社を決めました」
1人でやり遂げた、3人体制の仕事。
自信と成長を感じ新たな挑戦へ。
運行管理の仕事に就いて5カ月ほどが経った頃、〝自分のなかですべてが変わった〟と黒澤さんが話す1週間が訪れます。退職やコロナ感染などが重なり、ドライバーの数が切迫したため、一緒に業務を担っていた、ドライバー経験のある2人の運行管理者がハンドルを握ることになったのです
「3人体制で行っていた業務を、一時的に1人で担うことになりました。次々と入ってくる配送依頼を受け、遅延情報への対策を考え、翌日分のスケジュールを組み立てて……。死に物狂いでしたが、やり遂げたことで、成長を感じました」
その経験があるからこそ、年末の超繁忙期でも平常心でいられるし、普段の業務のなかでも焦ることがなくなったそうです。そんな黒澤さんが今、取り組んでいるのが、労働時間が厳格化される2024年問題への対応として必要になる、新たな勤務体系づくり。
「収入減少につながるといった課題もあるなか、誰もが納得できるコース作りをすることが当面の私の挑戦です」
ドライバーさんの満足度を高められる環境づくりがしたい。そのためには、常に声をかけ、思いに耳を傾けることが大切。そう言い残すと、帰社したドライバーのところへ駆けていく黒澤さんです。
シゴトのフカボリ
運行管理の一日
10:30
出勤、配送依頼を確認しながら、翌日の配送予定の確定
13:00
イレギュラーな配送に対応する増車などの処理業務
15:00
法律で定められた点呼表などの作成
17:00
休憩
18:00
新たな法規制に対応する交番の検討
19:30
帰宅
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
電話機とホッチキス
配送依頼から、スケジュールの調整、渋滞による遅延などへの対処等々、業務時間の2/3は電話をしています。また、大量の伝票などをサクッとまとめる強力なホッチキスも必需品です。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

多くのドライバーさんと関わる事になるので、人と話すことが好きな人にも向いていると思います。どんな仕事にも共通しますが運行管理は会話が大事です。私はいつも帰って来たドライバーたちを明るい気持ちにしてあげたいと思っているので、冗談などを交えて明るく話しかけるようにしています。気に掛けること、 気持ちを伝えることが、互いの理解に繋がり、スムーズな運行に繋がります。 

株式会社アイアイ・テー

株式会社オリエンタルフーズから分離独立して1988年に創業。生鮮食料品、冷蔵・冷凍食品を中心に、雑貨、繊維など全温度帯の配送を担っています。

住所
北海道石狩市新港西3丁目700-2
TEL
0133-75-5660
URL
http://www.iit-inc.co.jp/index.html

お仕事データ

女性もどんどん活躍中!
トラックドライバー
トラックドライバーとは
荷物を積み込み日本各地へ。
我が国の物流を支える原動力。

荷揚げ場所から荷物を積み込み、個人宅、会社、店舗などへ運搬、配送する仕事。一口にトラックドライバーといっても「軽トラ」と言われる小型トラックもあれば、「タンクローリー」や「ミキサー車」などの大型トラックまで車種はさまざま。必要な免許も普通自動車免許や中型自動車免許、大型自動車免許、けん引免許など乗り込むクルマによって変わります。大型は高速道路も含めて長距離を走ることが多く、小型は集配所から集配所へのルート配送といった近距離の運転をすることが多いようです。

トラックドライバーに向いてる人って?
安全に、時間通りに荷物を届ける集中力。

長時間運転することが好きで、何より安全に時間通りに荷物を目的地へと届けるために集中できることが大切。荷物の重さはさまざまですが、積み込みや荷下ろしなど体を動かすケースも多いので、体力に自信があると有利です。運転中はほとんどの場合一人ですが、集配所などではお客様や同業者への最低限のあいさつは必要。

トラックドライバーになるためには

トラックドライバーは基本的に学歴はさほど重視されません。物流会社や運送会社の採用試験に応募するのが近道です。とはいえ、中型トラックであれば「中型免許」、大型トラックであれば「大型免許」、さらにトレーラーなどを扱う場合には「けん引免許」が求められます。運ぶものによっては「危険物取扱者免許」や「毒物劇物取扱責任者免許」などの取得も必要。最近ではこのような資格は入社後に会社負担で取得させてくれる企業が多いようです。

※各種免許取得の条件については全日本トラック協会のホームページなどをご確認ください。http://www.jta.or.jp/index.html

ワンポイントアドバイス
国交省も応援する「トラガール」!?

トラック運送業界は男性のイメージが強く、他業種に比べて女性の進出が遅れていたと言われています。ところが、近年は、細やかな気配りやコミュニケーション能力、丁寧な運転など、女性ドライバーならではのスキルが大注目。国土交通省では、女性の活躍を促進するため、女性トラックドライバーを「トラガール」と名付け、さまざまな取り組みを進めています。

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