菓子品質管理_上北 智則さん
インタビュー公開日:2023.08.23

検査やデータ好きが高じて
品質管理という仕事に。
豊かな自然と田園空間が広がる中札内村、その中心部にほど近い一角に、白とベージュのコントラストが目を引くユニークな建物が。ここは十勝の農産物や全国各地の厳選された素材を原料に多彩なスイーツを製造している「とかち製菓」の工場兼社屋。今回、お話を伺うのは同社で品質管理をしている上北智則さんです。
上北さんは帯広市の出身。高校卒業後、地元の食品製造企業に就職しましたが、その際に配属となったのが品質管理部。実はその後2度ほど転職を経験しましたが、どの会社でも品質管理を担当したとか。
「細かな検査をしたり、データを扱ったりするのが好き。この仕事は自分の天職なのかもしれませんね」
では、上北さんが勤務する「とかち製菓」について、さらに彼の仕事である品質管理について、フカボリしていきましょう。
和菓子をベースとした
スイーツのクリエイティブ企業。
とかち製菓の設立は2012年。和菓子をベースとした和スイーツを製造する企業として誕生しました。
「定番商品は、白玉ぜんざい、わらび餅、お団子や大福など。こういった昔ながらの和菓子に、クリームやチーズ、生チョコなどのフレーバーや旬のテイストを取り入れるのが弊社の得意技です」
白玉にフルーツソース、餅の中に生チョコ、抹茶風味のワラビ餅、ガナッシュにクリーム… 和菓子のイメージにとらわれないユニークな組み合わせやアイデアが次々に新製品となってリリースされていきます。
「開発部や製造部で考案される他、時には営業スタッフが市場調査の最中にふと思いつくこともあるんです。大きな会社なら、稟議を通して製造部に確認して…と時間を要しますが、うちは小規模でもあるため、直ちにメンバーが集い『すぐ検討』『すぐ試作』『すぐ製造』が可能なんです」
さらにフローズンチルド/ドライなどの優れた技術も保有。アイデアや閃きがあれば、世間を驚かすおいしさをプロデュースできるのが、同社の特徴と言えるでしょう。
万が一のトラブルを
未然に防ぐのが品質管理の使命。
上北さんの肩書は品質管理・品質保証課係長。上司と部下の2名のスタッフが連携しながら、商品の安全性や製造環境の衛生面での管理業務に取り組んでいます。
「メインの仕事は、糖度や柔らかさ、食味など商品の品質チェック、金属混入チェック、細菌検査など。工場内の衛生管理やスタッフ指導、さらに全商品に掲載される食品表示の作成などにも取り組みます」
特に食品表示は商品名から原材料、内容量、賞味期限、保存方法などを正確に記載するよう法律で定められています。
「仮に表示ミスや書き漏れなどがあると、それを口にした消費者のアレルギーを誘発するなど、大きなトラブルに発展することも考えられます。近年はカロリーや栄養面での配慮から、食品表示を注視する方も少なくありません。食品表示の記載に関しては慎重に慎重を重ねて…が原則です」
また工場の衛生管理においても、原料の搬入状況、商品の冷却や保存、設備の洗浄、製造ラインの清掃など全ての工程において、不純物の混入形跡はないか、不備やトラブルの要因はないか、入念に点検していきます。
「近年は法令も一層厳重になっています。自分はすでに中堅の域ですが、新たな検査技術などを習得するため、技術者研修やセミナーへ積極的に参加するようにしています」
舞台裏だけれど欠かせない存在。
「小さなミスも見逃しません」
和スイーツの舞台裏、おいしさの見張り番。そんな印象を受ける品質管理の仕事。上北さんはどんなところに手応えを感じるのでしょう。
「確かに商品の企画とか、販促や販売という目立つ仕事ではありません。でも日々、全国のスーパーの店先に弊社の商品が並ぶのは、自分たちが厳密な検査や細部までの点検をしているから。弊社の和スイーツが「おいしい」と評価されるのも、その商品の安全性が保たれているからです。逆にこの仕事がなければ、製造することも自信を持ってお客様に提供することもできないでしょう。舞台裏だけど不可欠な存在というところに、この仕事の手応えを感じています」
以前、自社の商品の計量表示が、わずかにズレていたことがあったとか。誰も気づかないようなわずかな誤差でしたが、上北さんは商品の製造をストップし表示を全て修正したといいます。
「小さな見過ごし、慣れや惰性がトラブルの元。この仕事は、厳しすぎるくらいがちょうどいいんです」
大切にしてるのは社員の
皆さんとの良好な関係づくり。
フラットでブレない姿勢、厳しい視点で品質管理に取り組む上北さん。ではこの仕事に必要なのは「黙々と働く姿勢」なのでしょうか?
「そう思われがちですが、他の仕事同様、大切なのは周囲との良好な関係づくり、そしてコミュニケーション能力です」
例えばクリーンな製造環境づくり。いくら上北さんが指導しても、他の社員の方々がそれを理解したり賛同してくれたりしなければ、実践には繋がりませんし、仮に社員が工場内に汚れやゴミを発見しても、良好な関係が築けていなければ報告を受けることもないでしょう。
「営業部、商品開発部、製造の現場。そこで働くスタッフと常に対話を交わし、課題はないか、以前の問題をどう解決したか、今後はどこを目指していくか、といったことを共有していくことが大切なんです」
仕事は舞台裏でも、コミュニケーションの現場では先頭に立つ。それが上北さんの仕事スタイル。
「この会社は人柄のいい方ばかり。日々周りに助けられているんですよ(笑)」
シゴトのフカボリ
菓子品質管理の一日
8:00
出勤、メールチェック
9:00
検査室でのデスクワーク、商品のラベル作り
10:00
工場巡回
12:00
細菌検査、商品のラベル作成、メール対応
13:30
昼休憩
14:30
営業開発との打ち合わせ、メール対応
16:00
商品の検査、工場巡回
18:00
退勤

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具

食品表示検定の参考書
表示面の内容で困ったり、わからないことがあった時に調べる参考書として常にデスクに置いています。 食品表示検定上級の資格取得に向けた勉強をする時にも使用します。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

課題解決も、目標達成も、社員間の良好なコミュニケーションがあってこそ。なにより、みんなで話し笑いあう環境って、いるだけで楽しいですよね。

株式会社とかち製菓

十勝の恵みを活かしながら、全国のショッピングモールや大手スーパー、コンビニ、さらに地元の道の駅などで提供される和スイーツを製造している。企業のPB商品の製造も多く、ヒットアイテムも多数。

住所
北海道河西郡中札内村中札内西2線241-15
TEL
0155-67-2481
URL
https://tokachiseika.com/

お仕事データ

製品の信頼性を守る

品質管理
品質管理とは
製品の品質を保ち、
お客様の信頼を支える重要な仕事。

品質管理は、工場で作られる製品の品質をチェックし、良いものだけをお客様にお届けするための仕事です。材料が工場に届いた時から、製品が完成して出荷されるまで、すべての工程で「基準通りにできているか」を確認します。もし不良品が見つかったら、なぜそうなったのかを調べて、同じ問題が起きないよう改善策を考えます。日々の業務には、材料の検査、作業中の品質チェック、完成品の最終確認、データの整理や報告書作成などがあります。また、工場で働く人たちに品質の大切さを教えたり、取引先の会社との打ち合わせに参加したりすることもあります。私たちが安心して使える製品を届けるために欠かせない、やりがいのある仕事です。

品質管理に向いてる人って?
細かいことに気づき、
根気よく問題を解決できる人。

品質管理では、ちょっとした変化や異常にも気づく観察力が大切です。「いつもと何か違うな」と感じる感性や、細かい作業にじっくり取り組める集中力がある人に向いています。「なんでこうなったんだろう?」と疑問に思ったことを調べるのが楽しいと感じる人や、パズルを解くような感覚で問題に取り組める人にもおすすめです。また不良品が出た時には、原因を一つずつ調べて解決策を考える必要があるため、あきらめずに最後まで取り組む粘り強さや、人とコミュニケーションする力も味方になります。はじめから完璧じゃなくても「良いものを作りたい」「お客様に安心して使ってもらいたい」という気持ちがあれば、経験を積みながら立派な品質管理担当者に成長できるでしょう。

品質管理になるためには

品質管理として働くために特別な資格は必要ありませんが、企業によっては理系の大学や専門学校で工学の知識を身に付けておくと有利です。ただし、他の業種出身者でも工場での経験を積みながら、実務を通じて必要な知識やスキルを習得することも十分可能です。多くの場合、製造業の会社に就職後、品質管理部門に配属されて先輩から仕事を教わりながら覚えていきます。品質管理の知識を証明する「品質管理検定(QC検定)」という資格があり、4級から1級まで設定されています。また、品質管理に関する国際的な基準である「ISO」の知識を学ぶ研修もあります。現場での製造経験を積んでから品質管理部門に移る人も多く、実際の作業を知っている品質管理担当者として重宝されます。

ワンポイントアドバイス
最新技術を使いこなして
より早く、より正確に!

最近の品質管理は、コンピューターやAIなどの最新技術を使って大きく変わってきています。センサーを使って24時間リアルタイムで製品をチェックしたり、AIが自動で不良品を見つけたり、大量のデータを分析して問題を予測したりできるようになりました。また、問題が起きた時に、その製品が「いつどこでどうやって作られたか」をすぐに調べられるシステムも普及しています。こうした新しい技術に対応するため、品質管理で働く人にもパソコンスキルやデータを読み解く力がますます必要になってきています。従来の品質管理の知識に加えて、新しい技術も積極的に学んでいくことで、より価値の高い品質管理のプロとして活躍できるでしょう。

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