上村  優菜さん
インタビュー公開日:2023.10.11

輝く笑顔と華麗な身のこなし
「雲の上の存在」に憧れた幼少期。
キツネの耳と尻尾を付けたキュートな衣装に、愛らしい振り付けのダンス。その姿に目が釘付けになったみなさんも多いのではないでしょうか。
今回、インタビューのマイクを向けたのは北海道日本ハムファイターズの公式チアチーム「ファイターズガール」に2023年から加入した上村優菜さんです。
上村さんのご両親は根っからのファイターズファン。幼いころから手を引かれて試合観戦に足を運び、小学校3年生からは球団の運営する「ファイターズダンスアカデミー」にも通っていたのだとか。
「眩しい笑顔にキレのあるダンス、教え子たちを見つめる優しいまざなし。小さな私にとってファイターズガールのお姉さん達はまるで雲の上の存在でした。試合にも一緒に出演させてもらって、観客席のお客様から送られた笑顔や歓声も記憶に残っています」とはいえ、将来もグラウンドに立つとは夢にも思っていなかったそう。なりたい将来は定まらなかったものの、勉強が好きだったことから「とりあえずいい大学に行って、両親を喜ばせたい」と熱心に勉強を続けます。その努力が実り、中学・高校では市内有数の進学校である札幌開成中等教育学校へ。さらに大学は東京の早稲田大学商学部へと進学しました。
就職活動にも全力投球で
憧れの企業へと内定。でも…
大学ではダンスアカデミーでの経験を生かし、映画「座頭市」のように、下駄を履いてタップダンスを踊る「ゲタップ」のサークルに所属した上村さん。こうした活動と共に就職活動にも早い段階から取り組み、大学4年生の春には当時憧れていた化粧品ブランドの営業職への内定も決定しました。
「でも、ふと立ち止まって考えると『いい大学』や『いい企業』に入ることが目的になってしまって、入ってからの夢や『自分のやりたいこと』は未だにわからないまま、就職に至ってしまったという意識が心のどこかにあったんです」
そんな時、お母さんとの何気ない電話での会話で「ファイターズガール」の話題に。当時は「きつねダンス」が大ヒットし、全国的にも話題となっていた時期でした。
「母から『今メンバーを募集しているみたいだよ』と聞いた瞬間、ライトで照らされた球場で歓声を浴びた光景や、憧れの存在だったお姉さん達の記憶が甦ってきたんです。『本当にやりたかったことはこれだ。受かっても受からなくても挑戦したい』と、迷わず応募を決めました」長い長い遠回りを経て、ようやく見つかった夢。上村さんのステージに向けた道のりがいよいよ動き出し始めます。
思わぬハプニングも追い風に
318人の中から合格を勝ち取る!
ファイターズガールのオーディションは書類審査を経て、二次審査ではダンスを、三次審査では面接での自己PRが求められます。上村さんは就職活動で活かした「企業研究」と「自己分析」をフル活用して戦略を練っていきました。その作戦とは上村さんの「きまじめ」なイメージからかけ離れたユニークなもの。
「何百人といる応募者の中から勝ち抜くには、審査員に鮮烈な記憶を残さなければなりません。流行のK-POPのダンスを踊る子が多いと踏んで、数年前に話題を呼んだ『バブリーダンス』を披露したんです。普段絶対にしない変顔や『おったまげー!』というセリフも交えて、まさに全力投球でした(笑)」そして三次審査では予想外の出来事が起きたと笑います。「突然『イベントのMCを披露してみてください』と振られて頭の中が混乱してしまい…。ふとアルバイト経験のあった商業施設を思い出して『本日は○○にお越しいただき…』と館内放送のアナウンスをしてしまったんです。でも、こうしたハプニングも味方に付けられたのかもしれません」
こうして318人の中から見事合格した上村さん。控え室で名前を読み上げられた瞬間は「信じられない」という思いで一杯だったのだとか。
日本初のボールパークで
360度の拍手と笑顔に包まれる。
化粧品ブランドの内定を辞退し、2023年1月からファイターズガールとして活動を始めた上村さん。3月に行われるオープン戦に向け、レッスンを重ねていきます。さらにダンスの他にも、エスコンフィールドHOKKAIDOの会場内を案内する「スタジアムツアーガイド」の模擬練習もしていきました。
「ご来場のお客様に選手のベンチや監督室、バッティングケージなど野球ファンにはたまらない場の数々をご案内するツアーですが、球場はまだ建設中。完成してお客様が入った姿を思い浮かべながら歩くルートやお客様へのアナウンスを練習してきました」同期たちと一緒にダンスの振り付けを覚え、アナウンスのセリフを暗記し、家に帰っても鏡に向かって練習を重ね…。あっという間に3月、選手たちと共にグラウンドに立つ日がやってきました。
「熱気に沸き立つ観客席からの笑顔。全方位から聞こえる大きな歓声。この球場が『お客様と近い球場』を意識して造られたという理由もありますが、子どものころよりもずっと間近に、みなさんの顔がハッキリと見えたことに驚きました。『きつねダンス』が始まると、子どもたちからお年寄りまで、私たちの動きに合わせて踊ってくれたことも嬉しかったです」
球場の外へと広がる活動のフィールド。
知られざる北海道の魅力も発信!
現在のファイターズガールの仕事は多岐にわたります。試合がない日は札幌市内や近郊の商業施設で踊ったり、「ファイターズスポーツキャラバン」として、選手たちと一緒に道内各地を回ったり、テレビに出演したり。その活動の幅は球場というフィールドを越え、外へ外へと広がっているのだといいます。
「キャラバンでは私は道東の津別町へ3日の間、みなさんと交流してきました。まちのみなさんから『遠い所まで来てくれてありがとう』『いつか行ってみたい』と嬉しいお言葉を頂いたり、幼稚園や保育園を訪ねて子どもたちと一緒に踊ったり。想像していた以上にいろいろなお仕事があって、今まで知らなかった北海道の魅力も発見しています」
上村さんには新たな目標も芽生え始めています。
「1つは球団公式チアチームとして、日本ハムファイターズやファイターズガールの魅力を発信すること。もう1つは、エスコンフィールドHOKKAIDOの専属ツアーガイドとして、自分の言葉でボールパーク、そして北海道の魅力を伝え、お客様に『また来たい』と思っていただくこと。そして最後が、遠回りして見つけた『ファイターズガール』という唯一無二の仕事を全力で楽しむことです」
シゴトのフカボリ
ファイターズガールの一日
9:30
出勤。ダンスの合わせ練習
11:00
開場。球場入り口でのお客様お出迎え
12:00
昼休憩
14:00
試合開始
イニング間にパフォーマンスを披露(1試合3〜4回)
17:00
試合終了とともに退勤(試合展開による)
勝利した場合は試合後ステージを行うケースも。
※デーゲームの場合
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

自分の人生は一度きり。周囲にどんなことを言われても、自分が挑戦したいと思ったことには勇気を持って挑戦してみましょう!強い願いを持って行動したら、きっと良い結果となって実を結んでくれるはずです。

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
ポンポン、衣装のカチューシャやしっぽ
忘れずに持ち歩いている「きつねダンス」用のカチューシャとしっぽ、「ジンギスカンダンス」用の「成吉思汗バリン」などのセットです。同じ品は公式グッズとしても販売しています!

株式会社ファイターズスポーツ&エンターテイメント

日本初のボールパーク「北海道ボールパークFビレッジ」と球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」の運営をはじめ、「ファイターズガール」のマネジメントや「ファイターズダンスアカデミー」の運営、プロ野球関連の興行業務を行っている。

住所
北海道北広島市Fビレッジ1番地
URL
https://www.hkdballpark.com/

お仕事データ

チームを支える縁の下の力持ち。
プロスポーツチーム職員
プロスポーツチーム職員とは
広報や営業、企画などの面から、
選手やファンをサポート!

野球やサッカー、バスケットボールなど、プロ選手が所属するプロスポーツチームの運営に携わるのがプロスポーツチーム職員。マスコミに対応する広報、スポンサーを開拓する営業、ファンの集客数アップにつながる企画、選手の契約管理、さらに経理といった幅広い業務を担います。選手の入団交渉や所属選手の処遇の変更など人事面もサポート。選手とお客様のために、チームの経営や試合を支える縁の下の力持ちです。

プロスポーツチーム職員に向いてる人って?
スポーツを楽しむ気持ちを抱き、
ファンのニーズを理解できる視点を持つ人。

第一にスポーツを楽しむ気持ちが必要。とはいえ、営業にはコミュニケーション能力やビジネスセンス、経理には金銭感覚が求められるなど持ち場によって適性は異なります。そのため、幅広いことに興味を持ち、自ら学べる積極性が高い人に向いているといえるでしょう。「どうしたら多くのお客様を楽しませることができるのか」を考えるには、ファンのニーズを理解できる視点も大切です。

プロスポーツチーム職員になるためには

プロスポーツチーム職員には特別な資格は求められません。大学や専門学校を卒業し、プロスポーツチームの運営企業に就職するのが一般的です。ただし、人気が高い職業である一方、採用人数が多いわけではないようなので、各チームのホームページなどの求人情報をこま目にチェックすると良いでしょう。種目やスポーツチームによってはインターンから職員の募集や斡旋をすることもあるようです。 

ワンポイントアドバイス
メディカルスタッフとして
プロスポーツチームに携わる道も。

プロスポーツチームの中には、スポーツトレーナーをはじめとするメディカルスタッフを抱えるところもあります。選手のコンディショニングや応急処置、リハビリ計画の作成などを担う責任のあるポジションであり、人数が多いわけではないので狭き門。スポーツトレーナー専門の学科を設ける専門学校や大学に進み、「アスレティックトレーナー」「柔道整復師」「鍼灸師」といった資格を取得すると有利です。

ほかにもあります、こんな仕事。