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送電線建設技術者_川尻 奏さん
インタビュー公開日:2025.03.27

高所で作業する写真を見て、
「カッコいい」とあこがれました。
私たちの家で普段使っている電気は、発電所で作られたものが、そのまま送られてきているワケではありません。発電所で作られた特別高圧の電気は、いくつかの変電所などを経由することで電圧が徐々に下げられ、家庭で使用できる電気まで変圧されているのです。
「発電所から変電所、変電所から変電所へと電気を送るのが送電線。この送電線を支えるのが、高くそびえ立つ鉄塔です」
こう教えてくれたのは株式会社ノールテックで働く川尻奏さん。高い鉄塔に登って送電線の張替えや点検をしたり、鉄塔自体の保守・建て替えなどを担う送電線建設技術者、通称「ラインマン」です。
「高校時代、ネットでいろいろな職種を調べている際にたまたま見つけたのがノールテックのホームページ。高所で作業するラインマンの姿に、カッコいいと憧れを抱いて応募しました」
川尻さんは、もともとスーツを着てルーチンワークをするような仕事ではなく、特殊な職業に就いてみたいと思っていたとか。「昔、東京スカイツリーに登って以来、とにかく高いところが好きなんです」と笑うことからも、まさにラインマンにピッタリの人材だったわけです。
滝川市の研修施設で、
基本動作を徹底トレーニング!
川尻さんはノールテックに入社後、まずは滝川市にある北海道電力の研修施設へ。ここには道内各地の新人ラインマンが集まり、練習用のミニ鉄塔を使って登り方や電線のまたがり方などを学ぶのだそうです。
「ミニ…とはいっても約5メートルくらいの高さなので、最初は下を見ると足が震えることもありました。安全帯や移動式ロープという墜落を防ぐ道具を取り付けるスピードも、鉄塔を昇り降りするコツも、経験が物を言う世界。研修施設では、まず基本動作を徹底的に身につけるトレーニングを積みました」
研修施設から戻ってきた後は、先輩方と一緒に現場に向かい、地上での作業からスタートしました。
「現場で使う工具の準備や資材の運搬、それらをロープを使い高所にいる先輩方に届けるのが主な役割です。こうしたアシスタント的な作業をするにも必要な教育を受け、作業にあたります。今後は先輩方が行っている作業に必要な資格も、計画的に取得させていただけるので、積極的に学んでいきたいと考えています」
最初のうちは鉄塔を
登り降りするだけで疲労困憊(笑)。
川尻さんが鉄塔に登るようになったのは入社から約3カ月程度が経ったころ。鉄塔に作られた鳥の巣を撤去する作業が「デビュー戦」だったと振り返ります。
「研修で基本動作を身につけられたとはいえ、最初は鉄塔を登り降りするだけでも体力を奪われました。この仕事は落下や感電といったリスクを徹底的に取り除く安全対策が施されている上、絶対に一人では作業せず、危険がないか相互監視しています。とはいえ、神経を張り巡らせて作業するので、緊張感も疲労につながっていたと思います」
さらに、市街地では下に歩行者がいないか常に確認したり、電線を移動するための宙乗り器というブランコのような乗り物もバランスを取るのが難しかったり、最初のうちは苦戦が続きます。
「ただ、先輩方は分からないことはないかと気にかけてくれたり、休憩中にはプライベートも含めた心配ごとにも耳を傾けてくれたり、和気あいあいと仕事を進められるのが安心できました」
キャタピラー式の運搬車や
バギーを使う楽しい瞬間も。
インタビューの時点で、川尻さんはまだ入社から1年未満。経験した作業は多くありませんが、鉄塔自体の組み立てや送電線の張替えなどにはすでに携わったと微笑みます。
「大きな部材をクレーンで吊り上げて組み立てていく作業はダイナミック。反面、チームで息を合わせて安全を確保する慎重さも必要です」
山岳地の鉄塔が現場の場合、クルマで入れない場所のケースも多く、まず現地の整地をするところからスタートすることもあるのだとか。その後も、手で工具や資材を運ぶため、ある程度の体力が求められると真剣な表情を浮かべます。
「ただ、時には資材をキャタピラー式の運搬車に乗せたり、冬の場合は先輩が運転するバギーの後ろに乗って現地まで向かったり、移動自体が楽しい瞬間もあります。それに、ラインマンは特殊な仕事ですし、高所作業中は電気というインフラを守る一人だという主人公のような感覚が湧き上がってくるんですよね。だから、大変なのではなく楽しいんです」
万一の際に緊急出動するのも、
ラインマンの使命です。
現在、川尻さんは先輩方と現場で作業しながら、より高い技術を身につけようと奮闘中。一つひとつの仕事のスピードはベテラン陣の足元にも及ばないため、少しでも経験値を積みたいと努力しています。
「ラインマンの仕事はチームワークが大切。幸い、当社の上司や先輩は非常に仲が良く、僕自身もみんなで力を合わせて一つの目標に向かっていくことを楽しみながら仕事をしています」
同社の仕事は「電気を停止している間」しか作業ができないケースが多いため、基本的に土日祝日は休みですが振替休暇となる場合もあります。屋外での作業のため、夜遅くまで残業をすることはほとんどありません。
「僕はまだ経験していませんが、暴風雪で鉄塔が倒れてしまったり、大きな地震で大規模な停電が起こったりした時は緊急出動する可能性もあります。万一の事態はないにこしたことはありませんが、電気というインフラを支えている以上、スピーディに復旧させるのがラインマンの使命です」
今後、トラックやショベルカーなどの資格までも取得し、「この会社でベテランになっていきたい」と目を輝かせます。川尻さんが送電線のスペシャリストとして活躍している限り、電気のある普通の暮らしは続いていくことでしょう。
シゴトのフカボリ
送電線建設技術者の一日
8:00
出勤・ミーティング
9:00
移動/鉄塔で作業
12:00
昼休み
13:00
鉄塔で作業
15:00
倉庫へ移動
16:00
道具の片付け・整理
17:00
退勤

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具

落下を防ぐ安全装置(昇降用リス)
登り降りの際や高所での水平移動時に、墜落事故を未然に防ぎます。僕らの命を守ってくれる道具の一つ!
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

仕事は楽しくないと長く続かないと思います。自分が本当にやりたいことをしっかりと考え、それが叶う会社を見極めるのが大切!

株式会社ノールテック

送電線の点検や張替え、鉄塔の修繕・建て替え、さらにスキーリフトなどの保守点検などに取り組む札幌市の企業。社員数は多くない一方、チームワークと機動力が北海道電力ネットワークからも高評価。

住所
北海道札幌市東区丘珠町524番地105
TEL
011-789-8633
URL
https://www.nordtec.co.jp/

お仕事データ

インフラを支える重要性!
送電線建設技術者
送電線建設技術者とは
電気を安全に効率的に供給するために
不可欠なインフラを支える役割。

送電線建設技術者は、電力や通信インフラを支えるため、電線や通信線の設置、保守、修理などに携わるスペシャリスト。仕事は主に屋外での作業が中心で、送電線が通る高い鉄塔や電柱に登ることが日常的に必要とされます。その業務は、電気が安全かつ効率的に家庭や企業に供給されることを確保することに直結。高所や悪天候下での業務も少なくなく、時には緊急時の迅速な復旧作業が求められることも。災害が発生した場合、送電線建設技術者は最前線で復旧作業を担うため、社会のインフラを支える重要な役割を担っています。

送電線建設技術者に向いてる人って?
安全を最優先に考える注意深さと
チームワークを大切にできる人。

送電設備の鉄塔は車が入れない場所にあるケースも多いため、ある程度の体力があり、高所に極端な苦手意識のない人が向いているでしょう。また、安全を最優先に考え、細かい指示にも注意深く従える注意力と、チームワークを大切にできるコミュニケーション能力も必要。緊急事態でも冷静に対応できる力も求められます。常に最新の技術や安全基準を学び続ける意欲も不可欠です。

送電線建設技術者になるためには

送電線建設技術者になるために特定の学歴や資格は必須ではありませんが、電気工学をはじめとする関連分野について学べる高校や専門学校、短大、大学を卒業すると就職後の理解が早いでしょう。送電工事会社などに入社後、企業が提供する研修を通じて、安全管理、特殊な機器の操作方法、緊急時の対応など、実務に必要な技術や知識を身につけられます。また、電気工事士や高所作業車操作技能講習など必要な資格取得のサポートをする会社も多いようです。

ワンポイントアドバイス
インフラの維持に欠かすことができず、
災害復旧などでもますます重要な存在に。

電力と通信は社会の基盤となるインフラであり、安定した電気供給と通信サービスの維持は、日常生活やビジネスにとって不可欠です。さらに、気候変動による自然災害の増加は、電力網への影響が大きく、迅速な復旧作業がますます重要になってきています。このような状況では、送電線建設技術者はただ電線を修理するだけでなく、災害に強い電力網を構築するための重要な役割を担うことになります。