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プロ野球球団職員_鍵谷 陽平さん
インタビュー公開日:2025.08.25

「絶対に諦めない」その情熱が拓いた
プロ野球選手への道。
北海道日本ハムファイターズの投手として活躍し、2025年から球団のベースボールオペレーション部の一員としてチームを支える鍵谷陽平さん。し烈なプロ野球人生を歩んできた彼が、今、新たな立場で野球とどのように向き合っているのか。エスコンフィールドの一室でお話を伺いました。
鍵谷さんが野球を始めたのは、5歳の時。その後小学校、中学校と七飯町で野球を続けますが、その当時は野球選手になりたいという思いはそれほど強くなかったとか。
「本格的に野球に打ち込み始めたのは、高校時代(北海高校)から。さらに中央大学に進学し、澤村拓一さん(現千葉ロッテマリーンズ/巨人やボストンレッドソックスにも在籍)を筆頭に高いレベルの選手たちと出会い、そこで初めてプロへの意識が芽生えたような気がします。とはいっても自分がそのレベルに達しているのか、当時はまだまだ手探りの状況でした」
決して平坦ではないプロへの道。挫折しそうになることもあったのでは?
「スランプに陥ったり、自分より上手い選手を目の当たりにしたり……落ち込むこともありましたが、それでも諦めることはなかったですね。誰より真剣に、常に真摯に、野球に取り組んでいるという思いが、絶対にプロになるという自信に繋がっていたのかもしれません」
未熟だった自分を大きく
成長させてくれたファイターズ。
鍵谷さんのプロ野球人生はおよそ13年。そのうち8年をファイターズで過ごしました。
「ファイターズに入団したからこそ、プロの世界で活躍できたと言っても過言ではないと思っています。僕は大学時代からストレートで勝負するタイプで、変化球が苦手な上にコントロールが定まらないという課題を抱えていました。でもファイターズはそういった弱点を補うのではなく、長所のストレートに磨きをかけるという指導をしてくれたんです。そのおかげで新人として一軍登板を果たすことができ、その後も11年間、投手として現役を続けることができました。先輩や後輩はもちろん、球団関係者、スタッフなど、関わる人たちの仲が良く、ファミリー感に満ちていたのもファイターズの特徴。巨人に在籍した期間もありましたが、それでも現役最後の一年をこの球団で過ごすことができて、本当に幸せだったと思います」
現在、鍵谷さんは同球団のベースボールオペレーション部の一員として新たなスタートを切っています。この部門は、データを集積するスコアラー、それを分析するアナリスト、選手育成に長けた経験者やコーチ、スカウトや採用担当など、各分野の専門家が効率的な連携を図りながら選手指導や球団運営に取り組む、現代ベースボールを象徴するセクションだとか。
「昨年(2024年)の中盤、引退を決意した頃から球団と話し合いを重ね、今年の一月からこの部門に正式配属となりました。世間では新たに誕生した部門のように扱われていますが、実はアナリストもコーチングスタッフも以前から在籍していたんです。CBO(チーフ・ベースボール・オフィサー)の栗山さんが某テレビ番組でこの部門の必要性を話されたことをきっかけに、注目を集めたようですね」
自ら考え行動するのが
ベースボールオペレーション部の役割。
新部門における鍵谷さんの仕事について尋ねると、「現時点では、自分がベースボールオペレーション部に所属していること以外に、細かく指示は受けていません」との答えが。
「ベースボールオペレーション部は、決まった役割に縛られるのではなく、それぞれが球団や選手のために何をすべきかを見つけ、自分の責任と目標に向かって活動していく部門なんです」
これまでの経験、自分ならではの体験があるからこそ、今後も力を発揮できる…鍵谷さんは現在の環境を前向きに捉えています。
「一軍の先発ピッチャーが残留練習をしている時に、怪我をしないように注意事項を伝えたり、コーチと選手の連絡役を買って出たり。さらにキャッチボールの相手、用具の整理、広報の手伝いなど、人手が足りないところにどんどんスポットで入っています。最近は自主練習の投手の投球データとアナリストやコーチの意見を照らし合わせ、そのピッチャーと一緒に『投球をどう組み立てるか』『バッターのどこを攻めていくか』などを話す機会も増え始めています」
データ分析が勝利の鍵を握るとも言われる勝負の世界。多彩なデータ提供は投手にとって大きなプラス要素になるかと思いきや、鍵谷さんはこう続けます。
「一方的にデータを押しつけられても相手は困惑するだけ。言ってほしいタイミング、今は聞けないタイミングなどを見計らいながら、効果的に伝達することを心がけています」
「自分のために」から「チームのために」を
優先する働き方へ
ベースボールオペレーション部への配属から半年。この間のご自身の取り組みに、何らかの手応えは感じているのでしょうか。
「現時点では、自分の行動が直接的に結果につながっているという実感は正直まだありません。でも、ファイターズがペナントレースの上位に立ち、選手たちが素晴らしい成績を収めている様子を見ると、ベースボールオペレーション部のメンバーや球団スタッフ、コーチ陣などの日々の努力の積み重ねがいい結果を生む土台となっていることを実感しています」
まさに縁の下の力持ち、陰の立役者ですね。
「自分もそうなるために、最近は試合後の投手サポートに注力しています。たとえ結果が悪くても『ダメだった』で終わらせるのではなく、『今回のピッチングはどうだったか』『良かったのはどこか』『何が原因で負けてしまったのか』をしっかり整理できれば、次に向かう選手たちの糧や知恵になるはずですからね」
お話を伺っていると、現役時代と現在では野球の見方が相当違うような…
「選手時代は『自分が活躍するために』という視点でしたが、今は『ファイターズが勝つために』『ファイターズが世界一愛される球団になるために』という視点で野球を見ています。立場が違うと全く別のスポーツのようにさえ見えてくるから不思議ですよね(笑)」
ファイターズを支える
さまざまな仕事。
エスコンフィールドの誕生やファイターズの躍進などもあり、道内でも野球に関わる仕事への注目度がアップしているようです。
「かつては限られた職業しか関われないスポーツでしたが、我々ベースボールオペレーションをはじめ、メーカーの用具開発、通訳や栄養士など、野球に関わる仕事は驚くほど増えていると思います。エスコンフィールドを見ても、この巨大な施設を運営する人たち、お客様のご案内や警備をする方々、飲食や販売スタッフ、バスやタクシーの運転手など、多種多様な職業の方が働いていて、その一人ひとりがファイターズを支え、ゲームを盛り上げてくれているんです」
選手や指導者じゃなくても、野球に関わる仕事ができるということですね。
「はい。肝心なのは野球を好きでいること。好きであれば、野球に関わる職業に就きたいと思うでしょうし、その仕事を長く続けたいとも考えるでしょう。何より好きであれば、働くこと自体も楽しくなるはずです。野球に限ったことではありませんが、若い人たちには、この『好き』という思いを大切にしてほしいですね」
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

どんな仕事も、人の「好き」という気持ちが支えています。ぜひあなたの「好き」を貫いてください!

株式会社北海道日本ハムファイターズ

パシフィック・リーグのプロ野球球団「北海道日本ハムファイターズ」を運営しています。フランチャイズを北海道に置き、エスコンフィールドHOKKAIDOが本拠地。2025年7月現在、監督は新庄剛志さんが務めています。

住所
北広島市Fビレッジ1番地
URL
https://www.fighters.co.jp/

お仕事データ

チームを支える縁の下の力持ち。
プロスポーツチーム職員
プロスポーツチーム職員とは
広報や営業、企画などの面から、
選手やファンをサポート!

野球やサッカー、バスケットボールなど、プロ選手が所属するプロスポーツチームの運営に携わるのがプロスポーツチーム職員。マスコミに対応する広報、スポンサーを開拓する営業、ファンの集客数アップにつながる企画、選手の契約管理、さらに経理といった幅広い業務を担います。選手の入団交渉や所属選手の処遇の変更など人事面もサポート。選手とお客様のために、チームの経営や試合を支える縁の下の力持ちです。

プロスポーツチーム職員に向いてる人って?
スポーツを楽しむ気持ちを抱き、
ファンのニーズを理解できる視点を持つ人。

第一にスポーツを楽しむ気持ちが必要。とはいえ、営業にはコミュニケーション能力やビジネスセンス、経理には金銭感覚が求められるなど持ち場によって適性は異なります。そのため、幅広いことに興味を持ち、自ら学べる積極性が高い人に向いているといえるでしょう。「どうしたら多くのお客様を楽しませることができるのか」を考えるには、ファンのニーズを理解できる視点も大切です。

プロスポーツチーム職員になるためには

プロスポーツチーム職員には特別な資格は求められません。大学や専門学校を卒業し、プロスポーツチームの運営企業に就職するのが一般的です。ただし、人気が高い職業である一方、採用人数が多いわけではないようなので、各チームのホームページなどの求人情報をこま目にチェックすると良いでしょう。種目やスポーツチームによってはインターンから職員の募集や斡旋をすることもあるようです。 

ワンポイントアドバイス
メディカルスタッフとして
プロスポーツチームに携わる道も。

プロスポーツチームの中には、スポーツトレーナーをはじめとするメディカルスタッフを抱えるところもあります。選手のコンディショニングや応急処置、リハビリ計画の作成などを担う責任のあるポジションであり、人数が多いわけではないので狭き門。スポーツトレーナー専門の学科を設ける専門学校や大学に進み、「アスレティックトレーナー」「柔道整復師」「鍼灸師」といった資格を取得すると有利です。