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グラウンドキーパー_加古 暁さん
インタビュー公開日:2025.08.28

海外の美しいフィールドを見て、
「芝」に興味が湧きました。
多くの人にとって、野球場やサッカー場のフィールドがきれいに整えられていることは当たり前かもしれません。けれど、試合が進むにつれて芝がめくれたり、土がえぐられたり、常にプレーしやすい状態が続くワケではありません。
「僕らグラウンドキーパーの役割は、ごくごく簡単にいうとフィールドを整備することです」
にこやかな笑顔で教えてくれたのは、東洋グリーン株式会社の加古暁さん。現在は北海道日本ハムファイターズのホームスタジアム「エスコンフィールドHOKKAIDO(以下、エスコンフィールド)」の芝や土を整備しています。ところで、グラウンドキーパーというニッチな仕事をどのように知ったのですか?
「小さいころからサッカーを続けていて、中学生のころにワールドカップアメリカ大会の試合をテレビ観戦していた時のこと。向こうの芝生は濃い緑と淡い緑の芝が美しい格子状を描いていました。そのきれいなビジュアルに、どんな芝生を使い、どんな育て方をしているんだろうと興味が湧いたんです」
加古さんは、このころからグラウンドキーパーをおぼろげに目指すようになり、将来は芝を扱うことを見据えて、東京農業大学で植物全般の知識を学びました。
ゴルフ場はプレーのしやすさ、
サッカー場は補修が大切です。
加古さんは大学卒業後、芝生の勉強をするためにゴルフ場に就職。芝生の手入れを筆頭に、水や肥料の散布、病気の発生時の治療など、基礎的な技術を学んでいきました。
「ゴルフ場は敷地が広く、多種多彩な芝生を扱えるのがメリット。先輩の指導のもと、芝刈り機の扱い方や芝生の種類に応じた手入れの仕方などを教わりました。例えば、病気が発生した部分の芝生を取り替えるにも、まず土を正常にしなければ再び発症するなど奥深い世界なんです」
3年ほどゴルフ場で働いた後、加古さんはサッカー場の芝生を管理する会社に転職。Jリーグチームのグラウンドを整備する仕事に携わりました。
「ゴルフ場はお客様がプレーしやすいように芝生を維持するのがメインでしたが、サッカー場はスパイクでフィールドを駆け回るため、試合後の傷み方が激しいのが特徴。そのため、補修のウエイトが大きくなります。また、ボールがスムーズに転がるように、試合前には水を撒くのも仕事の一つでした」
新球場のフィールドづくりに
設計段階から携わりました。
その後、加古さんは現在所属する東洋グリーンに転職。入社当初は工事に携わりましたが、野球場の工事を担当したことで、マウンドをはじめとする土を扱う魅力にも惹かれるようになりました。
「4年ほど前、エスコンフィールドのグラウンドを造成する話が舞い込みました。このプロジェクトは工事を担うだけではなく、その後の維持管理も請け負う仕事だったため、『芝と土』に携わり続けられることに面白みを感じたんです。担当者は公募制だったので、迷わず手を挙げました」
グラウンドの造成にあたり、加古さんは他球場のフィールドを管理している人に話を聞きに行ったり、時には海外視察に出かけたりした上で、設計段階から工事に携わったそうです。
「例えば、内野と外野で土を変えたり、マウンドはピッチャーの踏み込む力に負けないように硬い土を採用し、場所や役割によって硬さを変えています。芝生も気候や湿度、球場に屋根が付いているかどうかで選び方が異なるんです」
自身が描いた理想のフィールドを実際に形にした時は、「苦労も多かったですが、すべて吹き飛ぶほど手応えが大きかったです」と笑います。
さまざまな選手の意見を聞き、
改善を繰り返しています。
加古さんは新球場が無事に開業した後も、選手の意見を聞きながら少しずつフィールドをアップデートしています。
「これまでも芝生の柔らかさやボールの跳ね具合などのフィードバックがあった際に、指摘の部分を微調整してきました。使用感を伺って改善する…その繰り返しで、より野球のしやすいフィールドを目指しています」
当初、エスコンフィールドの芝生はすべて天然芝でしたが、最近はフィールドを使ったイベント開催にも耐えられるよう内野の部分を人工芝に変更しました。
「その際、アメリカで最近よく使われている特殊な人工芝を導入することになりました。一般的には人工芝の下にはゴムチップが入っていますが、この製品はヤシのチップと砂、クッションパッドの三層構造になっており、使用感はほぼ天然芝。クッション性を維持するために水も撒かなければいけないんです」
この特殊な人工芝は日本ではエスコンフィールドにしか使われていないとか(2025年取材現在)。「頻繁にイベントを開催する球場はそうないので、野球ファン以外にも多くの人にこの場所を楽しんでもらうことに貢献できるのもうれしいですね」と加古さんは表情を緩めます。
「プレーしやすい」「キレイ!」が
頑張るモチベーションになります!
加古さんは、スケジュールの管理や球団との打ち合わせ、各種イベントに向けた調整など、現在は現場で手を動かす機会が少なくなっています。とはいえ、土の準備やライン引き、マウンド整備、試合前のメンテナンスなどを指揮し、フィールドを良好に保つためには欠かせない存在です。
「例えば、試合中にモニターを見ていて、ピッチャーが投げにくそうにしているとマウンドの整備が甘かったのかと不安になりますし、バントのボールがイレギュラーバウンドしたらグラウンドの状態が悪いのかとハラハラします」
極端なことをいえば、グラウンドキーパーの仕事が試合の展開を左右することもあり得るはず。とりわけ、プロ野球選手が使うフィールドを整備するのはプレッシャーも大きいように思えますが、加古さんのハツラツとした表情は重圧ではなく「楽しい」が勝っているように映ります。
「選手から『プレーしやすくなった』といわれるのもうれしいですし、観客の方がフィールドを見て感動してくれるのもやりがいになります。そのリアクションがあるからこそ、仕事を苦しいと思ったことがありません。今後も、この球場の素晴らしい建物に負けないよう、フィールドも世界一と呼ばれるまで進化させていきたいですね」
シゴトのフカボリ
グラウンドキーパーの一日
10:00
出勤/芝刈り、芝生の状態チェック、土の準備、ライン引き
14:00
選手の練習中に休憩
17:30
試合前のメンテナンス
18:00
試合開始(3回、5回、7回にフィールド整備)
21:00
試合終了/マウンドや土の整備、芝の補修
24:00
退勤
※日により勤務時間は異なります。

シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

僕はグラウンドキーパーとして、昨日より今日、今日より明日と、常に上を目指して仕事に取り組んでいます。昨年より今年の自分のほうが知識も技術も高まっていることで、より良いフィールドを作っていけるはずです。いつも向上心を持っていると、仕事を楽しめると思います。

東洋グリーン株式会社
(北日本エンジニアリング部 北日本管理課)

スポーツイベントで利用されるスタジアムやゴルフ場、野球場などの芝生地の設計、施工、維持管理の他、コンサルティングや技術提供、学校や公園などの公共施設の緑化事業などを展開。スポーツや暮らしの表舞台を支える社会貢献度の高い企業。

住所
北海道北広島市Fビレッジ1番地 エスコンフィールドHOKKAIDO B1
URL
https://www.toyo-green.com/

お仕事データ

スポーツを支える芝のプロ!
グラウンドキーパー
グラウンドキーパーとは
スポーツ施設の芝や土を
最高のコンディションに。

グラウンドキーパーは、野球場、サッカー場、ゴルフ場、陸上競技場などのスポーツ施設において、芝生の管理や競技場の整備を専門に行う仕事です。芝生の種まき、施肥、刈り込み、病害虫防除、エアレーション(土壌の通気性改善)などの日常管理から、試合前後の競技面の整備、ラインの引き直し、競技エリアの凹凸や状態の調整まで、幅広い業務を担当。また、スプリンクラーシステムの操作や土壌分析、競技用機器のメンテナンスなども重要な業務の一部です。天候や季節に応じた芝生の管理計画を立て、最適な生育環境を維持することで、選手が最高のパフォーマンスを発揮できる舞台を作り上げます。

グラウンドキーパーに向いてる人って?
植物が好きで責任感が強く、
細部にこだわりを持てる人。

グラウンドキーパーには、まず植物や芝生に対する深い興味と知識が必要です。芝生は生き物なので、その状態を常に観察し、適切なケアを施す責任感も求められます。屋外での作業が中心となるため、暑さ寒さに負けない体力も大切です。また、選手や観客に最高の環境を提供するという使命感を持ち、細部まで妥協しない気質も重要。チームで作業することも多いため、協調性とコミュニケーション能力も必要です。さらに、機械操作や土壌分析など、技術的な知識への学習意欲も求められます。

グラウンドキーパーになるためには

グラウンドキーパーになるために必須の資格はありませんが、農業系の高校や専門学校、大学で芝草学、造園学、農学などを学ぶのが一般的です。また、日本芝草学会が認定する「芝草管理技術者」の資格を取得すると有利です。就職先としては、ゴルフ場やスポーツ施設管理会社、造園会社などがあります。未経験者でも採用されることがありますが、入社後は先輩から実践的な技術を学びながら経験を積んでいきます。企業によっては海外の有名スタジアムで研修を受ける機会もあり、国際的な技術を学ぶことも可能です。

ワンポイントアドバイス
スポーツの感動を陰で支える
誇りあるプロフェッショナルを目指そう!

グラウンドキーパーは、選手や観客からは見えにくい存在ですが、スポーツの感動的なシーンを陰で支える重要な役割を担っています。近年では、芝生管理の技術も高度化しており、土壌センサーやドローンを使った管理、環境に配慮した有機栽培技術なども導入されています。また、地球温暖化の影響で芝生管理も複雑化しているため、常に新しい知識と技術を習得し続ける姿勢が重要です。プロスポーツの世界では、芝生の状態が試合結果に大きく影響するため、グラウンドキーパーの技術力への期待も高まっています。自分の技術が直接スポーツの質を向上させることができる、やりがいのある仕事です。