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灯油配送ドライバー_深澤 元晶さん
インタビュー公開日:2025.09.26

同乗して業務内容を学んだ最初の冬。
独り立ちに向け、スタンバイOK!
全国的に記録的な猛暑となった2025年。北海道も暑い夏となりましたが、例年、暦が秋を迎えると朝晩はぐっと涼しくなります。そして、ある車両の姿を頻繁に見かけるようになると「いよいよ、冬か…」と少し気が引き締まります。それは、小型のタンクローリー。灯油配送の車です。
「私が入社したのは、昨年(2024年)11月のこと。ちょうど灯油配送の繁忙期が始まり、先輩方が忙しく働く姿に圧倒されつつ、憧れの仕事に就けた喜びを噛み締めていました」
うれしくてたまらないという気持ちが、その表情に溢れ出ている深澤元晶さん。勤務先は道南地区で灯油、ガス、電気の販売から給油所・整備工場まで幅広く手がける『ジェイエイ・エネルギー販売』。ひと冬、先輩が灯油配送を行うタンクローリーに横乗り(同乗)して業務の流れなどを学び、今冬から独り立ちするのだそうです。
「灯油タンクへの給油方法やホースの扱い、お客様とのやりとり。業務のノウハウをていねいに教えていただけたお陰で、特に不安はありません。もっとも、冬道なので運転は慎重にしなければと心しています」
ストーブが必要になる寒い季節を心待ちにしている、といえばちょっと語弊がありそうですが、オンシーズンへの気持ちも準備も、スタンバイOKです。
ずっと憧れていたドライバーの仕事に挑戦。
安定して無理なく働ける灯油配送を選択。
灯油配送では新人の深澤さんですが、社会人経験は14年目。しかも前職はまったくの異業種。アミューズメント業界(パチンコ店)で長く働き、ホールの責任者も務めてきました。
「和食の料理人だった父の姿に影響され、管理栄養士を目指して大学に進みますが、就職の際は…正直に言うと、給与水準の高さに惹かれてアミューズメント業界を選びました。でも、そのお陰で、人と接することが得意になりました」
札幌のパチンコ店で勤務していた深澤さんですが、お父さんの病気を機に地元函館に帰郷。その後も別のパチンコ店に約7年間勤務し、結婚もしました。そんな中で人生の転機が訪れます。
「きっかけは、母が亡くなったことでした。母の人生を思い、同時に自分のこれからの人生を思い描くなか、『今のままで悔いはないか』と考えたんです。そこで心に浮かんだのが、ずっと憧れていたドライバーの仕事でした」
ドライバーで、かつ、安定して長く働ける仕事。深澤さんが選んだのが、灯油配送の業務でした。ドライバーと聞くと多くの人がトラックを思い浮かべるのではないでしょうか。
「トラックも考えましたが、灯油配送は荷物の積み下ろしがなく、勤務時間も規則的。肉体的な負担が少ない点に魅力を感じました」
自動車を運ぶカーキャリー、街で見かけるゴミ収集車なども検討したという深澤さん、発想が自由、というかユニークです。
注文を受けて駆けつける単発配送を担当。
意外な農機具向けの軽油配送業務も。
ドライバーの仕事を目指し、パチンコ店を退職した直後、深澤さんは給油を行うために必要な「危険物取扱者乙種」、小型タンクローリーを運転するための「大型免許」を自主的に取得しています。まだ、採用が決まる前の話です。
「灯油販売を目標に置いていましたが、思い通りにいかなくてもどこかで役立つのではないかと考え、資格取得を敢行しました。首尾よく採用いただけて、ひと安心(笑)。ちょうど子どもが生まれた時期で、土日・祝日が完全に休めることも魅力でした」
フライング気味の前向きさで、希望する職場に席を得た深澤さん。同社では、契約しているお客様を回る「定期配送」と、注文を受けて給油に向かう「単発配送」を行っており、深澤さんの担当は単発配送。注文してくれるお客様はおおむね決まっており、その数約300軒。深澤さんが一手に配送を担っています。
「注文が集中する時には、定期配送のスタッフがヘルプに入ってくれるので過大な負担はありません。予想外だったのが軽油の配送。函館市亀田農業協同組合(JA亀田)から分社化した当社は、農家さん(組合員)の農機具向けの軽油配送も並行して行っているんです」
その数は100軒あまり。タンクローリーに灯油と軽油を混載して農家に届けます。地域の農業を間接的に支えていることにも意義を感じると、ちょっとクールに話す深澤さんです。
春以降はタンク洗浄、ストーブ整備なども。
配送の合間に技術を学び資格を目指す日々。
「冬の暖を届けて地域の方々の生活を守るという、社会貢献性の高さが灯油配送の仕事にはあります。『(雪のなかを)よく来てくれたね』、『ありがとう、助かったわ』と言葉をいただけると一層、やりがいを感じますね」
灯油の配送で走り回るのは秋の終わりからGW頃まで。農家への軽油の配送は春から秋口までと年間で絶妙に業務が分散されていますが、それよりも深澤さんが意外性を感じたのは、灯油配送が落ち着いた春先のこと。
「当社ではホームタンクの洗浄、老朽化したホームタンクの交換、ストーブの分解清掃なども自社で請け負っており、それも私がいる総務配送課の仕事なんです。灯油の配送が落ち着くと、それらの仕事がメインとなります」
現在は、注文配送の合間にホームタンクの洗浄や交換の現場で技術を学んでいるという深澤さん。ストーブの分解清掃も教えてもらいつつ、必要な資格の取得を目指しています。ストーブ販売や分解清掃を案内するキャンペーンチラシを配布するのも春先以降の仕事です。
「営業ではありませんが、灯油配送の際に『いつもご注文、ありがとうございます』、『またぜひ、ご依頼ください』と、しっかり挨拶するように心がけています」
パチンコ店のホールで長年、磨いたホスピタリティがキラリと光る瞬間です。
苦い灯油の味が、忘れられない思い出。
失敗を経てこそ、身につく感覚がある。
憧れが現実になったドライバーの仕事。先輩に運転させてもらった時には、乗用車とは異なる車両感覚、アイスバーンでの運転など、怖さも感じたもののすぐに慣れたと笑顔の深澤さんですが、業務で失敗もあったそうです。
「なかでも記憶に残っているのが、最初に犯したミス。お客様のホームタンクに給油中、灯油を溢れさせてしまったんです。頭から灯油をかぶり、目にも口にも入って。焦りましたが、『誰もが、一度は通る道だから』と先輩からフォローいただき、救われました。一緒にお客様にお詫びもしていただいて。苦い灯油の味は、まさにほろ苦い思い出です」
灯油の給油ノズルは、セルフスタンドのようなストッパーがなく、灯油タンクのゲージの動きだけが頼り。暗くなると見えにくいこともあり、こうした失敗を経てこそ、そのコツがつかめていくのだとか。
「職場の雰囲気がとにかく明るく、上司や先輩は魅力的な方ばかり。その背中を追いかけて知識を身につけ、会社に貢献できるようになっていくことが今の目標です。当社は灯油だけでなく、ガスや電気も扱っていますので、エネルギーに関する幅広い知識も積み上げていきたいですね」
地域を支える仕事に使命を抱き、前向きなオーラを出しながら、今日も街なかを黄色いタンクローリーで走り回る深澤さんです。
シゴトのフカボリ
灯油配送ドライバーの一日
8:20
出勤、業務内容の打ち合わせ、配送準備
9:00
灯油・軽油の配送に出発
12:00
昼休憩
13:00
灯油・軽油の配送、ホームタンク洗浄・交換、分解掃除を行うストーブの引き取り
16:00
翌日の灯油をタンクローリーに積み込み、日報作成
17:00
退勤

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具

防寒手袋
マイナス60℃でも柔らかく、ボア+起毛アクリルのインナーにより、冷たさをシャットアウトしてくれる冬に必須のアイテムです。グリップ力が強く、耐油性もあるので、安心して作業を行うことができます。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

長年勤務し、慣れ親しんだアミューズメント業界の仕事から異なる分野へ転身することには不安もありましたが、憧れていたドライバー職にチャレンジして大正解。失敗を恐れず前に進んで、よかったと思っています!

株式会社ジェイエイ・エネルギー販売

2006年、函館市亀田農業協同組合(JA亀田)の燃料部門を子会社化して設立。灯油・軽油、LPガス、電気の各エネルギーを扱い、地域の暮らしを支えています。

住所
北海道函館市昭和4丁目42番40号
TEL
0138-46-4815
URL
https://ja-energy.com

お仕事データ

女性もどんどん活躍中!
トラックドライバー
トラックドライバーとは
荷物を積み込み日本各地へ。
我が国の物流を支える原動力。

荷揚げ場所から荷物を積み込み、個人宅、会社、店舗などへ運搬、配送する仕事。一口にトラックドライバーといっても「軽トラ」と言われる小型トラックもあれば、「タンクローリー」や「ミキサー車」などの大型トラックまで車種はさまざま。必要な免許も普通自動車免許や中型自動車免許、大型自動車免許、けん引免許など乗り込むクルマによって変わります。大型は高速道路も含めて長距離を走ることが多く、小型は集配所から集配所へのルート配送といった近距離の運転をすることが多いようです。

トラックドライバーに向いてる人って?
安全に、時間通りに荷物を届ける集中力。

長時間運転することが好きで、何より安全に時間通りに荷物を目的地へと届けるために集中できることが大切。荷物の重さはさまざまですが、積み込みや荷下ろしなど体を動かすケースも多いので、体力に自信があると有利です。運転中はほとんどの場合一人ですが、集配所などではお客様や同業者への最低限のあいさつは必要。

トラックドライバーになるためには

トラックドライバーは基本的に学歴はさほど重視されません。物流会社や運送会社の採用試験に応募するのが近道です。とはいえ、中型トラックであれば「中型免許」、大型トラックであれば「大型免許」、さらにトレーラーなどを扱う場合には「けん引免許」が求められます。運ぶものによっては「危険物取扱者免許」や「毒物劇物取扱責任者免許」などの取得も必要。最近ではこのような資格は入社後に会社負担で取得させてくれる企業が多いようです。

※各種免許取得の条件については全日本トラック協会のホームページなどをご確認ください。http://www.jta.or.jp/index.html

ワンポイントアドバイス
国交省も応援する「トラガール」!?

トラック運送業界は男性のイメージが強く、他業種に比べて女性の進出が遅れていたと言われています。ところが、近年は、細やかな気配りやコミュニケーション能力、丁寧な運転など、女性ドライバーならではのスキルが大注目。国土交通省では、女性の活躍を促進するため、女性トラックドライバーを「トラガール」と名付け、さまざまな取り組みを進めています。

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