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企業法務_藤井 義隆さん
インタビュー公開日:2026.08.28

北海道にこだわったのは、
空手の師匠がいるから(笑)。
どんなビジネスにも法律は必ず関わってきます。契約書のチェックやトラブルの予防、新しい事業を始めるときの法的なサポートなど、会社が安心して活動できるように、見えないところで土台を支えているのが法務の仕事です。また、会社が適切に意思決定を行い、健全に運営されるための仕組みを「コーポレートガバナンス」といいます。
その仕組みを整え、会社全体を支えているのが、サツドラホールディングス株式会社(以下、サツドラHD)の、コーポレートガバナンスグループでゼネラルマネジャーを務める藤井義隆さんです。意外なことに、大学時代は法律とはまったくの無縁だったと笑います。「僕が学んでいたのは経済学が中心でしたし、正直、当時は目指すものも特にありませんでした。恥ずかしい話ですが、遊んでばかりいたんですよ(笑)」と率直に切り出します。
就職活動では、北海道を離れたくないという思いが第一。営業でバリバリ売り込むタイプではないと自己分析していたため、漠然と事務系の仕事を志望していたそうです。
「ちなみに北海道にこだわった理由の一つは空手。同じ師匠のもとで続けたかったからというのが大きかったですね」

法務部の必要性を、

理解してもらうのも役割でした。
新卒では食品卸の会社に入り、2年目から会社全体の予算を管理する部署へ。各地の事業所を回り、支社長クラスの人たちともやり取りする日々を送っていました。3年ほど勤めたころ、先にサツドラHDに転職した先輩から「今度、法務部を立ち上げるから、また一緒に仕事をしないか」と声がかかり、転職を決めます。
「先輩は法務ひと筋のベテランだったので、その方に実務を教わりました。例えば、会社が取引先と交わす契約書に不利な条件がまぎれていないか。これから付き合う相手が信頼できる会社かどうか。そういうことを一つずつ調べて確かめるやり方を、先輩の隣で教わっていきました」
新しくできた部署だけに、当初は周囲から「これは何をする部署なの?」と疑問の目を向けられることもあったそうです。
「これまで別の部署が確認していた契約書をこれからは法務がチェックしたり、取引相手を事前に調べたりする必要性を説明しながら、少しずつ理解を得ていきました」
「守り」と「攻め」
法務には、大きく2つの役割があります。
法務の仕事には『ガーディアン』と『パートナー』という2つの機能があると藤井さんは教えてくれました。
「まずは『守り』、ガーディアンの機能です。トラブルが起きてしまったときに対応する『臨床法務』と、事前調査などで未然に防ぐ『予防法務』。この2つで、会社の権利や財産、評判を守ります」
守りがあるからこそ、攻めが活きる。藤井さんは、もう一つの『パートナー』機能についても続けます。「法律の知識を使って事業発展を支えるのが『戦略法務』。新規事業で事業部の相談に乗りながら進めるのが理想ですね。その先の『経営法務』では法的な見解を踏まえて経営の意思決定に関わります。どんなビジネスにも、法律は必ずついてくる。だからこそ、会社の大事な判断の場に法務が関われるのは面白い」と藤井さんは語ります。
「最終的に意思決定をするのは人間なので、どうしても感情が入ったり、合理性だけでは割り切れなかったりします。法律はあくまで土台で、そのうえで『会社全体にとって何がいいのか』をいくつもの選択肢から見極めていく。そういう場面に一員として携われるのは、実はすごく面白いことなんですよ」
会社が大きくなるほど、

関わる人が増えていきます。
現在の藤井さんのメイン業務は、株主総会や取締役会の運営です。「会社の意思決定は社長がするのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、実はそう単純ではないといいます。
「会社が大きくなると、ステークホルダー(会社に関わる人や組織)がどんどん増えるんです。お客様、取引先、従業員、株主、自治体など、いろんな立場の人がいる中で、みんなにとっての最適な答えを一人で決めるのは難しいもの。だから、会社では案件に応じて取締役会など所定の機関で意思決定が行われます。その判断を支えるためにも、さまざまな立場から意見を出し合い、より良い結論を探っていくことが重要なのです。例えば株主総会では、実際に質問へ答えるのは役員。藤井さんたちはその役員を支える事務局として、会社のルールに沿った運営を整え、想定される質問への回答を準備。弁護士など外部の専門家との調整も担います。こちらを立てればあちらが立たず、という難しい局面の連続で、正解があるようでない世界だと藤井さんは言います。
「ただ、大切なのは、知識よりも対人関係のスキルだと思っています。知識はこれからAIでも学べますが、周りに協力してもらいながら物事を進める力は実務でこそ問われるんです」
変化に強い組織を、

つくっていきたい。
藤井さんの部署が担うもう一つの大きな役割が、災害対応です。震度5強以上の地震や津波警報などが発表された際には、時間を問わず対応にあたります。「地震が起きた際は、まず私から会社全体に第一報を出します。その後、役員への確認や、各店舗が営業できる状況にあるかといった情報収集を進めていきます」
災害対策本部は、状況に応じて役員の判断により設置されます。北海道を襲った大規模停電(ブラックアウト)では、店舗や本部機能にも大きな影響がありました。その経験を踏まえ、災害時の対応マニュアルを整備し、対策の見直しを進めてきたといいます。「何より優先するのは人命です。そのうえで、地域のお客さまに必要とされる店舗として、どうすればできるだけ早く営業を再開できるかを考えます。何かあったときに、一番開いていてほしいと思ってもらえるお店でありたいですから」
法務から総務、リスク管理まで担当領域を広げ、ゼネラルマネジャーとして組織を率いる藤井さん。「変化に柔軟でありたい」と、どんな状況にも対応できる組織づくりを目標に掲げます。売上のように数字で成果を示せる仕事ではありません。「それでも」と一呼吸置いた後、こう言葉を継ぎました。「会社がちゃんと存続できて、守れている。その実感が、この仕事のやりがいなんです」
シゴトのフカボリ
企業法務の一日
9:00
出勤
9:30
メール・チャット確認

10:00
経営ウィークリー会議(1週間の情報共有)

11:00
弁護士との打ち合わせ

12:00
昼休み

13:00
部署ミーティング①

15:00
部署ミーティング②

16:00
資料作成などの作業

18:00
退勤

シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

自分にできるかどうか悩むくらいなら、まずはやるべきことをしっかりとやるほうが経験値が増えるはず。目の前のことに一つずつ取り組んでいるうちに、未来は自然と開けていくと思います。

サツドラホールディングス株式会社

北海道を中心にドラッグストアや調剤薬局「サツドラ」を展開する企業グループを統括。グループでは、ドラッグストア事業を中核に、北海道の地域共通ポイントカード「EZOCA」を活用したマーケティングをはじめ、エネルギー、商品開発など、地域に根ざした多様な事業を展開しています。

住所
北海道札幌市東区北8条東4丁目1番20号
TEL
011-788-5166
URL
https://satudora-hd.co.jp/

お仕事データ

会社を守り、正しく導く。
法務・コーポレートガバナンス
法務・コーポレートガバナンスとは
法律の知識で、
企業の健全な経営を支える仕事。

法務とは、契約書のチェックや作成、取引先とのトラブル対応、社内からの法律相談への対応など、企業活動にまつわる法律の問題を専門的に扱う仕事。一方、コーポレートガバナンス(企業統治)は、会社が公正かつ健全に運営されるための仕組みづくりを担う役割です。株主や取引先、お客様、社会からの信頼を守るため、経営が暴走したり不正が起きたりしないよう、社内のルールや監視体制を整えていきます。近年ではコンプライアンス(法令遵守)の重要性がますます高まっており、企業の「守りの要」として欠かせない存在。法律の専門知識を生かしながら、会社全体を陰から支える、責任とやりがいの大きな職種です。

法務・コーポレートガバナンスに向いてる人って?
物事を筋道立てて考え、
誠実にルールと向き合える人。

法律や社内規則を扱う仕事のため、物事を論理的に、筋道を立てて考えることが得意な人に向いています。契約書や資料を細部まで丁寧に読み込む注意力や、地道な作業をコツコツ続けられる根気強さも大切。また、社内のさまざまな部署や社外の関係者と関わるため、コミュニケーション能力も欠かせません。会社のルールや社会の決まりに対して誠実に向き合い、「正しいことを正しく行う」という意識を持っている人にはうってつけ。日々変化する法律やルールを学び続ける、探究心のあるタイプにも適した職種です。

法務・コーポレートガバナンスになるためには

法務・コーポレートガバナンスの仕事に就くために、必須の資格はありません。ただし、大学の法学部などで法律の基礎知識を学んでおくと、就職の際に大きな強みとなります。一般的には大学卒業後、企業の法務部門に就職して経験を積んでいくルートが主流。専門性をさらに高めたい場合は、「ビジネス実務法務検定」などの資格取得を目指すのもオススメです。より高度な専門家を目指すなら、弁護士資格を取得して企業内弁護士(インハウスローヤー)として活躍する道も。まずは法律に興味を持ち、学ぶ姿勢を身に付けることが第一歩といえるでしょう。

ワンポイントアドバイス
コンプライアンス重視の時代に、
法務人材のニーズは高まる一方!

企業の不祥事が大きなニュースになる時代、社会は企業に対してこれまで以上に高い倫理観と透明性を求めるようになっています。そのため、コンプライアンスやコーポレートガバナンスを担う法務人材の重要性は年々高まる一方です。さらに、ビジネスのグローバル化やデジタル化が進み、海外の法律やデータ保護、AIをめぐる新しいルールなど、法務が扱う領域はますます広がっています。専門知識を武器に活躍できる場面が増えており、将来性の高い職種の一つ。会社の信頼を守る「縁の下の力持ち」として、長く必要とされる仕事といえるでしょう。