宇山 生朗さん
インタビュー公開日:2020.08.24

子どものころ見た映画に衝撃。
環境一筋に学び、就職しました。
東京の大都会で育った宇山生朗さんが、環境問題に関心を持ったのは小学生のころから。「映画『風の谷のナウシカ』を見て興味を持ち、その後漫画を全巻読みました」作品では人間社会が生んだ土壌汚染のことや、自然が土壌汚染を浄化して人間の生活を守ってくれていることが描かれ、衝撃を受けたといいます。
それから高校、大学、大学院と環境化学を一筋に学び、総合建設業の会社に就職。東京での大規模な土壌汚染対策工事や各地方の原子力発電所関連工事と『世間の関心を集める場所』での調査、工事の設計や施工に携わりました。
建設業の工事を進める立場から、
地域の合意形成を助ける立場へ。
そこで宇山さんが触れたのは地元で生活する人たちでした。「地元の反対派の方たちとの協議に参加したりしましたが、話は限りなく平行線でした。どうしたら地域合意をしながら最適解を見つけて、さらにそれを着実に実行していけるか。それまでの建設業で工事を推し進める立場から、環境政策についてそれぞれの間に立って調整していく中間支援の立場に回りたいと思うようになったんです」
さらに、宇山さんの心に残っていたのは大学院時代にも研究に訪れ、建設会社での仕事でも住んでいた北海道でした。環境問題への関心と、自然豊かな北海道で暮らしたいという思いが満たせる職場を探し、運良く現在勤務する北海道環境財団の募集を見つけ、転職を決めたのです。
広い北海道を回り、普及啓発。
地域密着の難しさを知りました。
北海道環境財団で携わったのは、気候変動対策に関して多くの人が関心を持ち行動してもらうための普及啓発や地域調査、話し合いの場づくり、情報発信です。市町村に密着し行政や地域の人と話し合い、環境省等に助成申請をして事業を行います。
「普及啓発をするにしても、ただ単に催しを開催するのではなく、地域の人たちとの仲間づくりに繋げたり、行動変容を促すものであったりと、目的に応じた仕掛けを施さなければ意味あるものにはなりません。手段の目的化は避ける必要がありますね」
最初のうちは思いだけで突っ走っていたという宇山さんですが、一緒に活動した地域の協力者に「うちのマチのことをわかってやってるの?」と聞かれてハッとしたといいます。「北海道はとても広く、市町村も多いので地域によって課題や進め方が全く違うということも身をもって知りました」
道庁への出向で、政策の動きを学び
部署間連携で新たな可能性も。
そして、2019年度からは北海道庁環境生活部との人事交流として、2年間限定で出向することに。財団で携わっていたような地域に向けた普及啓発や情報発信のほか、施策立案など広く環境政策に関する業務を担当しています。
「環境の仕事は領域が広く、多岐にわたることから忙しい日々ですが、地域の拠点である行政の政策ができるプロセスを経験できれば、今後も連携がしやすくなると思って出向を希望しました」
今は、世界的にSDGs(持続可能な開発目標)の実現に向け、環境とともに経済、社会の課題を同時に考えていく取り組みが進められています。そのため、今後は他部署や事業者など多くの主体との連携を実現すべく、道庁内で共感できる人を増やしています。
仕事の枠にとどまらず活動を推進。
人との出会いが人生を変えました。
さらに仕事の範囲にとどまらず、道庁や他自治体、民間団体などの職員有志で実践型の勉強会を開いたり、国際的なコミュニティーに所属して自らが講演活動をしたりといった活動を、プライベートでも行っています。
やはりその情熱は子どものころから?「財団に就職する時までは、そんなことは無かったです。でも、財団に入って、職員や地域の人で仕事という枠組みを超えて動いている人たちに出会い、自分もスイッチが入りましたね。そのように気づきを得られるチャンスがあるので、いろいろなところに出ていって、熱意を持つ人たちと会うのは良いと思います」
環境問題への取り組みについて伺うと、「まだ進んでいる手応えはない」といいますが、「これまで関わってきた人たちに恩返しできるように、今後も前向きにいきたいです」
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具

相棒のノートパソコン
軽いノートパソコンでフットワークよく動けます。さまざまな地域の方とのネットワークや、講演の資料などの情報もここに詰まっています。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

誰もが変わらずに守りたいものを持っていると思います。友情や愛、北海道の豊かな環境もそう。守りたいからこそ、時代に合わせて自分たちの営みや生活をどう変えていくかを意識したいですね。

公益財団法人北海道環境財団
/北海道環境サポートセンター

持続可能な北海道を目指し、人や地域をつなぎ、道民・民間による自発的な環境保全活動や環境教育を促進すべく、活動支援を行う非営利団体です。

住所
北海道札幌市中央区北4条西4丁目 伊藤・加藤ビル4階
TEL
011-218-7811
URL
http://www.heco-spc.or.jp/index.html

お仕事データ

営利を第一にしないシゴト。
団体職員
団体職員とは
公益性の高い事業に携わり、
広く社会に貢献する職業。

団体職員という名称は法律で定められた定義はなく、「営利を第一に追求せず」に公共のための事業や公益性の高い仕事に従事する人を指す通称。一般には企業や公務員以外の非営利団体で働く人をいいます。活躍の場は芸術施設を運営する財団法人や環境整備を担う団体、防災コミュニティネットワークなどのNPO法人、JAや生活協同組合など、幅広い組織。総務や広報、施設運営など所属団体によって仕事内容はさまざまですが、いずれも広く社会に貢献するという手応えを得られます。

団体職員に向いてる人って?
社会のために働く意欲があり、
細かな確認作業や接客が得意な人。

団体職員の多くが公益事業に関わる仕事をすることになるため、人や社会のために働きたいという意欲がある人に向いています。また、団体職員が担う仕事には、事務作業も少なくないため、PCの操作や確認作業が得意な人は馴染みやすいでしょう。所属によっては接客をすることもあり、コミュニケーション能力のある親しみやすい人柄が求められることもあります。

団体職員になるためには

団体職員になるためには、一般企業と同じように、高校や専門学校、短大、大学などを卒業後、求人情報を出している団体に応募するのが一般的です。団体の中には、学歴や年齢制限、特別なスキルや資格、ある程度の職務経歴を求められるケースもあるので、まずは就職を希望する団体の募集状況をチェックしてみましょう。

ワンポイントアドバイス
景気に左右されにくい、
安定性がある仕事!

団体職員は「準公務員」ともいわれ、事業の公共性が高いという点は公務員と共通しています。そのため、景気の悪化などの影響を受けにくく、安定して働くことができるところもメリットです。非営利組織や団体は日本全国にあるので、仕事に安定性を求める場合は選択肢の一つとしてオススメできます。