三浦 航志さん
インタビュー公開日:2024.11.12

社会生活のトラブルを予防する、
弁護士の仕事はサービス業!?
「事件」や「紛争」について、法律の専門家として適切な予防方法や対処方法、解決策をアドバイスする「社会生活上の医師」。病気の予防が大事なのと同じように、社会生活での争いごとを未然に防ぐ活動は、弁護士の重要な役割の一つ。日本弁護士連合会では、『弁護士』の役割をこんな言葉で説明しています。
「私が勤務する札幌ポラリス法律事務所では交通事故に関する案件を多く扱っているほか、損害賠償、不動産に関する争いごと、企業のトラブル、相続など日常的に起こる問題など幅広い分野の法律的なサポートを行っています」
そう話すのは弁護士の三浦航志さん。がっしりとした体型、ちょっと怖そうかも…という心配は、話し始めた途端、消えていました。ゆっくりと、正確に、柔らかな口調で話すようすには、安心感を覚えます。
「法律を扱うということで、堅苦しいイメージがあるかもしれませんが、弁護士はいわばサービス業。お客さま(依頼者)とのコミュニケーションが、何よりも大切なんです」
弁護士はサービス業!? その言葉にはちょっと驚きましたが、接客・販売業だけでなく、病院などでもサービスの質が求められる今、〝社会生活上の医師〟である弁護士も、お客さま第一。なるほどと、いきなり大発見です。
困っている人の助けになりたい。
自分自身の体験から弁護士の道へ。
弁護士になるために必須となるのが司法試験への合格。この難関試験を突破するためには、早い段階からの準備が必要とされます。
「確かにそうですが、私の場合、高校時代まで弁護士という仕事を意識することはありませんでした。大学は法学部に進みましたが、それは、理論的にものごとを考える法律の分野に興味があったこと、そして法学部が就職の際、幅広い業種で採用対象となると聞いたからなんです」
そう言って、少し恥ずかしそうな表情の三浦さんですが、大学に入って間もなく、弁護士を目指すことになります。それは、ある個人的なできごとがきっかけでした。
「東京で一人暮らしを始めてすぐに、部屋を訪ねてきたある訪問販売を断り切れず、ハンコを押してしまったんです。一定期間内であれば契約を取り消せるクーリングオフ制度を知って解約したのですが、同じように困っているケースはきっとあるはず。そういう人の助けになりたいと思い、弁護士を志しました」
法律の知識があれば、身を守ることができる。自分自身がこれから生きていくうえでも助けになることを実感したのだと三浦さん。法科大学院に進んで〝食事と寝る時以外は勉強〟という努力を続け、大学院修了の年にみごと、司法試験に合格します。
専門の実習を経て初めて弁護士に。
事務所代表との相性も大切な世界。
「司法試験に合格しても、すぐに弁護士としての資格を得られるわけではなく、およそ1年間にわたり、司法修習(しほうしゅうしゅう)という実務実習のようなものを受ける必要があります。法曹三者の仕事を経験することが、その目的です」
法曹三者というのは、裁判官、検察官、弁護士のこと。裁判に登場する〝キャスト〟全員の仕事を体験するというわけです。
「私は当初から、弁護士一択でしたが、司法修習は、自分が進みたい道を見極める機会でもあります。宮城県仙台市で司法修習を受け、弁護士登録をして今の事務所に入所しています」
三浦さんは函館市出身ですが、大学院時代に札幌の法律事務所でインターンとして働いた際に、住みやすいと感じたこの街で活躍したいと思うようになったのだそうです。
「弁護士も、他の仕事のように就職活動を経て、所属する法律事務所を決めます。自分が携わってみたい案件を多く扱っているかどうかや、経営者との相性も意外と重要なんですよ」
代表弁護士=ボスに親しみやすさを感じたことが、今の事務所への入所を決めた一番の理由と三浦さん。法律という絶対的なものを扱うため、あまり個性は必要のない世界のようにも見えますが、そんな人間味があるというのが、今回の取材で得た第二の発見でした。
お客さまのニーズに沿った解決策を探す。
対応を評価されることが何よりうれしい。
新入社員として会社に入ると、研修や教育を受け、次に先輩・上司の指導を受けながら仕事に慣れていく、というのが一般的です。一から実務を覚えていく時間が必要です。ところが、弁護士はそこが根本的に違うと三浦さん。
「まず、法律事務所には一般企業のような役職というものがありません。ベテランでも1年目でも、〝先生〟と呼ばれ、それぞれが一人前の弁護士として、お客さまの法律相談などに応じていくんです」
司法修習はあくまでも学びの場。それ以前は学生で、社会人経験もなし。それでも、相談者にとっては頼れる法律家です。不安を与えないよう、的確なコミュニケーションを図ることに、最初は苦労したと打ち明けます。
「たとえば法的にはお客さまの主張が認められないという場合でも、〝それは無理ですね〟といった答え方はダメ。少しでもニーズに応えられる解決策を探し、提案します。そこが大変でもあり大事なところだと、弁護士になって7年目の今、改めて実感しています」
依頼者の気持ちを大切にしながら対応した結果、〝また、困り事が起こったので相談にのって欲しい〟と指名で再依頼を受けることもあるそうです。「前回の対応がうれしくて、心に残ったから。そんなふうに評価され、頼られることが、何よりも嬉しい」と話します。
弁護士を、もっと身近な存在に。
そのための信頼づくりを意識する。
「交通事故もそうですが、依頼者と相手の方の主張が異なることがあります。その時に大切なのは、お互いの考えや思いを正面からしっかり聞くこと。法律的にはこうだからと、異なる考えを拒絶するようなコミュニケーションでは、弁護士の仕事はうまくいきません」
双方の主張を尊重しながら、最大限の対応をしていけば、たとえ裁判で負けたとしても、納得してもらえるし、すっきりしたと喜んでもらえることもある。弁護士をしていて良かったと思える瞬間だそうです。そんな三浦さんは、弁護士会の委員会活動として、中高生向けに法教育の授業も行っています。子どもたちに裁判官、検察官、弁護士に扮してもらい、刑事事件の模擬裁判を行い、有罪か無罪を判断してもらうという授業ですが、肝心なのはコミュニケーションを学ぶことなのだとか。
「有罪と考える人もいれば、無罪と判断する人も出てきます。自分と異なる考えの人としっかりと議論し、考えを深める。そうした、社会で生きていく上で有益なコミュニケーションを経験してもらうことが大切だと考えています」
弁護士をもっと身近な存在として知ってほしい。そのためにも、日々の一つひとつの対応に気を配り、信頼を得たいと話す三浦さん。バリバリ働く第一線の弁護士さんですが、基本的に残業はしません。定時で帰り、子どもをお風呂に入れ、寝かしつける良きお父さんでもありました。
シゴトのフカボリ
弁護士の一日
9:00
直行して、旭川行きのJR特急に乗車
10:30
旭川のお客さまの法務相談
12:00
札幌行き特急に乗車。車内で昼食
13:30
札幌着、事務所に立ち寄る
14:30
札幌地方裁判所で裁判
15:30
別件の裁判
16:30
電話による法律相談、裁判を準備している案件の進捗報告
17:30
帰宅
*帰宅後、子どもを寝かしつけた後で、裁判所に提出する書類作成などを行うことも。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

お客さまから相談を受けた時点で、裁判をしても勝てないと見通しがつくことがあります。結果は見えていても、見通しを説明した上で納得感が得られるよう一緒にベストを尽くすことが大切なのです。

弁護士法人 札幌ポラリス法律事務所

2012年に、瀧澤啓良弁護士が開設。迅速に対応し、依頼者のニーズに応えることをモットーに、交通事故から刑事事件まで、幅広い相談に応じています。

住所
北海道札幌市中央区北1条西6丁目2番地 損保ジャパン札幌ビル7階
TEL
011-223-0707
URL
https://polaris-lawoffice.com

お仕事データ

法律を駆使して問題解決
弁護士
弁護士とは
高度な法律の知識を武器に、
人々の権利や利益を守る仕事。

法律の専門家として人々の権利や利益を守り、話し合いや交渉、法的手続きによって問題を解決する仕事。金銭の貸し借りや離婚、相続などの「民事事件」では、依頼人の代理人となって双方の主張を聞き、解決の糸口を探ります。話し合いで解決できない場合は証拠をそろえた上、法廷で争うことも。窃盗、傷害、殺人など警察が介入する「刑事事件」では被疑者の弁護人として被疑者の権利を守るために活動します。被害者との間で示談(話し合いで解決すること)になることもありますが、無罪や刑罰の軽減を勝ち取るために法廷で争うこともあります。

弁護士に向いてる人って?
勉強熱心で根気強く、
依頼者のためにまっすぐ進める人。

司法試験に合格するには勉強熱心であることは大前提。何より、人の権利や正義のためにまっすぐに突き進める誠実さが大切な素養です。また、正しい判断ができる冷静さに加え、調査やデータ収集、案件にまつわる専門知識の吸収など根気強さも持っていると、この仕事により向いていると考えられます。さらに、駆け引きのうまさ、依頼者や裁判官を納得させられる説得力も身につけられるとなお良いでしょう。

弁護士になるためには

弁護士への道のりとして一般的なのは大学の法学部へ進学すること。卒業後は法科大学院(ロースクール)に進学し、修了すると司法試験の受験資格が得られます。司法試験は受験資格を得てから5年以内でなければ受けられないので要注意。合格後は約1年間の司法修習を受け、司法修習生考試に合格した後にようやく弁護士として登録できます。法科大学院に進学しなくても、司法試験予備試験に合格して司法試験の受験資格を得るというルートもあります。

※司法試験について詳しくは法務省のホームページをご確認ください。
http://www.moj.go.jp/index.html

ワンポイントアドバイス
広がっている弁護士の活躍場所。

弁護士の代表的な就職先は法律事務所。とはいえ、大企業を顧客とする企業法務中心の大手事務所もあれば、地域に根ざして身近な民事事件を中心に扱う事務所もあり、傾向や得意分野もさまざまです。最近は事務所にスペースを借り、担当した案件ごとに報酬をもらうスタイルも増えています。また、会社の法務部などで活躍するケースも増加中。弁護士の就職の仕方や活躍の場は広がっているといえるでしょう。