石若 理さん
インタビュー公開日:2020.02.19

ダムや河川の知識を
生かせる公務員を目指しました。
ここは深川市の鷹泊地区。鷹泊自然公園のすぐそばに、北海道企業局が管理する鷹泊ダムと発電所があります。取材に応じてくれたのは、施設の補修や管理に携わる鷹泊発電管理事務所土木係の石若理さん。
「警察官の父から影響を受けたこともあり、高校生のころには安定的な公務員を目指すようになりました。大学ではダムや河川に係わる土木工学を学んだことから、その知識を生かせる組織を目指そうと考えたんです」
石若さんが選んだ職場は北海道企業局。札幌市、深川市、夕張市、苫小牧市、登別市を拠点に電気と工業用水道を企業に送ることが主な仕事だといいます。一般的な北海道の職員とはまた違ったイメージの公務員ですね。
「僕も入庁するまではまったく想像がつかず・・・(笑)」
ちなみに、北海道職員採用試験のエントリーで企業局を選ぶ他、電気職に関しては独自の試験も行っているそうです。
工業用水は製造業からの
ニーズが意外と高いんです。
石若さんはまず札幌に勤務し、そこで北海道企業局のあらましや簡単な設計書の作成などを約2ヵ月間にわたって教わりました。その後は登別市の室蘭地区工業用水道管理事務所に配属され、工業用水道事業に携わったと振り返ります。
「製鉄所や工場では鉄を冷やすにも水道水を使うと費用がかさみますが、僕らの手がける工業用水は水道水と比べて安価であるため、ものづくり企業から意外とニーズが高いんです」
室蘭地区工業用水道管理事務所では地面に埋設した管を通して工業用水を送っています。石若さんは、その管を流れる水の量の計算や、契約企業の使用水量を確認したり、施設補修の設計書を作成するなど、さまざまな仕事に携わりました。
「先輩方はわからないことを尋ねると、快く答えてくれる人ばかりです。困っていたら声をかけてもらうなど、新人に目配りしながらじっくり育ててくれる雰囲気を感じました」
ダムの定期観測等を行い、
施設の安全管理に努めています。
北海道企業局では3~5年ごとに転勤があるのが通例。石若さんも2年ほど前に深川市の鷹泊発電管理事務所に異動しました。ここでは鷹泊ダムの水位を活用して発電し、現在は北海道電力に販売しています。
「今年度で北海道電力さんへ電気を送る契約が終わりますので、今後は他の企業にも電気を売れることになりました。そのため札幌に専用の発電制御室を設置したこともあり、今後は人手が必要になると思います」
石若さんの仕事はダムや施設の管理、補修がメイン。例えば、ダムの管理では測量など様々な定期観測を行い、過去のデータと比較して大きな変化がないか、変化があればその原因を調べたりといった作業を行っています。
「こうした業務の他、補修工事を行うための設計書を作成したり、国などの関係機関に提出する資料を作成するなど、事務作業も少なくありません」
台風や大雨の際には、
事務所に詰めることもあります。
電気事業や工業用水道事業に欠かせないのがダムの存在。ところで、一般にイメージされる治水を目的としたダムとは役割が異なるのでしょうか?
「企業局で運営しているダムは、一般企業に工業用水を送ったり、発電のための水を貯めておく利水ダムです」
とはいえ、台風や大雨、雪融けの際には多くの水がダムに流れ込むためダム上流の雨量や流量からダムに流れ込む量を予測したり、実際の流入量から操作規定に沿って放流を行っているとか。
普段は残業も少なく、夜間や土日は受託者が管理にあたりますが、台風や大雨による出水が見込まれる時は「その日の雨雲の動きやダムへの流入量の状況によっては、夜通し事務所に詰めて対応にあたることもあります」と表情を引き締めます。
何事もなく業務を進めることが、
北海道に貢献することなんです。
北海道企業局では、道民とダイレクトに関わる機会はあまり多くないとか。石若さんは仕事のどこにモチベーションを感じているのでしょう?
「例えば、工業用水に万一のトラブルが発生してしまうと、一般企業のビジネスを止めてしまう恐れもあります。僕らは『何事もなく』業務を進めることで、北海道経済や道民の皆さんの暮らしを縁の下で支える存在でもあるんです。先の北海道胆振東部地震の際は、鷹泊発電管理事務所でもできる限り電力を供給できるように努めました」
一方、室蘭地区工業用水道管理事務所に勤務していたころは、高校生に向けたダム見学のアテンドをしたり、近隣の公園のお祭りにブースを出したり、道民とふれ合うこともあったとか。
「草の根的な取り組みかもしれませんが、こうした小さな活動からダムや河川が好きな人を増やし、いずれ企業局の仕事に就いてもらえるとうれしいですね」と笑顔を見せてくれました。
シゴトのフカボリ
北海道企業局職員の一日
8:45
出勤
8:50
ダムの定期観測
10:30
設計書作成
11:00
工事関係者との打合せ
12:00
昼休み
13:00
関係機関への提出資料作成
15:00
工事内容について係内打合せ
15:30
ダム管理資料作成
17:30
退勤
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
管理の支援をしてくれる!
ダムを管理していく上で不可欠なのが写真の「諸量演算処理装置(通称 ダムコン)」。上流の雨量・流量やダムへの流入量など水象状況の計算や記録の他、ゲート操作を含む管理や操作の支援を行うコンピュータです。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

北海道企業局の発電管理事務所では、ダムに水を貯めて水力発電によって電気を生み出すことが仕事。僕らが業務を滞りなく進めることによって、初めて企業のビジネスに貢献できるといえます。

北海道企業局

環境にやさしいクリーンエネルギーと良質な工業用水を供給。電気事業では、鷹泊、ポンテシオ、岩尾内、シューパロ、清水沢、沼の沢取水堰、滝の上、滝下、川端の9発電所を運営。工業用水道事業では、室蘭地区、苫小牧地区(第一施設、第二施設)、石狩湾新港地域への給水のために4施設を運営。

住所
北海道札幌市中央区北3条西7丁目 道庁別館10階
TEL
011-251-6213
URL
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/kg/sum/index.html

この企業の他のインタビュー

お仕事データ

地域を支え、盛り上げる!
都道府県職員
都道府県職員とは
市区町村の運営サポートや
国とのパイプ役も担う仕事。

地方公務員の中で都道府県の役所や公的機関で働く人が都道府県職員。住民台帳や税金の管理などを行う「一般行政」、道路や河川の整備などに関わる「土木担当」、建物の審査や検査といった業務に携わる「建築担当」、機械設備の工事や保安などを担当する「機械担当」というように幅広い業務によって人々の快適な暮らしを支えています。地域によっては農林漁業の研究サポートや施策・企画といった一次産業の仕事を担当することも。都道府県職員は市区町村の運営サポートや国とのパイプ役に加え、地域の工業や農業などを盛り上げるのも重要な役割です。

都道府県職員に向いてる人って?
地域貢献に本気で取り組め、
決断力や判断力、調整能力が高い人。

都道府県職員は市区町村よりも大きな範囲で人々の暮らしを支えることから、広い視野で地域貢献がしたいと考えている人に向いているでしょう。住民の意見を聞くことはもちろん、地域を本気で変えたいと強く思う気持ちも大切。また、公共事業など大掛かりな計画を立て、実行する仕事も多いため、決断力と判断力も必要です。関係各所との協力も欠かせないので、調整能力の高さも求められます。

都道府県職員になるためには

都道府県職員は地方公務員にあたるため、各都道府県の職員採用試験に合格する必要があります。試験区分の名称は都道府県によって異なりますが、求められる学力が「大学卒業程度」「短大卒業程度」「高校卒業程度」に分かれることが多いようです。試験合格後は、受験時の区分に従って庁舎などに配属されます。まずは希望する都道府県のホームページを確認してみましょう。

ワンポイントアドバイス
大きな課題に対して結果を出す…
やりがいも大きな仕事!

市区町村の職員が地域住民に直接サービスを提供するのに対し、都道府県職員は国や他の自治体、企業といった団体と関わることが多い仕事です。地域住民一人ひとりと接する機会は少ない一方、市区町村をまたいだ総合開発計画、道路や公共施設の建設・管理、都道府県全体の教育や社会福祉の維持といった大きな課題に取り組みます。それに対して結果を出すため、やりがいもまた大きいでしょう。