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本田 瞬さん
インタビュー公開日:2018.11.26

小学校の時の宿題を通して
社会保険労務士に抱いた興味。
『お父さん、お母さんにどんな仕事をしているか聞いてみましょう』。小学校の時、社会学習の一つとして、そんな宿題が出たそうです。
「誰かに感謝される仕事だということを、とてもわかりやすく話してくれて興味を持ったこと、それに毎日、生き生きと働いている姿が印象に残っていました」。
そう話す本田瞬さんは、社会保険労務士。お父さまが設立し、経営する自宅兼事務所で一緒に働き始めて5年になります。自然林を残した公園に面するオフィスの窓からは、木々が風にそよぐ広々とした風景。
「朝、すぐ近くまでエゾリスがやって来ることもあるんですよ」。
しなやかな物腰と、柔らかな笑顔。ゆったり働いている、という印象ですが、携わっている仕事は、誰かの一生をも左右しかねない業務。そして、企業の運営に関わり、経済を動かす最前線を担う役割とも言えるものです。
満足して働き、能力が発揮できる
会社の環境づくりを支える仕事。
「社会保険労務士」はその名のとおり、企業や団体で働く人の社会保険や労務=働く環境に関わり、その結果として経営のお手伝いをする仕事。
「会社の経営には、人・モノ・カネ・情報が必要ですが、そのなかで『人』の部分を扱っているのが社会保険労務士です。人材のマネジメントと言ってもいいかもしれませんね」。
例えば、社員が満足して働けて、能力を発揮できるようにするための環境づくりを経営者にアドバイスしたり、就業規則など会社の決まりをつくるお手伝いをしたり。業務の実績に対する評価の仕方や給与体系、優秀な人材を採用するにはどうしたらいいかといった相談にものるほか、保険料の申告に必要となる給与計算、国に提出する労務関連書類の作成なども社会保険労務士の仕事です。
「年金や、労災が起きた場合の給付金など生活に関わることについて、一人ひとりにご説明、手続きなどを行うこともあります」。
多くの人との出会いを通して
多くの人が働く会社に目を向ける。
経営に興味があり、大学は経済学部に進んだという本田さん。ゼミでは、コミュニティが経済に与える影響といった社会学的な分野を学び、人と人との触れ合いを通して若者・女性の社会参加をサポートしている札幌市の外郭団体に就職します。
「児童会館で子どもたちと関わったり、レクリエーションなどのイベント企画に携わったりと多様な活動のなかで、私自身、多くの人たちと出会いながら、一緒に目標を達成していく難しさと同時に楽しさを知りました」。
そのなかで蘇ったのが、小学校の頃にお父さまから聞いたという話。経営目標に向かって、一緒に取り組むマインドをつくるには、どんな環境があればいいか。会社もたくさんの人、いろいろな人がいるなかで、そうしたことについてアドバイスする社会保険労務士という仕事に、目が向いていったのだそうです。
「専門分野を持つプロフェッショナルという働き方にも惹かれ、1年間、スクールで学んで国家資格を取得しました」。
知識のないことは「わからない」と、
はっきりと言うことの大切さ。
2018年6月に成立した働き方改革関連法案に代表されるように、雇用や労働に関する法制度が頻繁に変わるなか、法に則った社内制度に変更していくための手助けをするのも社会保険労務士の大切な仕事。
「新聞やインターネット、同業者のネットワークの情報も駆使して、改正法の背景まで把握する必要があります」
建設業、製造業から飲食業、農業、福祉や医療分野まで、本田さんの事務所が扱っている業種はさまざま。サポートしている会社も大手から中小までいろいろです。業界の特徴や会社ごとの文化も理解して、ふさわしい対応を提案できるようになるには経験が必要、と本田さんは話します。
「その意味では、まだ修行中の身ですが、大切にしているのは、知識のないことは、わからないとはっきり言い、きちんと調べてから答えること。一つのミスが社員の方々の将来を左右することもある、重要な仕事ですから」
本田さんの表情がきりりと引き締まります。
経営者と一緒に考えながら
会社の成長に触れられる喜び。
社員規約や給与体系など会社の決まりは、社員の働きやすさにも大きな影響を与えますが、例えば社内の物品を整理整頓する、作業動線を見直すといったことだけで、環境がぐんと改善することがあるのだとか。そうしたアドバイスも社会保険労務士は行っています。
「経営者と一緒になって考え、少しずつ規則や仕組みを変えていくなかで、社員の方々が生き生きとしてくる。それにともなって売り上げも伸び、会社が成長していく様子に触れられることが、この仕事のやりがいですね」
そして、「ちょっと、相談があるんだけど……」と気軽に頼られるようになることが嬉しい。そう話すと、今度は表情が一気に和らぎました。道内各地にいるお客さんを訪ねる出張もありますが、事務所にいる時は家族でゆったりと昼食をとっているという本田さん。心地よく働けなければ、働く人の心地よさは守れない。きっとそうなのだと、納得がいった気がしました。
シゴトのフカボリ
社会保険労務士の一日
8:45
出勤
9:00
メールチェック、1日の業務確認
9:30
書類作成、給与計算など
12:00
昼食
13:00
お客さまとの打ち合わせ
15:00
公的機関へ書類提出・相談業務
17:30
退勤
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

今は父の事務所で働いていますが、大学を卒業する時には「好きな仕事をしたらいいよ」と言われ、その時、興味のある分野に進みました。みなさんも、やりたいことがあったら、迷わず取り組んでみてください!

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
正確に、緻密に、そして心地よく
ミスをなくすため、計算履歴が出る電卓を使っています。細かな文字を書くことが多いので、細いシャープペンシルと小さな消しゴムも必須。大学卒業時に買い、手に馴染んだ皮のペンケースに入れています。

本田社会保険労務士事務所

道内各地の企業の労務管理等を担当。建設業の冬季失業申請、雪で転んで怪我をした人の補償手続きなどは北海道ならでは。農業、酪農関係のお客さんも多い。

住所
北海道札幌市豊平区月寒西2条4丁目1-1
TEL
011-853-1010

お仕事データ

社会保険や労務の専門家
社会保険労務士
社会保険労務士とは
企業の社会保険や労務を支える、
プロフェッショナル。

社会保険労務士はその名の通り社会保険や労働の法律に精通したプロフェッショナル。企業から依頼を受け、健康保険や労災保険の手続きについてアドバイスしたり、これら保険の申請や届け出の書類作成を代行したり、社会保険事務に幅広く携わります。賃金形態や労働時間、採用、就業規則など労務のコンサルティングも仕事の一つ。最近では企業や個人の年金相談も増えているようです。

社会保険労務士に向いてる人って?
より良い社会を作りたいという正義感が強く、
計算やコツコツした作業も得意なタイプ。

社会保険労務士は「健康保険に加入させてくれない」「給料が支払われない」など、労働条件に違反するような働き方を正すのも仕事の一つ。「もっと良い社会を作りたい」という正義感の強い人に向いているでしょう。社会保険の手続きや給与計算などは細かな数字を扱うため、計算やコツコツした作業が得意なタイプにも適性があります。労務管理などについてアドバイスをするためには、説得力があり、信頼を得られる人柄であることも大切です。

社会保険労務士になるためには

社会保険労務士として働くには、社会保険労務士の国家試験への合格が不可欠。受験資格は「学歴」「実務経験」「その他の国家試験合格」のいずれかを満たす必要がありますが、一般的には大学や短大、専門学校卒業後に挑戦するケースが多いようです。大学・短大・専門学校によっては社会保険労務士の国家試験に対応したコースを設けているところもあります。国家試験合格後は、2年以上の実務を経験して指定の講習を受けることで、社会保険労務士として働けるようになります。

※社会保険労務士の国家試験については、詳しくは全国社会保険労務士会連合会試験センターのホームページをご確認ください。http://www.sharosi-siken.or.jp/

ワンポイントアドバイス
ここ最近は女性も注目する
人気職業の一つに。

社会保険労務士の資格は、一昔前に比べると女性からの人気が高まっています。平成28年度の合格者ではおよそ3人に1人が女性。デスクワークが中心で、営業職のように外回りや出張が多いわけではないため、体力的に無理なく働きやすいのが要因のようです。また、結婚や育児で一度は職場を離れても、社会保険労務士の資格を持っていれば、社会保険労務事務所や企業の総務部など、再就職先を見つけやすいのもメリットだと言われています。