重吉 佑斗さん
インタビュー公開日:2019.11.27

ジュエリーのデザインから、
商品撮影、POP制作まで。
千歳市に本社を置くノースワン株式会社は、2014年設立、ガラス製オリジナルジュエリー「ノースワングラスジュエリー」をつくっています。もともとは、想い出とともに形に残る北海道みやげとして開発したもの。北海道らしい景色や花、動物が、一粒のガラスの中にこめられています。北海道内のリゾートホテルやオンラインストアで販売され、いまや全国区の人気ぶりです。
ジュエリーをデザインするのが「ジュエリーデザイナー」。重吉佑斗さんもその一人です。タブレットやパソコンを駆使して、色とりどりのデザインを生み出しています。主な仕事はジュエリーのデザインですが、「できあがった商品を撮影してオンラインストアにアップしたり、店頭に飾るPOPを制作したり、いろいろな仕事をしています」と重吉さん。ジュエリーがたくさんの人たちの目に止まる方法もデザインしているのです。
ジュエリーデザイナーは、
身につけた姿をデザインする。
パソコンの中で完成したデザインは、ガラス職人の手を通して、ジュエリーとなります。重吉さんが設計図を描き、職人たちが形にしていくのです。
美しく仕上がったガラスのジュエリーは、見ているだけでワクワクします。でも、宝石箱に並べて眺めるものではありません。だからこそ、重吉さんが大切にしていることがあります。「ネックレスやピアスを身につけたとき、一番素敵になるようにデザインしています」と、ジュエリーデザインの極意を明かしてくれました。
装飾品である以上、身につけた人を輝かすことができなくては、役目を果たしたとは言いがたい。ジュエリーデザイナーは、ジュエリーも人も美しく見えるデザインを考え続けているのです。
転機は元上司からの誘い。
仕事の幅が広がる予感がした。
人生にはさまざまな転機があります。重吉さんのそれは、元上司からもたらされました。ノースワン株式会社でデザイナーの増員が決まったとき、数年前に転職していた元上司が、人となりも実力もよくわかっていた重吉さんをスカウトしたそうです。
「上司が転職したあとも交流があって、ジュエリーやお菓子のパッケージをデザインしていることは知っていました。自社のオリジナル商品をつくりながら、ほかの企業の製品をつくるOEM(相手先ブランド製造)も手がけている。さまざまなジャンルのデザインをしていて、今後はアパレル関係に進出するという話もある。いろいろな商品づくりに関われるだろうと、率直に楽しそうだと思いました」と重吉さん。入社まもないころから、ジュエリーのデザインに伴う仕事として、取引先との打ち合わせや売り場づくりまでトータルで任され、仕事の幅が広がったと実感しています。
デザインを志したのは高校時代、
ジュエリーは視野になかった。
重吉さんがデザインに興味をもったのは高校生のとき。漠然と「パソコンを使ってデザインに関わる仕事に就ければいいな」と考えていたそうです。苦手な夏の暑さを避けて、北海道工業大学へ進学しました。情報デザイン学科のカリキュラムは、デザインよりは情報技術者の育成に比重が大きかったといいます。「デザインの講義はありましたが、独学でも勉強していました。自分の描いたイラストをパソコンの画面の中で簡単に動かせるのが面白くて、フラッシュアニメーションに夢中でしたね」と、当時を振り返ります。デジタル技術よりもアナログのスキルを磨くことが大事だと感じて、大学卒業後は、専門学校でイラストを学ぶ道を選びました。
「当時はジュエリーデザインのことは全く頭にありませんでしたね」と、重吉さんは笑います。「しかも、デザイナーになりたかったわけではありません。デザイナーという肩書きにこだわりはなくて、自分のデザインしたものが形になる。そういう仕事ができればいいと考えていました」
デザインしたジュエリーを
使ってもらえるのが一番うれしい。
重吉さんにとっては、ジュエリーもPOPも、デザインするときに大きな違いはありません。どんなデザインも、世の中の人たちを幸せにするためにあるととらえれば、それも納得できます。それは、身につけたところを想像して、ジュエリーをデザインするというスタンスにもつながっているのでしょう。「北海道みやげとして開発されたノースワングラスジュエリーだけではなく、いまはプロスポーツチームのオフィシャルグッズなどもつくっています。目指しているのは、旅行中や試合観戦中だけではなく、普段づかいできるデザイン。それは会社の想いでもあります」
だからこそ、一番うれしいのは「自分のデザインしたジュエリーを身につけた人を街角で見かけたとき。握手したい衝動に駆られますよ」と重吉さん。「ここで働いていたら、そういう経験がこれからもっと増える気がします。それが楽しみですね」
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

ふるさとの山形から北海道の大学に入学したり、大学を卒業したあとに専門学校に進学したりと、人とは違う人生を歩んできました。悩んだりもしましたが、自分の選んだ道を進めばいいのだと思っています。

ノースワン株式会社

北海道らしい商品の企画から販売までを手がける。オリジナルのグラスジュエリーのほか、企業とのコラボレーション商品も増えている。

住所
北海道千歳市柏台南1丁目3-1 千歳アルカディア・プラザ4階
TEL
0123-24-5510
URL
https://www.north-1-glass.com/index.php

お仕事データ

アクセサリーや時計をデザイン。
ジュエリーデザイナー
ジュエリーデザイナーとは
宝石や素材の特徴を踏まえ、
より美しいデザインを考案。

ジュエリーデザイナーは、貴金属や宝石を使ったアクセサリーをデザインする仕事。まずは、指輪やピアス、ブレスレット、時には時計といった宝飾品のラフスケッチを、お客様の希望に添って描きます。次にコストや実現可能なデザインかを検討しながら、製図やレンダリング(完成予想図)という「デザイン画」を作成。場合によっては、彫金や鋳造といった金属加工の技術によって、宝石研磨、石留め、仕上げなど製作を担うこともあります。宝石や素材の特徴を考え、より美しいデザインを創造するのがジュエリーデザイナーの腕の見せどころです。

ジュエリーデザイナーに向いてる人って?
洋服やアクセサリーが好きで、
繊細な作業が得意なタイプ。

まずはファッションやアクセサリーが好きなことが素養の一つです。製図やレンダリングといったデザイン画を作成するにしても、ジュエリーを製作するにしても、非常に細やかで地道な作業が続きます。繊細な作業が得意で根気強い人にも向いているでしょう。トレンドやターゲットを踏まえた上で、新しいアイデアを提案するために常に最新情報を勉強し続ける必要もあります。

ジュエリーデザイナーになるためには

ジュエリーデザイナーに必須となる資格はありません。一般的には、大学・短大の美術・デザイン系学科、ジュエリー専門学校などで、デザインや宝石・貴金属の素材について専門的に勉強するのが近道です。その後は宝飾メーカーやアパレルメーカーに就職するケースが多いでしょう。その際、「ジュエリーコーディネーター」や「貴金属装身具製作技能士」、「宝石鑑定士」、「宝石鑑別士」といった資格があれば有利に働きます。

ワンポイントアドバイス
フリーランスの
ジュエリーデザイナーの道も。

新卒でフリーランスのジュエリーデザイナーになるのは狭き門ですが、企業内で企画の立案やデザイン画作成、指示管理、商品チェックなどを学んだ後に独立する人も少なくありません。フリーランスのジュエリーデザイナーは仕事を受注するために自分の作品を作って展示会を開き、デザイン性や世界観をアピールすることも必要。並々ならぬ努力は欠かせませんが、自分のブランドを立ち上げるといった夢も広がります。