森 稔明さん
インタビュー公開日:2020.11.04

北海道内のすべての小中高等学校へと
教科書を届ける100年企業に勤務。
北海道教科書供給所。森稔明さんが勤務している会社です。社名にもあるように、教科書の『供給』を担っており、北海道や各市町村の教育委員会が採択(採用)した教科書を学校に届けることが主な業務です。専門の出版社が制作し、採択された教科書は、北海道内に関してはすべて同社を経由して学校へ、そして児童・生徒の手へと渡ります。
「直接、学校に納めるケースもありますが、教科書の供給を委託している地域の書店を経由して、学校へお届けするという流れが一般的です」と森さん。
これは、道内津々浦々に、確実に教科書を届け、教育にタイムラグなどが生じないようにする仕組みなのだそうです。また、教科書に関連して、学校でその科目を指導するための教材も供給しています。
「先生用の指導書や、授業で使う資料集、黒板に張って示すことで理解を助ける教材など、学校用のアイテムを数多く扱っています」
2021年に創業100周年を迎える北海道教科書供給所。まさに北海道の教育を担ってきたといえる同社で森さんは、もう一つの重要な業務を担っています。
家庭学習用教材の発送手配をはじめ
自社倉庫の在庫管理も大切な仕事。
森さんの仕事は営業事務。営業スタッフが受注してくる教材を書店に届けるための手配などを行っています。ただし、学校用の教材ではなく、担当しているのはドリル、ワークなど家庭学習用の教材です。
「営業スタッフの受注分のほか、書店から直接注文をいただく分を合わせて、自社の倉庫に発送を依頼し、伝票を発行する業務が中心です。一般の書店、大学生協などにも納めているので、取引先は500件を超えますね」
年度末には、書店ごとに新学期分のドリル、ワークの納入数を打ち合わせします。また、4年に1度のペースで改訂が行われる教科書に対応する家庭学習用教材を告知し、売り込むためのサポートも森さんの仕事。
「ドリル、ワークを一定数、自社で在庫していることが当社の特徴。注文の翌日には発送できるという迅速さが強みとなって、多くの注文をいただけるんです」
書店→問屋→出版社と注文が届けられ、出版社から本が送られるというのが、一般書籍の配送の流れ。このルートで届けられるドリル、ワークもありますが、問屋に当たる同社には在庫があるので、それに比べると素早い対応が可能なのです。そこで鍵となるのが在庫管理。多すぎず、切らさないようチェックし、不足分の補充を行うことも森さんの担当です。
本に関する仕事を求め転職を決意。
『教科書』への興味が呼んだ運命。
自然環境や野生動物に興味があり、大学では関連する専攻に進んだ森さんでしたが、同時に根っからの本好きでした。高校時代は図書局員。図書館の司書や書店員に憧れていた時期もあったそうです。卒業後は親族の事業を手伝うものの、本に関連する仕事に就きたいと考えて転職を決意。たまたま求人を行っていた北海道教科書供給所と出会います。
「『教科書』という言葉が目に飛び込んできたのを覚えています。本は好きですが、教科書については考えたこともなく、逆に興味が湧きました」
興味のままに応募したという森さん。すると、面接当日に『ぜひ入社して欲しい』と採用が決まったのだとか。さすがにびっくりしたと、当時を振り返っています。その時の募集職種は倉庫スタッフ。1年ほど発送などを経験し、現在の営業事務へと異動になります。
「取引のある書店名、書店ごとに割り振った番号などを覚えるまでは、大変さも感じましたが、本(教科書)の流通を動かせるようになったことが、とてもうれしかったですね」
日々、楽しいと感じながら業務に就いているという森さん。職場は、自宅から車で7分ほどでした。偶然とはいえ、運命を感じる! と、冗談めかして語る森さんです。
地域ごとに売れる傾向が違う教材。
動向を出版社に伝える役割も担う。
森さんは営業スタッフとは違って、外勤を行うことはあまりありませんが、その代わり教科書の出版社との情報交換を通した営業活動という大切な役割を担っています。
「出版社は首都圏などが拠点です。年に数回、営業担当者が来道して学校などに教材のアピールを行いますが、全道を網羅することはなかなかできません。そこで、出版社からの問い合わせに対して、地方の現状などをお伝えしています」
学校教材も家庭学習用の教材も、地域によって売れる商品の傾向や動きが異なるそうです。自社の営業スタッフから得る情報、書店の注文動向などを総合し、自らの肌感覚も交えてその状況を伝えることで、出版社は売り込む商品の構成など戦略を立てやすくなります。そうすると、結果として同社も売れる商品を扱うことができ、売上アップにつながる。その流れをつくる要の位置に森さんはいるわけです。また、そうした動きを捉え、今後、売れ行きが伸びそうな教材を予め多く仕入れるといった判断も森さんが行っています。
「とはいえ、一度にあまりにもたくさん注文すると、開梱・陳列を行う倉庫スタッフが大変です。そのバランスも常に考えています」
倉庫での業務経験をもとに、気遣いも欠かしません。
学校図書館への書籍の卸を通して、
五感を刺激する読書の魅力を伝える。
同社では、教材のほかに学校図書館への書籍の卸も行っており、これも森さんの担当です。学校司書の方々に児童・生徒にお勧めの絵本や書籍を提案するというのがその仕事。
「書店には何時間でもいられるタイプですが(笑)、最近は、子ども向けの本に目がいくようになりました」
そして、おもしろそうな本を見つけるのも楽しみなのだとか。本好きの森さんの真骨頂とも言えそうですが、ちょっと困ったことも。
「出版社から送られてくる新刊の一覧のなかからもセレクトして提案するのですが、上司に『傾向がちょっと偏っているかな』と指摘されることもあって。たぶん、自分の好みも入っているからだと思います」
そういって笑う森さん。学校図書館に納品する際には、傷が付かないようにコートをかけ、バーコードをつけてデータを入力するなど、図書館機能の一部も担っています。一方、教科書のデジタル化が進むなか、本との接し方は大きく替わろうとしています。
「本の良さを伝える取り組みも必要だと感じています。触れた時の感触、ページをめくる動き、紙の匂い……。五感を刺激する読書の魅力を伝える活動もできればと思います」
物語に没頭して我を忘れる時間を多くの子どもたちに味わって欲しい。それが森さんの願いです。
シゴトのフカボリ
営業事務の一日
9:00
出勤、書店からの注文書をもとに倉庫に出品を依頼
10:30
発送伝票の発行など
12:00
昼休憩
13:00
学校図書館への卸の関連業務、書店との納入数の打ち合わせ、委託されている検定の実施準備など
17:00
退勤
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
稲刈り用の鎌
出版社から送られてくるドリル・ワークの梱包を解くために使っています。稲刈り用の鎌は、一般の鎌よりも歯が立っていることと、鋸のようになっているので切れ味がよく、使い勝手が良いのだとか。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

教育制度は大きく動いており、デジタル化の波もやってきています。教材などの使われ方、子ども向け書籍の出版傾向など、常に幅広くアンテナを張り、営業活動から在庫にまで活かせるように努力しています。

株式会社北海道教科書供給所

創業は1921(大正10)年。北海道内の小学校・中学校・高等学校へ、地域の教科書取扱書店を通じて教科書の供給・教材販売などを行っています。

住所
北海道石狩市新港西1丁目719-14
TEL
0133-74-9971
URL
http://www.dokyohan.com

お仕事データ

会社をサポートする重要な裏方!
事務職員
事務職員とは
データ入力や書類作成、来客対応など、
幅広いオフィスワークを担当。

オフィス内でデータ入力や書類の作成、電話対応、来客対応といった幅広いオフィスワークを担うのが事務職の仕事。具体的にはお客様情報や日々の売上の入力、会議の議事録や見積書・請求書の作成、入金・出金・振替といった伝票処理、郵便物の仕分け、備品の発注やメンテナンスの依頼、会議室の準備や来客への飲み物の提供など、仕事内容は多岐に渡ります。働く会社によっては、勤怠管理や給与計算など人事・労務部門の仕事、決算業務の補助など経理部門の仕事を任されることもあります。

事務職員に向いてる人って?
人を支えることに喜びを感じ、
正確に物事を進められるタイプ。

事務職は職場を裏方から支えるサポート役としての仕事が多くを占めます。人を助けることに喜びを感じるタイプには向いているでしょう。また、お客様情報や売上といった重要なデータを扱うことから、集中力があり、正確に物事を進められる力も必要です。事務職は社外からの来客や電話に対応することも多いため、会社の窓口として丁寧に接する人当たりの良さも求められます。

事務職員になるためには

事務職に必須の資格はありませんが、主にパソコンを使って仕事をするため、Word、Excel、PowerPointなどのパソコンソフトの基本操作ができるとベター。「Word文書処理技能認定試験」や「Excel表計算処理技能認定試験」、「PowerPointプレゼンテーション技能認定試験」などを取得しておくと有利でしょう。高校や専門学校、短大・大学を卒業後、各企業や団体に就職するのが一般的です。

ワンポイントアドバイス
ワークライフバランスを
重視したい人にはピッタリ。

事務職の仕事は幅広い一方、それぞれがルーチンワークになっているケースが多いようです。イレギュラーなトラブルや急を要する業務がない限り、定時に帰りやすい職種といえます。プライベートを重視したい、家事や子育てに時間を割きたいなど、ワークライフバランスを重視した働き方を望む人にはピッタリです。