神田 洋介さん
インタビュー公開日:2021.08.11

地元で慣れ親しんだ漁業の世界。
それを支える漁協職員の道へ。
私たちが日ごろ食べる魚を獲ってくれるのは漁師さんですが、漁業を営んでいる町に必ずあって漁業を支えているのが、漁業協同組合(漁協)です。漁協は地域の漁師さんが出資して成り立っている団体で、地域の海の魚をルールを守って漁獲できるようにする漁業権の管理を始め、魚の加工や販売、漁に必要な用具の調達、保険や銀行などの役割も担っている、漁業には欠かせない存在です。魚がおいしいまちとして知られる小樽で漁協に勤める神田洋介さんに話を聞きました。
神田さんは、同じく漁業が盛んなまち・えりも町の出身。実家が昆布漁業を営み、子どものころから手伝いをしたり、周囲にも漁師さんや漁協職員が身近にいるなど、漁業に親しむ環境で育ちました。兄二人が家業の漁師、地元の漁協に進路を定める中、自分も父や兄のような漁師さんを支える漁協職員になりたい、地元の漁協には兄がいるので自分は別の場所で働いてみようと思ったと言います。
学校で1年間学び、漁協の仕事に。
用具の名前を一から覚える苦労も。
そこで、父のすすめもあり、漁協職員を育てる全国漁業協同組合学校に入学しました。学校は千葉県にあり、1年間のカリキュラムで漁協の仕事に必要な幅広い知識や実務を学びます。漁協からの求人も学校に来ており、神田さんは北海道内の漁協に就職することができました。
そこで主に担当したのは、「購買」。漁に必要な漁網や長靴、魚の餌などの資材を仕入れ、漁師さんに販売する仕事です。実家の昆布漁に使っていた用具には慣れていたものの、魚種が変わると使う物も変わり、ロープだけでも何種類もあって覚えるのに苦労したという神田さん。また、漁師さんは気は優しくても口調が荒っぽい人も多く、最初は戸惑ったと言います。「仕事を覚えて頑張っていると認めてもらえて、名前で呼んで話しかけてもらえるようになりました。そうすると、もっと頑張ろうと思えましたね」。だからこそ、漁協職員には元気で明るく、積極的に挨拶ができる人が向いていると神田さんは言います。
魚には欠かせない冷凍事業部へ。
-27℃の世界で奮闘しています!
最初に勤めた漁協では、人間関係などに悩んでしまい退職。一度地元に戻って漁協でアルバイトをしていました。母校の全国漁業協同組合学校にも報告したところ、卒業後もいつも気にかけてくれて連絡を取っていた寮の職員さんが、漁協の求人を探してくれたのです。
そうして再就職したのが、現在の小樽市漁業協同組合です。小樽でも前の職場の経験を生かして最初は購買を担当しました。小樽市漁協は、若手の職員にはさまざまな部署の経験を積ませたいという意向で異動もあります。神田さんも、入職から2年半後に現在の冷凍事業部に異動。漁協の職場内は和気あいあいとしており、異動しても上司に気軽に相談できる雰囲気だとか。
冷凍事業部は、鮮度を保つために使う氷を製造・販売したり、魚を販売するために良い状態で冷凍する重要な業務です。大きな冷凍室は用途に分かれて何種類かあり、 -10℃で氷を保存するものから、-27℃という低温で管理される「極寒」の冷凍室もあります。
漁協職員として、魚に関する
幅広い仕事を経験してみたい!
漁業用の氷は、漁船に積み込んだり、出荷する時に箱に敷いたりと大量に必要です。1個150kgの氷のブロックを、-10℃で2〜3日かけて作り、フォークリフトを運転して運び、機械で粉砕して漁師さんに販売します。その後請求、支払いを完了させるまでが氷販売の業務です。魚を保管する冷凍庫には、漁協が仕入れて販売するための魚と、地場の仲買人などに場所を借し保管している魚があります。注文に応じて魚を入出庫したり、庫内を整理する時は、10〜20kgの魚を運ぶ重労働です。
時々、先輩の代行で市場に行ってセリで魚を仕入れることもあるのだとか。「活気のある市場にいると、流通に関わっているという実感がわいてきますね」。セリを取り仕切るセリ人も漁協職員の仕事の一つで、憧れていると神田さん。セリ人になるには、販売業務の経験と法律などの知識が必要で、試験に合格することが必要です。購買や冷凍、市場の他にも、保険・銀行業務など漁協内の仕事は幅広く、いろいろな業務に携わってみたいと夢は膨らみます。
漁に併せて出動、待機。
「時間が読めない」仕事です。
漁は資源保護などのために時期が決められており、広い北海道では地形や魚の生態、地域によっても時期が違います。小樽ではイカ漁がある夏場は特に忙しい時期です。そんな中、漁師さんや仲買人から新鮮な魚をもらえることもあるといううらやましい一面も。常に、魚が身近にある環境です。
生き物相手の仕事なので、人の都合通りにはいかない面もあります。漁は魚の生態に合わせて夜中に行われることもあり、それに合わせて氷を積まなければならないので、仕事が深夜に及ぶことも。漁船の入港もその日の漁に応じて変わるため、いつ戻ってくるかわからないのが通常です。市場のセリは朝早くから始まるため、シフト勤務や仮眠をしながらの宿直で対応しています。
極寒の冷凍庫や力仕事、不規則な勤務など大変なこともありますが、漁師さんや漁業を支えるこの仕事が好きだと神田さん。これからも経験を積んで、あらゆることに総合的に対応できる職員になりたいと意気込みます。
シゴトのフカボリ
協同組合職員の一日
6:30
出勤、準備
7:00
市場に行きセリで買い付け
8:30
氷の製造作業
10:00
冷凍庫の整理
12:00
昼休憩
13:00
仲買人の注文に応じて魚の入出庫作業
15:30
休憩後、事務作業
17:00
退勤
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

私自身、前職の時に一人で考えすぎて退職する結果になってしまいましたが、転職後は周りの上司や先輩に頼ることができるようになりました。前向きに考えられるようになったら、仕事が楽しくなります!

小樽市漁業協同組合

豊かな漁場で四季折々の40種類以上の魚が水揚げされる小樽市。漁協では販売や購買、保険や銀行業務のほか、海の資源保護にも取り組んでいます。

住所
北海道小樽市色内3丁目5番18号
TEL
0134-22-5131
URL
http://jf-otaru.jp

お仕事データ

営利を第一にしないシゴト。
団体職員
団体職員とは
公益性の高い事業に携わり、
広く社会に貢献する職業。

団体職員という名称は法律で定められた定義はなく、「営利を第一に追求せず」に公共のための事業や公益性の高い仕事に従事する人を指す通称。一般には企業や公務員以外の非営利団体で働く人をいいます。活躍の場は芸術施設を運営する財団法人や環境整備を担う団体、防災コミュニティネットワークなどのNPO法人、JAや生活協同組合など、幅広い組織。総務や広報、施設運営など所属団体によって仕事内容はさまざまですが、いずれも広く社会に貢献するという手応えを得られます。

団体職員に向いてる人って?
社会のために働く意欲があり、
細かな確認作業や接客が得意な人。

団体職員の多くが公益事業に関わる仕事をすることになるため、人や社会のために働きたいという意欲がある人に向いています。また、団体職員が担う仕事には、事務作業も少なくないため、PCの操作や確認作業が得意な人は馴染みやすいでしょう。所属によっては接客をすることもあり、コミュニケーション能力のある親しみやすい人柄が求められることもあります。

団体職員になるためには

団体職員になるためには、一般企業と同じように、高校や専門学校、短大、大学などを卒業後、求人情報を出している団体に応募するのが一般的です。団体の中には、学歴や年齢制限、特別なスキルや資格、ある程度の職務経歴を求められるケースもあるので、まずは就職を希望する団体の募集状況をチェックしてみましょう。

ワンポイントアドバイス
景気に左右されにくい、
安定性がある仕事!

団体職員は「準公務員」ともいわれ、事業の公共性が高いという点は公務員と共通しています。そのため、景気の悪化などの影響を受けにくく、安定して働くことができるところもメリットです。非営利組織や団体は日本全国にあるので、仕事に安定性を求める場合は選択肢の一つとしてオススメできます。