山形 翼さん
インタビュー公開日:2024.05.20

地域の情報を届けるコミュニティ放送。
最初に任された仕事がパーソナリティ。
「時刻は9時34分をまわりました。この時間、トークinクローゼット火曜日担当の山形翼がお送りしています……」静かで落ち着きのある声。ここは「三角山放送局」のスタジオ。山形翼さんが勤務する、株式会社らむれすが運営するコミュニティ放送です。コミュニティ放送は、FM放送によって地域の話題や行政、観光、交通情報など地元に密着した情報を提供することを目的としたメディアとして1992年に制度化されたもので、市町村単位程度の範囲で放送を行っています。三角山放送局は札幌市西区を中心とした区域が放送エリアです。
「入社して初の出勤日、4月1日の朝9時、最初の仕事として担当したのが、トークinクローゼットという番組のパーソナリティ。『おはようございます。初めまして!』が第一声でした。頭が半分、真っ白でよく覚えていません」
いきなり、かける曲の順番を間違えたこと以外は…と照れ笑いする山形さんも8年目。
「”いっしょに、ねっ”というコンセプトのもと、地域のまちづくりの輪を広げたい、というのが私たちの大きな目的です」ベテランの貫禄と同時に、番組づくりにかける情熱がその表情と、滑らかな口調から感じられます。
構成から機械操作までを1人でこなす。
スポンサーへの営業活動なども担当。
とはいえ、山形さんは、パーソナリティ専属というわけではありません。番組を取り仕切るディレクターでもなければ、放送機材を扱うエンジニアでもなく、同時に、そのすべてでもあるのだといいます。
「広域に電波を発信する大手の放送局とは少し違い、番組を放送するうえでの役割分担がなく、1人の社員が番組構成、選曲、CMや曲を流すための機械操作までを行っているんです」
地域でいろいろな活動をする人から、障害のある人、社会的少数者、外国人等々、さまざまな人たちがボランティアのパーソナリティとして番組を持っているのが三角山放送局の特徴ですが、同じように1人で番組を進行するケースも多いのだそうです。
「誰もが放送できることにより、たとえば災害時など緊急を要するような際でも、即座に情報発信を行えるほか、社員が番組スポンサーなどへの営業活動に出ることができるんですね」
番組制作のほか、地域情報誌として発行している「マガジン762」の取材、広告主まわりなども行っているという山形さん。スポンサーのCMに関しては、内容を考え、自ら吹き込み、音をつけて流すまでをすべて1人でこなすなど、まさに大車輪の活躍ぶりです。
メディア指向であることを発信し、
紹介を受けた「三角山放送局」。
北海道内には現在、28局のコミュニティ放送局があります※1。その一つであり、札幌で3番目に開局した三角山放送局で山形さんが働くことになったきっかけは、中学時代に遡ります。
「中学2年生の時、試合観戦にいった北海道日本ハムファイターズ戦で、スタジアムDJの声に衝撃を受けました。”かっけー!”と感じ、自分もなりたいと憧れるようになったんです」
スタジアムDJは、スポーツの試合の際、選手紹介や場内アナウンスを行う人のこと。教室で真似をしていたそうで、その姿を今も同級生が覚えているというほどの思いは心のなかに残り、少しでも近い世界に行きたいと、大学ではメディア系のゼミを選択。そこで、コミュニティ放送のことを知ります。ゼミでは、札幌市内の放送局で番組を制作し、自分たちで話すという経験もしています。
「それが、パーソナリティとしてのデビューと言えますね。メディア指向がさらに強くなり、周囲にその思いを発信するなか、担当教授から紹介されたのが三角山放送局でした」
定期採用は行っていないものの、たまたま卒業時に募集があったのだと山形さん。縁のようなものを感じると同時に、希望をアピールしていたおかげだったと振り返ります。

※1「コミュニティ放送の現況について」(一般社団法人日本コミュニティ放送協会/2023年12月6日)
17年越しのスタジアムDJの夢が実現。
イベントのMCなど業務の幅が広がる。
あと半月ほどで入社8年目に入るという2024年3月16日、ゲーム開始を告げる山形さんの声が札幌ドームに響き渡りました。J1リーグ第4節 FC町田ゼルビア戦で北海道コンサドーレ札幌スタジアムDJデビュー。17年越しの夢が叶った瞬間でした。
「さすがに震えました。むちゃくちゃ緊張して。でも、それさえも心地よく感じられました。同時に、難しさも痛感しましたね」
このゲームは、長いシーズンのなかでどんな位置付けとなる一戦かといったことを意識し、さらに試合の流れ、会場の雰囲気などを見極めながら、発すべき言葉、声色を考え、タイミングを常に図る必要がある--。そう語る山形さんの言葉に、念願の役割を果たす興奮が感じられます。コンサドーレのGMや選手が出演する番組を担当するなか、チームへの理解を深め信頼を築いた結果のスタジアムDJのオファーだったこともあり、なおさら嬉しいと話します。
「スタジアムDJのほか、依頼を受けて地域のイベントなどのMCを務めることも多くなり、スタジオの外でマイクを持つことが、業務の一つの軸になっています」
こうした活動ができるのも、コミュニティ放送ならではのこと、なのかもしれません。
長年、暮らしてきた西区への愛着。
この地域で”当たり前の声”になりたい。
「北海道胆振東部地震の際、初めて災害放送を経験しましたが、そこで『(停電などが起きているこんな時でも)変わらずにしゃべっていてくれて安心しました』といった声をいただきました。情報を発信することで、気持ちが救われる人がいる。さらにコツコツと、仕事に向かわなければと再認識しました」
ネットの通信環境がダウンしても、受信機があればラジオ放送は届きます。だからこそ、必要な情報が流れていなければいけない。常にそんな意識を高めながら、放送を通じて西区という地域の役に立ちたい。そう話す山形さんは、5歳で西区に転居して以来、ずっと西区在住。大学は区外でしたが、通学は自宅から。長年にわたり西区で見てきたもの、学んできたことを番組で還元していけることが、自分の強みと話します。
「”地域で当たり前の声になりたい”というのが、今の私の夢です。顔は浮かばなくてもいいけれど、『あ、この声だ。聞いたことがある』といわれるような存在になれるといいなと」
誰かをちょっと勇気づけたり、安心感を与えたり、不測の事態が起きたような時には頼ってもらえる、いわば西区の声になりたい。そんな思いを静かに抱きながら、今日もやさしくマイクに話しかける山形さんです。
シゴトのフカボリ
コミュニティ放送職員の一日
8:00
自転車で出社、新聞チェック、原稿読みなど放送準備
9:00
担当する「トークinクローゼット」などでトークから機材操作までを担当
12:00
昼食・休憩
13:00
音楽番組等の制作。パーソナリティへのキュー出しなど
14:00
収録した音源などの編集作業
15:00
情報誌の営業活動
16:00
番組や情報誌の取材
17:00
原稿作成など事務所作業をこなし、帰宅
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

夢や憧れは、進路や仕事選びのきっかけにもなり得ます。好きなこと、なりたい姿を声に出して伝えてみてください。思いがけずチャンスが舞い込んでくるかもしれません。夢を叶えるのも、きっかけを作るのも、すべて自分次第です!

株式会社らむれす

1993年設立。「三角山放送局」の運営をはじめ、イベント・コンサート企画制作、テレビ・ラジオを番組制作、CM制作、映像・動画制作等を行っています。

住所
北海道札幌市西区八軒1条西1丁目1-26
TEL
011-621-8610
URL
https://www.sankakuyama.co.jp

お仕事データ

ラジオ番組の総監督!
ラジオディレクター
ラジオディレクターとは
番組の企画や構成、指示出しなど、
ラジオ番組のすべてを監督!

ラジオディレクターは番組の企画や構成から、コーナー作成、ゲストの選定、使用する曲のチョイス、さらにパーソナリティへの指示など幅広い役割を担います。いわば、ラジオ番組の総監督。大きな局や制作会社では構成作家や放送作家などが台本を作ることもありますが、コーナー企画や時間の配分などを考慮して大まかな放送原稿を制作するケースも多いようです。場合によっては音の調整を行うミキサー役も担うなど、多彩なスキルが求められます。

ラジオディレクターに向いてる人って?
どんな状況でも冷静に判断でき、
自分の考えをしっかりと伝えられる人。

ラジオ番組は生放送が多く、突然のアクシデントが起こらないとも限りません。そのため、どんな状況でも冷静に対応できる的確な判断力が求められます。ラジオディレクターはパーソナリティや他のスタッフに意見を迫られることもあることから、自分の考えをしっかり伝えながら上手くコミュニケーションが取れる力も必要。番組の進行を支える役割として、調整力に自信がある人も向いているでしょう。

ラジオディレクターになるためには

大手のラジオ局に就職するには、大学や専門学校へ進学してから新卒採用を目指すのが一般的。放送関連の学科を設ける大学や専門学校で、機器の操作や業界の基礎知識を学ぶと有利に働くこともあります。とはいえ、制作チームに配属され、ディレクターになれるかは運と努力次第。ラジオ番組の制作会社に就職する他、ラジオ業界でアルバイトをするのも有効です。地方のミニFMやコミュニティラジオでは、ディレクターを募集している場合もあります。

ワンポイントアドバイス
出演者やスタッフ、リスナーとともに、
番組を作り上げる一体感も醍醐味!

大勢のスタッフが関わるテレビ番組の制作とは異なり、ラジオ業界ではディレクターとパーソナリティで成り立つケースも少なくありません。自分の意見がダイレクトに反映されたり、企画が通りやすかったりするのも醍醐味のようです。また、ラジオはリスナーから寄せられるはがきやメール、電話などで反応をダイレクトに感じることができます。スタッフや出演者とともに、聞いている人も一丸となって番組を作り上げているというやりがいも感じられる仕事です。