阿部 洋亮さん
インタビュー公開日:2024.08.05

文系大学出身、事務畑から、
体を動かしたくて転職(笑)。
「ポンプ」と聞いて何を思い浮かべますか?子どものころに水遊びした玩具?映画やアニメで人が井戸からせっせと水を汲み上げるあの手動の装置?いずれも正解…ではありますが、実は見えないところで世の中のもっと幅広いシーンに必要とされているのがポンプなのです。
「例えば、地中に埋まっている水道管からマンションやビルの高層階に水を届けたり、田畑に農業用水を汲み上げたり、大雨の際には出口を失った水を大きな川に送り込んだり、暮らしを守り支えるためにポンプの力は欠かせないんです」
こう教えてくれたのは、株式会社岡田工業でポンプ整備スタッフとして働く阿部洋亮さん。とはいえ、入社当初はポンプといわれてもどんなものか想像がつかなかったと苦笑します。
「僕はもともと文系ですし、これまで経験した仕事も総務や事務などでポンプとは無縁。趣味レベルでクルマやバイクをいじるのは好きですが、入社の理由は『体を動かす仕事も良いかな』と思っていたところに知人から紹介されたからです…軽すぎるでしょうか(笑)」
新人時代の苦労をさせまいと、
教育体制の整備に注力中です。
阿部さんの入社当初、ポンプ整備の基礎中の基礎や道具の使い方は先輩方が教えてくれました。けれど、当時は若手の加入が久しぶりだったため、作業の説明に慣れていないベテランが多く、技術を覚えるのに必死だったと振り返ります。
「当社のベテラン陣は面倒見が良いものの口数の少ない方ばかり。しかも、あうんの呼吸でそれぞれ作業が進められる経験値の高さゆえ、新人の僕は業務をスポット的にしか覚えられませんでした。なので、最近は専任の教育担当を置き、一連の仕事を平均的に覚えていけるように体制を整えているところです」
岡田工業には阿部さんを含めた30代のスタッフが3名在籍。今後、さらに若い世代を迎え入れるためには「見て覚えろ」ではなく、作業の手順や使用する工具、理由の解説までまとめたマニュアルが必要だと教育プランの作成を進めているそうです。
「社長をはじめとする経営層は、昔ながらの教え方や労働環境のままでは若い世代が集まらないと危機感を抱き、僕ら若手の意見を積極的に取り入れてくれるんです」
重機やクレーンの資格は
会社が取得させてくれます。
岡田工業は、元請け(仕事を発注する側)となる各ポンプメーカーの依頼を受け、主に国や北海道、市町村の公共事業に携わっています。建物をつくる際にポンプを新設するケースもありますが、多くは既存のものの改修・整備なのだそうです。
「春先から夏前にかけては農業の開始に合わせて田畑に水を送ったり、水害に備えたりするためのポンプを点検・整備するのがメインです。例年、夏場は少し業務量が落ち着く時期。秋からは工場や廃棄物処理施設、浄水場、下水処理施設といった暮らしを支える大型施設・設備の仕事が多いですね」
ポンプといえば、やはり水場に設置されていることが大半。中には水中に沈んでいるものもあるといいますが、基本的には引き上げられるように鎖がついているなど陸上で作業できるようになっています。「ポンプのサイズは小さいものもあれば、クルマくらい巨大なものも。重機やクレーンを使って引き上げることもあるため、作業に必要な資格は会社が費用を負担して取得させてくれます」
飽きることがなく、
いつも新しい刺激に満ちた仕事。
ポンプの整備は工場に持ち帰って作業することもあれば、その場で分解して仕事を進めることもあるとか。岡田工業では大型の案件が多いため、最低でも3名以上のチームで動いているそうです。
「ごくごく簡単にいうと、整備はポンプを完全に分解し、壊れているパーツや汚れている箇所を交換・清掃した上で、もう一度組み立てるのが基本。水を汲み上げて飛ばす仕組みのベースは変わりませんが、各メーカーによって構造がやや異なったり、用途によって材質が違ったり、最近では水だけではなくペースト状の食材を送れる新製品がリリースされるなど、とにかく種類が多種多彩です」
現場では「初めまして」の製品と出会う機会が多く、覚えることも山ほどあるようです。けれど、阿部さんは「だからこそ飽きがこないですし、いつも新しい刺激があるんです」と笑います。
「それに、地域によってはたった一つの施設が街全体の水の基盤を維持していることもあります。なくてはならないものを扱っているという手応えも大きいんですよね」
任される役割が増える分だけ、
待遇に反映させてくれる会社です。
現在、阿部さんは整備や改修に加えて、PC業務が得意ではないベテランの事務作業を担ったり、ポンプメーカーの窓口役になったり、細かな備品の発注をするなど、仕事の幅が広がってきています。
「実際に手を動かす作業以外の面を任せてもらえるのもやりがいにつながっています。もちろん、負担が増える分、役割が多くなる分、収入にも反映させてくれる会社です。経営層が一人ひとりのことをしっかりと見ている上、納得できる待遇を用意してくれるのも気持ちよく働ける要因。今は多少の残業や繁忙期の休日出勤もありますが、当然ながらしっかりと手当をいただけるので、プライベートではクルマやバイクで好き勝手に遊べます…妻とお財布が別々なのも大きいですが(笑)」
とはいえ、今後は新人さんが入社し、成長していくことで業務の分担ができるようになり、働き方も進化していくだろうと阿部さんは見込んでいます。
「なので、人を育てていくのも目標の一つ。若い世代の意見を聞いて柔軟に変わっていける会社ですから、イマドキ世代が望む職場に進化していけると自負しています」
シゴトのフカボリ
ポンプ整備スタッフの一日
7:30
出勤
7:45
現場へ移動
9:00
ポンプの整備
10:00
休憩
10:15
作業再開
12:00
昼休み
13:00
ポンプの整備
15:00
休憩
15:15
作業再開
15:45
会社へ移動
17:00
退社
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
現場作業に欠かせない工具
スパナやペンチ、バール、物と物の隙間や尺を測るゲージなどは、どこの現場でも欠かせない工具です。これまでは社員間で共有していましたが、最近は若手の「年に何度か予算を決めて、必要なものを買ってほしい」という意見から好きな道具を持つ人も増えています。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

どんな仕事でも同様だと思いますが、考えることを放棄してしまうと自分の進歩が止まってしまうと思いますし、惰性で物事に取り組み続けていると刺激もなくなります。若い世代には、学び続ける意識を持つことでグングン成長してほしいですね。

株式会社岡田工業

大型・特殊・汎用ポンプの点検修理や新規据付などのニッチなノウハウに長けた機械器具設置企業。業界では珍しく若い世代も活躍し、会社の体制も整っていることから各ポンプメーカーからのニーズが急上昇。時代に合わせた新人教育や働く環境も整備。

住所
北海道札幌市東区北丘珠3条1丁目13-8
TEL
011-374-1840
URL
https://www.okadakogyo-h.jp/

お仕事データ

機械を使った暮らしと産業を守る
機械設備メンテナンススタッフ
機械設備メンテナンススタッフとは
機械設備の安定稼働を支え
暮らしとビジネスの安心を守る。

住まいや店舗、工場、一次産業などで使われるさまざまな機械設備について、設置や修理、メンテナンスを行う仕事です。機械設備が壊れると「生活が不便」「営業ができない」など影響が大きくなるため、故障が発生した時にはスピーディーに対処したり、定期的なメンテナンスでトラブルを未然に防いだりするのが主な仕事です。現地での対応が難しい場合は一度製品を回収し、工場などで修理を行うこともあります。
機械の老朽化など、修理が難しいと判断される場合は、新しい機械への買い替え提案なども行います。

機械設備メンテナンススタッフに向いてる人って?
「なぜ?」「どうして?」を
深く掘り下げる探究心がある人。

一口に修理やメンテナンスと言っても、作業内容は多岐にわたります。消耗部品の交換や発生頻度の高いトラブルであれば、マニュアルなどを見ながら対応することが可能ですが、老朽化した機械が故障したり、原因不明の不具合が生じたりした場合は、自身の経験や同僚のアドバイスを頼りにして、自ら問題を解決していかなければなりません。
こうした仕事で大切なのは、表面的な知識を覚えるのではなく、「なぜそうなるのか」「別の場合はどうか」など、物事を追求して理解を深めようとする向上心。日頃からそのように習慣づけることで、さまざまな故障やトラブルに対応できる経験が積み重なっていきます。

機械設備メンテナンススタッフになるためには

機械設備を製造しているメーカーや販売代理店に入社したり、修理・メンテナンスを専門に行う会社に入社することで、この職業に就くことができます。多くの場合、職場の研修やOJTを通じて業務に必要な知識や技術を習得します。
仕事をするために資格は不要ですが、機械設備のメンテナンスに関係する資格として、国家資格の「技術士」、国家検定の「機械保全技能検定」などがあります。

ワンポイントアドバイス
修理メンテのプロになれば
長く活躍することができます。

機械設備には定期的なメンテナンスや修理が欠かせません。どんな機械設備を扱うかは担当する業界によって千差万別ですが、一度身に付けた知識や経験は他の業界の機械設備でも応用できることが多いです。あらゆる機械に精通したプロフェッショナルとなれば、長く活躍していけるでしょう。

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