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アウトドアガイド_佐藤 平さん
インタビュー公開日:2026.05.26

川の中へ、お客様を豪快に背負い投げ!
ラフティング歴14年のアウトドアガイド。
「ボートの上から、背負い投げで川に投げ込むんです。お客様は、あっという間にドボンと水の中。それを見て、自分もやって欲しいと手を挙げる人も出てきて(笑)。『思い出は忘れても、トラウマは忘れませんよ』。冗談でよく、そんなことを言って楽しんでもらっています」
ボートというのは、ラフティング用の大型ゴムボート。なんだか荒っぽい(?)ことをしている佐藤平さんは、それを操るアウトドアガイドです。勤務先は『北海道ライオンアドベンチャー』。ウィンタースポーツや夏のアクティビティで今や世界に知られるニセコの老舗ツアー会社の一つです。
「私はやんちゃにボートをわざとひっくり返し、お客様に泳いでもらうというアトラクションをよくやりますね。みんな、急いでボートに戻ってくるのですが、最後になった人を、『罰ゲーム』として投げるわけです」
それはもちろん、お客様へのサービスですが、そんなことができるのも、佐藤さんがもともと長く柔道をやってきたから。とはいえ、誰でも投げるわけではなく、例えば年配のお客様なら、景色を見ながらニセコの歴史の話をするなどケースバイケース。ラフティング歴14年。まさにプロのガイドです。
ヘルニア発症で途切れた警察官の道。
誘われたガイドの仕事にのめり込む。
ご両親の勧めで5歳から続けてきた柔道を活かしたいと、高校卒業後、北海道警察に入職した佐藤さん。道場に指導に来てくれていたお巡りさんの姿に憧れたことも警察官を志望した理由だったそうです。けれどもその思いは、採用後の警察学校で途切れてしまいます。
「警察学校の行事で、重いものを運ぶ競技があったのですが、その翌日、腰に激痛が走りました。診断はヘルニア。長年の柔道で腰に負担がかかっていたこともあると思います。結局、復帰できず退校しました」
警察官採用試験に向けた勉強の仕方を教えてもらうなど、お世話になった地元の交番の所長さんから、しばらく違う仕事をして、改めてチャレンジしても遅くないとアドバイスをもらうなか、北海道ライオンアドベンチャーの代表と再会します。
「高校3年間、当社のメニューである熱気球のアルバイトをしていました。お客様をご案内する仕事です。そこで、代表とも面識があり、警察を辞めたと話すと、『それならラフディングガイドをしてみない?』と声をかけていただいて。それが今に続くガイド人生の始まりです」
当初は、3年ほどガイドを務め、再度、警察官採用試験に臨もうと考えていたものの、「想像以上にこの仕事が楽しかった」のと、接客が好きだったことからのめり込んでいきます。
魚道に吸い込まれ、あわや溺れる経験。
お客様の安全を守る大切さを実感。
大きなボートを積んだトラックを普段から目にする土地柄で育った佐藤さん。とはいえ、ラフティングのガイドは、当然ですが未知の世界でした。
「入社後、1カ月半ほどは、ボートの操作方法や安全に関することなど、必要な知識を学ぶトレーニング期間。先輩の指導を受けながら川に出て実地で技術を学び、RAJ(※)の認定試験、その後、社内試験を経て、晴れてガイドとして独り立ちしていきました」
トレーニングでは、先輩と川に出て何本も操作の練習をするのだそうですが、そこで忘れられない経験を佐藤さんはします。それは、ニセコ界隈でもある意味、伝説になっているという話です。
「川には魚道といって、魚が遡上するために設けた水路があります。そこをウォータースライダーのように下るのですが、水の様子を確かめようと川に降りたら、予想以上に増水していて足がつかない。そのまま、魚道に吸い込まれてしまって……。浅い部分があったので助かりましたが、危うく溺れるところでした。流れも早く、怖かったですね」
その実体験を経て、お客様の安全を守る大切さを、身をもって知ったという佐藤さん。100%大丈夫はありえない。常にその意識でボートを操作しています。

(※)ラフティング協会によるガイド認定制度。安全なツアー運営に必要な技術や知識を学び、試験を通して認定を受けます。
ボート操作に必死だった、ガイド1年目。
先輩のひとことで、プロ意識が芽生えた。
ラフティングガイドとしてデビューするまでの研修期間は、およそ1カ月半。未経験から考えると短く感じますが、佐藤さんは「技術を身につけても、最初の1年は余裕なんてなかった」と振り返る。
「正確にボートをコントロールすることに手一杯で、先輩のようにお客様を楽しませるようなトークがなかなかできなくて。『もう少し笑顔で!』とよく言われていましたし、きっと必死さがお客様にも伝わっていたと思います」
お客様からみれば、経験10年のガイドでも、デビューしたばかりでも同じ。そんな先輩の言葉に、プロフェッショナルとしての意識が芽生えたと話します。
「お客様には、なによりも『楽しい!』と感じてもらいたいですし、『また来るよ』なんて言ってもらえるともう、うれしいですね。何度も川に飛び込んだり、ボートをひっくり返したりすれば結構、ゼーゼーしますが(笑)」
それでも、笑顔で帰ってもらいたいという一心で、今日も川に飛び込み、お客様を投げまくる佐藤さん。そのスタイルはすっかり知られるようになり、あえてずぶ濡れになりに来るお客様もいるのだとか。
ラフティングや熱気球を通して、
地元の子どもたちが喜ぶ姿が嬉しい。
「ラフティングはニセコを代表するレジャーですが、少し前まで地元の人には『観光客向け』のイメージもありました。地元の子どもたちにこそ、ニセコを体験してほしい。私たちはそう考え、学校行事や授業でラフティングを体験してもらっています。地元の子どもたちが喜ぶ姿を見るのは、何よりも嬉しいですね」
『北海道ライオンアドベンチャー』では、ニセコでは珍しい熱気球の係留フライトを実施しています。これも、夏の花火大会の時、子どもたちを無料招待。在籍するガイドの半数が地元出身者というのも同社の特徴です。
「一方で、全国各地や海外からやってくるお客様と触れ合い、知らない話を聞けるのも、この仕事の面白み。英語は得意ではありませんが、地元出身の私がまちの説明をすると、興味深そうに聞いてもらえるんですよ」
ラフティングのほかサイクリングツアー、スノーモービルなど、オールラウンドにガイドをこなす佐藤さん。どうすればもっと魅力的なアクティビティを提供できるか。経営的な視点も芽生えているようです。
「長く現場のガイドを続け、今以上のサービスを提供したいですね。背負い投げの次を考えています(笑)」
体重100キロオーバーという佐藤さん。大きな身体とやさしい笑顔のちょっとアンバランスな感じも魅力です。
シゴトのフカボリ
アウトドアガイドの一日
5:00
熱気球会場で天候等の確認
6:00
スタッフとともにフライトの準備
6:30
フライト開始
7:00
片付け、撤収
7:30
一度会社に戻り、ラフティングベースへ移動
9:00
ラフティング開始
12:00
昼休憩
13:00
ラフティング開始
16:00
終了・撤収
17:00
会社に戻り、片付け、退勤
*夏のスケジュール例です

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具

ナイフとフリップライン
ナイフは、必ず携帯している道具の一つです。緊急時に身体にからまったロープを切断するほか、水圧でボートが岩に張り付いてしまった場合など、ボートを切り裂いて危険を回避するために使います。フリップラインは、ひっくり返ったボートに引っ掛けてもとに戻す道具。ナイフは幸い、使ったことがありませんが、ボートをわざとひっくり返すので、フリップラインは毎日のように使っています。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

高校を卒業すると、まちを離れる人が多いのですが、私はアウトドアが盛んな地元で、いつも自然のなかで働けて、もう万々歳という感じです。ガイドの仕事をしていると、不測の事態が起きても対処できる能力も身に付きますし、みんな健康で、若々しい! ぜひ、オススメしたい仕事ですね。

株式会社北海道ライオンアドベンチャー

2006年、アウトドアサービス会社などを前身に創業。ラフティングやトレッキングのほか、熱気球、バギーなど独自サービスを数多く提供しています。

住所
北海道虻田郡ニセコ町中央通60-4
TEL
0136-43-2882
URL
https://hokkaido-lion.com/niseko/

お仕事データ

大自然を、最高の舞台に。
アウトドアガイド
アウトドアガイドとは
自然の魅力を伝えながら、
安全で感動的な体験を届ける仕事。

アウトドアガイドは、登山やトレッキング、カヌー、スキー、キャンプなどのアウトドア活動において、お客様を安全に案内しながら自然の魅力を伝える仕事。単に目的地まで連れていくだけでなく、動植物の知識や地形の解説、自然環境への配慮など、その土地ならではの自然や文化の魅力を伝え、特別な体験をプロデュースするのも大切な役割です。活躍の場は国立公園や山岳地帯、川や湖、離島など多岐にわたり、ツアー会社や宿泊施設に勤務するケースのほか、フリーランスとして独立するガイドも多数。国内にとどまらず、海外のフィールドで活躍するアウトドアガイドも存在します。自然と人をつなぐ、やりがいあふれる職種です。

アウトドアガイドに向いてる人って?
自然を愛し、人を安全に導く
リーダーシップがある人。

アウトドアが好きで、山や川、海などの自然環境に強い興味・関心を持っていることが大きな素養。お客様の安全を最優先に考え、状況に応じて冷静かつ的確な判断を下せるリーダーシップも欠かせません。天候の急変や体調不良など、予測不能なトラブルに直面することもあるため、臨機応変な対応力も重要です。また、初対面のお客様とすぐに打ち解け、不安を取り除きながら楽しい体験を提供するためのコミュニケーション能力も必要。自然の素晴らしさを言葉で伝えることが好きな人に、特に向いているでしょう。

アウトドアガイドになるためには

アウトドアガイドになるために必須の資格や学歴はありません。ただし、活動するフィールドに応じた専門資格を取得しておくと、就職や独立の際に大きく有利に働きます。登山なら「登山ガイド資格」、川や湖では「カヌーインストラクター」、自然解説を行うなら「自然体験活動指導者(NEAL)」などが代表的。環境や観光を学べる大学・専門学校への進学後、アウトドア関連企業やツアー会社への就職を目指すルートが一般的。まずは現場でアシスタントとして経験を積みながら、資格取得やスキルアップを重ねていくのが王道です。

ワンポイントアドバイス
「自然体験」へのニーズが高まり、
ガイドの存在価値がますます上昇中!

コロナ禍を経て、密を避けられるアウトドアへの関心が急上昇。登山やキャンプ、川遊びなどを楽しむ人口が増え続けており、安全に自然を楽しむためのプロフェッショナルとしてアウトドアガイドへの需要が高まっています。また、インバウンド(訪日外国人)向けのネイチャーツアーも拡大傾向にあり、語学力を備えたガイドは特に重宝される存在。自然環境の保護意識が世界的に高まる中、ただ案内するだけでなく「自然を守りながら楽しむ」という価値観を伝えられるガイドは、今後ますます求められる人材といえます。