市ノ渡 佳恵さん
インタビュー公開日:2018.02.09

中学生のころは食品成分表を
眺めるのが好きでした(笑)。
病院や福祉施設、学校などで提供される給食。その献立の作成や栄養管理、衛生チェックといった仕事にあたるのが管理栄養士です。
「私は中学校の家庭科の授業で配られた食品成分表を眺めるのが好きでした。変わってますよね(笑)。当時はダイエットに興味があるお年頃。その冊子を見ながら食事の栄養価を計算したり、低カロリーのお菓子を作って友だちに配ったりしていました」
北広島病院の管理栄養士として働く市ノ渡佳恵さんが、この道に興味を抱いたきっかけをにこやかに教えてくれました。中学生のころにはすでに管理栄養士という仕事があることを知り、国家資格の取得に向かって一直線。あこがれの教授が教鞭をとる(当時)天使大学に進みました。
管理栄養士の新人時代は、
厨房でハードに修業!
市ノ渡さんが最初に選んだ就職先は給食委託会社。さまざまな現場の経験が積めることから、管理栄養士にとっては登竜門的な存在なのだそうです。
「病院や学食、介護施設にプロスポーツチームの寮などを受け持ち、幅広い食の提供に携われました」
新人時代は管理栄養士でも厨房で手を動かすのが通例。市ノ渡さんも、時には朝4時から勤務をスタートするようなハードな修業時代を過ごしました。
「施設ごとに栄養価の決まりがあり、その範囲内でコストと美味しさのバランスを保つための工夫に力を入れていました。ただ、厨房からは利用者様の顔が見えず、もっとそばに寄り添いたいという思いが湧いてきたんです」
給食委託会社ではステップアップに伴いマネジメント側に移るケースが多いとか。現場志向の市ノ渡さんは、食べてくれる人のそばで働きたいと北広島病院の管理栄養士に転職することを決めました。
一人ひとりの状態にあわせて
食事に工夫を取り入れています。
北広島病院は通院・入院の患者様ともに地域のお年寄りが多いそう。市ノ渡さんの仕事は、主に食事の栄養指導や栄養管理、入院食の検食(自分で食べてチェック)です。
「例えば糖尿病の通院患者様には食事の記録を付けてもらい、それを見ながら指導にあたります。でも、塩分や糖分は何グラムまでといっても分かりにくいですし、食習慣をいきなり変えるのも辛いですよね。なので、せめてこの野菜を食べましょうと具体的なイメージを持てるように説明しています」
北広島病院では、入院患者様の献立づくりや調理は外部の委託会社に任せています。けれど、飲み込む力が弱い方にはとろみをつける素材を使ったり、アレルギーの対応をしたり、一人ひとりに合わせた食事を指示するのは市ノ渡さんの役割。
「ただし、食材の価格や手間のかけ方と、予算とのバランスを取るのが一苦労。工夫する幅をキッチリ決めることも大切です」
院内の他職種のスタッフは、
頼れる情報源でもあるんです!
市ノ渡さんにとって念願だった患者様とのふれ合い。直接お話しするからこそ、「食」から見える背景もあるそうです。例えば、検査結果がいつも思わしくない女性の栄養指導にあたった時のこんなケース。
「心の内に食事が乱れている原因があると打ち明けてくれたんです。たまたま話しやすい相手と感じてもらえたのかもしれませんが、聞いてくれるだけで楽になることってありますよね。それで、食事の乱れには心の問題も関わっていると思って、心理カウンセラーの資格も取ったんです」
入院患者様の場合は、ミールラウンドという食事の見回りで摂食量や好みを把握していきます。
「だけど、一人で収集できる情報には限界があります。そんな時に頼れるのが看護師やリハビリスタッフといった他職種。患者様と常に接している分、『肉が固すぎる』とか『果物なら食べられる』とか具体的な改善につながることを教えてくれます」
大好きな食と、
ずっと関われる仕事です。
ここ最近まで、市ノ渡さんはモヤモヤ状態だったと胸の内を正直に話します。大学病院のように管理栄養士が医師や看護師とともに患者様を診て回る、NST(栄養サポートチーム)を取り入れたいとあこがれを抱いていたそうです。
「でも、地域の病院に求められていることは、高度な栄養管理ではないと思い直しました。患者様の病態に合わせた食事の中で、栄養バランスだけではなく、食べることの大切さや楽しさを伝えることが今の使命なんだって思っています。健康的な食事をしっかり食べられる患者様は、やっぱり長生きなんですよね。」
そういって瞳を輝かせる市ノ渡さんに、気になっていた質問をぶつけてみました。家に帰ってからも料理を作るの?
「私は朝昼晩と検食で済ませていますが、主人のご飯は用意します。お休みはキチンと二人分作りますしね。あと、スーパーに行くついでに患者様が食べそうなお惣菜をチェックしたり。え?職業病(笑)?いえいえ、私にとっては四六時中好きな食に携わっていられるという感覚なんです!」
シゴトのフカボリ
管理栄養士の一日
8:20
出勤/朝食検食/情報収集
9:00
病棟からの指示内容再確認
10:00
厨房朝礼/食事栄養指導/病棟巡回
12:00
ミールラウンド/カルテチェック
13:00
昼休み
14:00
献立確認
15:00
委員会準備/病棟指示内容確認
16:00
記録作成/衛生書類確認
17:00
検食/日誌作成
17:30
退勤
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

私は食が大好きなので、それを通して幸せを届けられる仕事に誇りを持っています。皆さんも、早いうちから自分の「好き」を見つけて向き合ってみてください!

社会医療法人即仁会 北広島病院

北広島市周辺のさまざまな診療所や診療科と連携し、地域の中核となる医療サービスを届ける病院。病床数は90床。診療科目は内科・呼吸器科・循環器科・消化器科・整形外科・脳神経外科。

住所
北海道北広島市中央6丁目2番地2
TEL
011-373-5811
URL
http://www.sokujinkai.or.jp/

お仕事データ

健康をサポートする食と栄養の専門家。
管理栄養士
管理栄養士とは
食や栄養の専門知識を生かし、
人々の健康をサポート。

「食」や「栄養」の専門知識を生かして、人々の健康をサポートする仕事。病院や保健所、学校の給食施設、介護施設などで栄養やカロリーを計算して献立を作成するほか、アスリートの栄養管理や美容施設でのダイエット相談、地域の食育セミナー、食品開発など、さまざまなフィールドで活躍しています。管理栄養士は栄養士の上位にあたる資格で、傷病者の症状や体質を考慮した栄養指導や給食管理を行えるのが特徴です。

管理栄養士に向いてる人って?
食べることへの関心は必須。
人に対する配慮や協調性も大切です。

食や栄養に関する高い知識を持つとともに、食べることへの関心が強いことが必須。好みやアレルギーに応じたメニューを考えることもあるため、きめ細かな配慮や工夫ができる人が向いているでしょう。また、病院では患者様とコミュニケーションをとったり、医師や看護師と連携したりすることから、協調性を持って物事を進められる力も大切です。

管理栄養士になるためには

管理栄養士として働くには国家資格が必要。栄養士の資格を取得したあとに、管理栄養士の国家試験に合格しなければなりません。ルートはさまざまですが、4年制大学の管理栄養士養成課程を修了するのが最短です。栄養士養成施設を修了する場合は2年制の専門学校・短大なら実務経験3年以上、3年制の専門学校は実務経験2年以上、4年制の専門学校・大学は実務経験1年以上を積むことで受験資格を得られます。

※管理栄養士の国家試験受験資格については、詳しくは厚生労働省のホームページをご確認ください。http://www.mhlw.go.jp/

ワンポイントアドバイス
独立・開業に加え、
フリーランスとして活躍する人も。

管理栄養士は会社員として働くイメージかもしれませんが、中には独立・開業している人もいます。例えば、テレビや雑誌で見かける料理研究家だったり、セミナーや料理教室を開いたり、自らのビジネス感覚によって活躍のフィールドを広げられます。また、フリーランスとして仕事に取り組むことも可能。いずれのケースでも管理栄養士同士のつながりはもちろん、数多くの職種と信頼関係を高めることが道を開くカギとなります。

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