千田 恵美さん
インタビュー公開日:2024.03.08

環境、関係者、住民へ配慮しつつ
洋上風力発電の建設を推進していく。
『洋上風力発電を知る〜今後の展望や先行地域の取り組みをご紹介〜』。取材直前に札幌市内で開催されたセミナーのタイトルです。海の上に風車を設置する洋上風力発電について、広く知識を得てもらうことを目的としたものでした。
「今回は、秋田県の先行事例の紹介なども行い、行政担当者にも関心を持っていただける内容となっています」
そう話すのは、北海道経済部の千田恵美さん。ゼロカーボン産業課の主任さんで、北海道における洋上風力発電関連の業務を主に担当しています。今回のセミナーもその一つです。
「陸上の風力発電は環境影響評価(アセスメント)が重要なポイントとなりますが、洋上風力発電では環境への配慮に加えて、漁業への影響、貨物船やフェリーの航路との関係など、様々な協議が必要となります」
調整が難しい場面もあるものの、拙速に結果を急ぐのではなく、ていねいな説明を行い、理解を得たうえで、再生可能エネルギーの普及につなげたいと胸を膨らませる千田さんです。
食品産業の振興を図る制度などを扱う
行政の役割に目を向け北海道庁へ。
大学を卒業して北海道庁に入庁し、9年目を迎えた千田さん。現在のゼロカーボン推進局に移るまでは、北海道の産業振興などを行う部署・部門を長く経験してきました。
「私が主に関わってきたのは、食品など北海道物産のプロモーションです。これは、入庁の際に希望していた分野であり、タイミングよく着任することができ、本当に楽しく業務に取り組んでこられました」
高校時代に好きだった科目は生物。そして、食べることが大好き。この二つに関連する分野として食品関連の仕事に興味を抱き、大学では食物生産を担う農業を専攻しています。学んでいくうちに、食品をつくることより、食品産業の振興を支援する制度の運用などを担う行政の役割に目が向くようになったそうです。
「行政機関との共同研究も盛んな国立大学で学んでいたこともあり、国などの制度的なことにも、どちらかといえばなじみがありました。そのうえで、地元の北海道に戻りたいという気持ちもあり、北海道庁を目指しました」
初任地の胆振総合振興局では、物産・観光振興を担当。その次の勤務地である石狩振興局でも同様の業務を担当しました。
フェアで触れた事業者さんの笑顔が、
道庁職員としての自分の原点となる。
「胆振総合振興局、石狩振興局、ともに商工労働観光課という部署に所属していました。それぞれの地域の物産と観光誘致に関するプロモーションの実施と、その取りまとめが私の主な業務でした」
地元の食品会社などの事業者さんと連携しながら、例えば加工食品の首都圏・大阪圏などへのアピールを行っていたそうです。さらに、石狩振興局では、一定以上の規模の商業施設の建設に際し、生活環境保持のため配慮を求める大店法に関する事務的な業務や同法に関連する審議会の開催なども担当しました。
「入庁して2年目、胆振総合振興局に在籍していた時、北海道のマーケティング支援を行う『どさんこプラザ』で、胆振フェアを初開催しました。上司のサポートを受けつつ、企画からすべてに関わりましたが、その時に触れた事業者さんの笑顔が、道庁職員としての私の思いの原点となりました」
地域振興に意欲的なその事業者さんから、直接、お礼を言われたのだそうです。「千田さんはよく頑張ってくれた。こういう取り組みをどんどんやらないとね」との言葉から熱い思いが伝わり、この笑顔のために頑張らないといけないと思ったと目を輝かせます。
北海道の物産をアジアへと売り込む。
ASEAN向けのプロモーションを担当。
入庁から5年目に本庁へと異動になり、担当したのがASEAN(※)向けの物産振興業務。配属となったのは経済部の国際経済室で、ASEAN加盟国に対して北海道の食と観光のプロモーションを行うことが仕事です。
「ベトナム、マレーシアなどの国々で、北海道の食品を集めたイベントを開催したり、道内の事業者さんと一緒に現地に赴き、市場調査を行うといった事業を担っていました」
北海道に拠点を置く商社などに事業運営を委託するかたちで、事業者さんとフェアなどを実施するとともに、現地の人の反応を道内企業にフィードバックし、商品開発に役立ててもらうという活動にも取り組みました。
「胆振、石狩の振興局に在籍している時ほどは、地域の事業者さんとのやりとり自体は密ではなくなりましたが、事業者さんは何が気になり、どんな情報が欲しいのかといったことに直接、触れてきた経験を活かすことができました」
地域の物産を国内の大消費地に売り込む振興局をはじめ、そこで力をつけた事業者さんを世界へとつなげる本庁の取り組みも重要な役割なのだと千田さん。「地域を元気にしたい」という強い思いが感じられます。
※ASEAN(アセアン)=東南アジア諸国連合。インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ブルネイ、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムが加盟する東南アジアの地域協力機構
自らの役割、責任を常に感じながら、
信頼される行政スタッフを目指す!
ASEAN向けの物産振興などを担当した後は、貿易振興事業などを行うジェトロ北海道に出向となった千田さん。輸出支援・貿易相談などが主な業務でした。
「海外への物産の振興という意味合いでは同じですが、ジェトロ北海道では、道内の事業者さんを現地のバイヤーとつなげたり、煩雑な輸出手続きなどに関するアドバイスを行うといった業務も多かったですね」
宗教的に避けたい食材の知識、現地で好まれるパッケージデザインといった情報を事業者さんにフィードバックしたり、現地のバイヤーに商品の魅力をしっかりと伝えることも大切な仕事だったと千田さん。
「物産などのプロモーションに携わるなか、漁業者の方々との接点もありましたが、それは現在の業務でも役立っています。漁業者の方々の仕事ぶり、思いに触れてきたことで、洋上風力発電の事業における調整の際にも、しっかり寄り添うことができると思うんですね」
北海道でも大切なミッションの一つである再生可能エネルギーに関われていることにやりがいを感じると千田さんは話します。「信頼される行政スタッフとなること。」役割と責任の大きさが、その言葉から感じられました。
シゴトのフカボリ
北海道職員の一日
8:45
出勤、再生エネルギー関連の新聞記事のチェック・共有、メールチェック
9:30
各種報告書・記録などの作成
12:00
昼休憩
13:00
事業者さんとのオンライン面談
14:00
各種書類作成など
17:30
退勤
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

私は、食品や物産を通した産業振興に興味があり、関連する部署で業務を行ってきましたが、現在はゼロカーボン関連の仕事に携わるなど、いろいろな業務に関われるのが道庁の仕事の魅力。好奇心が刺激されますね。

北海道庁

北海道における政策立案、各種施策や事業の企画・実施などを行っています。

住所
北海道札幌市中央区北3条西6丁目
URL
http://www.pref.hokkaido.lg.jp

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市区町村の運営サポートや
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