吉川 菜摘さん
インタビュー公開日:2018.06.27

テレビ局でバイトをするうちに、
タイムキーパーにあこがれました!
テレビ番組を「時間」の視点から管理し、スムーズな進行をサポートするのがタイムキーパー。失礼ながら、あまり聞き慣れないこの仕事をメインにAD(アシスタントディレクター)として奮闘しているのが吉川菜摘さん。小さなころからタイムキーパーを夢見ていたのでしょうか?
「いえいえ(笑)。私はテレビっ子でしたが、タイムキーパーという言葉を聞いたのは専門学校に進んでからです」
授業では模擬番組の制作や編集などテレビ業界の仕事を学び、次第にディレクターにあこがれるようになったとか。けれど、テレビ局でアルバイトを始めてから、その対象がタイムキーパーに変わったというのです。
「女性のタイムキーパーがインカムを使って『あと30秒!』『時間が押しているので、この項目をカットします!』とテキパキ指示を送っている姿を目の当たりにしました。とにかく格好良く映って、自分もタイムキーパーになりたいと強く思ったんです」
タイムキーパーは、
テロップを流すのも仕事です。
専門学校の仲間の中でもタイムキーパーを目指したのは吉川さんただ一人。それでも、夢に向かって一直線。アルバイト中にあこがれを抱いた女性が所属するエイチ・テー・ビー映像に就職しました。
「最初のうちはADとしてロケの荷物運びや買い出し、編集作業に携わりました。今はタイムキーパーがメインの担当ですが、その他の雑用をこなすこともあります」
吉川さんはタイムキーパーの仕事も徐々に教わるようになり、現場の先輩から番組制作の流れや60進法(60秒で時間を計算する方法)などをミッチリ仕込まれたといいます。
「最初はサブコントロールルーム(音声や映像、照明の切り替えや調整を行う場所)に座るだけでも緊張。実は、私たちはテロップを流す機械も操作するので、間違えないよう気を張らなければならないんです」
番組が始まる前に、
秒刻みの進行表を作成!
吉川さんは深夜帯に放送される10分のお知らせ番組、昼間の30分番組、さらに夕方1時間の情報番組と着実に経験を積みました。現在は北海道の朝の人気情報番組「イチオシ!モーニング」を担当しています。
「平日は朝の6時から番組が始まるので、私は深夜2時15分にはテレビ局に着くようにしています。まずは編集長からコーナーの順序や流れが書かれた構成シートをもらい、それをもとに正確な時間割となる『進行表』をつくるんです」
進行表を見せてもらうと、特集や各コーナー、天気予報のスケジュールが秒単位で刻まれていました。朝の5時には番組の全スタッフと共有し、カメラのカット割りやVTRを流すタイミングを打ち合わせしているとか。いやはや、何とも責任重大な役割だということが分かります。
わずか3秒遅れるだけでも、
番組全体に影響することも。
「本番がスタートしたら、タイムキーパーは喋りっ放しです」。吉川さんはいたずらっぽく笑いながら放送中の仕事について教えてくれました。
「いくら秒単位で進行が決まっていても、その通りに進むことってほとんどないんです。だから、『3秒押している』とか『VTRまで15秒』とか現場のディレクターに常に指示を送っています」
ところで、3秒時間が押すだけでも影響って大きいもの?
「もちろんです。一つのコメントが3秒押しても、5回重なればもう15秒。一歩間違えると、せっかくスタッフの皆さんが企画してくれたコーナーを丸ごとカットすることにもつながり兼ねません。そうならないためにも、サブコントロールルームのディレクターとどこで時間を修正するか判断しているんです」
なるほど。ふだん何気なく見ている番組の裏には、タイムキーパーの奮闘が隠れているのですね。
テレビ業界に興味があるなら、
タイムキーパーもオススメ!
「イチオシ!モーニング」は生放送。毎日何が起きるか分からないことから、吉川さんは出勤前には不安で胸が一杯だとつぶやきます。
「でも、ジェットコースターのように毎日に変化があるから、勉強になりますし、反省を次に生かせます。思い通りに時間の管理ができた日は充実感で一杯!」
タイムキーパーはテレビ業界の中でも女性の比率が高く、ロケや現場に出ることがない分だけ体力の負担は少ないそうです。
「私の担当番組は月〜土曜日の帯番組なので休みもきちんと取れますし、イメージよりもハードではないと思います。漠然とテレビ業界にあこがれを持っている人には、タイムキーパーという道もあるんだってオススメしたいくらい」
では、最後に質問!あこがれの先輩には追いつけそう?「う~ん…まだまだです。だからこそ努力あるのみ!」
シゴトのフカボリ
AD兼タイムキーパーの一日
0:30
起床
2:15
出勤(タクシー)
2:30
進行表作成
5:00
番組前の打ち合わせ
6:00
番組スタート・指示出し
8:00
番組終了
9:00
食事・反省会
10:00
翌日の準備・打ち合わせ
11:15
帰宅
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
ストップウォッチ&筆記用具
ストップウォッチはデジタルとアナログの二種類を持ちます。アナログは5秒刻みの目盛りが付いているので時間を計算しやすいのが特徴です。収録中は4色ボールペンを駆使して、予定している時間は緑、実際に入った時間が赤というように色を変えながら進行表に修正を書き込んでいます。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

私はテレビ局でのバイト中に「タイムキーパーになりたい!」と夢を抱いて、そのために走り続けてきました。だからこそ、今は充実した毎日を送っています。皆さんも自分の「やりたい」を大切に未来に進んでください!

エイチ・テー・ビー映像株式会社

1992年、テレビ・カメラマンとディレクターの会社「エイチ・テー・ビー映像」として誕生。以来、「コンテンツ王国」北海道を強みに、テレビ番組(地上波・BS・CS)の企画・制作や企業CM、学術VPなどを制作。映像コンテンツによるワンストップのソリューションを広く提案しています。2018年創成スクエアに移転。

住所
北海道札幌市中央区北1条西1丁目6
さっぽろ創世スクエア内
TEL
011-205-8000
URL
http://miruca.co.jp/

お仕事データ

番組進行の要!
タイムキーパー
タイムキーパーとは
テレビやラジオの番組を
放送時間内に収める技術職!

テレビやラジオの番組を制作する際、放送時間内に収まるよう時間の管理を担当するのがタイムキーパー。番組の進行が秒単位で刻まれる進行表を作成し、それをもとにCMまでの秒数やVTRを差し込むタイミングを計ってディレクターやスタッフに伝えています。とりわけ生放送の場合、「コーナーの差し替え」「ニュース速報の飛び込み」など急な内容変更が発生することもあり、ベテランでも難しいといわれています。ディレクターの指示に従い、字幕やVTRを流すこともあります。

タイムキーパーに向いてる人って?
管理能力とコミュニケーション力、
臨機応変な対応力が求められます。

タイムキーパーはテレビやラジオの制作現場で、スムーズな進行と時間構成を守るポジション。管理能力の高い人材が求められます。番組には多くのスタッフが関わっているため、コミュニケーションを円滑に取れる人も向いているでしょう。また、生放送の現場で突発的なアクシデントが発生した場合でも、臨機応変に対応できる冷静な判断力も重要です。

タイムキーパーになるためには

タイムキーパーになるための特別な資格はありません。多くの場合、テレビ局やラジオ局が制作会社にタイムキーパーの仕事を依頼するため、映像や収録関係のプロダクションに就職するのが近道です。また、映像系やメディア系の専門学校で業界の知識を学ぶのもオススメ。現役で活躍する人のアシスタントとして仕事を学び、独り立ちするルートもあります。

ワンポイントアドバイス
テレビ業界の中でも女性が多い職種。

タイムキーパーはインカムを通してスタッフに指示を伝えることが多い仕事。そのため、声が高く通りやすい女性が多いのも特徴です。秒単位で時間を確認するということもあり、細やかさが求められることも理由の一つといわれています。スキルと経験を積み重ねて行けば一生の仕事にできることから、結婚や出産で一度引退しても復帰する人が少なくないようです。