神保 明梨さん
インタビュー公開日:2019.03.29

昔から手を動かすことが好きで、
ものづくりに興味を抱きました。
小樽市の大和水産株式会社は、焼きちくわや揚げかまぼこ、ナルトなど私たちに身近な魚肉の「練り物」を手がける企業です。創業は大正10年と歴史が古く、長年蓄積された技術による確かなおいしさに定評があります。
高校卒業後、ここで食品製造スタッフとして働いているのが神保明梨さん。小さなころから自らの手を動かす工作やお絵かきが好きで、自身にはものづくりの分野が向いているのではないかと思うようになりました。
「小樽水産高校の水産食品科に進み、食品製造の温度や湿度の管理、気を付けなければならない菌の種類、衛生面などについて学びました。道内では珍しく学校に工場も併設されていたので、サバの缶詰やアジの干物をつくる経験も積めたんです」
食品製造の仕事に狙いを定め、就職活動を始めたのは高校2年生の冬。学校で大和水産の求人票を見つけ、働くことを決めました。
食品製造の仕事は、
徹底した衛生管理が大切です。
神保さんは新卒社員として約3年前に大和水産に入社。まずは食品製造の仕事のキモともいえる衛生管理から教わりました。
「私たちは万一にも食中毒をはじめとする重大事故を招いてはいけません。なので、粘着ローラーのかけ方から手洗いの方法、アルコール消毒にエアシャワーの使い方までしっかりと指導していただきました」
その後は袋詰めを中心とする部署に配属。新人時代は商品を入れるための箱を組み立てたり、包装を手伝ったり、先輩の横で簡単な作業から徐々に覚えていきました。
「当社は地元の若い人を積極的に採用しているので、年齢の近い先輩も多く和気あいあいとした雰囲気。指導の仕方も本当にやさしくて、4~5カ月くらいの長い時間をかけて仕事に慣れさせてくれました」
袋詰めの機械が導入され、
作業効率がグンと高まりました。
神保さんの入社当初、袋詰めはまだ手作業でした。けれど、2年ほど前に袋をセットするだけで自動包装される機械が導入され、作業時間が劇的に短縮されたそうです。
「おでんや鍋物など、練り物の売れ行きが良い冬場は繁忙期。以前は生産予定を達成するために仕事に追われることもありましたが、包装の機械が導入されてからはスピーディーに出荷できるようになったんです。会社としてもより多くの注文に応えられるようになったため、売上に貢献できているという実感も湧いてきました」
今は作業の流れや工程の段取りが読めるようになり、心に余裕が持てるようになったとか。新人時代に自分が助けられたように、神保さんは若手スタッフの仕事を積極的に手伝っています。「チームの皆でカバーし合うのが昔からの社風。そうして作業の効率アップを突き詰められるのも面白みです」と満面の笑みを浮かべました。
地元の学校給食にも、
私たちの商品が使われています。
神保さんが働く部署は商品の二次加工も担当。出来上がった焼きちくわを細かくカットしたり、さつま揚げの厚さを均等にそろえたり、出荷前の最終調整を行っています。
「機械の設定によってカットの厚さや形を変えることはできますが、それでもすべてが均等に整うわけではありません。なので、ベルトを流れてくる素材の中から厚すぎたり大きすぎたりするものを目で見て取り除いています」
さらに、金属探知機やX線探知機で異物が入り込んでいないかチェックし、ようやく出荷に至ります。これほどまでに手間をかけた商品が、消費者のもとに届くことをどのように感じているのでしょう?
「当社は大手企業の業務用OEM(商品の生産を委託されること)が多く、自分が手がけた商品をスーパーで見かけることは少なくて…。でも、地元の小中学校の学校給食に使われているので、小樽の子どもたちに確実に食べてもらっているというのは大きなやりがい!」
単純作業に見えますが、
小さな変化が面白い仕事!
インタビューの間に神保さんから数多く飛び出しのが、「食品製造の仕事は単純作業に見えるけれど、単純作業ではないんです」という言葉。同じ作業を繰り返すことも少なくない反面、作業効率を高める工夫をしたり、掃除や機械操作をしたり、仕事はイメージ以上にバラエティに富んでいるそうです。
「製造する食品によっても作業は異なりますし、形をチェックするにも日によって仕上がりが違います。毎日のように小さな変化が起こるので飽きることがないんです。それに、自分のスキルアップが生産数という目に見える数字につながりやすいため、慣れてくると楽しめると思います」
神保さんは海外からの実習生を指導するなど仕事の幅も広がってきました。けれど、「まだまだ先輩たちには追いつけません」とあくまで謙虚です。
「もっと多くの仕事にチャレンジして、安心して任せられることを増やしていきたいです」
こう言葉を継いだ神保さんの瞳には強い決意が揺れていました。
シゴトのフカボリ
食品製造スタッフの一日
8:15
出社
8:30
さつま揚げの袋詰め
10:30
出荷作業
11:30
掃除
12:00
昼休み
13:00
ちくわの袋詰め
15:30
掃除/機械洗浄
17:00
作業日報の作成
17:30
退社
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

私は小樽水産高校で学んだ食品製造や衛生の管理方法を今の仕事に生かすことができました。学校で教わったことは決してムダにならないと思うので、一生懸命勉強して将来につなげてください!

大和水産株式会社

かまぼこをはじめとする魚肉練り物を年間約3500トン生産。ほかの食材の味を邪魔しない薄味を基本に、味が浸み込みやすい製法を採用。そのおいしさは、道内外の業務用食品として流通。「安心・安全」でおいしい商品をお届けできるよう、一般社団法人日本冷凍食品協会の認定工場にして、食品安全マネジメント規格「JFS-B」の適合証明を認定。

住所
北海道小樽市オタモイ3丁目8番2号
TEL
0134-26-0001
URL
http://www.otaru-daiwa.com/

お仕事データ

多くの人においしさを!
食品製造スタッフ
食品製造スタッフとは
食材の下処理や加熱、調理を行い、
たくさんの「ウマい」をつくる!

食品メーカーをはじめとする企業の工場で、お弁当やお菓子、パン、水産加工品、麺などの食品を手がけるのが食品製造スタッフ。大規模な工場では機械化が進み、食材の洗浄や下処理、加熱、調味、包装など工程ごとに生産ラインを分けて作業を行っています。食品の種類や工場によっては手作業を大切にする企業もあり、職人のようにパンやスイーツをつくる食品製造スタッフも少なくありません。家庭の食卓でよく見かける商品を手がけるケースでは、広くおいしさを届けられるやりがいが感じられます。

食品製造スタッフに向いてる人って?
コツコツ型で衛生面にも気を配れる、
「食」が好きな人。

食品製造スタッフは、当然のことながら「食」が好きな人に向いている仕事です。機械や調理器具などをきれいに洗浄したり、自らの身だしなみを徹底的に整えたりしなければならないため、衛生面に最大限の気遣いができることも必要です。また、製造の際には正確な作業を繰り返さなければならないため、いわゆる「コツコツ型」にも面白い仕事に映るでしょう。

食品製造スタッフになるためには

食品製造スタッフになるために必要な資格や学歴はありません。高校や専門学校、短大・大学卒業後、食品メーカーなどの採用試験を受けて、合格するのが一般的なルートです。未経験からチャレンジできる職場も多く、アルバイトやパートスタッフとして働いて、正社員登用の道のりを歩む人も少なくありません。ある程度経験を積むことで部門のリーダーや工場長へのステップアップも可能です。

ワンポイントアドバイス
気温や湿度、食材の品質など、
日々の変化によって小さな工夫を。

現在では機械化された工場が多いものの、やはり人の「感覚」もおいしさを左右する大きな要因の一つです。その日の気温や湿度を肌で感じて投入する水の量を調整したり、食材の品質を見極めて加熱時間を変えたり、一定のクオリティを届けるためには小さな工夫が必要。食品製造スタッフの仕事は一見すると単調な作業に思えますが、日々変化を感じながら働けるのです。

ほかにもあります、こんな仕事。