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食肉加工スタッフ_多田  良平さん
インタビュー公開日:2025.05.20

全国で人気の「豊西牛」のふるさと。
5000頭を飼育するビッグファーム。
「豊西牛」といえば、帯広をはじめ札幌の飲食店や「ふるさと納税」でも使用され、デパートでも扱われるなど高い評価を得ているブランド牛肉。その名を冠した有限会社トヨニシファームは、今から10数年前にこのブランド牛を開発した牧場です。従来では「脂身が少なく肉牛には適さない」と言われた乳牛の品種「ホルスタイン」の赤身に注目し、一躍人気ブランドへと成長させました。現在は5000頭以上を飼育するほか、加工と販売までを自社で手がけており、その先進的な取り組みは全国的にも知られています。
今回の主人公、多田良平さんは、同社の加工スタッフとして2022年から働く人物。身長191センチという長身に肌つやのいい笑顔は、さながらメジャーリーガーの大谷翔平選手かのよう。20代のような若々しさに、年齢を聞いた取材陣が驚くと「いいお肉を食べてますからね」とメジャー級(?)のジョークを飛ばしてくれました。
「牛肉はたとえ同じ肉でもカットの仕方やスジの処理の仕方で、食感や味わい、香りといった全てがまるで別物のように生まれ変わります。また部位によっても用途が異なるので、それぞれの特性を理解した上で最適な形にすることが重要なんです」
そう真剣に語るまなざしもスポーツ選手のような多田さん。まずは彼のこれまでを振り返っていただきましょう。
精肉部門でひとすじで17年。
「トヨニシ」との運命的な出会い。
ご出身は帯広市。子どもの頃は特に明確な将来の夢がある訳ではなかったそうで、音更高等学校を卒業後に偶然求人で見かけた地元のスーパーに就職しました。そこで精肉部門に属し、初めて包丁を手に取ります。
「いわゆる『精肉コーナー』の担当として、あらゆる肉をカットし、スーパーに並べる仕事をしていました。はじめの会社は2年、次に移った会社では15年で、大きな不満もなく、そのまま働き続ける道も当然ながらあったのですが、ある日、取引先の方と話しているとき、思いがけない話題が持ち上がって…」
それこそが、トヨニシファームが新たな人材を探しているという噂でした。豚肉・鶏肉は扱った経験があるものの牛肉は未経験だった多田さんは「新しい分野に挑戦したい」と早速、トヨニシファームの専務取締役、小倉広樹さんに連絡します。そして、訪問した牧場で差し出されたのが「豊西牛」のステーキでした。
「初めて食べた時の衝撃は忘れられません。それまで赤身は『固い』というイメージがあったのですが、『豊西牛』はやわらかく、噛むほどにうま味や香りが広がり…。とにかく、今までに味わったことのない奥深いおいしさを感じて『これが本物の牛肉の味か』…と感激しました」
感動する多田さんを前にして、小倉専務は自らの牛肉への熱意を語り始めます。
「ブランド化するまでに、さまざまな苦労や試行錯誤があったこと。牧場で仔牛から育て、自社で加工し、販売までの一貫体制で愛情と責任を持って手掛けていること。地元、十勝・帯広への想い。そして、牛肉のおいしさで笑顔を届けたいということ…。熱量のこもったお話の数々に、気付いた時には『働きます!』と口が動いていました(笑)」
日替わりで変わる加工内容。
高品質への飽くなきこだわり。
トヨニシファームの加工場では、皮や内臓を取り除き大まかにカットされた「原木」と呼ばれる牛肉を、ステーキ、焼肉用、すき焼き用など多彩な商品に加工しています。
「原木は小さいもので15キロ程度、大きいものだと30キロ近いものもあり、運ぶだけでもひと苦労。それを台に乗せて、大まかに切り分け、まずは噛み心地の悪い『スジ』の一つひとつを取り除いてきれいにします。その後、スライサーという機械にセットして、同一の厚さに切り、最後にできあがった商品を手作業でトレーに盛り付けるまでが一連の流れです」
多田さんが苦労したのは、扱う商品の幅広さ。十数年、精肉の経験がある多田さんでも当初は覚えるのに苦労したのだといいます。
「豚や鳥と違って、牛はレアでも食べられますし、使う用途も実に幅広くさまざまです。おまけに毎日やってくる部位が違って、ある日はショルダー、翌日にモモ、その翌日はバラ…と運ばれてきて、そこから用途によって切り方や処理の仕方が変わるので、組み合わせは膨大な数になります」
ただ、その商品の分だけ細かな方法が書いたマニュアルも用意されているのだそう。
「最初はそれを見ながら繰り返し作業をして覚えていきました。また、ありがたいことにベテランの先輩もたくさんいて親身になって教えてくれるので、新人の頃は『聞いて、見て、やって』を繰り返して覚えていきましたね。それでも、稀少部位が来た日には『どうだっけ!?』と慌ててしまいますが(笑)」
長身ならではの苦労も、
技術の積み重ねが成長の喜び。
多田さんが1日の加工する量は非常に多く、スライスだけで200〜300パック、ステーキは400〜500枚を切ります。多い日にはなんと、1トンもの肉を加工することもあるそうです。体格がいいゆえに体力には自信がある多田さんですが、身長191cmという長身ならではの悩みもあるのだとか。
「身長が高いので、低い作業代での作業はそれなりに腰への負担がかかります(笑)。ただ、うちの工場では必要に応じて座って作業することも認められていますし、1時間おきにストレッチするなど工夫してできるだけ不可をかけないように働いています」
ここまでお話を聞くと、なかなか大変なことばかりのように思えますが、多田さんの中にはある目標があり、その点を目指すことがモチベーションにつながっているのだとか。それは、ベテランである工場長の存在です。
「工場長の切った肉はひと目で分かるほど美しく、断面は見ていて惚れ惚れするほど。彼のような技術を身につけるべく毎日練習を重ねています。まだまだ習得には時間がかかりそうですが、『ちょっと近づけたかな』と思えることも多くて、少しずつですが成長も実感する日々です」
消費者の声を励みに、
これからもおいしい肉を届けたい。
トヨニシファームでは、お客様と直接ふれ合う機会を大切にしています。多田さんも毎日工場にいるわけではなく、まちのイベントやお祭り、全国の催事の際には出店スタッフとして参加。イベントでは自ら「カルビ串」やステーキなどの商品を焼いて提供しているそうで、まさに、大谷君ばりの二刀流で活躍をしているという訳です。
「昨年は大阪の百貨店での催事に参加し、道外にも実に大勢のトヨニシファンがいることに驚きました。やっぱり『おいしい』という声を直接聞くと嬉しくて、『もっと頑張ろう』という日々の励みにもなりますね。最近ではスーパーや百貨店でも扱って貰えていますし、札幌の飲食店でも使われる機会が増えてきて、知名度がグングンと上がっていると実感。自分もトヨニシブランドを背負う一員なんだ、という誇りもひしひしと感じています」
最近では新入社員やパートさんの教育にも力を入れているという多田さん。肉のプロフェッショナルとしての道のりはまだまだ遠いものの、常に前向きな姿勢で取り組んでいる様子がうかがえます。
「トヨニシは牧場で牛を育てる技術はもちろん、加工の技術も日本有数だと感じています。だから、ここで学ぶことは誰にとっても、大きな力になると信じてるんです。僕自身もまだまだではありますが、ブランドを背負う誇りや、お客様に『おいしい』を届ける喜びまで、余すことなく若い人たちに伝えていけたら、と考えています」
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

加工は奥が深くて、一人ではなかなか習得できません。わからないことはすぐに聞く、困ったら助けを求めることで技術も早く身につきますし、チームの連携も良くなります。ありがたいことにトヨニシファームの先輩たちは「どんどん聞いてね」という姿勢で迎えてくれるので、遠慮せず教えを請うことができるでしょう。仕事も人生も、一人で抱え込まずに周りの力を借りることで道が開けると実感しています。

シゴトのフカボリ
食肉加工スタッフの一日
7:00
出社、着替え
7:15
肉を在庫出して準備
7:30
加工作業開始(ステーキ切り)
10:00
小休憩(15分)
10:15
加工作業(焼肉用切り)
12:00
昼休憩(1時間)
13:00
午後の加工作業
15:00
小休憩(15分)
15:15
最終加工、商品梱包
17:00
清掃、片付け
17:30
退社

有限会社トヨニシファーム

帯広市豊西地区で30年以上、肉牛牧場を営む企業。約5,000頭の牛を飼育し、子牛の育成・肥育を一貫して行う大型牧場です。「豊西牛」(ホルスタイン種の赤身肉)と「帯広牛」(ホルスタインと和牛の交雑種)の2つのブランド牛を展開。飼育から加工・販売まで一貫体制で、高品質の牛肉を提供しています。

住所
北海道帯広市豊西町西4線9-3(生産事業部)
TEL
0155-59-2004(9:00〜17:00)
URL
https://toyonishifarm.co.jp/

お仕事データ

多くの人においしさを!
食品製造スタッフ
食品製造スタッフとは
食材の下処理や加熱、調理を行い、
たくさんの「ウマい」をつくる!

食品メーカーをはじめとする企業の工場で、お弁当やお菓子、パン、水産加工品、麺などの食品を手がけるのが食品製造スタッフ。大規模な工場では機械化が進み、食材の洗浄や下処理、加熱、調味、包装など工程ごとに生産ラインを分けて作業を行っています。食品の種類や工場によっては手作業を大切にする企業もあり、職人のようにパンやスイーツをつくる食品製造スタッフも少なくありません。家庭の食卓でよく見かける商品を手がけるケースでは、広くおいしさを届けられるやりがいが感じられます。

食品製造スタッフに向いてる人って?
コツコツ型で衛生面にも気を配れる、
「食」が好きな人。

食品製造スタッフは、当然のことながら「食」が好きな人に向いている仕事です。機械や調理器具などをきれいに洗浄したり、自らの身だしなみを徹底的に整えたりしなければならないため、衛生面に最大限の気遣いができることも必要です。また、製造の際には正確な作業を繰り返さなければならないため、いわゆる「コツコツ型」にも面白い仕事に映るでしょう。

食品製造スタッフになるためには

食品製造スタッフになるために必要な資格や学歴はありません。高校や専門学校、短大・大学卒業後、食品メーカーなどの採用試験を受けて、合格するのが一般的なルートです。未経験からチャレンジできる職場も多く、アルバイトやパートスタッフとして働いて、正社員登用の道のりを歩む人も少なくありません。ある程度経験を積むことで部門のリーダーや工場長へのステップアップも可能です。

ワンポイントアドバイス
気温や湿度、食材の品質など、
日々の変化によって小さな工夫を。

現在では機械化された工場が多いものの、やはり人の「感覚」もおいしさを左右する大きな要因の一つです。その日の気温や湿度を肌で感じて投入する水の量を調整したり、食材の品質を見極めて加熱時間を変えたり、一定のクオリティを届けるためには小さな工夫が必要。食品製造スタッフの仕事は一見すると単調な作業に思えますが、日々変化を感じながら働けるのです。

この仕事の求人例

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