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パン製造スタッフ_鈴木 崇広さん
インタビュー公開日:2025.05.21

セブン-イレブンの
オリジナルパンが生まれる最前線。
あんパンにクリームパン、メロンパンにやきそばパン、カレーパン…。コンビニにズラリと並ぶ色とりどりのパンは、朝や小腹が空いた時の楽しみの一つ。魅力揃いのラインナップに、ついつい時間がかかってしまう事も少なくありませんよね。
今回取材に訪れたのは、「セブン-イレブン」北海道エリアでのオリジナルパンを開発・製造する株式会社エフビーエス。1992年(平成4年)、ロバパングループの一員として設立された企業で、「フレッシュ・ベイキング・システム」の頭文字からとった社名の通り、焼きたてのパンを365日、朝夕の2回、全道のセブン-イレブン約1000店舗(!)に送っています。
「こんなにパンがあるなんて圧巻ですよね」と話すのは、同社の ※1札幌工場で働く鈴木崇広さん。パン生地を成形し、焼き上げる「焼成(しょうせい)部門」に属しています。機械から流れてくる液体状の生地をヘラを使ってキレイにすくい取る、その華麗な手つきはまさに職人技。落ち着いた物腰からは余裕すら伺えますが、実はまだ入社2年目の若手なのだとか。まずは鈴木さんのこれまでについて、お話を伺っていきます。
※1恵庭には札幌工場 (所在地/恵庭市戸磯)と、恵庭工場(所在地/恵庭市恵南)があります。
世の中から必要とされる
「食」にまつわるシゴト。
鈴木さんのご出身は苫小牧。食品への興味は高校時代から芽生えていたといいます。
「せっかく大学に進学するなら、何か世の中の役に立てることを学びたいと思ったんです。誰にでも必要なものって何だろう…そう考えた時に、思い浮かんだのが『食』でした。生きていく上で絶対に欠かすことができず、生まれ育った北海道にも一番なじみがある産業です。そんな気付きから、江別にある酪農学園大学を進学先として選びました」
大学では応用微生物学研究室(現在は発酵科研究室に改名)に所属。魚醤の発酵など微生物に関する研究に取り組み、食品の腐敗対策や食中毒について学んでいた鈴木さん。当初は研究者としての道も考えていたものの、次第に食品づくりそのものの奥深い魅力に惹かれていきます。その後の就職活動では、より多くの人の生活を支える仕事がしたいと考え、お米やパンといった主食にかかわる食品メーカーを志望。そして、エフビーエスが属する「フジパングループ」の合同就活イベントに参加しました。
「エフビーエスの存在は正直知りませんでしたが、セブン-イレブンのパンは週に1、2回は必ず食べていたので、この会社で作っていると知った時は驚きました。就活の上で重視していたことが、企業としての安定性だったこともあり、応募を決意するまでそれほど時間はかかりませんでした」
まるで「巨大パン屋」?
手作業も多い製造の現場。
エフビーエスでは、恵庭工場で生地をつくり冷凍するまでの前半の工程を行い、札幌工場ではパンニングと焼成、トッピング作業や包装などの後半の工程に分かれています。鈴木さんは入社後、3カ月間は研修期間中として両方の工場を行き来しながらパンづくりの全体像を掴んでいきました。
「はじめは恵庭工場で巨大な生地を分割して成形する仕事を覚えました。まず驚いたのはパン生地の大きさです。広げると両腕でもおさまりきらないほどで、重さは数百キロという単位になります。これを少しずつに分けて機械に投入し、形づくって冷凍し、札幌工場まで発送するまでの作業を教わりました」
その後は札幌工場での成形、焼成、包装など各部門を各1週間ずつ学び、約半年を経て同工場の焼成部門へと配属となりました。
「『工場』といえば機械が淡々と作業している…という景色を思い浮かべる方が多いかと思いますが、ここでは真逆。ものすごく業務が幅広く、手作業が多くて驚きました。恵庭工場ではあくまで通常のパン生地しか製造しないので、例えばドーナツやシフォンケーキなどの商品はここで生地から作らなくてはいけないんです。またタマゴサンドやコロッケパンなどのお惣菜パンは、バターを塗る、具材を詰める、パセリを載せる…といった作業の一つひとつが全て手仕事。ここは工場というより『大きなパン屋』だということを実感しました」
パン作りは「科学」と

「職人的な勘」の二刀流。
鈴木さんは現在主に生地づくりや成形を担当しています。大学時代に培った科学的な知識は、思わぬ場面で活かされているのだそう。
「パン作りも科学ですから、少しでも分量や条件が異なれば上手く膨らまなかったり、美味しい食感にならなかったりします。基本的にはレシピに従って材料を混ぜていきますが、その日の気温や湿度に合わせて配合や混ぜ方などを調整が必要なんです。また安全性にも気を配り、味付けに使用する甘味料や香料も厳しく管理されていますので、そういった面では大学で学んだ『基本に忠実に』という科学知識が生かせているなと感じます」
ちなみにセブン-イレブンに並ぶパンは毎週1品は必ず入れ替わりがあり、エフビーエスではなんと常時10種類を常に並行して商品開発しているとか。商品のアイデアは季節はもちろん、トレンドや原材料の旬の時期、さらには「廃棄されそうだった規格外の玉ねぎを使う」といったさまざまな観点を取り入れて開発しているのだそうです。
「これだけ変化が激しいと機械では対応しきれないことが多いので、必然的に前述のような手作業が多くなるんです。工場では常に2つの主要ラインが稼働し、さらに個別のオーブンやフライヤーも数台用意されていて、製造するパンによって持ち場や作業工程が変わっていきます。科学的な力と、職人的な感覚、どちらも活用して焼き上げているのが、エフビーエスのパンなんです」
当たり前を当たり前にこなし、

安心のおいしさを届けたい。
エフビーエスで開発・製造するパンは基本的には北海道内のセブン-イレブンへと届けられます。売れ行きやおいしさ次第では全国で販売されるケースもあるそうで、「つぶつぶコーンマヨ」シリーズはその代表例として10年以上、姿形を変えながら日本中で愛されています。
エフビーエスでは本人の希望や能力に応じて柔軟に部署を変えられるため、製造現場から企画開発に移る人も珍しくはないのだそう。なんとも面白そうな仕事だけに「将来的に開発に興味は?」と聞くと、控えめな鈴木さんらしく「まだまだ仕込みでも一人前になれていないので…」と謙虚な回答が返ってきました。
「まずは焼成で一人前になることが目標です。そのために、ミスを起こさない、レシピ通りにつくる、どんな仕事でもこなすことをコツコツとやっていきたいと考えています。たくさんの人が口にするパンをつくる以上は、当たり前のことは当たり前にできないとなりません」
理系の出身らしく言葉を慎重に選びながらゆっくりと話す鈴木さんは、まさに「当たり前」を守るにふさわしい存在のように思えます。ふだん何気なく私たちが手にするコンビニのパンの一つひとつに、さまざまな人の苦労と愛情のこもった物語がある。そう感じさせてくれた取材でした。
シゴトのフカボリ
パン製造スタッフの一日
8:00
出勤、着替え
8:10
素材や器具の準備
8:50
生産開始
12:00
昼食
13:00
生産開始
16:00
生産終了、片付け・清掃
16:30
翌日の準備、検食
17:00
終業

シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

入社して1年、色々な先輩や上司から声をかけていただき、困った時や失敗した時は必ずフォローして頂いて、いつも自分が期待をもらっているのだと実感しています。職場選びは仕事内容や会社の安定感で選ぶことももちろん大切ですが、頼れる先輩や上司などの存在がいるかどうかも、とっても大切だと思います。

株式会社エフビーエス

1992年(平成4年)、ロバパングループの一員として設立。コンビニ「セブン-イレブン」の道内エリア約1000店舗で販売するオリジナルブランドのパンを製造する企業。恵庭市に2つの工場を持ち、生地の製造から焼き上げまでを一貫して行っています。北海道産の素材を使った商品開発にも積極的で、地域限定商品から一部の全国展開商品まで幅広く手がけています。

住所
札幌工場 北海道恵庭市戸磯47-7
恵庭工場 北海道恵庭市恵南1
TEL
0123-34-6868
URL
https://fbsbake.jp/

お仕事データ

多くの人においしさを!
食品製造スタッフ
食品製造スタッフとは
食材の下処理や加熱、調理を行い、
たくさんの「ウマい」をつくる!

食品メーカーをはじめとする企業の工場で、お弁当やお菓子、パン、水産加工品、麺などの食品を手がけるのが食品製造スタッフ。大規模な工場では機械化が進み、食材の洗浄や下処理、加熱、調味、包装など工程ごとに生産ラインを分けて作業を行っています。食品の種類や工場によっては手作業を大切にする企業もあり、職人のようにパンやスイーツをつくる食品製造スタッフも少なくありません。家庭の食卓でよく見かける商品を手がけるケースでは、広くおいしさを届けられるやりがいが感じられます。

食品製造スタッフに向いてる人って?
コツコツ型で衛生面にも気を配れる、
「食」が好きな人。

食品製造スタッフは、当然のことながら「食」が好きな人に向いている仕事です。機械や調理器具などをきれいに洗浄したり、自らの身だしなみを徹底的に整えたりしなければならないため、衛生面に最大限の気遣いができることも必要です。また、製造の際には正確な作業を繰り返さなければならないため、いわゆる「コツコツ型」にも面白い仕事に映るでしょう。

食品製造スタッフになるためには

食品製造スタッフになるために必要な資格や学歴はありません。高校や専門学校、短大・大学卒業後、食品メーカーなどの採用試験を受けて、合格するのが一般的なルートです。未経験からチャレンジできる職場も多く、アルバイトやパートスタッフとして働いて、正社員登用の道のりを歩む人も少なくありません。ある程度経験を積むことで部門のリーダーや工場長へのステップアップも可能です。

ワンポイントアドバイス
気温や湿度、食材の品質など、
日々の変化によって小さな工夫を。

現在では機械化された工場が多いものの、やはり人の「感覚」もおいしさを左右する大きな要因の一つです。その日の気温や湿度を肌で感じて投入する水の量を調整したり、食材の品質を見極めて加熱時間を変えたり、一定のクオリティを届けるためには小さな工夫が必要。食品製造スタッフの仕事は一見すると単調な作業に思えますが、日々変化を感じながら働けるのです。

ほかにもあります、こんな仕事。