伊藤 愛さん
インタビュー公開日:2017.08.31

海外に関わる仕事がしたい…
努力の結果、公務員試験に合格!
バッジが光るかっこいい制服姿が印象的な伊藤さんの職業は、入国審査官。
海外から日本に出入りする人に、空港や港で出入国審査をしてパスポートに許可証印を押したり、日本に住みたい外国人の在留審査をするのが役割です。
入国審査官は国家公務員なので、国家公務員一般職の試験に合格し、法務省入国管理局に入局した後になることができます。
「大学で英語学を学び、海外に関わる仕事がしたいと考えていたこと、公務員として公益的な仕事をしてみたいと思ったことが、私がこの仕事を選んだ理由です」
国家公務員一般職試験に合格した後、それぞれの省庁で面接を受けて配属が決まります。希望の省庁に入れるかどうかは、試験の成績も影響するのです。そのため伊藤さんは高得点を目指して予備校に通って勉強を重ね、優秀な成績で合格しました。
外国人からの在留許可申請を受け付け。
不法滞在はしっかり見抜きます。
入国審査官の主な仕事場は、出入国審査の窓口となる空港や港と外国人の在留許可申請を受け付ける窓口となる地方入国管理局です。
伊藤さんが今まで一番長く経験し、今も担当しているのが、札幌入国管理局での在留審査業務です。
「入国管理局では、日本で暮らしたい外国人の在留許可申請に対し審査をします。留学生が日本の会社に就職したり、就労資格で滞在していた人が日本人と結婚して配偶者資格に変更したり、さまざまな外国人の方が窓口にやって来ます」
なぜそのような審査が必要なのかというと、日本に不法滞在をしようとする人がいるからです。経済的な利益を得ようとしている場合や、悪質な犯罪に関わっている場合もあります。そのような不正から国を守るためなのです。
「偽の書類は私も業務でよく目にするので、嘘を見抜く力が必要ですね。書類の発行元をたどって確認した上で、偽の書類だという証拠が判明すると許可されません」
人の人生を左右する重要な仕事。
文化を超えて応じる気持ちが大事!
本人が日本に居続けたいと思い、関係する日本人が叶えてあげたいと思っても、現行の法律上できない場合もあります。
その人が日本に滞在し続けられるかどうかで人生が左右されることもあるので、責任の大きさを感じているといいます。
「外国人の方に話をする時は、文化や常識の捉え方も違うため、こちらの言いたいことが伝わらない場合もありますし、なかなか納得してもらえないこともあります。
外国語ができるかどうかよりも、外国人とコミュニケーションがとれる適応力があり、人と接することが好きかどうかが大事だと思いますね」
と伊藤さんが言うように、外国語ができなければ勤まらないわけではありません。
札幌で窓口に来る人は多くがアジア圏の人で、中国語や韓国語を話せる職員もいますし、必要な場合は外部から通訳をお願いして来てもらうこともあります。
希望して、霞が関での勤務も経験。
港で多数の出入国審査もします。
入国審査官は国家公務員なので、全国に転勤があります。
伊藤さんは、希望を出して東京の法務省での勤務も2年間経験しました。
「霞が関にある法務本省で、国会で使う資料を作成したり、外務省や各国の大使館といった関係機関との間での調整を行ったりと、国の中枢での仕事を経験し、とても刺激になりました。希望を出してよかったと思います」
また、道内各所にも出張所や空港、港があります。北海道も外国人観光客が急増しており、港に海外からの大型客船が寄港することも増えました。そんな時は、多数の入国審査官が必要になるので、札幌入国管理局の職員も臨時で手伝いに行きます。
大規模な客船の場合は、2,000人もの外国人の入国審査を行うこともあるとか。
子育てとの両立もできる職場です。
観光客や五輪のため現在増員中!
プライベートでは、2011年に結婚し、2016年に出産して1年間の育児休業を経て職場復帰。仕事と育児をしっかりと両立しています。
「復帰して約3カ月になります。最初は疲れて子どもを寝かしつけていて一緒に寝てしまったりしましたが、今はおかずを週末に作り置きするなどコツがつかめてきたところです。
公務員ですから産休・育休の制度がしっかりしていますし、職場にも子育ての先輩のママさんやパパさんがいるので、何かと相談できて心強いです」
観光などで日本に来る外国人は年々増えており、2020年には東京オリンピック・パラリンピックも控えているので、入国管理局が採用する職員は増加しています。
「外国人と話してみたい人、空港で仕事がしたい人、飛行機が好きな人など、皆さんにぜひ挑戦して欲しいです!」
シゴトのフカボリ
入国審査官の一日
7:20
自宅を出る
7:30
保育園開園と同時に子どもを預ける
8:10
出勤
8:30
メールチェックなど
9:00
窓口担当の日はスタンバイ
(ローテーション制)
窓口以外の日は、申請に関する書類審査、
電話での問い合わせ等
12:30
昼休憩
13:00
窓口業務または在留審査
16:00
窓口の終了時間
16:45
業務終了、退勤
17:30
保育園へお迎え

シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

問題がない申請はできるだけスピーディーに、審査を通すのが困難な申請や疑いのある申請には慎重に時間をかけてあたります。イラストは入国管理局のマークです。

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具

入国審査に関わる法令集
法令集は改訂になるたびに支給され、何かと毎日手に取っています。自分の判断を裏付けるというのもありますし、法律は随時変わりますから、現状の法律に当てはめて間違いのないように気を配らなければなりません。

札幌出入国在留管理局

日本を訪れる外国人や、滞在しようとする外国人の在留関係の申請、証明書の交付を行っています。国民の安全な生活と国際交流に貢献しています。(2019年4月1日/組織改編により「入国管理局」から名称変更)

住所
北海道札幌市中央区大通西12丁目 札幌第三合同庁舎
TEL
011-261-7502
URL
http://www.immi-moj.go.jp/soshiki/kikou/sapporo.html

お仕事データ

外国人と日本の橋渡し
入国審査官
入国審査官とは
不法入国や不法滞在を防ぎ、
日本の治安を守る防波堤役。

国際空港や港といった日本の玄関口で、外国人のパスポートやビザをチェックし、出入国を審査。日本に在留している外国人の在留資格を審査するのも仕事です。不法入国や不法滞在が発覚し、入国警備官から外国人の引き渡しを受けた場合は、違法性についてすぐさま確認。違反が認められる場合には、強制的に日本から退去させる権限も持っています。海外からの不法入国を防いで日本の治安を守る大切な役割です。

入国審査官に向いてる人って?
国を守る責任感と国際感覚が重要。

入国審査官は日本の安全を守る役割を担っています。国のために、国民のために働くという責任感が必要です。また、入国や在留資格の審査には冷静な判断力が求められるほか、宗教や文化の異なる外国人とも上手くコミュニケーションがとれる国際感覚も重要。

入国審査官になるためには

入国審査官は法務省出入国在留管理庁に属する国家公務員なので、国家公務員採用一般職試験に合格するのが第一歩。入国審査官として採用されるには、試験で上位に位置する成績面と面接でも判断されるので、公務員試験の対策を行う予備校で高得点を目指して学ぶのも有効です。試験に合格すると、まずは「法務事務官」として働くことになりますが、数年の勤務経験を積むことで入国審査官への道が開けます。

ワンポイントアドバイス
訪日外国人が増加し、より重要な仕事に。

最近はグローバル化が進み、海外旅行や留学、ビジネスなどさまざまな目的で多くの人が国々を行き交うようになってきています。日本も観光地として人気が高く、訪日外国人の数は増加中。法務省は入国審査官の増員を計画中で、国としても出入国審査業務に力を入れていくと発表されています。