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平田 美紗子さん
インタビュー公開日:2020.02.13

国家公務員でありながら、
イラスト・漫画の仕事でも活躍。
国家公務員と言えば、組織の中で割り当てられた仕事を全うする一方、働き方や仕事内容に自由は利かない、そんなイメージではないでしょうか?
林野庁職員である平田美紗子さんは、得意なイラストと漫画を活用し、“庁内漫画家”として森林や林業のことを多くの人に伝える仕事を、庁内にいながら自分で切り開いてきた人です。
また、二児のお母さんでもあり、現在は午前中は庁舎での勤務、午後はテレワーク(在宅勤務)という形態をとっています。
平田さんが今のような働き方に至った経緯や思いを聞いてみました。
子どものころから好きだった、
森林と絵を仕事にしたい。
札幌に住んでいた子ども時代から、よく家族で山にキャンプに行き、昆虫や森林に興味を持った平田さん。大学は農学部に進み、森林の生態系に重要な役割を果たしているキノコの研究に勤しみました。
また、もう一つ子どものころから熱中していたのが、絵を描くことでした。
「絵描きになりたい、と強い思いを持っていましたが、絵は自分一人でも取り組めると考え、美大ではなく森林学科を選びました。そして組織レベルで森林のことに取り組める道へ進もうと思ったんです」。
そうして、国家公務員試験に合格し、国の森林を管理し守り育てる林野庁へ入庁。群馬県沼田市や静岡県静岡市などで、現場での経験を重ねました。
イラスト入りのレポートが好評。
林業を漫画にする道が開ける!
沼田市で、森の管理人役である「森林官」として森の管理や調査を行っていた時、地元の方々や自然保護団体と一緒に森を管理するプロジェクトが始まりました。月1回の会合の際、「来てくれる方に喜んでもらうには?」と考えた平田さんは、活動の様子を伝えるレポートをイラスト入りで作成することにしました。それが大好評で、地元の観光協会にもレポートを置いてもらえたり、パンフレットのイラストを描く機会にも恵まれました。
その後、大学のサークルで知り合った夫と結婚。出産・育児休業を経て林野本庁に異動。広報班に配属され、そこでも機会があるたびに上司にイラストを見てもらったところ、林野庁発行の情報誌『林野-RINYA』で林業漫画『お山ん画』を連載することになったのです。
恐れずに挑戦したことで、
イラスト・漫画の仕事も拡大!
「恐れや恥ずかしさを捨てて、自分のイラストが使えそうな場面でアピールし続けたことで、仕事に結びつけることができました」と平田さん。
林野庁という立場から情報を伝えるには、イラストが正確であることも求められます。大学で研究し、現場で働いてきて、森林の動植物に詳しい平田さんでも、専門家から指摘を受けることも多かったといいます。今も、写真や図鑑を参考にしながら描き、林業や生態学等各分野の専門家のチェックを受けています。
庁内漫画家としては、木や森林に関わるさまざまな仕事や人を紹介する、林野庁林野図書資料館発行の『人to木』などを制作。また、ポプラ社刊『みぢかな樹木のえほん(国土緑化推進機構 編)』のイラストを担当するなど、仕事の幅はどんどん広がっています。
<平田さんの作品はこちらからご覧になれます

最愛の夫が他界。子育てのため
札幌に戻って仕事を続けることに。
森林と絵、好きな二つのものを仕事にすることができた平田さん。二人の子どもの子育てと仕事の両立にも奮闘していましたが、そんな矢先、最愛の夫が病気で亡くなってしまったのです。
「これから仕事をしながら一人で子どもを育てるのは無理だ」と思った平田さんは、上司に正直に思いを話し、両親がいる札幌に配属してもらえることが決まりました。さらに、午前中は庁舎での勤務、午後はテレワーク(在宅勤務)で働くことに。出張の時や困った時は両親のサポートを受けながら、林野庁の仕事を続けられることになりました。
北海道森林局の事業企画係長として、大学との連携事業等の対外調整、育樹祭やイベントの企画、そしてイラストや漫画の制作で、北海道の森林・林業の普及啓発活動を行っています。
北海道でも森林を盛り上げたい!
国家公務員も新しい働き方に。
2019年には、イラストや漫画を通して森林や林業の普及、教育に貢献していることが高く評価され、農林水産省優良職員等表彰も受賞しました。
実は、林野庁はじめ国の省庁では、外部の仕事も届け出をすれば認められ、テレワークも積極的に活用するなど新しい働き方も進められています。
平田さんはこれまでの経験を振り返り、「一生懸命やっていたことで周りの人に思いが伝わり、助けてもらえました。だから誠実に仕事をしてお返ししたいと思っています。私も、人を助けられる人になっていきたいです」と感謝の思いを語ってくれました。
札幌に戻ってから、『北海道の木のえほん』も制作。本州とは樹種や生態系が違うので、北海道の樹種もどんどん描き、森林・林業を盛り上げていきたいと意気込んでいます。
シゴトのフカボリ
林野庁職員の一日
6:00
起床、家事、朝食
8:00
子どもが学校へ出発
8:15
自宅を出発
8:30
出勤、メールチェック
10:00
会議
11:00
事務作業
12:00
自宅へ戻り、昼食
13:00
イラスト制作
15:00
子どもの帰宅を出迎え
引き続き制作作業
17:15
勤務時間終了
18:00
家事、夕食など
21:30
子どもと就寝
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
現場に出る時は装備をしっかり!
仕事で森林の現場に出る時は、安全のために専用の装備で。鹿や熊の猟に出ているハンターに誤って撃たれないために、木の緑や雪の白の中でも目立つオレンジ色。ジャケットは防寒対策もバッチリです。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

いつも周りの人への感謝を胸に、誠実に向き合うよう心掛けています。人にも自分にも言い訳していないか常に自分に問いかけ、子どもにもそうするように伝えています。

林野庁 北海道森林管理局

北海道の国有林の管理や保全、保護、啓発活動を行っています。庁舎ロビー「ウッディホール」には平田さんの作品が掲示されており、道産材について学んだり、木とふれあえるコーナーも。

住所
北海道札幌市中央区宮の森3条7丁目70番
TEL
011-622-5213
URL
https://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/

お仕事データ

「国」に関わるスケールの大きなシゴト。
国家公務員
国家公務員とは
国民のために予算を有効に運用し、
暮らしやすい社会づくりに貢献。

国に勤務する公務員として、国全体に関わる業務を行うのが国家公務員。内閣府や財務省、法務省、外務省といった国家機関に在籍し、治安や外交、税金関係、農業、工業、商業、労働、厚生、社会福祉、教育、文化など、国全体の行事や国民に関わる業務の企画立案から手続き、運用、事務処理を担います。国家公務員の種類は大きく分けると総合職と一般職と専門職の3つ。総合職は制度や法律の改正案、政策案のとりまとめなど、いわゆる「キャリア官僚」。一般職はその実行・運営役を担うイメージです。一方、専門職は、「刑務官」や「国税専門官」などの専門的な知識を必要とする仕事。このように職種や業務内容の幅広さは国家公務員の魅力の一つです。ただし、いずれも、国民のために予算を有効に運用し、暮らしやすい社会に貢献するという使命があります。
※その他、選挙や国会の議決によって選出される大臣や副大臣、自衛官や裁判所職員といった「特別職」もあります。

国家公務員に向いてる人って?
国や国民に役立ちたいという思いが強く、
責任感も携えたリーダーシップが必要。

国家公務員は、日本国憲法によって「国民全体の奉仕者である」と定義されています。そのため、常に公正な視点を持ち、国や国民の役に立ちたいという奉仕の精神を人一倍持っている人に向いているでしょう。国の政策や法律に関わるなどスケールの大きな業務に携わることから、強い責任感を持って自ら進んでいけるリーダーシップも求められます。多くの仕事は日本の未来にも影響を与えることもあるため、グローバルな視野と柔軟な発想力も不可欠です。

国家公務員になるためには

国家公務員になるためには、国家公務員採用試験に合格することが必須。自衛官や裁判所職員などの特別職はそれぞれの機関が採用試験を実施します。国家公務員採用試験には、総合職試験(院卒者試験)・総合職試験(大卒程度試験)、一般職試験(大卒程度)、一般職試験(高卒程度)、専門職試験、経験者採用試験があります。合格後に希望する官庁を訪問し、面接試験に合格すると採用です。

※国家公務員の試験については、詳しくは人事院のホームページをご確認ください。https://www.jinji.go.jp

ワンポイントアドバイス
国家公務員を目指すなら、
英語を勉強しておくのもオススメ。

一般的な国家公務員を目指すにあたり、特別な資格は必要ありません。ただし、英検やTOEICといった英語力の証となる資格は有利に働くようです。というのも、グローバル化が進み、訪日外国人の数も増えているため、英語力の高い人はプラスの評価。平成27年度からは、「総合職試験(院卒者試験・大卒程度試験)」のすべての区分において、TOEFLやTOEICなど指定の英語試験のスコアに応じて、最終合格者の決定の際に一定の得点が加算されます。英語力を高めておいて損はないといえるでしょう。