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木村 慎二さん
インタビュー公開日:2024.10.22

働く人を守るための法律に基づき、
安心して働ける職場づくりを指導する。
労働基準監督署の労働基準監督官。なんだか難しそうで、少し怖そうな響きかもしれません。この仕事に就いて15年目を迎えたという木村慎二さんは、職種名から想像した「お堅い」というイメージとはまったく違って、明るくて親しみやすい方でした。
​​「労働基準監督官は、​​厚生労働省に所属する専門職員です。その仕事は、働く人を守るために定められた法律を、企業がきちんと守っているかを確認し、安心して健康に働ける環境をつくるための指導をすることです」
働く人を守る法律には、賃金・労働時間・休日など労働条件の最低ラインを定めた「労働基準法」、労働者の安全確保や快適な職場づくりを促進するためのルールを定めた「労働安全衛生法」があります。企業には、これらに則ったうえで事業を行う義務があります。
「最近では、政府が進める『働き方改革』にともない法律の基準が大きく変わってきていて、企業から『どんな対策をすればいいの?』という相談も多くなっています。そういった場合に、私たちがアドバイスをするのです」
​​法律に基づいて良好な職場を整えていくことは、働く側にとっても、経営側にとってもメリットがあると木村さん。それをサポートするのが、労働基準監督官の真髄なのだと話します。
企業への立ち入り調査業務や、
労働災害を防ぐための審査を実施。
労働基準監督官は、全国の労働基準監督署において、監督指導業務、安全衛生業務、労災保険業務の3つを担っています。
「監督指導業務の動きとしては、労働条件などに問題があると思われる企業に立ち入り調査を実施して関連書類等の確認を行うケース、働いている方から相談を受けて訪問するケース、労働災害の発生にともなって調査に入るケースなどがあります。問題が見つかった場合は文書で指導し、その後、改善が確認されれば指導は終了となります」
一方で、監督指導の結果、改善などを指導されたにも関わらず従わないなど悪質なケースでは、検察庁に送検することもあるのだそうです。労働基準監督官は、刑事訴訟法において特別司法警察職員としての役割も持っているのだとか。それだけ、働く人を守ることに重きが置かれているのです。
「安全衛生業務は、工場などの機械・設備の検査、建設工事の計画書の書面審査や実地調査などを通して、労働災害を未然に防ぐことが目的です。問題がある場合は機械・設備の変更、工事計画の再作成などの指導します」
ちなみに、労災保険業務は仕事でケガをした場合などに労災保険給付を行う業務です。
様々な企業を知ることができ、
全国転勤があることが決め手に。
現在は帯広労働基準監督署で、現場の取りまとめを行う監督課長を務める木村さん。労働基準監督官は法律を扱う仕事ですが、大学では化学を専攻し、卒業後はメーカーに勤務していたという、異色の経歴を持っています。
「社会に出た後で、多くの人の役に立てる公務員の仕事に目が向くようになり、その中で特に興味を持ったのが労働基準監督官でした。外勤が多く、様々な企業を知ることができること、また、全国転勤があることも魅力でした」
具体的な業務内容以前に、いろいろな場所に行き、その土地を楽しみながら暮らしてみたいという思いが強かったと明かす木村さん。
「初任地は大阪府。町工場が立ち並ぶ下町を担当し、自転車に乗って企業を訪ねて労務管理について確認したり、労働災害が起きた時の対応を行っていました。3年半ほど勤務し、次に長野県の労働基準監督署へ異動。工場の機械の検査業務や、労働災害防止活動を推進する業務などを2年間、担当しました」
その後、希望して厚生労働省で2年間、勤務した木村さん。国から指示される業務を各担当部署に振り分けたり、情報伝達を行う言わばハブのような業務を担当していたそうです。その経験が、部下に指示を出す監督課長という今の仕事に役立っていると振り返ります。
労働災害ゼロを達成した喜びと、
部下を導くリーダーとしての自覚。
厚生労働省での2年間の勤務を経て、木村さんは札幌の労働基準監督署に異動。3年間を札幌で過ごした後、北見へ転勤し、さらに2024年には帯広労働基準監督署に着任しました。そんなキャリアを歩んできた木村さんにとって、特に印象に残る経験が長野での勤務時代にありました。
「労働災害が多発していた食品工場に対して、1年間、定期的に訪問して指導するという業務を担当しました。最初は、あまり積極的な様子ではなかったのですが、労働災害防止のための計画づくりを勧めたり、設備やラインの変更を提案したりするなかで徐々にその意義を理解していただけるようになって。率先して安全性を考慮した動線に変更するといった取り組みを行い、ついに労働災害がなくなったんです」
うれしかったし、この仕事をやっていてよかったと素直に思えたと話す木村さん。
「数えきれないほど失敗もしてきましたし、労働災害で不幸にも亡くなった方のご遺族に、お話を伺うような際は辛さも感じます。けれども、それが私たちの大事な仕事。相手の気持ちを察するということを常に意識しながら業務を行ってきました」
部下をまとめる立場となった今は、相談などをしやすい環境づくりを意識し、少し砕けた話し方、会話を織り交ぜるなど、細かなところにも心を砕く木村さんです。
署員自身が働きやすい職場とするため
効率化など業務改善に取り組んでいく。
「監督課長となってからは、マネジメント業務を中心に行っています。メインとなっている仕事の一つが、業務計画の作成。立ち入りを予定している企業や、従業員から相談があった、労働災害が起きたといった企業を誰が担当するかを割り振りを行っています」
現場責任者として、全体の業務内容・量を把握したうえで、各署員の仕事の進捗状況も見ながら業務分担することに、今は神経を集中させているのだと話す木村さん。
「言わば、帯広労働基準監督署全体を動かしていける立場にあることに、今は面白みを感じています。働き方改革を推進するため、かつてはなかった新しい業務が次々と生まれるなか、私が果たすべき役割は業務の整理・効率化を行い、署員自身がゆとりを持って業務に向かえる環境を整えていくことだと心に置いて、仕事に向かっています」
労働基準監督署の働き方改革です、と笑う木村さん。初任地の東大阪時代に出会った奥さんが札幌出身ということもあり、木村さん本人は千葉県生まれながら北海道への異動を希望したのだそうです。この先の転勤では、旭川や函館でも暮らしてみたいとのこと。そして、見知らぬ地域でも安心して働ける職場づくりに貢献したいと、静かな闘志を燃やしています。
シゴトのフカボリ
労働基準監督官の一日
8:30
出勤、始業
9:00
部下と業務について打ち合わせ
10:00
翌月の業務の計画作成(業務分担)
12:00
昼休憩
13:00
企業調査(外勤)
16:00
帰庁後、報告書などの作成
17:15
終業、退勤
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
時間計算電卓
労働時間の確認などを行うために計算する際、時間を計算する機能がない電卓では、時間単位の数値を求めることが大変なので、この電卓は必須アイテムとなっています。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

新しいことをする際に、失敗はつきものです。だから、失敗を恐れず、積極的に挑戦していきましょう! ちなみに労働基準監督署は、アポなしで見ず知らずの企業に飛び込むこともあるので、度胸が必須です!

厚生労働省 北海道労働局

「働く」ということに関連する様々な行政分野を、総合的・一元的に運営しながら、地域に密着した行政を担っています。
働く方を直接支援する第一線機関を有しており、「労働基準監督署」、「公共職業安定所(ハローワーク)」のほか、労働局内に「雇用環境・均等部」があります。

住所
北海道札幌市北区北8条西2丁目 札幌第1合同庁舎
TEL
011-709-2311
URL
https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-roudoukyoku/roudoukyoku...

お仕事データ

「国」に関わるスケールの大きなシゴト。
国家公務員
国家公務員とは
国民のために予算を有効に運用し、
暮らしやすい社会づくりに貢献。

国に勤務する公務員として、国全体に関わる業務を行うのが国家公務員。内閣府や財務省、法務省、外務省といった国家機関に在籍し、治安や外交、税金関係、農業、工業、商業、労働、厚生、社会福祉、教育、文化など、国全体の行事や国民に関わる業務の企画立案から手続き、運用、事務処理を担います。国家公務員の種類は大きく分けると総合職と一般職と専門職の3つ。総合職は制度や法律の改正案、政策案のとりまとめなど、いわゆる「キャリア官僚」。一般職はその実行・運営役を担うイメージです。一方、専門職は、「刑務官」や「国税専門官」などの専門的な知識を必要とする仕事。このように職種や業務内容の幅広さは国家公務員の魅力の一つです。ただし、いずれも、国民のために予算を有効に運用し、暮らしやすい社会に貢献するという使命があります。
※その他、選挙や国会の議決によって選出される大臣や副大臣、自衛官や裁判所職員といった「特別職」もあります。

国家公務員に向いてる人って?
国や国民に役立ちたいという思いが強く、
責任感も携えたリーダーシップが必要。

国家公務員は、日本国憲法によって「国民全体の奉仕者である」と定義されています。そのため、常に公正な視点を持ち、国や国民の役に立ちたいという奉仕の精神を人一倍持っている人に向いているでしょう。国の政策や法律に関わるなどスケールの大きな業務に携わることから、強い責任感を持って自ら進んでいけるリーダーシップも求められます。多くの仕事は日本の未来にも影響を与えることもあるため、グローバルな視野と柔軟な発想力も不可欠です。

国家公務員になるためには

国家公務員になるためには、国家公務員採用試験に合格することが必須。自衛官や裁判所職員などの特別職はそれぞれの機関が採用試験を実施します。国家公務員採用試験には、総合職試験(院卒者試験)・総合職試験(大卒程度試験)、一般職試験(大卒程度)、一般職試験(高卒程度)、専門職試験、経験者採用試験があります。合格後に希望する官庁を訪問し、面接試験に合格すると採用です。

※国家公務員の試験については、詳しくは人事院のホームページをご確認ください。https://www.jinji.go.jp

ワンポイントアドバイス
国家公務員を目指すなら、
英語を勉強しておくのもオススメ。

一般的な国家公務員を目指すにあたり、特別な資格は必要ありません。ただし、英検やTOEICといった英語力の証となる資格は有利に働くようです。というのも、グローバル化が進み、訪日外国人の数も増えているため、英語力の高い人はプラスの評価。平成27年度からは、「総合職試験(院卒者試験・大卒程度試験)」のすべての区分において、TOEFLやTOEICなど指定の英語試験のスコアに応じて、最終合格者の決定の際に一定の得点が加算されます。英語力を高めておいて損はないといえるでしょう。