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秋山 緋更さん
インタビュー公開日:2020.12.09

店名もクルマもスイーツも
「和」と「かわいい」がコンセプト。
イベント会場やスーパーの入口で美味しい匂いを漂わせ、通りすがるお客さんの心と胃袋を掴むキッチンカー。最近ではスイーツにサンドイッチ、タイ料理などバラエティ豊かなジャンルが各地に登場し、手軽に美味しいものが買えると人気が高まっています。その中でもひときわ目を引く鮮やかなピンクの軽トラックで「バブルワッフル」なるスイーツを作る女性がこのキッチンカー「可愛井(かわいい)カフェ」の主、秋山 緋更(ひさら)さんです。秋山さんが手掛ける「バブルワッフル」は、その名前の通り白くてまあるいバブル(=泡)の形。モチモチとした生地に、あんこやクリーム、抹茶などが包まれています。このスイーツ、もともとは香港発祥で人気に火が付きましたが、秋山さんのつくるものはバブルの形状以外は完全オリジナル。一体どうして?
「香港に旅行した時に目にはしていたんですが食べずに帰国してしまったので、どんなものか、何が入っているのかわからなかったんです」
試行錯誤すること半年。
学内試食会は大盛況。
秋山さんは、酪農学園大学出身。3年生になると「食と健康」の分野を研究するゼミで、地元江別の小麦を使った商品の開発を開始します。「インスタ映えするスイーツを作りたい」。そう思っていた秋山さんの頭に浮かんだのが、当時香港で流行っていたバブルワッフルでした。食べたことがないならオリジナルでいこう。生地はどうする?食感は?ビジュアルは?何を包む?ひとつひとつ、納得がいくまで試作に次ぐ試作を重ね、秋山さん流の完成品が出来上がったのは大学3年生の12月。先駆けて告知をしていた学内試食会の直前でした。タピオカ粉を使うことで、モチモチとした食感と、見た目も可愛い白い生地を実現。中身はあえて「和」にこだわりました。自信はあったものの緊張しながら迎えた学内試食会には、なんと150名を超える学生が列を作ったそう。「おいしかった」「食感が面白い」といった反響に大きな手応えを感じたといいます。
「実店舗で挑戦したいとぼんやり考えていたんですが、試食会を経てその気持ちは更に強くなりました」
とにかく行動あるのみ。
難関を次々突破。
ここ最近、大学生が起業するケースも増えつつあります。けれど場所を借りたり、資金を捻出したり、必要な許可を取るなど、信用や実績を必要とされる場面も多く、そのハードルは決して低くはありません。事業計画書の作成に着手した秋山さんでしたが最初の壁にぶつかります。
「やるからには札幌の中心部でカフェを出したいと思っていたんです。でも調べてみると思った以上に資金がかかるし、家賃も高い上に営業予測が難しくて」
行き詰まっていた矢先、以前起業家の集まるイベントで知り合った起業のプロから「キッチンカーでもう一度考えてみたら?」とアドバイスを貰います。
「あらためてキッチンカーで計画を練り直したら、現実的な見通しがたったんです」
実現の目処がたてばあとは行動するのみ。キッチンカーを扱う会社のある美唄まで出向いて話を聞き、融資を取り付けるべく銀行や政策金融公庫の門を叩いた上で、クラウドファンディングを活用し運転資金の調達を目指します。
「学生という事もあり、銀行の融資はダメでした。でも政策金融公庫の担当者が一緒に頑張ってくれて、キッチンカーにかかる費用の融資を取り付ける事ができたんです。クラファンも期限内にどうにか達成できました」とにっこり。苦労を全く感じさせません。
ほろ苦いデビューも
今後の糧に。
キッチンカーで営業するためには、出店する場所の許可が必要です。飛び込みで交渉を続けていた秋山さんでしたが、思うような結果が得られず作戦変更。キッチンカーに関わる業者さんなどを頼り、紹介によって営業許可をとっていったそうです。
試食会から半年が経過した大学4年生の6月、ついに「キッチンカー可愛井カフェ」を開業。キュートなキッチンカーに美味しいスイーツ。さぞかし繁盛したと思いきや
「それが、ほかのキッチンカーは行列なのに、こちらは全然でした」と苦笑します。
日本ではまだ認知度の低いバブルワッフル。馴染みがないため人が立ち寄らなかったのです。ほろ苦いデビューとなりましたが、この事をきっかけに先輩たちの工夫もよく観察するようになりました。遠くからでもわかるよう旗をつけたり、メニューを見やすくしたり、SNSでの情報発信も欠かしません。
「ワッフルだけじゃなくって、お店も、お店の名前も、私のことも、『お客さんの記憶に残る』お店をつくりたいんです」
「和×かわいい」は、
スイーツの枠を超えて。
工夫の成果は着実に実を結び、今では「ピンクの車」を目当てに足を運ぶ“おっかけ”のお客さんも増えてきました。最初は大反対していた両親も、秋山さん自身で資金調達を成し遂げた事を知ると、陰ながら応援してくれるようになったそうです。“キッチンカー”という営業スタイルについては、こんな感想を語ります。
「やってみたら自分にはぴったりでした。色々なマチで色々な人と出会えることが楽しくて嬉しい。実店舗を作ってもお店は人に任せて私はキッチンカーかなぁ。でも実は・・」。一呼吸置いた後、秋山さんはオドロキの事実を告白。なんと免許を取るのに1年半もかかったのだそう。えっ、1年半?と思わず聞き返すと
「実は運転が大嫌いで教習を途中で挫折しながらなんとかかんとか・・」
と笑いながら教えてくれました。それなのに、初の愛車がキッチンカーとは・・。
「不思議なことに3ヶ月も経たないうちに運転が大好きになっちゃった」そうです。
秋山さんの夢と挑戦はさらに続きます。このキッチンカーのコンセプトでもある「和×かわいい」文化を様々なスタイルで世界に発信していくこと。バブルワッフルはその表現のひとつだといいます。
「洋服でも、雑貨でも、なんでも。『和×カワイイ』の可能性は無限です」
シゴトのフカボリ
キッチンカー経営者の一日
10:00
出店場所へ出発
10:30
キッチンカーの装飾、
看板設置など出店の準備
11:00
オープン
18:00
営業終了 かたずけ
18:30
場所を移動
翌日の仕込みをして終了

(日によって、場所や時間は異なります)
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
バブルワッフルメーカー
大事な仕事道具は現在のもので5代目。
毎日の気温や湿度などによっても
微妙に焼き具合が変わってくるので、
ちょっとした慣れとコツが必要です。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

最初から大きな夢に向かおうとすると、なかなかはじめの「一歩」が踏み出せません。まずはやりたい事のハードルをちょっぴり下げて、小さな一歩を踏み出す。それが「夢をあきらめないコツ」です。

可愛井カフェ

札幌・江別を中心にピンクのキッチンカーで道内を廻る移動販売カフェ。メイン商品の「和風バブルワッフル」はもちろん、そのトッピング、ファッション、キッチンカーの装飾まで“和×かわいい”がコンセプトとなっていて、若い層を中心に人気を集めています。2019年6月開業。

住所
江別市を拠点に道内を移動販売しています。
TEL
090-9511-3696
URL
https://kawaiicafe.amebaownd.com

お仕事データ

繁盛店を作り上げる!
飲食店経営者
飲食店経営者とは
新しいアイディアで
魅力あふれるお店づくりを!

メニューの開発を筆頭に、接客や仕入れ、スタッフの教育、広告・宣伝など飲食の経営全般を担う仕事。オーナーとして経営に徹するケースもあれば、自ら調理をする個人経営のスタイルもあり、立ち位置はさまざまです。また、個人経営や外食企業のフランチャイズといった店舗だけでなく、キッチンカーやテイクアウト・デリバリー専門店など形態も多種多彩。ライバルの多い業界なので、新しいアイディアと市場調査で魅力あるお店づくりを進めることが大切です。

飲食店経営者に向いてる人って?
リーダーシップがあり、
鋭いビジネス感覚を持った人。

スタッフを一つにまとめ上げるリーダーシップや店舗経営に関する的確な決断力と運営力が求められます。そのほか、企画力や事務処理能力など幅広いスキルが必要。会社組織における飲食店経営者の場合は、売上を着実に伸ばす手腕も評価されます。食べることやお客様の喜ぶ顔を見るのが好きという情熱はもちろん、経営者として鋭いビジネス感覚を持てるかどうかがポイントです。

飲食店経営者になるためには

飲食店経営者には「食品衛生責任者」の資格取得が必須。飲食店や飲食関連企業で経験を積み、知識や技術、さらに店舗立ち上げのノウハウを身につけた上で開店に至るケースが多いようです。また、なかには飲食店経営を学べる専門学校などもあります。大まかな流れとしては、資金の目処を立てて店舗選びからスタート。内装やメニューづくり、従業員の確保などを経て開業に至ります。

ワンポイントアドバイス
「居抜き」と「スケルトン」、
どっちを選ぶ?

お店のオープンにあたる初期費用は「居抜き」か「スケルトン」かで大きく異なります。「居抜き」は厨房機器やテーブル、椅子などがそろった物件のこと。それらを活用することで開店コストをおさえられるのが特徴です。「スケルトン」は骨組みだけの状態。内装外装や厨房機器といった費用はかさみますが、自分のイメージ通りの店にできるというメリットがあります。