工藤 隆太さん
インタビュー公開日:2023.04.24

木の質感が伝わる木造の社屋、
他にない建築技法に惹かれ入社。
子どものころから木工などものづくりが好きだったこと、父が建築関係の仕事をしていることもあり、大学を選ぶ時に建築を勉強することにした工藤隆太さん。入学後は建築学科で設計を学び、設計事務所でのアルバイトも経験しました。
中でも住宅設計の仕事に携わりたいと考え、就職活動の時にさまざまな会社を調べていて出会ったのが、現在勤めているアーキビジョン21です。主力商品である「スマートモデューロ」は、工場で製造したユニットハウスを現場で組み立てるタイプの建物。ユニットの組み合わせにより、一般住宅はもとより公共施設や観光施設、ホテルなど幅広く利用されています。被災地の仮設住宅としても活用され、全国から注目されています。
「会社見学の時に、まず本社の建物がすべて木目が見える造りになっていることに心を惹かれました。スマートモデューロの話もその時初めて聞き、他社にない製造方法で面白そうだと思い、ここに入社したいと思いました」
工場の研修、設計から積算担当へ。
金額で今後が決まる重要な役割。
入社後は、研修として3カ月間、工場での製造作業を経験し、どのような部材を使ってどのように建てているか、スマートモデューロの基本的な製造工程を学びました。その後の配属では1年ほど設計を担当。そして、前任者の退職に伴い、製造部事務係に異動しました。主な担当業務は「積算」、つまり物件の見積の作成です。
注文を受けて仕様が決まったら、使う部材の金額、製造・設置作業にかかる時間や費用、業者への外注にかかる費用を割り出します。材料費や外注費だけでなく、社員の人件費や工場の設備・維持費などを確保するには利益をきちんと出さなければいけませんが、お客様の想定の予算より高いと仕様を変更しなければならなかったり、建築自体を他の業者に変更されたりということもあり得ます。仕様変更の際は、工藤さんが設計の技術を持っているため、細かい変更があっても設計部に戻すことなく図面に起こすことができ、効率化を図ることができています。
会社の成果物を支える事務係の仕事。
コスト意識を持ち、積算は慎重に。
設計の場合は「自分が設計した建物が形になる」という目に見える成果がありますが、積算を始め事務係は縁の下の力持ち的な仕事。「お客様と会社、両方の折り合いがつく金額がパッと出せた時がうれしい瞬間。そのために日々勉強を重ねて臨んでいます」
大学で勉強している時や、入社後に設計を担当していた時は、設計がどれくらいの金額になるかなど考えたことがなかったといいます。「そこにお客様がどのくらいお金を出しているのか知ることができ、見識が広がったのも良かったですね」
見積の金額によって物件が動き、会社の収支にも影響を与えるため、大きな責任を感じると工藤さん。「営業の担当者は、お客様が求めている情報を早く出したいので『急いでほしい』と言われることもありますが、自分が焦って見積を提案して赤字を出してしまうと会社に迷惑がかかるので、そこは待ってほしいと伝えています」
さまざまな部署や企業の人と関わり
一つのものを造り上げていきます。
製造が始まってからも、ミスなく仕様通りに造られているか確認するために、工場にも出向いているそう。週1回、製造部長と加工、組立、内装、設置運搬など各課の課長が集まる会議に工藤さんが書記として出席し、現場の意見を聞く貴重な機会としてしっかりと耳を傾けます。また、東北、関東、九州にある販売委託先からの質問の連絡にも対応し、自ら答えられる部分は答え、分からない部分は担当部署につなぐ役割も担っています。
営業、設計、製造、協力会社、販売委託先などさまざまな部署や企業の人と関わっている工藤さん。「社内の雰囲気は明るく、上司にも意見を言いやすいので、いろいろな意見が出る社風ですね。社内の情報共有はモバイルアプリのSlackで行われており、やりとりはリアルタイムで早いです。社長もSlackでメッセージを発信していて、現場に向かう社員に『大変な現場だけど事故のないよう頑張って!』と労いの言葉をかけているのを見て、その気遣いに感動しました」
北海道の寒さにも強く低コスト。
自社の製品に誇りを持ち日々前進。
現在の部署で約3年間経験を積み、さらに的確に見積を出せるよう奮闘中。近年は材料費が高騰していることもあり、半年前に出した見積からようやく建設が決まったとしても、同じ金額では建てられないことも多いといいます。「一般的な建築物は、現場で職人が一から建てますが、スマートモデューロは工場でマニュアル化された工程である程度のところまで造ることができるので、コストが抑えられています」
さらに北海道ならではの利点として、保温性に優れているところだと教えてくれました。「工場生産なので、室内の温度を保つ外断熱も画一的に高い精度で仕上げることができます。また、窓にもこだわっていて、木製はスウェーデン製、樹脂製は栗山町で製造している3枚ガラスの性能の良い窓を使用しています。道外の暑い場所なら夏のエアコン使用量が抑えられるんですよ」
自社の製品に誇りを持ち、日々多くのことを吸収しながら業務に臨む工藤さんの頼もしい姿が垣間見えました。


シゴトのフカボリ
住宅製造工(積算担当)の一日
7:55
出勤、メールチェック
8:10
朝礼
8:30
社内の環境整備、清掃
9:00
事務作業(見積作成)
協力会社との連絡
12:00
昼休憩
13:00
事務作業(見積作成)
15:00
工場で進捗確認
17:10
終業、退勤
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
複雑な計算ができる関数電卓
複雑な計算式に対応し、建築業界でも使われる関数電卓。学生時代から使用しており、原価計算をする時などに重宝しています。途中の計算式が表記されるのが便利なのだとか。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

お客様に納得していただけて、会社にも利益をもたらす見積が出せるよう、日々の業務からたくさんのことを学んでいます。

株式会社アーキビジョン21

移動式ハウス「スマートモデューロ」の技術で、住宅や企業・自治体の建設物をはじめ被災地に運搬・撤去できる仮設住宅でも大きく貢献しています。

住所
北海道千歳市泉沢1007-168
TEL
0123-28-8811
URL
https://www.archi21.co.jp

お仕事データ

工場内で製品を生産。
製造工
製造工とは
製品の加工や組み立て、
メンテナンスなどものづくりに携わる仕事。

製造工は家電やパソコン、電子機器といった機械製品から、住宅用資材、紙、プラスチック用品、さらには施設の一部に使われる大型製品まで、多種多彩なものづくりに携わる仕事です。主に工場のライン作業によって各パーツを加工したり、部品を組み立てたり、さまざまな工程を経て一つの製品を完成させます。一方で、繊細な手作業によってものづくりを行う職場も少なくありません。「つくる」だけではなく、製品の最終検査や梱包・出荷、納品後のメンテナンスや修繕を担うこともあります。いずれの作業もものづくりの世界には欠かすことができませんが、未経験者にも門戸を開く企業が多いことからチャレンジしやすい仕事です。

製造工に向いてる人って?
「ものづくりが好き」で、
根気強さと注意深さを持っている人。

製造工には「ものづくりが好き」という気持ちが欠かせません。作業自体は決められたマニュアルやルールに沿うケースが多いことから、同じ作業をコツコツと続けられる根気強さも必要です。また、機械で加工した部品に不良がないかチェックしたり、製品の最終検査をしたりすることもあるため、注意深いタイプの人も向いているでしょう。

製造工なるためには

製造工になるために必要な資格はありません。多くの場合、工業系の高校や専門学校、短大・大学を卒業後、製造工場を持つ会社に就職するのが一般的です。知識やスキルは入社後の教育・研修によって身につけられるため、未経験からでも挑戦しやすい仕事といえるでしょう。職場や手がける製品によっては、後々「フォークリフト」や「玉掛け」などの資格取得をすすめられることがあります。

ワンポイントアドバイス
マルチスキルを持った製造工が
今後のカギを握る存在に!?

これまでの製造工は、一人が一つの持ち場だけを担当するケースが一般的でした。けれど、ここ最近は複数台の機械を操作できたり、多くの作業や工程を担える技術を身につけたり、マルチスキルを習得させる企業が増えているようです。そうすることで皆で仕事を分散して業務量を平準化できる他、チームワークや組織の柔軟性が高まるといわれています。今後はマルチスキルを持った製造工が会社のカギを握りそうです。