山内 拓哉さん
インタビュー公開日:2023.10.13

通信環境の大元となるケーブルの敷設。
そのために必要な電柱の建設に携わる。
誰もがスマートフォンを持っている今、Wi-Fiなどの通信環境は必要不可欠なものとなっています。遠隔で業務を行うテレワークが一般的な働き方の一つとなるなか、自宅に光回線を引いているご家庭も多くなりました。
「パソコンでインターネットにつなぐのも、現在は無線通信が一般的ですが、Wi-Fiを飛ばす環境をつくるためには電柱を建て、通信ケーブルを敷設する必要があります。普段は、あまり意識されることのない分野ですが……」
そう話す山内拓哉さん。通信ケーブルは、地下に埋設されているケースもありますが、電力ケーブルのように、電柱を建てて敷設することが多いのだと話します。その工事を的確に、安全に進めるのが山内さんの仕事。
「入社から10年のキャリアのなかで、私が多く担当してきたのは、すでに通信ケーブルが敷かれている電柱の移設工事です。建築工事を行うために支障になる(邪魔になる)電柱を別の場所に移動させることが主な業務となります」
電柱を移設するための設計、工事をスムーズに進めるための施工管理。職能の異なる二つの業務を、山内さんはいずれも経験してきたのだそうです。
建物の建設などに支障となる電柱の移設。
依頼主との打ち合わせを経て方法を検討。
山内さんが担当してきたのは、専門的には『支障移転』という業務の設計と施工管理。文字通り、なんらかの支障になる電柱を移転するという仕事です。
「通信ケーブルが敷設された電柱を所有する通信事業者が、住宅や建築物の建設などを計画している住宅会社や土地の所有者から工事のために支障となる電柱の移設依頼を受けます。そして、当社がその工事を実施するというのが仕事の流れです」
官公庁からの依頼で、例えば、道路の拡幅工事にあたって支障となる電柱の移設を行うこともあるそうですが、いずれのケースでもまず、依頼主と事前に打ち合わせを行い、どの電柱をどの位置に移動するかといった工事内容、作業完了までの時間、工事にかかるコストなどを現場で確認します。
「電柱を別の場所に移設する必要があれば、その土地の所有者の了承を得なければなりません。同時に、風荷重などを考えた安全性の検討、また、電柱を支えるために斜めに張る支線とよばれるワイヤー設置の検討なども行います」
そのうえで、作図ソフトを用いて、電柱の位置などを示した平面図を作成。この図面をもとに施工を行う協力会社との打ち合わせを実施して、工事がスタートします。
現場の問題を解決していく施工管理。
工事を想定して効率化も考える設計。
設計担当から手渡される平面図から、工事に必要となる資材を拾い出して発注するとともに、工事の方法を検討し、作業スタッフを協力会社に手配。工事が始まると、作業の品質、現場の安全などを見守り、スケジュール管理を行っていくのが施工管理担当の仕事です。
「現場で発生する問題を解決するのも施工管理担当の役割です。例えば、電柱を建てるために地面を堀ってみると、思わぬ位置に水道管があったりという事態が発生することがあるんですね」
水道管、ガス管などの埋設状況は、事前に調査を行いますが、実際には違っていたという場合もあるのだとか。そうした際に、いかに調整を行い、工事を進めていくかが、施工管理担当の腕の見せ所なのだと話します。
「当社では、配属や担当業務は社員によってそれぞれ異なりますが、私の場合は、現場の実務についてからはまず施工管理の業務を経験し、その後、設計業務に就き、現在も設計をメインに担当しています。いずれの業務にも携わってきたことで、工事の一連の流れが実感としてわかることが強みだと感じています」
工事手順などを加味して設計を行うことで、作業全体の効率化を進められるよう常に気を配っているという山内さん。オールラウンドプレーヤーと呼べる存在です。
圃場整備の支障となる電柱移設工事。
発想の転換で問題解決できた達成感!
ベテランと呼ばれるにふさわしい経験を積んできた山内さん。成長のきっかけになった仕事があるのだと、教えてくれました。
「国の事業として行われていた、圃場(ほじょう)整備の現場です。田畑の用水路・排水路などを新設するその工事のなかで、地中に長い暗渠(あんきょ/排水路)を埋設するために、隣接する多数の電柱を別の場所に移設する必要がありました。ただ、そのためにかかるコストが問題でした」
とはいえ、敷地内では移動させる場所がなく、そのままでは工事に支障が出てしまいます。電柱と工事箇所の間に矢板(鉄の板)を入れて保護することも検討されましたが、やはりスペースの関係で工事が難しく、すっかり行き詰まっていた時のことでした。
「その工事も2年目に入り、発注者と気心が知れるようになってきたこともあり、暗渠の方の位置変更を打診してみたんです。すると、現場で検討し、動かしてくれたんですね」
逆転の発想で、無事、工事を終わらせた山内さん。その現場は規模が大きく、3年に及ぶものだったそうです。1年目は、先輩と担当者との話も理解できず、その後は逐一、先輩に聞きながら覚えていったという山内さん。2年目には自分で現場を仕切ることができようになり、自らの発想で問題解決を図れた時は、大きなやりがい、達成感を覚えたと話します。
通信工事会社が加盟する団体の競技会。
特訓を重ね身に付けた技術を伝えたい。
大学は情報関連の学科へ進み、通信系の基礎やプログラミングなどを学んだという山内さん。就職活動では、IT企業だけでなく視野を広げて企業研究を行っていきました。
「パソコンの前に座っているのは向いていないかな……と思い始めるなか、通信を支える情報インフラに全道レベルで携わっている当社に興味を抱きました。人と話すことが好きだったので、外に出てお客様と対応する仕事も多いということも魅力に感じましたね」
入社後、通信の基礎から施工現場の業務までを学ぶ1年におよぶ研修を経て、同社として初めての試みに抜擢されています。それは、ITEA技能大会への参加。通信建設工事に従事する企業が加盟する情報通信エンジニアリング協会(ITEA)が実施している施工技術の競技会です。切れてしまった光ケーブルの回復、個人宅へ通信設備を届けるための開通といった技術について同期・後輩とともに半年間特訓し、全国8位の成績を収めました。
「そうした工事は通常、協力会社さんが行いますが、研修での現場体験に加えて、大会に向けて技術を学んだ経験が、施工管理の仕事にとても役立ちました。幅広い経験が積める環境に感謝ですね」
今後は、技術を磨く一方、こうした豊富な経験を後輩に伝えていきたいと話します。山内さん自身が、縁の下の力持ちといえそうです。
シゴトのフカボリ
通信技術者の一日
8:30
出勤、朝礼、スケジュール確認
9:00
電柱移設の予定現場に赴き、依頼主との打ち合わせおよび現地調査
12:00
昼休憩
13:30
帰社、現地調査の結果をもとに作図作業。敷地図に電柱の位置を落としこむ
17:00
退勤
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

視野を広く持ち、担当業務の前後の工程も考えながら仕事をすることを心がけています。同じように、広い視野で自分が担う通信建設工事の役割を常に考え、北海道の「情報通信」の整備に貢献していきたいと思っています!

株式会社つうけん

1951年の設立以来、北海道の情報通信インフラの整備に携わっています。近年は、DX、ICTソリューションの提供、快適な街づくり事業にも力を入れています。

住所
北海道札幌市中央区北4条西15丁目1-23(本社)
TEL
011-644-1161
URL
https://www.tsuken.co.jp

お仕事データ

工事現場の司令塔
施工管理
施工管理とは
工事を円滑に進めるためには
欠かせない仕事。

建設工事や土木工事の現場で発注者と実際に工事を行う職人さんとの間に入り、人や資材の手配、スケジュール調整、予算管理など、工事を安全かつ円滑に進め、目的を実現するためのさまざまな業務を行います。大きな施設を建てるほど、工程も複雑になるため施工管理の重要性は大きくなります。

施工管理に向いている人って?
思い通りにならなくても慌てない。

現場での橋渡し役を担うことが多いため、コミュニケーション能力は欠かせません。スケジュールやお金の管理も行うので、計画的に物事を進められる人に向いている仕事です。工事には不測のトラブルもつきものなので、状況に合わせて対応できる柔軟性がある人も向いているでしょう。

施工管理になるためには

小さなリフォーム工事から大規模な土木工事まで施工管理の領域は広く、一般的には工事会社などに入社して、現場での仕事を覚えることになります。施工管理には「施工管理技士」という国家資格があり、工事の内容によって建築施工管理技士、電気工事施工管理技士、管工事施工管理技士など6種類に分かれています。大規模な現場の管理をするためにはこうした資格も必要となります。

ワンポイントアドバイス
分野が異なる工事でも活躍可能。

施工管理の仕事は一般的には馴染みが少ないのですが、工事現場には欠かせない仕事です。建設業界で働く上で「施工管理技士」の資格が役立つ場面は多く、取得しておくと出世や転職にも有利と言われています。

この仕事の求人例