下山 颯斗さん
インタビュー公開日:2024.04.10

コロナ禍のなかでの入職から4年、
地域の拠点病院の看護師として活躍。
王子製紙苫小牧工場の厚生施設として1910(明治43)年に開設、'67年に法人化し、現在に至る王子総合病院。1世紀以上にわたり、日胆エリアの基幹病院として地域の医療を支えるとともに、災害拠点病院、地域がん診療連携施設、地域周産期センターにも指定され、高機能な医療を提供しています。下山颯斗さんは、この病院の看護師。2020年に入職しました。
「ちょうど、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった年で、入職からしばらくすると、病室では全員が防護服姿。暑くて大変だったことと、新職員の歓迎会もなく、少し寂しいスタートだったことを思い出します」
患者さんの家族に、面会を断らなければならないなど、コロナ禍がなければしなくてよかった気苦労も経験したという下山さんも、この病院にやってきてはや丸4年。
「当初は、夜勤の業務に少し大変さも感じました。朝、家に帰ってもなかなか眠れず、寝室を遮光カーテンに変えるなど工夫しながら徐々に慣れ、今は普通に寝られますし、夜勤明けは休みになるので、むしろ歓迎です(笑)」
やさしい語り口で冗談めかす下山さん、看護師の仕事も、板についてきました。
病室を巡回するラウンドに始まり、
循環器内科病棟で患者さんを見守る
下山さんは、外来ではなく入院病棟で勤務する看護師です。所属しているのは7階にある循環器内科病棟。循環器内科は、主に心臓や血管など、血液やリンパ液などを全身に循環させる器官の疾患を専門に診る科です。
「心不全、腎不全などの病気が専門ですが、同時に糖尿病系の足の潰瘍なども診るなど、より幅広い患者さんを対象としていることが、当院の特徴ですね。日勤時は1人の看護師で6、7人、夜勤時には12、13人ほどを担当しています」
日勤業務の場合、下山さんの1日は、病室のラウンド(巡回)から始まります。これは、患者さん一人ひとりのもとを回り、状態などを確認する大切な仕事です。
「朝はまず、夜勤の看護師から、患者さんのようすについて引き継ぎを受けます。その後、患者さんごとの注射、点滴、薬を準備し、血圧計・血中酸素濃度計などバイタルチェックの機器を携えて病室へと向かいます。昼前くらいまでは、このラウンド作業が続きます」
その後は、昼食の配膳、介護士と連携しての食事介助を行い、食べ方などを確認。さらに検査への移送、ナースコールの対応など、休憩を挟みながら患者さんを見守っています。
入院していた祖父を診てくれた看護師。
思いを尊重する姿に触れ同じ道を目指す。
今ではテキパキと業務をこなす下山さんが看護師の仕事を志したのは、お祖父さんが入院していた病院で、担当してくれた看護師さんとの出会いがきっかけとなっているそうです。
「祖父は、肺の病気で同じ苫小牧の市立病院に入院していました。最終的にはそこで亡くなったのですが、その間、お世話をしてくれた看護師さんが、本人の意思を尊重しながらなにかと融通を利かせて、祖父が安らかに過ごせるよう気を配ってくれました。その姿を見て、いい仕事だなと感じたんです」
そんな思いを話す下山さんに対して、入院経験をもつお母さんから、男性の看護師さんが活躍していた、という話を聞いたことも、看護師という未知の仕事へと向かう後押しになったと話します。一方で、看護学生時代には、大変さもありました。
「入学時、男子は私一人でした。座学の授業は何の問題もないのですが、たとえば学生同士で患者と看護師役に分かれて行う全身の清拭の練習などは、さすがに一緒にはできず、私だけ別の場所でダミー人形を使って行うなど、ちょっと孤独感も(笑)」
ただ、ロッカールームなどを共用する女子に対して、自分は独り占め。その点では得だったと笑います。発想の柔軟さが持ち味です。
患者さんの変化をしっかり観察し、
多職種の連携で看護ケアにあたる。
病気の治療方針を立てるのは医師ですが、外来診療や検査もあり、病棟にいられる時間は限られます。そこで、看護師さんの出番です。
「患者さんの変化に気づきやすいのは看護師です。その時の状態をアセスメント(分析・評価)して、医師に考えを投げかけることもあります。たとえば、むくみが出ている心不全の患者さんについて、利尿剤の使用を提案した結果、水が抜けて呼吸が楽にできるようになるというケースも少なくありません」
患者さんのそばにいて、その状態を医師に報告し、処置を行った結果、患者さんの状態がみるみるよくなる。やりがいを感じる瞬間であり、看護師としての仕事ができている、という実感を得られると下山さん。
「疾患にともなう症状だけでなく、患者さんの全体を見ることを意識しています。昼間、患者さんの変化に気づけなかったばかりに、夜になって状態が急変するといったこともあるため、しっかりと観察するようにしています」
循環器内科の患者さんは高齢者が多いこともあり、特に夜間に、認知機能の低下にともなうせん妄(意識の混乱)が出やすく、転落防止の対策に加えて認知症専門看護師や精神科医の力も借りるなど、多職種の連携が重要になる部門でもあるのだそうです。
患者さんの希望や思いの実現を支え、
喜んでもらえることが大きなやりがい。
病気の治療などのため、医師、看護師に加えて専門分野の医療職が関与する多職種連携が、近年、一般的になりつつありますが、入院中のケアだけでなく、患者さんや家族の思いに応えるために力を出し合うこともあります。
「終末期の患者さんの希望を汲み、医師に相談し、看護師間でも話し合い、リハビリなどの専門職とも連携して一時外泊を実現させたことがあります。戻ってきて〝楽しかった!〟と、とても喜ばれている姿を見て、看護師になってよかったなと思いました」
お祖父さんの思いを大切にしながら世話をしてくれて、この道への憧れを抱かせてくれた看護師さん。下山さんも今、同じ思いで患者さんと向き合っているようです。入職5年目に入るこの春から、現場業務の改善などを率いるリーダーとして新たな一歩を踏み出します。
「循環器内科は、身体全体の機能に関連するため、医療知識の基礎となる部分が学べます。まずは、この科で学べることを学び、知識を身につけることを目標にしています。直近では、糖尿病療養指導士という生活習慣の指導を行う資格も目指したいと思っています」
数少ない男性看護師として、院内でも期待の若手であり、先輩看護師からの信頼も厚い下山さんです。
シゴトのフカボリ
看護師の一日
8:30
出勤。夜勤の看護師からの引き継ぎ、ラウンド準備
9:00
ラウンド、注射・点滴・投薬などの処置
11:30
昼食配膳
12:00
食事介助
13:00
検査への患者さんの移送など
15:00
患者さんの記録作成など
16:00
患者さんの状態の確認
17:00
退勤
*この間、交代で昼食・休憩をとります
*夜勤は16:30〜翌9:00の勤務
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
血圧計(左)と血中酸素濃度計(右)
患者さんの状態を把握するための必須アイテム。朝のラウンド(巡回)で血圧、血中酸素の測定を行うとともに、患者さんのようすを観察しながら、1日の業務が始まります。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

心身ともに、万全の状態でなければ、注意力も散漫になり、看護の質を高めることはできません。現場に入っている時間は、忙しく動き回ることも多いため、食事と睡眠を整え、体調管理に努めています!

医療法人王子総合病院

内科系7科、外科系7科のほか、小児科、精神科、産婦人科、皮膚科、歯科など計27科を要する基幹病院として地域医療の一翼を担っています。

住所
北海道苫小牧市若草町3丁目4番8号
TEL
0144-32-8111
URL
https://ojihosp.or.jp

お仕事データ

患者を献身的にサポート
看護師
看護師とは
医師の診察や診療を補助し、
患者さんや家族をケア!

看護師は医師の診察や診療を補助し、患者さんや家族の助けとなる仕事。勤務する病院や担当の診療科によって異なりますが、注射や点滴、採血、問診や検査、入院患者の身の回りのお世話、カルテの記入など非常に多くの業務を受け持ちます。主に外来看護師、病棟看護師、オペ室看護師、ICU看護師などがあり、患者さんと最も接点がある医療従事者として医療現場では重要な存在です。

看護師に向いてる人って?
ホスピタリティ精神にあふれている人。

筆頭にあげられるのは「人のお世話が好き」なタイプ。ホスピタリティ精神にあふれている人は看護師に向いています。また、基本的に立ち仕事であり、人の生死に関わることも多いので体力と強い精神力が必要。最近では「チーム医療」としての意識と協調性を求められるため、コミュニケーション能力も欠かせません。

看護師になるためには

国家資格の「看護師」が必要です。その資格を取得するには、文部科学大臣指定の学校もしくは厚生労働大臣指定の看護師養成所を卒業し、看護師国家試験に合格しなくてはなりません。看護師の資格を取得できる学校は、主に4年制大学、3年制の短大・専門学校があります。

ワンポイントアドバイス
准看護師との違いは?

看護師は「厚生労働大臣の免許を受けて、療養上の世話、または診療の補助を行う」ことに対し、准看護師は「都道府県知事の免許を得て、医師、歯科医師、または看護師の指示を受けて療養上の世話、または診療の補助を行う」役割。准看護師は国家免許ではなく、医師はもちろん看護師の指示を受けなくてはならないのです。

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