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下斗米 花香さん
インタビュー公開日:2024.11.27

人それぞれに、好みが異なるお米。
お客様にお声がけし、提案する日々。
「私が個人的に好きなのは『青天の霹靂』(せいてんのへきれき)。柔らかいけれど、保温してもつぶれない適度な硬さがあり、バランスがいいですね。産地は青森県です」
下斗米花香さんが話すのは、2015年にデビューした青森県産のお米の品種。一般財団法人日本穀物検定協会の『食味ランキング』で、青森県で初めて最高ランクの「特A」を受賞したお米。「青天の霹靂」の名前は、青森の「青」、北の空を象徴する「天」、そして稲妻を意味する「霹靂」に由来。稲に寄り添い、実らせる妻という思いも込められているそうです。
「お米の好みは人それぞれ。同じお米でも、おいしいと感じる方、そうでもないと思う方がいます。食味が良く、品質の高いお米を取り揃えていますが、その方に満足いただける品種をお勧めすることが難しく、同時に楽しいですね」
そんな下斗米さんの勤務先は、『玄米工房こめしん 西野店』。釧路市に本社を置く株式会社こめしんの店舗で、札幌市内にはほかに2店舗があります。入社して6年が過ぎ、お米に関する知識も身に付き、最近は、お客様に自信を持って自社で扱うお米を提案できるようになってきたといい、積極的にお声がけをし、店内を飛び回っています。
楽しそうなスタッフとお客様の笑顔。
高校時代のアルバイトが縁となり入社。
株式会社こめしんの創業は1948年。豆類をはじめとする雑穀商からスタートし、1960年には米穀の取り扱いを開始して、戦後の復興から高度経済成長を支える人々の主食としてお米を届けてきました。歴史あるこの会社に、下斗米さんは高校卒業後、入社しました。
「社員としては6年目ですが、実は高校2年の秋から卒業まで、札幌市内の別の店舗でアルバイトをしていたので、玄米工房こめしんでは足掛け8年以上、働いていることになりますね」
きっかけは、自宅の近く、高校への通学路沿いの北郷店の店頭に貼られていたアルバイト募集のポスターを見たお母さんから、勧められたからと笑います。
「商業系の高校で学び、将来は漠然と事務職を目指していましたが、就職活動中に当社の役員の方から、お誘いをいただきました。アルバイト時代、スタッフが楽しそうに接客している姿、そしてお客様の笑顔に触れ、素敵な仕事だなと感じ、入社を決めました」
自分は、身体を使って動き回る仕事の方が合っていると感じたことも、決め手になったのだと話します。社員としての最初の職場は、アルバイトでなじみのある北郷店でした。
POPの説明を見て、試食を繰り返し、
お米の特徴、味を学んでいった日々。
店舗で販売しているお米は、なんと20〜30種類。栽培契約を結ぶ農家さんから、1年分を仕入れ、玄米のまま釧路の工場で保管して、売れ行きを見ながら配送される仕組みです。秋口になると、文字通り採れたての新米が並びます。
「新米と呼ばれるのは、その年に収穫されたお米だけですが、玄米のまま適正に保管することで鮮度はしっかり保てます。釧路から運ばれた玄米は、店内でもそのまま保管。お客様が購入される際に、その場で精米(米糠を除去)します。五分づき、七分づきなど精米度合いも選んでいただけるんです」
アルバイトを通して、店舗にはなじんでいた下斗米さんですが、当時は補助作業が中心だったのに対して、今はお米を販売する店員さん。お米の種類・特徴などを覚えることが一苦労だったと、こっそり教えてくれました。
「お米は品種だけでなく、産地によって性質が異なります。店頭に並ぶお米には、特徴を記したPOPをつけているので、それを写真に撮って覚えていきました。新米は店内で試食しますが、それを繰り返すなかで味の違いがわかるようになっていきましたね」
日々、先輩社員の立ち居振る舞いなどを「盗み見」し、実践しながら接客の仕方を覚えていったという下斗米さん。勉強熱心です。
具材から手づくりするおむすび。
新米の味をみて使う米にもこだわる。
玄米工房こめしんの店舗では、「お米」をメインに佃煮・缶詰などご飯のお供も豊富に取り揃えているほか、注文を受けてから握るおむすびも人気となっています。その数、20種類以上。玉子焼きや鶏の唐揚げ、ポテトサラダといった惣菜も充実しており、思わず目移りします。
「店頭では、お米の販売と同時におむすびも握りますし、その具材や惣菜づくりも私たちの仕事です。おむすびを『ふんわりと握る』というのが実はとても難しくて…握っては先輩に味見してもらい、自分でも食べながら練習しました」
昼どきや週末には、次々と入る注文に追われるそうですが、近所の人たちだけでなく、仕事の途中にわざわざ立ち寄ってくれる人も多く、やりがいを感じる瞬間も多いそうです。
「おむすびに使うお米にも、もちろん、こだわっています。お米屋さんですから(笑)。新米が出た時にスタッフで試食をして、使うお米を決めていきます。今は千葉県産コシヒカリですが、山形県産つや姫というお米を使っていたこともありますね」
同じお米でも毎年少しずつ食味が異なり、スタッフの間でも、これがいい、いやこっちの方がと意見が分かれるケースも。それだけ、お米は個人の嗜好に左右されるということがわかります。
SNSを通して店舗の魅力を発信。
お米の本当のおいしさを伝えたい。
お米のことを知り尽くしたスタッフも、意見が分かれる嗜好。お客様の好みに合うお米を選び、提案することも大切な仕事ですが、そこが難しく、だからこそ楽しいと下斗米さん。
「硬めがいいか、柔らかいのが好きか。和食と洋食、どちらが多いかといった質問をしたり、これまでおいしいと感じたお米は何かを聞いて好みを確かめたり。まさに試行錯誤です」
入社から6年経った今でも、難しさを感じるそうです。
「そうしたなか、おすすめしたお米が『おいしかった』と言わることが、素直にうれしいですね。お米のギフトも扱っていますが、送られた側の方が、『おいしかったから』と来店してくれたことも。『やった!』 という感じでしたね」
現在、勤務している西野店は、2024年3月にオープン。2月に異動し、開店準備から関わってきました。若い世代のお客様も多いなか、下斗米さんが中心となって、新米の入荷や新メニューの紹介などを、SNSを使って情報発信することに力を入れているそうです。
「お客様に、『こめしんアンバサダー』になってもらい、お米を使った料理などもアップしてもらうことで、登録も順調に増えています」
玄米工房こめしんのことを、もっと札幌の人に知ってほしい。そして、お米の本当のおいしさにもっと気づいてほしい。言葉に力を込める下斗米さんです。
シゴトのフカボリ
米穀店販売員の一日
10:00
出勤、おむすびの具材の準備をしながら、接客スタート
13:00
昼の忙しい時間帯が終わると休憩
14:00
おむすびの具材づくり、接客に加えて釧路から届く玄米の整理、試食用米の炊飯準備
17:00
お客様の入りを見ながら店舗の片付けを開始
19:00
閉店、退勤
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
精米機
店舗には、30キロの米袋に入れた玄米が置いてあり、お客様からの注文を受けて、店内にある精米機で米糠を取り除く精米を行います。お米屋さんならではの、おいしさを提供する秘密兵器ともいえます。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

どのお米にすればいいか迷っているお客様や、毎回、違うお米を試したいという方とは特にたくさんお話をして、好みなどを把握し、お勧めするお米を選んでいます。難しくもありますが、私にとって楽しい時間ですね。

お仕事データ

おいしさを笑顔でお届け!
食品販売スタッフ
食品販売スタッフとは
お弁当やスイーツ、お惣菜など、
身近なおいしさを提供。

デリやデパ地下の惣菜店、パン屋といった食品を扱うお店で、お弁当やスイーツ、パン、軽食などを提供するのが食品販売スタッフ。接客や会計に加え、商品の包装や補充、陳列、盛り付け、掃除といったさまざまな業務を担当します。いずれのお店でも衛生管理が何より大切なことから、身だしなみをきちんと整えた上で手洗いやアルコール殺菌などを徹底。お客様の「おいしい笑顔」を生み出しています。

食品販売スタッフに向いてる人って?
食べることが大好きで、
人と接するのが得意なタイプ。

食品販売スタッフとして働く人には、「とにかく食べることが好き」というタイプが多いようです。仕事の大部分を占めるのが接客なので、人と話すことが得意な性格も向いているといえるでしょう。また、お客様の好みや味わうシーンに合わせて商品をオススメする力も求められます。衛生管理が厳しいことから、キレイ好き・掃除好きな人も重宝されるはずです。

食品販売スタッフになるためには

食品販売スタッフの仕事は比較的シンプル。必要なスキルや資格は特にないため、未経験からでもチャレンジできます。高校卒業後に店舗で働くほか、食品系について学べる大学や短大、専門学校を卒業して就職するルートもあります。この分野でキャリアアップを目指す場合は、食品衛生責任者講習を修了しておくとスムーズでしょう。

ワンポイントアドバイス
商品のおいしさを
いかに伝えるかも腕の見せどころ!

デリやパン屋には試食ができる商品もありますが、そうではない場合のおいしさを伝えるのも食品販売スタッフの腕の見せどころ。「ちょっとしたプレゼントに」「お子様のおやつに」など、具体的な提案をすることで販売につながることも多いようです。また、商品知識をしっかりと把握することで、「パンの生地に抹茶を練り込んでいます」といった説明が説得力となり、お店の売上に貢献することもできます。