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気象予報士(気象キャスター)_吉井 庸二さん
インタビュー公開日:2026.07.06

1分35秒という限られた時間のなか、
「生活」という視点から天気を伝える。
「こんにちは。こちら今の札幌のようす、すっきりとした青空が広がっています。今日はさっぽろまつりの最終日です。では午後の天気です。晴れるところが多いでしょう…内陸は広く25度以上の夏日になります。水分補給や適度な休憩を心がけ、熱中症対策をしてください」
与えられている時間は、午前11時45分から、わずか1分35秒。「北海道ニュースUHB」の番組内で天気予報を伝える吉井庸二さんの、ある日の原稿の一部です。聞きやすいミディアムテンポのやわらかな声で空模様を解説します。
「科学的な気象データから導き出される、今後の気象を知らせるのが天気予報ですが、大切なのは気温が1度上がる、下がるということより、生活にどう影響するかという点だと考えています。この時は熱中症予防について触れましたが、翌日から雨というデータが出ていれば、『今日の日差しを(洗濯などに)有効に活用してください』といったテイストを加えることを意識しているんです」
北海道全域の天気を細かく解説する時間はないので、天気が急変しそうな地域を中心に情報提供するといった工夫もあるそうです。北海道文化放送(UHB)に入社して8年。自分なりの視点をどう盛り込んで伝えていくかを、常に考えているそうです。何気なく見ていた天気予報が、急に新鮮に感じられました。
画面上のテロップや静止画も考えて発注。
過去データも参考に自分の言葉で伝える。
天気予報では、天気図や地域ごとの予報イラスト、各地の映像、警報・注意報を伝えるテロップが背後に映し出されています。ところが、スタジオにいる吉井さんの後ろには一面、緑色の壁があるだけ。
「背後の緑を透明化して映像・画像を合成するクロマキー技術で画面をつくっています。自分で読む原稿に加えて、どんな映像や静止画を入れるかまで考えて、制作部門に発注。きちんと映るのかの確認(クロマキーチェック)も行い、本番に臨んでいます」
テレビ局は一般的に気象会社と契約し、観測データや基本的な天気予報の情報を得ていますが、吉井さんがテレビで読む原稿は、気象予報士としての知識を活かしながら独自の予報も行って作成するのだそうです。類似する過去の気象データも参考にし、自分の言葉で伝えることが重要であり仕事の肝なのだと吉井さん。
「朝の時点で予想していた最高気温を本番前に超えてしまったような場合には、原稿を修正します。直前まで気が抜けませんね」
気温がぐんと上がったり、豪雨に見舞われたような地域のようす、地元の方のコメントなどがニュースで放送されることがありますが、予報をもとにどこで中継をすればベターかといった取材ポイントのアドバイスを行うのも吉井さんの仕事。重要な役割を担っています。
地理学をきっかけに気候学に興味を抱く。
自ら天気を伝えたいと気象予報士に。
人文地理学(ヒューマンジオグラフィ)、自然地理学(フィジカルジオグラフィ)、GIS(ジオグラフィックインフォメーション)。専門的でちょっと難しそうですが、吉井さんは大学で、こうした分野を学びました。卒業したのは、カナダ・オンタリオ州にあるローレンシャン大学。
「カナダは、様々なバックグラウンドをもつ人々が暮らしている国なので、多様なカルチャーに触れることができると考えたことと、もともと地理が好きで、興味のあった地理学を学べることが入学の理由でした。そしてそこで、関連する気候学に触れました」
天気図は、気圧配置を地図上に表したもの。だから、地理学と気象学は身近な学問なのだとか。天気に興味を抱き、帰国した吉井さんは気象会社でアルバイトを始めます。卒業の時期が日本とカナダでは異なり、企業の採用活動時期と合わなかったというのも理由の一つでした。
「アルバイトを始めて間もなく、正社員に登用され、船舶会社に最適な航路を提案する海洋気象、航空会社に上空の気象情報を伝える航空気象などの分野を担当しました」
そうした業務を経験するなかで、自ら天気を伝えたいという気持ちが芽生え、気象予報士の国家資格を取得。1年間ほどテレビ局に出向し、天気予報の原稿作成や、それを読む気象キャスターのサポート業務に従事します。
全国でも珍しい「社員」気象キャスター。
天気予報のほか報道業務なども担当。
「自分もテレビで天気予報を伝えたいという気持ちが、その経験でさらに強くなり、気象キャスターの派遣会社に登録。現在の勤務先であるUHBで3年ほど、派遣社員として天気予報を担当しました。その後、報道情報部の限定社員として入社する機会をいただき、現在に至ります」
千葉県生まれの吉井さんですが、北海道の環境に惹かれたこともあって、入社を決意したと話します。現在は11時45分からのお天気コーナーへの出演をはじめ、夕方のお天気コーナーのサポート、地震・火山など自然災害のニュース取材や原稿制作、さらには報道業務も担当しています。
「社員として気象キャスターを勤めているケースは、全国のテレビ局のなかでも多くないかもしれません。多様な業務をこなさなければいけない大変さはありますが、番組づくりそのものにも関わっているという自覚とやりがいを感じますね」
毎日、夜にはその日の番組を振り返る反省会が行われるそうです。どうすれば、視聴者の関心を得られるか。そんな話し合いの席にも参加する吉井さん。3年前に総合職となり、気象予報士の枠を超え、「テレビ人」としての役割が大きく広がってきています。
同じ空は、二度とない。
信頼される気象予報士を目指して。
2016年8月。17日の台風7号、21日に11号、23日には9号と3つの台風が北海道に上陸。さらに30日から31日にかけて10号が接近しました。そのため、オホーツク海側や太平洋側で記録的な大雨となり、甚大な被害が発生しました。
「印象深いできごとですね。台風の進路予測がとにかく難しくて。夜中まで局に詰めて気象情報のチェックに追われていました。道東方面にカメラマンを派遣して洪水の状況を撮影したかと思えば、今度は南富良野が大変だと…」
高速道路が通行止めになっていたので、旭川経由で向かってもらうなど次々と判断を迫られましたと吉井さん。ただ、そうした大変さはあるものの、災害報道の仕方ひとつで「誰かが被害を回避できているかもしれない」と思いながら、業務に取り組んでいるといい、「天気は一つとして同じものがない」ことが、それを扱う仕事としてのおもしろみでもあると話します。
「放送したお天気コーナーの動画の配信、気象会社から提供される気象システムの管理も担当しています。天気予報にトータルに関わっていることが、私の業務の特徴です」
ほかにも、新たな防災気象情報に対応させるためのシステムの更新や社内への周知、業務マニュアルの整備、気象データベースのAI活用によるシステム化など、業務効率化にも力を発揮しています。「天気予報もAIでできるようになるかもしれませんが、例えば避難の判断には、人の言葉、呼びかけが必要だと思うんです」
それには、信頼される気象予報士である必要があると吉井さん。大好きな北海道、その地域の人たちに向け、今日もやさしい声で語りかけています。
シゴトのフカボリ
気象予報士(気象キャスター)の一日
8:00
出勤。気象データの確認・天気図の解析、天候に関するニュース取材用のカメラの発注、天気予報の組み立て
9:00
天気予報の構成案作成、テロップ・静止画の発注
10:00
報道情報部の打ち合わせ
11:10
クロマキーチェック、テロップ・静止画の確認
11:25
リハーサル、予報修正
11:45
お昼の天気予報本番
11:50
地震カットイン(割り込み放送)訓練
12:00
ネット配信、夕方のニュースに向けたカメラを発注、昼休憩
13:00
報道情報部の打ち合わせ
13:10
夕方のニュース原稿作成
15:00
編集作業など
17:00
夕方の放送立会い
19:00
番組反省会

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具

ミラーレスカメラ
地形や地域の特徴を知るために、入社時からカメラを持って北海道内を車で巡っています。ほぼ全道の市町村を回り、残すは奥尻島のみ!その都度、季節を感じられる風景などを撮影し、お天気コーナーで紹介することもあるんです。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

天気予報を通して、暮らしに密接に関係する空模様に関心を持ってほしいと願っています。関東出身の私が大好きになった、広くて美しい北海道の空を、地域の方にもっと身近に感じてもらえればうれしいですね。

北海道文化放送株式会社(UHB)

コーポレートメッセージは「すべては北海道のために」。1972年の開局以来、北海道全域にテレビ番組の放送を行い、道民に親しまれています。

住所
北海道札幌市中央区北1条西14丁目1-5
TEL
011-214-5200
URL
https://www.uhb.jp

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お仕事データ

空を読み、未来を伝える!
気象予報士
気象予報士とは
データを分析し、
天気の「これから」を人々に。

気象予報士は、気温や気圧、風向きなどの膨大な気象データを分析し、天気の変化を予測・発信する専門家。テレビやラジオの天気予報でおなじみの存在ですが、活躍の場はそれだけにとどまりません。航空や海運、農業、建設、イベント運営など、天気が直接影響するあらゆる業界において、気象情報を提供する仕事も担っています。近年では気候変動の影響で異常気象が増加しており、台風や大雨、大雪などの災害から人々の命を守るための「防災情報」を発信する役割も非常に重要。気象庁や民間の気象会社、放送局などを主な職場に、データと向き合いながら社会を支える仕事です。

気象予報士に向いてる人って?
天気や自然現象に興味があり、
データを読み解くのが好きな人。

天気や空の変化が気になって仕方ない、というタイプに特に向いている職種。気象データや数値を扱うことが多いため、理科や数学への興味・関心も大切です。また、複雑なデータを一般の人にもわかりやすく伝えるための表現力やコミュニケーション能力も求められます。天気は常に変化するため、最新情報をすばやくキャッチして判断を下す瞬発力も必要。防災の観点から「人の役に立ちたい」という強い使命感を持っている人にも、ぴったりの仕事といえるでしょう。

気象予報士になるためには

気象予報士として働くためには、国家資格である「気象予報士資格」の取得が必要です。試験は年2回実施されており、学科試験と実技試験で構成。合格率は例年5%前後と難易度が高く、しっかりとした対策が求められます。受験に必要な学歴や年齢制限はなく、中高生でも挑戦可能。大学では理学部や工学部の気象・地球科学系の学科への進学が一般的ですが、独学や専門の予備校・通信講座で資格取得を目指す人も多くいます。資格取得後は民間の気象会社や放送局、航空・海運会社などへの就職を目指すのが多いルートです。

ワンポイントアドバイス
気候変動の時代に、
気象予報士の使命と需要はさらに拡大!

地球温暖化による気候変動の影響で、かつてない規模の台風や集中豪雨、猛暑が各地で頻発するようになっています。こうした時代だからこそ、正確な気象情報を届ける気象予報士の役割はますます重要に。防災・減災への社会的関心の高まりとともに、自治体や企業が気象の専門家を求める動きも加速しています。また、農業や再生可能エネルギー分野でも気象データの活用が進んでおり、活躍の場は今後さらに広がる見込み。希少性の高い国家資格を武器に、社会のさまざまな場面で長く必要とされる職種です。