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河野 秀彰さん
インタビュー公開日:2021.08.19

映像・音声の制作から配信まで、
技術面から番組づくりを支える。
テレビ局の制作ディレクターと聞いて、どんなイメージが浮かびますか?番組の企画を行う人。スタジオのスタッフを指揮する人。出演者に指示を出す人。街頭でマイクをもってインタビューする人――。いずれにしても、番組制作の最前線を担う責任者であることは間違いありません。けれども、制作ディレクターだけで番組はつくれません。映像を撮り、音声を録音し、編集が終わると電波に乗せて視聴者に届けるという、一連の技術的な業務が必要になります。こうしたいわばハード面を担当するのが、河野秀彰さんの仕事です。
「テクニカルディレクター(TD)と呼ばれ、その名前どおり、技術的な側面から番組づくりを支える役割を果たしています。一般には、あまり知られていない仕事だと思いますね」
入社から11年。スタジオでの生放送から、国際的なイベントまで、数多くの番組制作に携わり、番組映像のクオリティをサポートしながら、テレビを通してさまざまな情報を伝える一翼を担ってきました。
制作現場を担う技術スタッフとの、
コミュニケーションが大切な仕事。
「テクニカルディレクターの仕事は、技術的なマネジメント。制作ディレクターが意図する内容、演出をどうすれば実現できるかを考えます」
ひとつひとつの番組には伝えたいテーマやコンセプトがあります。それに基づいて準備を行っていきます。生放送の中継なら、撮影した映像・音声を本社まで送る回線を手配し、スタッフの人数・配置を考え、技術費として必要となるコストの算定まで行います。
「そのうえで、演出側の狙いに対して、技術的な提案を行い、不具合が起きる可能性があれば、それをアドバイスしたりもします」 
具体的な制作内容、技術的な手法が決まると、映像機器の調整を行うビデオエンジニア(VE)、音声の調整を担うミキサー(MIX)、撮影の責任者であるカメラチーフ(CAM)など現場の技術スタッフにその内容を伝え、コンセンサスを得た上で制作に入ります。
「技術的なこと以前に、年齢や専門・立場の異なるスタッフと、しっかりコミュニケーションを図ることが大切な仕事なんです」
『テレビ』と『地元に根ざした仕事』。
北海道のテレビ局へと目が向いた瞬間。
大学では、情報系の分野を学んでいたという河野さん。大手企業を始めとするメーカーからの求人に基づき、教授推薦を得て就職するというスタイルが一般的でしたが、就職活動が本格化し始めた3年生の秋、世界的な経済危機、リーマンショックが発生。
「教授推薦枠が減少し、選択肢が狭まることが予測されたので、自由応募で就職活動を行うことにしました。そこで、改めて自己分析を行ってみたんです」
自分は何が好きか?何がしたいのか?自らを見つめ直すなかで見つかったキーワードが、小さい頃から好きだった『テレビ』と、『地元に根ざした仕事』。そこから、北海道のテレビ局という方向性が見えたのだそうです。
「人と触れ合いながら働きたいという思いもありました。テレビ局はいろいろな人が集まるイメージでしたし、企業研究のなかで、テレビ局には情報系の知識を活かせる仕事があるということがわかり、興味が湧きました」
入社後、河野さんが配属となったのは技術局。テレビ業界で一般的に制作技術部などと呼ばれるセクションだそうです。
カメラマン、スイッチャーなどのほか、
撮影機材の管理までを担うエンジニア。
「UHBの技術局には3つの部門があります。番組制作の技術を担う映像ソフト部、番組の流れやCM送出を管理する放送システム部、家庭のテレビに電波を届ける送信という業務を担う送信技術部です」
このなかで、河野さんは映像ソフト部に所属しています。入社当初は、カメラマンのアシスタントをしながら数々の中継現場を経験。仕事の流れを覚え、次にカメラマンとして主にスタジオでの番組制作に携わります。その後、中継映像とVTRを切り替えるスイッチャーを経て、テクニカルディレクターへとステップアップしました。
「とはいえ現在もカメラマン、スイッチャーを担当しますし、撮影機材・音声機材、スタジオのモニターなどの管理や、機材の更新業務など多様な役割を担っています。その意味でまさに技術職、エンジニアと言えますね」
同時に、スキルと感性を活かして、より美しい映像、クリアな音声といった彩りを番組に与えることができるクリエイティブな仕事なのだそうです。
技術スタッフと協力し合いながら、
工夫して新しい映像をつくる喜び。
2016年のリオオリンピック。河野さんは、系列キー局であるフジテレビの技術協力のカメラマンとして現地に赴き、国際映像という世界に配信する映像を撮影。
「今、この瞬間を、自分が映像を通して世界の何億という人々に届けているんだ、という興奮がじわじわと湧いてきました」
あるカーリング大会の中継では、カメラを吊ってストーンを投げる瞬間を捉えるという前例のない撮影手法を導入。その後、ヨーロッパのテレビ局が同じ手法で制作した映像を見た時、自分たちの工夫の結果が真似されて、誇らしい気持ちになったのだとか。
「カメラマン、スイッチャー、ミキサーなどと協力し、アイデアを出し合って新しい映像をつくっていく。そこが勝負ですし、面白さですね」
北海道のテレビ局として、地域密着の情報を視聴者に伝えられることがやりがい、と話す河野さん。これまでの経験を活かし、今までにない番組をつくりたい、ネット配信など放送以外の手法にも取り組みたい、感性が衰えないよう新しいものに触れ続けたい……と、次を見据える思いが止まりません。何を話していても、楽しそうな表情が印象的でした。
シゴトのフカボリ
テレビ局テクニカルディレクター(TD)の一日
9:30
出勤・スタジオ集合、機材準備
10:00
打ち合わせ
10:30
各コーナーの立ち位置確認、機材確認、リハーサル
12:00
収録開始
13:30
収録終了、休憩
14:30
メールチェック
15:00
スタジオ集合
15:30
打ち合わせ、機材確認、事前収録
16:50
生放送開始
19:00
生放送終了
19:30
退勤
*収録番組と夕方帯番組がある1日の例

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具

赤いサインペン
なんの変哲もないサインペンですが、生放送の際、技術スタッフとコミュニケーションを図るため、台本にメモ書きするのに必須の道具です。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

北海道のテレビ局の仕事は、道内で起こっていることを道民の方々に伝えることですが、同時に、北海道の魅力を全国に伝える役割も担っています。その意識を強く持ち、北海道の今を発信していきたいと思っています。

北海道文化放送株式会社(UHB)

コーポレートメッセージは「すべては北海道のために」。1972年の開局以来、北海道全域にテレビ番組の放送を行い、道民に親しまれています。

住所
北海道札幌市中央区北1条西14丁目1-5
TEL
011-214-5200
URL
https://www.uhb.jp

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お仕事データ

テレビを支える陰の立役者
テレビ技術スタッフ
テレビ技術スタッフとは
カメラマンや音声を筆頭に、
テレビの放送を専門技術で支える仕事。

テレビの仕事はアナウンサーやキャスターといった表舞台に立つ職種が目立ちますが、放送を陰ながら支える技術スタッフがいてこそ成り立ちます。テレビ技術スタッフとしてまず連想されるのは、カメラマンや音声・照明・美術など、実際の番組収録にあたる現場作業の担当者。他にも、放送システムの維持や管理を行うIT系の仕事があったり、映像を切り替えるスイッチングを担当したり、中継車の管理をしたり、映像の品質を向上させたり、さまざまな専門技術が折り重なって一つの番組が放送されています。テレビ技術スタッフは、まさに陰の立役者といえるでしょう。

テレビ技術スタッフに向いてる人って?
コツコツと地道な作業をするのが好きで、
周囲とスムーズに連携が取れる人。

テレビ技術スタッフは、限られた時間内に集中して業務をやり遂げることが重視されがちな職業。華やかな表舞台に立つよりも、コツコツと地道な作業をする方が好きという人は、向いているでしょう。番組収録の現場作業に限らず、各スタッフが連携しながら仕事をスムーズに進めなければならないため、チームワークも必要です。指示された仕事を敏速にこなすフットワークの軽さと、撮影中に動き回る体力も求められます。

テレビ技術スタッフになるためには

テレビ技術スタッフになるために必ずしも必要な資格はありません。大学や短大、高等専門学校などの電子工学、通信工学、電気工学、芸術系の放送関連学科などでテレビ技術について学び、放送局や制作プロダクションに入るのが一般的です。ただし、最近は幅広い放送技術の分野で適性を見極めるため、理系に限らずとも、必要な技能を持つ文系の学生にも門戸を開いている会社もあります。

ワンポイントアドバイス
テレビ局のカラーに注目し、
向いている職場を考えるのもオススメ!

テレビ局の中にも「バラエティ番組が強くユニークな人が多い」「スポーツ情報や映画制作に力を入れている」「ドラマ制作やアニメに定評がある」など、それぞれにカラーがあります。テレビ技術スタッフはいずれも幅広い知識と柔軟な発想力を持ったプロ集団ではありますが、自分の興味があることや好きな番組に携われるという観点から職場を選んでみるのもオススメです。