飯島 隆二さん
インタビュー公開日:2021.10.29

江別製粉に就職したのは…
高校の先生のオススメから(苦笑)
江別市は石狩管内でも指折りの小麦産地。栽培が難しい反面、高品質な品種「ハルユタカ」の安定的な収穫に成功したマチとしても知られています。江別製粉株式会社は、そんな江別産を含めた道内各地の小麦を多種多彩な小麦粉へと加工する企業です。
「高校生のころ、就職先に悩んでいて先生から紹介されたのが江別製粉。実は…小麦粉や小麦製品が大好きというわけではなかったんです(苦笑)」
少しバツの悪そうな表情で話すのは製粉スタッフの飯島隆二さん。高校の先生から道産小麦を原料とした小麦粉づくりで有名と聞き、地元での就職を目指していたことからも興味本位で入社したと正直に続けます。
「入社後、社内では製品の袋詰め担当からスタートしました。といっても、機械化されているのでさほど難しくありません。袋詰めに慣れた後は、小麦粉をストックするタンクをやり繰りして製品づくりを円滑に行う『タンク割り』も教わりました」
挽砕ができるのはベテランだけ。
技術を受け継ぐのが急務でした。
同社の本社工場の工程は、大きく「精選(せいせん)・調質(ちょうしつ)」「挽砕(ばんさい)」「包装」。原料の小麦を受け入れると、まずは植物の茎や小石などを取り除く「精選」を行い、加水して寝かせる「調質」という工程があります。
「一般に小麦粉は白いほうが上質といわれています。小麦の外皮が混じると雑穀臭やえぐみ、色味が出てしまい、例えば、パンも白くふんわりと仕上がりにくいんです。上手く外皮を取り除くためには、砕く前に加水して寝かせておくことも重要です」
その後の「挽砕」工程ではロール機で小麦の粒を砕き、シフターと呼ばれる機械でふるいにかけた上で、風力で外皮を取り除きます。この工程を繰り返す「挽砕」で、ようやく小麦粉の出来上がりです。
「言葉で説明すると簡単に聞こえますが、とりわけ挽砕は職人技の塊。当社でも担当できるのは限られたベテランなので、会社としても技術を受け継ぐのが急務でした」
飯島さんは製品の袋詰め担当としても、率先して新しい仕事を覚えようと努力していました。その姿勢が認められ、挽砕の「後継者」として白羽の矢が立ったのでしょう。小麦粉のサンプルを品質管理担当に届けたり、シフターの調整をしたりする挽砕のサポート役を担うことになりました。
同じ産地・品種の小麦でも、
わずかな違いがあるんです。
飯島さんは挽砕のサポート役を5〜6年続け、次に精選・調質の担当にシフトしました。同社の小麦粉製品は約300種にも及び、一つひとつに目標の水分量を決めているのだとか。なるほど、調質は正確に加水するのがポイントなのですね。
「半分は正解です(笑)。実際は同じ産地、同じ倉庫で保管してあった小麦でも、日によって水分の含有量が異なりますし、湿度の影響も受けてしまいます。なので、水を一定量加えれば良いというものでもないんです」
時には水分が目標値に達せず、製品にならずに悔しい思いもしたのだとか。けれど、飯島さんは難しいからこそ面白く感じ、もっと深いところまで知りたいという気持ちが湧き上がってきました。
「それに、精選・調質を担当することで原料を知ることができました。産地や品種、年度によってモノがまったく異なることを肌で感じられたのは実に有益だったと思います」
ロールの「締め具合」を
微調整するのはまさに職人技。
昨年、飯島さんはついに挽砕の工程に携わるようになりました。調質もある程度の勘どころは必要でしたが、ロール機の微調整は段違いの難易度だと表情を引き締めます。
「ロール機には二対のロールが備わっていて、その締め方によって小麦の砕き具合を加減します。ベテランの先輩方は小麦の品種や粒の割れ方、水分、その日の気温・湿度、ロールの熱などから瞬時にベストを判断していますが、正直、何度トライしてもまだコツがつかめていません」
ほんの少しの締め具合が小麦粉の質を左右する奥深い世界。飯島さんはロール機の調整をした後に上司や先輩にチェックしてもらい、さほど修正されなかった時は「ヨシッ…と心の中でガッツポーズします」と笑います。
「ロール機だけでなく、例えば、シフターのふるい分けも網を交換するだけで品質が向上することもあります。より良い製品をつくるためには、一つひとつの理解を深めていくしかありません」
飲食店でウチの小麦粉を
つい探してしまいます(笑)。
入社時は小麦粉づくりに興味本位だった飯島さん。けれど、これまでのお話を聞いていると、どっぷりと魅力に取りつかれているようですね。
「その通りです。飲食店に出かけた時も、ウチの小麦粉を使っているのかな…と袋を探してしまうくらい(笑)。ただ、製品がどう使われて、『おいしい』を生み出しているのかを知るのも大切。自宅では子どもたちにウチの粉でホットケーキをつくる程度ですが、本当はうどんを打つくらいしなければならないんですよね」
本当に小麦粉づくりに魅了されていることが分かるヒトコト。最後に、今後の目標を尋ねてインタビューを締めくくりました。
「これまでは年齢としては一番若く、先輩に甘えてばかりいました。でも、最近は年下の後輩が入社してきたこともあり、いつまでも下っ端ではいられなくなったんです。工場内の課題を改善するとともに、若手にしっかりと指示を出して育てていくのも役割だと思っています」
シゴトのフカボリ
製粉スタッフの一日
7:00
出勤
7:10
予定されている製品を製造
13:00
昼休憩
14:00
各機械の整備
16:00
退勤
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

僕らが手掛ける小麦粉は主に業務用なので、一般の方が使う機会はそう多くはありません。しかし、小麦の生産者と、飲食店やメーカーなどをつなぐ存在として、製品の先にいる「食べる人」を笑顔にするために、常に今よりもおいしい小麦粉をつくりたいと思っています!

江別製粉株式会社

パン屋さん、麺屋さん、お菓子屋さん、そしてご家庭での利用など、さまざまな用途で使われる「小麦粉」を製造する製粉会社。小麦粉の原料である小麦の国産比率は低く15%程度だが、そのうち北海道は60%程度を占める一大産地。江別製粉では、地元・北海道産の小麦を多く取り扱い、全国に販売している。

住所
北海道江別市緑町東3丁目91番地
TEL
011-383-2311
URL
http://haruyutaka.com/

お仕事データ

多くの人においしさを!
食品製造スタッフ
食品製造スタッフとは
食材の下処理や加熱、調理を行い、
たくさんの「ウマい」をつくる!

食品メーカーをはじめとする企業の工場で、お弁当やお菓子、パン、水産加工品、麺などの食品を手がけるのが食品製造スタッフ。大規模な工場では機械化が進み、食材の洗浄や下処理、加熱、調味、包装など工程ごとに生産ラインを分けて作業を行っています。食品の種類や工場によっては手作業を大切にする企業もあり、職人のようにパンやスイーツをつくる食品製造スタッフも少なくありません。家庭の食卓でよく見かける商品を手がけるケースでは、広くおいしさを届けられるやりがいが感じられます。

食品製造スタッフに向いてる人って?
コツコツ型で衛生面にも気を配れる、
「食」が好きな人。

食品製造スタッフは、当然のことながら「食」が好きな人に向いている仕事です。機械や調理器具などをきれいに洗浄したり、自らの身だしなみを徹底的に整えたりしなければならないため、衛生面に最大限の気遣いができることも必要です。また、製造の際には正確な作業を繰り返さなければならないため、いわゆる「コツコツ型」にも面白い仕事に映るでしょう。

食品製造スタッフになるためには

食品製造スタッフになるために必要な資格や学歴はありません。高校や専門学校、短大・大学卒業後、食品メーカーなどの採用試験を受けて、合格するのが一般的なルートです。未経験からチャレンジできる職場も多く、アルバイトやパートスタッフとして働いて、正社員登用の道のりを歩む人も少なくありません。ある程度経験を積むことで部門のリーダーや工場長へのステップアップも可能です。

ワンポイントアドバイス
気温や湿度、食材の品質など、
日々の変化によって小さな工夫を。

現在では機械化された工場が多いものの、やはり人の「感覚」もおいしさを左右する大きな要因の一つです。その日の気温や湿度を肌で感じて投入する水の量を調整したり、食材の品質を見極めて加熱時間を変えたり、一定のクオリティを届けるためには小さな工夫が必要。食品製造スタッフの仕事は一見すると単調な作業に思えますが、日々変化を感じながら働けるのです。

この仕事の求人例

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