馬場 悠太朗さん
インタビュー公開日:2024.10.28

職業紹介や雇用保険制度の運用を通して
安定して働ける環境づくりに貢献する。
「ハローワーク」とは、「ひと」と「しごと」の出会いを大切にする願いがこめられた愛称で、一般の方からの公募で選ばれたものです。正式名称は、公共職業安定所。ある年代の方なら、「職安(しょくあん)」という呼称になじみがあるでしょう。厚生労働省設置法という法律に『国民に安定した雇用機会を確保すること』を目的とすると記されています。
「ハローワークの仕事としては、職業紹介が大きな柱ですが、それだけではなく、企業で働く人が加入する雇用保険に関する手続き・相談や、職業訓練、企業への指導、キャリアアップのための助成金支援など、行政分野の幅広い業務を行っています」
そう教えてくれるのは、ハローワーク苫小牧(苫小牧公共職業安定所)の雇用保険課で係長を務める馬場悠太朗さん。ハローワーク苫小牧は、厚生労働省 北海道労働局が管轄する、道内22拠点のハローワークの一つです。
「札幌市内のハローワークで6年ほど勤務した後、2023年春にこちらに異動となりました。異動のタイミングが子どもの誕生と重なっていたこともあり、通勤可能な範囲での転勤を希望し、今は札幌から車で通っています」
産まれてきたのはなんと双子! 忙しいと言いつつ、うれしさが自然と滲み出します。
失業した人の生活をサポートする
給付金を扱い、次の一歩を支える。
馬場さんが所属する雇用保険課は、文字通り雇用保険に関する手続きなどを行う部署です。雇用保険は、働く人が離職(退職)した場合などに、生活をサポートするための給付金=失業手当の制度で、従業員を雇用する企業は必ず加入しなければなりません。
「ハローワーク苫小牧の雇用保険課には、離職した方の給付金の手続きを行う『給付係』と、企業が雇用保険の加入手続きをする『適用係』があり、私は前者の『給付係』が担当です」
会社を退職すると、そのことを証明する「離職票」が発行され、これをハローワークに提出することで給付金の支給が行われます。馬場さんは、退職した人が次の一歩を踏み出すための大切な役割を担っているのです。
「離職票を審査して、雇用保険の加入期間や条件を確認し、給付金の支給対象となるかどうか、いつ頃支給できるかなどを判断します。支給が決定すると、その人は定期的にハローワークに来て、失業状態であることや求職活動の報告をする『失業認定』を行う必要がありますが、その手続きも担当しています」
雇用保険の制度には、新たなスキルを身に付けたり、学び直しを行う場合に費用の一部が支給される「教育訓練給付」という制度もあり、その案内・手続きも馬場さんの仕事です。
学生向けの就職支援サービスを利用、
心に残った対応からハローワークを志望。

日高管内のまちで生まれ、高校時代は札幌で過ごし、京都にある大学に進んで学生生活を送った馬場さん。もともと公務員志向で、かつ、北海道に戻って働くということも視野に入れて就職活動を行いました。
「公務員採用試験の筆記に合格した後は、北海道内を勤務地とする官庁の説明会に、時間の許す限り顔を出しました。労働局をはじめ、開発局、厚生局、公安委員会など、分野に関わらず説明を聞き、職場見学にも参加しました」
その中で、ハローワークを選んだのは、自分自身が利用した際の印象も大きかったのだそうです。ハローワークでは、学生向けの就職支援サービスを提供しており、面接指導などが受けられます。これに参加した際、ていねいに対応してもらえたことが心に残ったと話します。
「北海道労働局の採用前の説明会や、若手職員との懇談会でも、同じようにみなさん、物腰が柔らかく、しっかり話を聞いてくれたことが印象的でした」
公務員という進路は決めていたものの、どこを目指すか迷っていた時期もあるといい、その経験を踏まえて、若い世代のサポートに携わりたいという思いが湧いたことも、ハローワークに目が向いた理由と話します。
安心感を与えるていねいな対応を心掛け、
命にも関わる「仕事」を守るやりがい。
入省後、ハローワーク札幌北で今と同じ給付関係業務、ハローワーク札幌で適用関係業務を担当してきた馬場さん。
「業務が変われば、新たなことを学ぶ必要がありますが、離職者の手続きから企業の手続きまでを幅広く経験することで制度の仕組みをしっかり理解できます。そうすると、より的確な説明を行えますし、同時に自分もスキルアップしていけるところが、今の仕事の魅力だと感じています」
会社を退職した理由は様々ですし、事情も人によって異なります。それにともなって対応の仕方も変わってくるのだそうです。
「まずは、どういう状況なのか、どんな思いでいらっしゃるか、お話をよく聞き取り、理解しようと努めること。これからの仕事探しに不安を抱いている方もいらっしゃるため、安心感を持っていただけるような、ていねいで柔らかな対応を心掛けています」
雇用保険制度という枠組みの中では、希望どおりの支援ができないケースもあるそうですが、その中でも、できる限りその人にプラスになるような提案やアドバイスを探るのだと馬場さん。命に関わる「仕事」というものを支える責任の重みが、その言葉に滲み出ています。
個別の事情をしっかりと把握しつつ、
制度の中でできることを考える。
「雇用保険制度は、初めて利用する人にとっては、わかりにくい面も多いかもしれません。それを、理解しやすいように噛み砕いて説明するとともに、その方が求めていることについて、何ができるかをきちんと伝え、納得していただけるようにと日々、心を砕いています」
失業保険は、自らの都合で退職した場合は、支給までに一定の時間がかかりますが、退職理由によっては最短で支給されるケースもあるのだそうです。例えばそうした、個別の事情を把握し、制度の中で精一杯、できることを考え、伝えていると馬場さんは話します。
「そうした説明に対して、『わかりやすかったです』と言っていただけることもあり、そんな時は自分の説明が間違えていなかったんだと実感できて、うれしいですね。失業保険の給付を経て後日、『就職が決まりました』と、わざわざ報告に来てくれる方もいるんです。この仕事をやっていて良かったと思える瞬間です」
とはいえ、別にたいしたことはしていないと少し照れくさそうです。大学では地方自治を学び、旅行で知らない土地を訪れることが好きという馬場さん。「転勤で知らないまちで暮らすことも楽しみ」と話します。それも、ハローワークの仕事を選んだ理由の一つなのだと打ち明けてくれました。
シゴトのフカボリ
ハローワーク職員の一日
8:30
出勤、メールチェック、窓口対応
(並行して雇用保険給付関係の書類決裁)
12:30
昼休憩(他の職員と交代制)
13:30
窓口対応、書類決裁
17:15
終業、退勤
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
マイ電卓
毎日行う、雇用保険の給付金額算定に欠かせない道具。前の職場の上司に借り、使いやすかったのでそのことを伝えると「じゃあ、あげるよ」と、いただいたものです。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

どんな時でも、それぞれに取り組むべきものがあると思いますが、それに全力であたること。何かに全力で取り組んだ経験があれば、仕事で困難なことにあたっても、その経験を活かして乗り越えられると思いますよ。

厚生労働省 北海道労働局

「働く」ということに関連する様々な行政分野を、総合的・一元的に運営しながら、地域に密着した行政を担っています。
働く方を直接支援する第一線機関を有しており、「労働基準監督署」、「公共職業安定所(ハローワーク)」のほか、労働局内に「雇用環境・均等部」があります。

住所
北海道札幌市北区北8条西2丁目 札幌第1合同庁舎
TEL
011-709-2311
URL
https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-roudoukyoku/roudoukyoku...

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お仕事データ

「国」に関わるスケールの大きなシゴト。
国家公務員
国家公務員とは
国民のために予算を有効に運用し、
暮らしやすい社会づくりに貢献。

国に勤務する公務員として、国全体に関わる業務を行うのが国家公務員。内閣府や財務省、法務省、外務省といった国家機関に在籍し、治安や外交、税金関係、農業、工業、商業、労働、厚生、社会福祉、教育、文化など、国全体の行事や国民に関わる業務の企画立案から手続き、運用、事務処理を担います。国家公務員の種類は大きく分けると総合職と一般職と専門職の3つ。総合職は制度や法律の改正案、政策案のとりまとめなど、いわゆる「キャリア官僚」。一般職はその実行・運営役を担うイメージです。一方、専門職は、「刑務官」や「国税専門官」などの専門的な知識を必要とする仕事。このように職種や業務内容の幅広さは国家公務員の魅力の一つです。ただし、いずれも、国民のために予算を有効に運用し、暮らしやすい社会に貢献するという使命があります。
※その他、選挙や国会の議決によって選出される大臣や副大臣、自衛官や裁判所職員といった「特別職」もあります。

国家公務員に向いてる人って?
国や国民に役立ちたいという思いが強く、
責任感も携えたリーダーシップが必要。

国家公務員は、日本国憲法によって「国民全体の奉仕者である」と定義されています。そのため、常に公正な視点を持ち、国や国民の役に立ちたいという奉仕の精神を人一倍持っている人に向いているでしょう。国の政策や法律に関わるなどスケールの大きな業務に携わることから、強い責任感を持って自ら進んでいけるリーダーシップも求められます。多くの仕事は日本の未来にも影響を与えることもあるため、グローバルな視野と柔軟な発想力も不可欠です。

国家公務員になるためには

国家公務員になるためには、国家公務員採用試験に合格することが必須。自衛官や裁判所職員などの特別職はそれぞれの機関が採用試験を実施します。国家公務員採用試験には、総合職試験(院卒者試験)・総合職試験(大卒程度試験)、一般職試験(大卒程度)、一般職試験(高卒程度)、専門職試験、経験者採用試験があります。合格後に希望する官庁を訪問し、面接試験に合格すると採用です。

※国家公務員の試験については、詳しくは人事院のホームページをご確認ください。https://www.jinji.go.jp

ワンポイントアドバイス
国家公務員を目指すなら、
英語を勉強しておくのもオススメ。

一般的な国家公務員を目指すにあたり、特別な資格は必要ありません。ただし、英検やTOEICといった英語力の証となる資格は有利に働くようです。というのも、グローバル化が進み、訪日外国人の数も増えているため、英語力の高い人はプラスの評価。平成27年度からは、「総合職試験(院卒者試験・大卒程度試験)」のすべての区分において、TOEFLやTOEICなど指定の英語試験のスコアに応じて、最終合格者の決定の際に一定の得点が加算されます。英語力を高めておいて損はないといえるでしょう。