島田 夢菜さん
インタビュー公開日:2020.01.20

小さい頃から食べていたパン屋さん。
仕事として目を向けて魅力を発見。
「思わず、アッと声を出しそうになりました。なつかしい想いが湧いてきたんです。小さい頃から食べていた“ますやのパン”。話を聞いて、さらに気持が引き寄せられました」
大学で食物栄養について学んだ島田夢菜さん。管理栄養士として、食べる楽しさを提供できる仕事に就きたいと考え、お菓子メーカーや食品小売といった企業を目指していました。その就活のなかで参加した、とある合同企業説明会。島田さんが見つけたのが、地元・帯広に本社がある満寿屋商店でした。地域では、知らない人はいない老舗のパン屋さんです。
「地元が大好きで、帯広に戻って働きたいという思いが強かったことに加えて、企業の取り組みとして、地産地消を長年にわたって推進し、仕組みを作り上げてきていることを知り、強く興味を抱きました」
慣れ親しんだパン屋さんですが、仕事として目を向けることで、知らなかった魅力が見つかったと、島田さんは話しています。
地産地消を実践していることに感動。
そのサイクルに関わるおもしろさ。
「地元の食材を使ってパンづくりをしているということは何となく知っていましたが、原材料が十勝産小麦100%というのは驚きでした」
地元で生産し、収穫したものを、その地域で活用して食べること。地産地消という言葉はすっかり定着し、島田さんは大学でも勉強してきました。ただ、それはあくまでも考え方や仕組みについての話。その地産地消が実践され、サイクルが機能していることに感動したそうです。現在、島田さんは、100%十勝産小麦使用の店として2009年に開店した「麦音」という店舗で勤務しています。
「私たちの店で使う小麦を生産してくれている農家さんも、よくパンを買いにみえられます。そして、“おいしい”と言ってくださいます。農家さんがいることでパンができ、そのパンを食べて、自分たちの小麦の価値を知る。究極の地産地消だと思うんですね」
そのサイクルに関わっていることに、仕事としてのおもしろさを感じていると島田さんは話します。
アレルギーの方への商品提案などに、
管理栄養士としての知識を生かす。
島田さんの仕事は、店舗での販売職。接客をはじめ売場での業務が中心ですが、管理栄養士としての知識を生かせる場面も数多くあるそうです。
「たとえば、病気で食事制限しなければならない方や、アレルギーのある方のお話を聞き、そうしたなかでも召し上がっていただけるパンをご提案する時に、勉強したことが役立ちますね」
島田さんは、使っている食材の栄養素をPOPに書き添えるなど、お客さんにプラスになったり、興味を持ってもらえるような情報の提供も積極的に行っています。
「店舗業務のほか、農家さんとの交流も楽しみの一つ。スタッフとして参加する麦感祭(ばっかんさい)は勉強の場でもあります」
麦感祭とは小麦の収穫祭のこと。8月中旬頃、刈り取りが終わって開けた畑に集まってイベントを行います。農場ごとの小麦でパンを焼き分けて食べ比べてもらい、意外と知らない自分の小麦の味を感じてもらうのだとか。
「それぞれの特徴を添え、“この農家さんの小麦で焼きました”とお客さまに伝えるための情報を得る場所にもなっているんです」
常連のお客さまからの手紙に感激。
自分の接客に自信が持てた瞬間。
2017年に入社して半年後の10月から1年間、島田さんは東京本店で勤務しました。十勝産食材のいわばアンテナショップとして東京・目黒区で営業しているお店です。
「まだ、接客もおぼつかない時期に、知らない土地での勤務。東京暮らしも慣れるまでは大変でしたが、学びの機会を与えられたと想い、必死で取り組みました」
社員としての販売スタッフは島田さん一人。毎日、店頭に立つうちに顔見知りになる常連さんも増えていきました。“今日は寒いですね”。そんなひと言、お客さんとの触れ合いを大切にしていたそうです。
「東京での勤務が終わり、帯広に戻ることが決まった時、あるお客さまから、お手紙をいただいたんです。それが、すごくうれしくて。忘れられない思い出です」
今までありがとうございました。十勝の麦音に遊びにいきます。そうしたためた手紙を、わざわざもって来てくれたのだとか。ほかにも、寂しくなっちゃうねと、多くのお客さんが声をかけてくれたのだと島田さん。この仕事に就いて良かったと思うと同時に、自分の接客に少し自信が持てた瞬間でした。
大好きな帯広で働ける喜びを胸に、
リーダーとして管理業務にも携わる。
東京から戻って今の店舗に配属となった島田さん。現在は販売リーダーとして、店頭での接客に加えて管理業務にも携わるようになりました。
「パート・アルバイトスタッフのシフト管理のほか、その日につくってもらうパンの数量を製造スタッフに指示することも大切な仕事になっています」
季節や気温、天候によって売れ筋のパンが変わります。たとえば、暑くなるとクリーム系は売れないのだとか。お客さんが何を望んでいるかを販売の最前線で把握し、予算も考えながら製造を依頼。お店の運営に関わる大切な役割も担い始めている島田さんです。
「季節のイベントに合わせた新商品が販売されるタイミングで店内にディスプレイを施したり、陳列の配置を入れ替えたり。常連のお客さまも多いなか、いつも変化があり楽しい店づくりに取り組んでいます」
リーダーとして、お客さんだけでなく、スタッフにも常に目配りをしながら、より良い接客を目指したいと話す島田さん。大好きな帯広で働けているという喜びが、全身に溢れて見えました。
シゴトのフカボリ
パン販売スタッフの一日
6:00
開店準備(パンの陳列、カフェスペースのセッティング)
6:55
開店。パンの補充、レジ業務
12:00
昼食、休憩
13:00
事務業務(シフト管理、在庫管理、資材発注)
15:00
販促業務(ポップ・チラシ制作)
17:00
退社
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

どちらかといえば、人見知りするタイプでしたが、接客を通してお客さまと話し、「ありがとう」と返していただけることが、やりがいに。販売リーダーとして、仲間から感謝の言葉をもらえることもやりがいです!

株式会社 満寿屋商店 (麦音)

1950年創業のパン店。十勝産食材100%を目指し、おいしさを追求するパンは帯広市民のソウルフード。麦音は、同社の地産地消の最前線といえる旗艦店。

住所
北海道帯広市稲田町南8線西16−43
TEL
0155-67-4659
URL
https://www.masuyapan.com

お仕事データ

おいしさを笑顔でお届け!
食品販売スタッフ
食品販売スタッフとは
お弁当やスイーツ、お惣菜など、
身近なおいしさを提供。

デリやデパ地下の惣菜店、パン屋といった食品を扱うお店で、お弁当やスイーツ、パン、軽食などを提供するのが食品販売スタッフ。接客や会計に加え、商品の包装や補充、陳列、盛り付け、掃除といったさまざまな業務を担当します。いずれのお店でも衛生管理が何より大切なことから、身だしなみをきちんと整えた上で手洗いやアルコール殺菌などを徹底。お客様の「おいしい笑顔」を生み出しています。

食品販売スタッフに向いてる人って?
食べることが大好きで、
人と接するのが得意なタイプ。

食品販売スタッフとして働く人には、「とにかく食べることが好き」というタイプが多いようです。仕事の大部分を占めるのが接客なので、人と話すことが得意な性格も向いているといえるでしょう。また、お客様の好みや味わうシーンに合わせて商品をオススメする力も求められます。衛生管理が厳しいことから、キレイ好き・掃除好きな人も重宝されるはずです。

食品販売スタッフになるためには

食品販売スタッフの仕事は比較的シンプル。必要なスキルや資格は特にないため、未経験からでもチャレンジできます。高校卒業後に店舗で働くほか、食品系について学べる大学や短大、専門学校を卒業して就職するルートもあります。この分野でキャリアアップを目指す場合は、食品衛生責任者講習を修了しておくとスムーズでしょう。

ワンポイントアドバイス
商品のおいしさを
いかに伝えるかも腕の見せどころ!

デリやパン屋には試食ができる商品もありますが、そうではない場合のおいしさを伝えるのも食品販売スタッフの腕の見せどころ。「ちょっとしたプレゼントに」「お子様のおやつに」など、具体的な提案をすることで販売につながることも多いようです。また、商品知識をしっかりと把握することで、「パンの生地に抹茶を練り込んでいます」といった説明が説得力となり、お店の売上に貢献することもできます。