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小林 光さん
インタビュー公開日:2020.12.15

幼少からごく身近な存在だった海。
進路を決めた潜水士との出会い。
港町の泊村出身で、父は漁師。海はごく身近なものだったという小林光さん。夏は毎日海に遊びに行っていました。高校3年生の時、就職活動をしながらも「漁師になるのもいいかな」と考えていました。学校が休みの日に父の漁船を使っての調査を手伝い、その時に今の会社の社員に初めて会いました。
「海の中に産み落とされた魚卵を調査するために、漁師の協力で漁船を使って海に潜る仕事でした。潜水といえば海上保安庁や海上自衛隊などのイメージでしたが、その時に初めて、海での生物調査や現況調査をする仕事があることを知り、興味を持ったんです」
ちょうど会社でも採用を予定していたため、入社が決まりました。
水の中で息ができる楽しさ。
海の生き物も間近に。
潜水士として仕事をするには、国家資格である潜水士免許が必要です。小林さんも入社前の高校在学中に試験を受けて合格し、入社に備えました。と言っても潜水士の試験は学科のみで、技術は入社してから先輩に教わりながら身に付けました。
実際に潜ってみて、小林さんは「海の中で息ができて楽しい!」と思ったと言います。それは仕事として日常になっても変わらないとか。「魚が泳いでいるところなどを自分の目で見られるのはとても面白いです。魚や生き物が好きな人にはおすすめです」と目を輝かせます。
撮影、計測など細かい作業が主。
それには潜る技術が必要です。
海に潜って行う生物調査では、海の中の海藻やウニ、ナマコなどの生物を写真に撮ったり、持ち帰って生息状況を調べます。全道各地で海洋生物への影響の調査が依頼されています。また、現況調査では港の構造物やコンクリート構造物の状態を目視したり計測します。海の中でそのような細かい作業をするためには、中性浮力といって、浮いたり沈んだりせずに海の中でピタッと止まっている状態にするため、ウエイトの量やスーツに空気を入れる量、呼吸を調整できるようになる必要があります。水中での作業ができるようになるまで、小林さんは1年くらいかかったといいますが、人によっては2〜3年かかることもあるそう。現在は、特に多様で複雑な海藻の種類を見分けるのが得意だとか。
危険も伴う海の中。
天候確認や安全対策は万全に。
海の中での作業は危険と隣り合わせなのでは?と思いますが、あらかじめ潜水時間が手順書に記載されており、天気が悪い時には入らないなど、安全管理には細心の注意を払っています。水中でも腕時計型のダイブコンピューターで水深や水温、潜水時間などを確認したり、空気の圧力を見るレギュレーターを常にチェックするので、小林さんも危ない思いをしたことは一度もないと言います。
とはいえ、自然の中での作業。それも年中続くので、過酷さは想像以上のようです。「夏の暑さ、冬の寒さは何年やっても大変ですね。夏はTシャツ短パンの上からスーツを着て、冬は防寒用のインナーを着ますが、北海道の海の寒さはなかなか厳しいです」。
仕事を任せてもらう充実感。
さらに頼られる存在になりたい。
経験を重ねるごとに任される仕事も増え、当初は先輩の補助から始まりましたが、今は後輩を連れて調査に行き、指示をする立場になりました。
「仕事を任せてもらえて、自分が責任を持ってできるようになることにやりがいを感じますね。また、漁業者や元請先との信頼関係もできてきました。『お前がいれば大丈夫』と思ってもらえるようになり、指名で仕事がいただけるくらいの存在になることが目標です」
大好きな海の中での仕事は大変な面もありますが、小林さんの日焼けした顔は充実感がみなぎっていました。
シゴトのフカボリ
潜水士の一日
8:00
出勤、出発の準備
泊村周辺の潜水調査
11:30
帰社、片付け
12:00
昼休憩
13:00
機材のメンテナンス
ロープや土のうなどの資材作り
16:00
当日の潜水日報作成
17:00
退勤
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
水中での命綱、ダイブコンピューター
水中で水深、水温、浮上速度や潜水時間などがチェックできる、安全のための必須アイテム。潜水中にバッテリーが切れないように、常にメンテナンスは欠かせません。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

入社当初は緊張などもあり、いろいろ考えてしまうこともあると思いますが、まずは与えられたことをがむしゃらにやることが大切。新人の時は考えすぎず、そこから段階的にできることを増やせばいいと思います。

お仕事データ

水中作業のスペシャリスト。
潜水士
潜水士とは
水の中で人命救助や捜索、
土木建築などを行う仕事。

潜水士は海や河川、湖、下水、ダムといった水の中に長時間潜り、さまざまな作業を行うスペシャリスト。人命救助や捜索の他、海底調査や護岸工事といった土木建築作業、海中で魚介類を捕る水産物採取、沈没船や海中に沈んだものを引き揚げるサルベージ作業など、仕事内容は多種多彩です。潜水方式には、スクーバ式、ヘルメット式、フーカー式があり、作業目的や作業時間、水温、潜水深度、海流などによって潜水用具を選びます。潜水士は水中作業のスペシャリストなのです。

潜水士に向いてる人って?
タフな体力と精神力を持ち、
チームワークを大切にできる人。

潜水士は水中に潜り、体を動かすことが多いため、相応の体力が必要です。過酷な状況の中でも冷静に作業ができるようタフな精神力も求められます。潜水業務では、ミッションを素早く安全に完遂させるため、複数の潜水士がチームになって仕事を進めることから、チームワークが何よりも重要なポイント。スキルアップのために日々コツコツとトレーニングを積む姿勢も必要です。

潜水士になるためには

潜水士になるために特別な学歴は必要ありません。ただし、潜水業務を行う会社や組織に就職して働くためには、国家資格の「潜水士免許」を取得する必要があります。潜水士免許試験は筆記試験のみで、実技試験はありません。受験資格もないため(免許の交付は18歳以上)、比較的合格者は多い資格です。ただし、潜水士として潜水技術を身に付けられるまでには長いトレーニング期間が必要。民間の潜水会社では、先輩から教わりながら訓練を続けてスキルを高めていくのが一般的です。

ワンポイントアドバイス
難しいからこそ待遇が良く、
独立の道も開ける仕事。

近年は津波対策をはじめ、海洋建設業の分野で潜水士の需要が増加しています。未経験者でも、熱意次第で潜水士候補として採用する会社が増えてきているようです。難易度の高い仕事だからこそ、この道でスキルアップしていくと、給料や待遇に跳ね返るケースが大半。人によっては独立してフリーの潜水士としてさまざまな仕事を引き受けたり、大学や研究機関とともに海洋調査活動を行ったりすることも可能です。