• ホーム
  • 小林 堂偉さん

小林 堂偉さん
インタビュー公開日:2024.03.11

漁師の父の背中を見て育ち、
海に関わる仕事を志すように。
「潜水士」という職業名から、水に潜るということはイメージできても、水中でどんなことをするのかは知らない、という方も多いのではないでしょうか。実際に潜水士が行う仕事は多岐にわたりますが、小林堂偉さんが勤めるジオテック株式会社では、海底での土木工事やダムの補修工事など、さまざまな工事や調査を請け負っています。
石狩市浜益区に生まれ、タコ漁を行う漁師の父の背中を見て育ち、自身も海が大好きだという小林さん。「将来は僕も、漁師を含めて海や水に関わる仕事がしたいと漠然と考えていましたね。そこで、小樽水産高校に進みました」
高校ではカレイやホタテを養殖する栽培漁業を学び、将来に役立ちそうな船舶免許やクレーン免許なども取得。その一環として、潜水士の資格も取りました。そして、3年生の進路選択の時に今の会社と出会います。「海に潜るのが好きですし、映画やドラマの『海猿』の影響もあり、魅力を感じて入社を決めました」
まずは陸上で補佐する仕事から。
潜る人の安全を守る重要な仕事。
入社1年目は、水中に潜る仕事ではなく、陸上で補佐する仕事から覚えていきました。一歩間違えれば命の危険を伴う潜水士の仕事は、この陸上での補佐が極めて重要です。
「潜る時間が1〜2時間なら背中に空気ボンベを背負って潜りますが、それ以上長く潜る時は陸から空気を送ります。他にも、ロープを使って工具を水中に下ろしたり、水上で潜水を管理して時間が来たら水中とつながっている通話機で『浮上する時間です』と連絡したりといった仕事があります。どれも安全を守ることにつながるので、いつも緊張感があります」
数カ月を経て、先輩と一緒に潜ることから始め、2年目には単独で潜るようになりました。水中で施設や工事の状況を記録するために写真を撮る仕事を、よく担当しています。自由のきかない水中では、光の調節や画像の確認も陸上より難しく、きれいに撮れたと思ってもパソコン上で見るとブレていることもあり、試行錯誤の連続だといいます。
できなくて当たり前ではなく、
やる!という強い気持ちで。
現場によっては、水深30メートル以上潜ることもあるそう。浮上する際は急速に上昇すると身体に負担がかかるため、少しずつゆっくりと浮上します。
「通常の潜水はこなせるようになってきましたが、陸からの空気の供給が止まった、網に絡まって上がれなくなったなど緊急時に冷静に対応するのは難しく、まだまだ勉強中です」

さらに、現場での工事や調査はいつも新しいことの連続で、それが面白いところだと小林さん。10年ほど経験してやっと一人前といいますが、「経験が浅いからできなくて当たり前ではなく、できるようになろうという気持ちでいます」と、気持ちは常に前を向いています。その分、できることが増えて先輩から褒められるのがうれしいと感じる毎日です。
また、海に慣れ親しんだ小林さんですが、仕事となった今も海に入るのが楽しいといいます。「場所によって風景が全く違いますし、魚やタコなどさまざまな生き物もいます。やっぱり海は楽しいですね!」
北海道の冬の海、寒さは想像以上。
遠方の現場や山の中の宿泊も。
しかし、自然相手の仕事ですから、厳しい側面もあります。特に冬の海の寒さは、想像以上のようです。「インナーと裏地がボアになったフリースを重ねた上にドライスーツを着て、さらに中にはカイロを貼りますが、それでも寒く、低体温症の危険があるので1時間も潜っていられません。反対に、夏は水の中でも汗をかくくらい暑いんですよ」
また、現場は道内の海、川、ダムがある場所になるため、朝早く出発することもしばしば。さらに、海が荒れている時には入れないため、悪天候で行けない時や、行ったものの作業ができないこともあります。
大規模な工事の時は何日も泊まりがけで行くこともあり、携帯電話が通じない山の中の宿舎で過ごしたこともあるそう。「ビールを買い込んで行き、料理が得意な先輩が食事を作ってくれて、それはそれで楽しい時間でした(笑)」
そういった長期間の現場の場合は、必要な機材の種類や量も多いため、準備にも時間がかかります。
お互いの安全を守るために、
現場はチームワークが大切。
社員同士は、命を預け合う間柄ということもあり、チームワークが強いといいます。現場に入る日は、朝礼で「KY(危険予知)活動」といって、その日の作業で予想される危険なポイントや対処方法を全員で話し合うそう。そのように一人ひとりが考え、信頼関係のもとで仕事に取り組むことで、安全が守られているのです。
「普段は和気あいあいと冗談を言い合うような雰囲気ですが、仕事となるとみんな厳しい表情に変わります。緊急時に臨機応変に対応するためにも、チームワークはとても大切だと思います」
先輩たちはそれぞれに得意分野があり、水中での作業の速さや、体に負担をかけずに水中で作業をする様子から、「先輩はすごい!」と思うことが多いという小林さん。現場で見て教わり、応用してチャレンジしながら、自身もどんどん力をつけています。「経験を積み、現場のリーダーの役割を果たせるようになることが目標です!」と力強く話してくれました。
シゴトのフカボリ
潜水士の一日
8:00
出勤、朝礼、KY活動
8:30
作業開始
12:00
昼休憩
13:00
作業再開
16:30
作業終了、片付け、翌日の打ち合わせ
17:00
退勤
(現場バージョン)
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
特殊な仕様の水中カメラ
水中での撮影に耐えられるように、防水になっていることはもちろん一般のカメラより頑丈です。さまざまな角度から光を当てられるよう、フラッシュにはアームが付いています。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

いろいろな海に入れますし、深いところに潜る体験もできます。大きなヒラメが目の前を泳いでいるなんてことも。海が好きな人にオススメの仕事です!

ジオテック株式会社

潜水と水中での工事の技術を駆使し、海や川、ダム等水中の施設におけるコンクリート打設、溶接、ケーブル敷設等の工事や各種調査を行っています。

住所
北海道札幌市南区澄川4条2丁目10-17(本社)
TEL
011-823-2033
URL
http://gotec.co.jp

お仕事データ

水中作業のスペシャリスト。
潜水士
潜水士とは
水の中で人命救助や捜索、
土木建築などを行う仕事。

潜水士は海や河川、湖、下水、ダムといった水の中に長時間潜り、さまざまな作業を行うスペシャリスト。人命救助や捜索の他、海底調査や護岸工事といった土木建築作業、海中で魚介類を捕る水産物採取、沈没船や海中に沈んだものを引き揚げるサルベージ作業など、仕事内容は多種多彩です。潜水方式には、スクーバ式、ヘルメット式、フーカー式があり、作業目的や作業時間、水温、潜水深度、海流などによって潜水用具を選びます。潜水士は水中作業のスペシャリストなのです。

潜水士に向いてる人って?
タフな体力と精神力を持ち、
チームワークを大切にできる人。

潜水士は水中に潜り、体を動かすことが多いため、相応の体力が必要です。過酷な状況の中でも冷静に作業ができるようタフな精神力も求められます。潜水業務では、ミッションを素早く安全に完遂させるため、複数の潜水士がチームになって仕事を進めることから、チームワークが何よりも重要なポイント。スキルアップのために日々コツコツとトレーニングを積む姿勢も必要です。

潜水士になるためには

潜水士になるために特別な学歴は必要ありません。ただし、潜水業務を行う会社や組織に就職して働くためには、国家資格の「潜水士免許」を取得する必要があります。潜水士免許試験は筆記試験のみで、実技試験はありません。受験資格もないため(免許の交付は18歳以上)、比較的合格者は多い資格です。ただし、潜水士として潜水技術を身に付けられるまでには長いトレーニング期間が必要。民間の潜水会社では、先輩から教わりながら訓練を続けてスキルを高めていくのが一般的です。

ワンポイントアドバイス
難しいからこそ待遇が良く、
独立の道も開ける仕事。

近年は津波対策をはじめ、海洋建設業の分野で潜水士の需要が増加しています。未経験者でも、熱意次第で潜水士候補として採用する会社が増えてきているようです。難易度の高い仕事だからこそ、この道でスキルアップしていくと、給料や待遇に跳ね返るケースが大半。人によっては独立してフリーの潜水士としてさまざまな仕事を引き受けたり、大学や研究機関とともに海洋調査活動を行ったりすることも可能です。