熊谷 清司さん
インタビュー公開日:2022.06.21

奥深く、難しい「あんかけ焼きそば」
専門店として完璧を目指していきたい。
地域で親しまれている大衆中華料理店。おいしくて、安くて、気取らない雰囲気も良く、「町中華」と呼ばれて注目されるようになりました。そんな店のメニューを開くと、きっとあるのが『あんかけ焼きそば』
「必ずといっていいほど人気のメニューの一つとなっていますが、あんかけ焼きそばを看板にした専門店って、意外とないんですよ」と話すのは、札幌市中央区にある『あんかけ焼きそば赤れんが』の店主、熊谷清司さん。
2022年4月にこの店をオープンするにあたって、いろいろな中華料理店のあんかけ焼きそばを食べ歩いてみてわかったのが、料理としての奥深さなのだそうです。カリカリに焼いた麺か、柔らかな蒸し麺か、上にかけるあんは硬めか、サラサラ系か。さらに具材もさまざま。おまけに、調理をしてみると味にばらつきが出やすくめちゃくちゃ難しい……。
「でも、だからこそ専門店として長く続け、完璧を目指していきたいと思えたんです」
札幌で知られたラーメン店の3代目。
初代の味を『復刻』させるべく開業。
さっぽろの繁華街・ススキノにある新ラーメン横丁。大きな国道に面したメインストリートに立地し、観光客にも知られたこのラーメン店街で30年以上にわたって営業する「赤れんがラーメン南4条店」という老舗店があります。特徴は豚骨・鶏ガラ・香味野菜をじっくり煮込んだスープに中太麺。熊谷さんは、地元のラーメン通には定番中の定番となっているこのラーメン店の3代目にあたります。
「私の祖父が開いた店で、古くからのファンも多く、今もたくさんの方々に支持されています。私が現在、運営しているこの店は、その祖父が20年ほど前にラーメン店をやっていた場所なんです」
地域の人たちに親しまれていたその店では、ラーメンのほかにあんかけ焼きそばを出しており、好評を博していたといいます。常連も大勢いました。
「そうした背景も考え、いわば『復刻』という気持ちも込めて開業を決めました」
多くの人に愛された店を残したい。
家業を継ぐため進んだのは工業高校?
現在はお父さんが「赤れんがラーメン南4条店」を切り盛りしているほか、ジンギスカン店も運営しています。いずれは、事業を継いでほしい。そんな父親の思いを受けて熊谷さんも……という流れが勝手に頭に浮かびましたが、実際には逆だったそうです。
「父は、好きなことをやれと言ってくれていました。継がないなら自分の代でおしまいにすると。お客様に愛され、長く続けて来た祖父の店。そんな話を聞いて、なくすのはもったいないと思うようになり、高校受験のころに継ぎたいという気持ちを抱きました」
今思えばうまく誘導されたのかも、と笑う熊谷さん。3代目としてやっていく決心を固めます。ところが、進学したのは工業高校。飲食とはまったく別分野でした。
「商売を継ぐためには、社会経験を積む必要があると考えたんです。卒業後は5年間、千葉県の製鉄所で現場監督として働きました」
興味を惹かれていた、ものづくりの世界を経験したいという気持ちもあったのだといいます。
『昔はもっとおいしかった』という
かつての常連の言葉に奮起する日々。
5年間と決めて働いた製鉄所を去り、家業を継ごうと札幌に帰ったタイミングで、新型コロナウイルスの感染拡大がはじまります。
「戻って1年間は、自粛要請の合間を縫って営業していたジンギスカン店を手伝い、貯金を取り崩して生活しながら飲食の世界を実地で学んでいましたね」
状況が少し落ち着くなか、5年前に閉店したままになっていた現在の店舗で新たな業態にチャレンジすることになり、父親とともに検討を重ねたのがあんかけ焼きそばでした。
「当初はかつての常連さんから『高いね』と言われることも。祖父の時代とは食材価格なども違うので、これは仕方のない部分もありますが、『昔はもっとおいしかった』と言われた時は、大きな壁を感じました。でも、奮起にもつながりましたね」
味の向上・安定を目指すなか、中華料理歴50年というベテラン調理人が厨房をみてくれることに。料理から商売のことまで、店舗運営のかたわら一から学んでいる熊谷さんです。
通信販売など事業の拡充を目指しつつ、
「あんかけ焼きそば」の一番店を目指す。
熊谷さん自身でも改革を進めています。その一つがデリバリーとテイクアウト。現在、それらが売上の4割を占めているそうです。また、クレジットカードや電子マネー支払いを導入。今後は、SNSでの情報発信も拡充する予定といいます。
「ただTwitterのフォロワー数を増やすだけでなく、来店されてQRコードからフォローしてくれたお客様に向けた情報発信を意識し、ファンを増やしたいですね」と熊谷さん。
夏には、先述した料理人と相談して冷やし系メニューも導入し、実際に食べて、おいしさを感じてもらうというリアルを大切にしていきたいと話します。2021年、熊谷さんはA-brickという会社を設立。商品開発や通信販売を拡充して売上を伸ばすなど、経営者としての成功を夢みる一方で、「あんかけ焼きそばを食べるなら『赤れんが』だね、といわれる一番店になりたい」とも。ラーメン店主としてお客様に支持されてきた初代、2代目の血は、間違いなく受け継がれているようです。
シゴトのフカボリ
飲食店経営者の一日
8:00
店の近くに借りたアパートで、経理、人事をはじめ、ラーメン店、ジンギスカン店も含めた店舗関連の事務作業
12:00
昼休憩
13:00
各店店舗への巡回、状況確認など
16:30
「あんかけ焼きそば赤れんが」の店舗で、調理・接客から食材発注までオールラウンドに業務を行う
23:00
閉店、退勤
※各店舗を運営する株式会社の代表として業務に当たっています。

シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

初代、先代が提供し、信頼を得てきた味を受け継ぎつつ、時流にふさわしいサービスなどを盛り込み、新たなファンを増やしていきたいと思っています。

株式会社A-brick
あんかけ焼きそば 赤れんが

「赤れんがラーメン南4条店」「赤れんがジンギスカン倶楽部(南7条・北25条店)」「あんかけ焼きそば赤れんが」の運営・通信販売を行っています。

住所
北海道札幌市北区北25条西4丁目2番3号 岩崎ビル1F(株式会社A-brick)
北海道札幌市中央区南12条西8丁目1-18(あんかけ焼きそば 赤れんが)
TEL
011-709-1140(株式会社A-brick)
011-511-8009(あんかけ焼きそば 赤れんが)
URL
https://akarenga-gourmet.com

お仕事データ

繁盛店を作り上げる!
飲食店経営者
飲食店経営者とは
新しいアイディアで
魅力あふれるお店づくりを!

メニューの開発を筆頭に、接客や仕入れ、スタッフの教育、広告・宣伝など飲食の経営全般を担う仕事。オーナーとして経営に徹するケースもあれば、自ら調理をする個人経営のスタイルもあり、立ち位置はさまざまです。また、個人経営や外食企業のフランチャイズといった店舗だけでなく、キッチンカーやテイクアウト・デリバリー専門店など形態も多種多彩。ライバルの多い業界なので、新しいアイディアと市場調査で魅力あるお店づくりを進めることが大切です。

飲食店経営者に向いてる人って?
リーダーシップがあり、
鋭いビジネス感覚を持った人。

スタッフを一つにまとめ上げるリーダーシップや店舗経営に関する的確な決断力と運営力が求められます。そのほか、企画力や事務処理能力など幅広いスキルが必要。会社組織における飲食店経営者の場合は、売上を着実に伸ばす手腕も評価されます。食べることやお客様の喜ぶ顔を見るのが好きという情熱はもちろん、経営者として鋭いビジネス感覚を持てるかどうかがポイントです。

飲食店経営者になるためには

飲食店経営者には「食品衛生責任者」の資格取得が必須。飲食店や飲食関連企業で経験を積み、知識や技術、さらに店舗立ち上げのノウハウを身につけた上で開店に至るケースが多いようです。また、なかには飲食店経営を学べる専門学校などもあります。大まかな流れとしては、資金の目処を立てて店舗選びからスタート。内装やメニューづくり、従業員の確保などを経て開業に至ります。

ワンポイントアドバイス
「居抜き」と「スケルトン」、
どっちを選ぶ?

お店のオープンにあたる初期費用は「居抜き」か「スケルトン」かで大きく異なります。「居抜き」は厨房機器やテーブル、椅子などがそろった物件のこと。それらを活用することで開店コストをおさえられるのが特徴です。「スケルトン」は骨組みだけの状態。内装外装や厨房機器といった費用はかさみますが、自分のイメージ通りの店にできるというメリットがあります。