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木村 玲さん
インタビュー公開日:2022.08.22

美大に落ちて気付いた、
職人という夢
みなさんはゲーム制作会社と聞いて、どんな会社を想像しますか?社員たちが黙々とPCに向かっている姿?それとも男性ばかりの職場でしょうか?
今回訪れたゲームドゥ有限会社は、そんなイメージと異なるかもしれません。明るくオシャレなオフィスで働くのは多くが女性。お昼頃に行くと、みんなでワイワイとごはんを食べていたり、時には対戦ゲームに熱中していたり。その中にはなんと、2匹のワンちゃんの姿も。ここで12年にわたりデザイナーとして働いているのが、木村玲さんです。
「物心付いた頃から絵を描くのが好きで、友達を登場人物にマンガを描いたり、ゲームのキャラクターを描いたり…。このまま絵の道に行きたいなという事は漠然と考えていました」
高校生となり、進学先は迷わず美術系大学を目指します…が、入試はまさかの不合格。浪人して予備校へと通う事となりました。しかし絵の練習をくり返す日々の中で、ある事に気付いたと言います。
「それは、私は芸術家のように自己を表現したいのではなくて、『職人』として誰かから依頼をいただいたイラストやデザインを手がけて、喜んでもらいたいという事でした。そのためには大学で幅広く学ぶのではなくて、専門学校で『仕事としてのデザインの知識』を学ぶのがやりたいことに近いと思ったんです」
マルチな能力を活かして
ゲームグラフィックデザイナーの道へ!
北海道芸術デザイン専門学校で2年間、2Dイラストレーションを学んだ木村さん。就職活動の際には担任講師から「ゲーム業界に向いている」と助言をもらったそう。「確かにゲームは好きでしたけど『何で?』というのが正直な感想でした。今思えば絵のタッチも幅広く、デジタル系ツールの扱いも得意だったからかもしれません」
しかし当時はリーマンショックによる就職氷河期で、ゲーム会社の求人は希少。卒業が間近に迫った2年生の1月、ゲームドゥのアルバイト求人を発見すると、迷わず応募したそうです。
「当初は簡単なキャラクターグラフィックの量産と、ゲームの欠陥を見つけるデバッグ係でした。作成したグラフィックを先輩からとても褒めてもらえて、『プロでもいけるかも!』と自信を得る事が出来ました」
働きぶりが評価され、4月からは正社員として入社。初めて作ったのは携帯電話用の女性向け恋愛ゲームだったそうです。
「当時の携帯電話は現在のスマホと違い、解像度の低い『ガラケー』でしたので、『ドット絵』と呼ばれる点で描かれたイラストが主流。コツが必要でしたが、限られた解像度や色の中で表現する仕事はいかにも『職人』のようで、面白さを感じましたね」
印象を抑える、個性を出さない事も
プロとして大切な仕事。
ゲームドゥが手掛ける仕事の多くは、メーカーなどから制作を引き受ける受託開発がほとんど。企画から完成まで一連の作業依頼もあれば、イラストだけ、プログラムだけ、といった一部分を求められるケースもあるそうです。
「ゲーム業界のデザイナーと言えば、キャラクターのデザインをしていると思われがち。しかし主役級のキャラクターは有名なイラストレーターや専門のデザイナーが手掛けていることも多く、ゼロから描くのは稀なんです。実際にはメニューやボタンといったUI(ユーザーインターフェース)や背景を描く作業が多くを占めます。決して華やかではありませんが、その一つひとつがゲームの世界観を構築する大切な要素なんです。」
だからこそ、自身の肩書きはイラストレーターではなく「デザイナー」だと話を続けます。
「イラストレーターは、作家さんが持つ個性的なタッチが求められますよね。しかし私たちゲームグラフィックデザイナーはそれぞれの個性を表現するのではなく、ゲームの世界観に忠実なデザインを目指すのがその役割。例えば『村人A』のような脇役を、できるだけ印象が強すぎないよう、個性が出ないように描くのも私たちの仕事なんです」
日々進化するゲームに追いつくため
PCの知識や技術は必須!
個性の表現とは別として、得意分野はあった方がいいとアドバイスする木村さん。特化したプロフェッショナルとしてチーム内で仕事を分担しやすかったり、会社が依頼を受けるきっかけにもなったりするそうです。
「私の場合、キャラクターに加え、UIや背景が得意分野。推したいイケメンから、押したくなるボタンまで幅広くお任せください(笑)」
ちなみにゲームドゥでは3Dデザイナーが2名のほか、木村さんのような2Dデザイナーが8名いて、3Dはこの人、背景はこの人…というように、1つの案件を分業で行うケースが多いそうです。
また近年のゲーム機やスマートフォンは年々、高画質・高品質へと進化していて、その制作にあたるデザイナーの仕事も、高いクオリティが求められているといいます。
「PCやスマホといったデバイスやテレビに合わせて、素材も大きく、細かく描かなきゃいけません。また案件によって制作に使用するソフトや、ファイルの保存形式も異なりますし、実際のゲームに組み込むまでのプログラミングのような作業も要求される時も…。日々進歩し続けるテクノロジーに追いつくには、パソコンを操作するスキルや知識も必要不可欠なんです」
遊び手の気持ちになり、
プレイヤーへの優しさを大切に。
クライアントの指示は明確な事もあれば、文章だけでざっくりとした要望がある場合などさまざま。そんな中でもデザインのリテイク(作り直し)がなく認められた時はとても嬉しく、やりがいに繋がるのだそうです。そのためにはクライアントとやりとりし、ターゲットやデザインの落とし所を探るコミュニケーション能力も必要だと語ります。
「でも一番大切なのは人への『優しさ』です。遊んでくれるユーザーが混乱してしまったり、不快に思ったりしないよう、常にプレイする人の気持ちに寄り添うよう心がけています」
近年のゲームは「AAA(トリプルエー)」と呼ばれる大手ゲームメーカーの超大作から、「インディーズ」と呼ばれるアマチュア制作のものまで多様化。スマホやタブレットで遊べるゲームのクオリティも、コンシューマー(家庭用)ゲームとの境目がどんどん無くなっており、さらに新しいゲームが生まれては消えていく時代だと言います。
「簡単なゲームなら誰だって作れる時代。そんな中で、私たちはプロとして、プロにしかできない仕事をしなければなりません。これからもゲームドゥらしく、愛されて、人にやさしい作品を作っていく事が私の役割なんです」
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

クライアントも大切だけど、どんな人でも楽しく遊べるゲームを作るのが一番大事。架空のプレイヤーの姿を思い浮かべながら、やさしい気持ちになってデザインしていきましょう。

ゲームドゥ有限会社

スマートフォンやモバイルゲーム機など小・中規模のゲーム開発を行っている会社です。受託開発のほか、「コロロケの森」シリーズなど自社製品も開発しています。

住所
北海道札幌市豊平区平岸二条6丁目2-18ランドビル平岸3・4F
URL
https://gamedo.co.jp/

お仕事データ

非現実を現実に表現する!
CGクリエイター
CGクリエイターとは
デジタルテクノロジーを使って、
グラフィックやアニメーションを制作

CGとはコンピューター・グラフィックスの略。文字通りコンピューターを使って、ゲームやアニメなどグラフィックやアニメーションを制作します。大きく分けて2Dと3Dに分類され、2Dは平面で表現し、3Dは立体での表現です。3Dはさらに動きの元となる立体物をつくるモデラー、動きを付けるアニメーター、特殊効果を付けるエフェクターなどそれぞれのプロフェッショナルに細分化されています。

CGクリエイターに向いてる人って?
好奇心旺盛で、
最新技術へのアンテナを張れる人

映像を取り巻く世界は日々進化を遂げ、現実と区別が付かないようなリアルなCGを制作する技術も実現しています。その制作に用いるソフトも次々と新しい機能が増えたり、新製品が生まれたりするため、積極的に最新技術を学ぶ姿勢が必要です。またクリエイティブな世界をつくるための想像力や、円滑なチームワークのためのコミュニケーション能力も必須。納期に追われる機会も多いため、粘り強く取り組む根気やハードな働き方に耐える体力も求められるでしょう。

CGクリエイターになるためには

学歴や資格は必要ありませんが、コンピュータースキルは必須。特に3DCGは「Maya(マヤ)」や「Blender(ブレンダー)」といった制作ソフトを使うための知識や技術が必要なので、専門学校や短大、大学でスキルを身に付けた後、ゲームやアニメ関係の会社に入って覚えるのが一般的です。オンライン講座や書籍など独学で学ぶことも可能なため、スキルを身に付けた後に実際の制作現場で学ぶという選択肢もあります。

ワンポイントアドバイス
将来性高く、チャンスも無限!

3DCGはその誕生以来、アニメ、ゲーム、映画などエンタメを中心に普及してきました。近年は建築や製品のデザイン、医療や化学などさまざまな分野でも活用されていて、今後も他分野にわたって需要が拡大すると見られています。また技術さえあれば国内、国外を問わず活用できるのも特徴です。一流のCGクリエイターとなれば世界の有名スタジオで活躍できるかもしれません。