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坂口  遥佳さん
インタビュー公開日:2022.08.01

スタッフロールへの疑問が
南国からやって来るきっかけに。
90年代にいち早くデジタルアニメ制作に取り組んだことで知られるスタジオ、GONZOを前身に持つグラフィニカ。そのDNAを継いだ高品質のCG制作はもちろん、企画から編集までワンストップで制作できる体制から業界内で高い評価を受けています。
同社の札幌スタジオで3DCGアニメーターとして活躍するのが坂口遥佳さん。なんとご出身は南国・宮崎県というから驚きです。
「初めて見たアニメは、小学生の時に映画館で見た『千と千尋の神隠し』です。エンドロールの時に母が席を立たないので『何で?』と質問すると、『このアニメを作った凄い人達の名前を見てるの』と教えてくれました。そんな母の目を見て、自分も人を感動させる作品のエンドロールに名を残したいと感じたんです」
デザインを学べる工業系高校に進んだ坂口さん。進学先として、当時秋田県に新設を控えていた美術系大学を目指します。ところが文部科学省から認可が下りずに、進学先がないという事態になってしまったそうです。
「ギリギリの時期だったので『願書を出せる所がない!』と泣きました。でも札幌市立大学が間に合うと聞いて、少しぐらい遠くなってもいいやという気持ちで受験したんです(笑)」
3DCGを学ぶために
一直線に突き進んだ学生時代。
大学進学後、坂口さんは自らが絵を「描く」よりも「動かす」方が好みだと気付きます。中でもイラストに命を与えられるかのように動かせる、3DCGの技術に興味を抱き、ゼミでの研究や仲間との作品制作に励みました。
就職活動では「暑いのが苦手」という理由から、帰郷や上京を視野に入れず、札幌で3DCGの技術を生かせる職場を探します。大学の就職課に相談したところ紹介を受けたのが当時、札幌にスタジオを新設したばかりのグラフィニカでした。
「勢いのまま東京にある本社に電話をしたら『新卒採用もインターンシップも実施していない』と言われてしまいました。それでも諦めきれないという思いを伝えたところ、札幌スタジオに直接電話を繋いでもらったんです」
その電話を受けたのが、札幌でスタジオマネージャーを務める田熊健さんでした。当時のことを田熊さんに聞くと、苦笑しながら振り返ります。
「本社からは困惑した様子で電話が繋がれたんです。『学ばせてください』というので、具体的にウチでどんな勉強をしたいのかと聞いたら、僕も分からないほどマニアックな技術について聞いてきまして…(笑)。あまりの熱意に、初のインターン生として受け入れることに決めました」
事前のすり合わせで
キャラクターの「衝突事故」を防ぐ!
インターンシップを経て2017年4月、正式に入社を果たした坂口さん。CGに動きを付けるアニメーターとしてTVアニメーションやゲーム、パチンコ遊技機の映像用、テレビCMと、次々に実制作の現場に参加していきます。
「初めてエンドロールに名前が載ったのは、毎週日曜日に放送していたTVアニメで、登場するモンスターの動きを担当しました。母親に『絶対観て!』と電話したのでよく覚えています(笑)」
ひと言で3DCGと言っても制作の幅は広く、キャラクターだけでなく背景やレイアウトを立体的に作り込む機会も少なくないのだとか。中でもキャラクターの動きに関しては空間を三次元的に意識することが必要なため、ディレクターや作画担当と打ち合わせを重ね「この部分をこう動かす」という事前の取り決めをしなくてはならないそうです。
「例えば前述のアニメの場合、人物は2D、モンスターが3Dと分かれていて、別々なチームが制作します。前もってそれぞれの動きをすり合わせておかないと、完成した2Dと3Dを合わせた時、人とモンスターが意図せず『衝突事故』を起こしてしまったり、不自然な動きになってしまったりするんです」
技術は必要不可欠。
でも、作りたいという気持ちが一番。
近年のCGはますますリアルに、表現豊かにテクノロジーが進化してきています。その技術に追いつくための勉強や練習は欠かせません。例えば、3DCGの制作は大きく分けて3つのソフトがありますが、作品によって制作するソフトの指定があったり、流行廃りがあったりと、その時々によって使用するツールは異なるそうです。
「最新情報にアンテナを張っていかなければ、『この機能を使用して』と指示を受けた時、対応できなくなってしまいます。常に情報に敏感になり、技術や知識もアップデートしなくてはいけません。私は6年目ですが、まだまだ未熟だと感じる機会も多いです」
では、それほど難しい技術を継続して学び続けられる原動力とは何でしょう?
「それはやっぱり、『好きだから』の一言に限ります。特に制作中の作品に『推しキャラ』がいる時は、忙しくても『私にやらせてください!』と立候補したり、『こんな動きにしましょう!』とついつい口を挟んでしまうんです(笑)。こんな風に『作りたい!』という気持ちさえあれば、どんな技術も知識も、全て後から付いてくると信じています」
果てしないからこそ、
やりがいを感じる表現の世界。
グラフィニカは受託制作だけでなく、オリジナルアニメの制作にも取り組んでいます。中でも2019年に手掛けた劇場アニメ「HELLO WORLD」は、フル3DCGで制作し2D風の表現で見せるという新たな技術に取り組んだ作品であり、坂口さんにとっても多くのカットを手掛けた記念碑的作品だったそうです。
「初めて先輩の元を離れて独り立ちし、主要キャラクターの表情づくりにも関わらせてもらいました。それぞれのシーンはたったの数秒ですが、ストーリー全体を何度も何度も繰り返し読んで、『この時、このキャラクターならどんな表情をするだろう』と想像を膨らませて制作した思い入れのある作品です」
制作段階で何百回と繰り返し見たにもかかわらず、公開がスタートすると劇場にいち早く足を運んだと振り返る坂口さん。エンドロールに名前が載っているのを発見して、やはりこの仕事が好きだと実感したそうです。
「でも、どんな作品も『もっとこうしたら良かったかな』という考えが絶えることがありません。どこまでも答えがないからこそ、どこまでも突き詰めて極めたいと思える。それが表現の世界で生きる、私たちの仕事なんです」
シゴトのフカボリ
3DCGアニメーターの一日
11:00
出勤(フレックス制)
12:00
定例会議
13:00
制作
ディレクターとの打ち合わせ(随時)
14:00
昼休憩
15:00
制作
ディレクターとの打ち合わせ(随時)
20:00
退勤
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

宮崎県出身の私が、巡り巡ってこの職場に来たように、ほんの少しの好奇心や勇気がきっかけで可能性は広がります。知識や技術も必要な仕事ですが、好奇心のままに「作りたい」という気持ちを大切に突き進めば、結果は後から付いてきます!

株式会社グラフィニカ 札幌スタジオ

東京に本社を置き、全国各地にスタジオを持つアニメ制作会社。札幌スタジオでは3DCGの制作・撮影を専門に行い、数々のテレビアニメ、劇場用アニメを手掛けています。

住所
北海道札幌市中央区大通西12丁目4-69
あいおいニッセイ同和損保札幌大通ビル
TEL
011-218-7140
URL
http://www.graphinica.com/

お仕事データ

非現実を現実に表現する!
CGクリエイター
CGクリエイターとは
デジタルテクノロジーを使って、
グラフィックやアニメーションを制作

CGとはコンピューター・グラフィックスの略。文字通りコンピューターを使って、ゲームやアニメなどグラフィックやアニメーションを制作します。大きく分けて2Dと3Dに分類され、2Dは平面で表現し、3Dは立体での表現です。3Dはさらに動きの元となる立体物をつくるモデラー、動きを付けるアニメーター、特殊効果を付けるエフェクターなどそれぞれのプロフェッショナルに細分化されています。

CGクリエイターに向いてる人って?
好奇心旺盛で、
最新技術へのアンテナを張れる人

映像を取り巻く世界は日々進化を遂げ、現実と区別が付かないようなリアルなCGを制作する技術も実現しています。その制作に用いるソフトも次々と新しい機能が増えたり、新製品が生まれたりするため、積極的に最新技術を学ぶ姿勢が必要です。またクリエイティブな世界をつくるための想像力や、円滑なチームワークのためのコミュニケーション能力も必須。納期に追われる機会も多いため、粘り強く取り組む根気やハードな働き方に耐える体力も求められるでしょう。

CGクリエイターになるためには

学歴や資格は必要ありませんが、コンピュータースキルは必須。特に3DCGは「Maya(マヤ)」や「Blender(ブレンダー)」といった制作ソフトを使うための知識や技術が必要なので、専門学校や短大、大学でスキルを身に付けた後、ゲームやアニメ関係の会社に入って覚えるのが一般的です。オンライン講座や書籍など独学で学ぶことも可能なため、スキルを身に付けた後に実際の制作現場で学ぶという選択肢もあります。

ワンポイントアドバイス
将来性高く、チャンスも無限!

3DCGはその誕生以来、アニメ、ゲーム、映画などエンタメを中心に普及してきました。近年は建築や製品のデザイン、医療や化学などさまざまな分野でも活用されていて、今後も他分野にわたって需要が拡大すると見られています。また技術さえあれば国内、国外を問わず活用できるのも特徴です。一流のCGクリエイターとなれば世界の有名スタジオで活躍できるかもしれません。