永井  公貴さん
インタビュー公開日:2023.08.22

農家さんの要望を受けて農地を整備。
事業を通して北海道の農業を支える。
日本の食料基地と呼ばれる北海道。じゃがいも・たまねぎ・アスパラガスなどの農産品はもとより、近年は米のブランドにも定評があります。農業を営むには、当然ですが、水田や畑などの農地が必要となります。それらは、農家さんの土地ですが、大切な食を守るため、国などの事業としての整備も行われています。
「たとえば、生産性を高めるために圃場(ほじょう=農産物を育てる土地)を広げたい、老朽化した用水路を補修してほしい、といった農家さんからの申請を受けて、国の制度・予算で事業を行うケースがあるんです」
北海道において、その窓口となり事業を実施するのが国土交通省北海道開発局。現在は人事・採用を担当する永井公貴さんは、こうした工事を発注する入札業務にはじまり、施工会社が行う工事の進捗管理、仕上がりの確認などを長年、担ってきました。
「初任地は、北海道開発局が出先機関として道内に置いている10の開発建設部の一つ、旭川開発建設部の富良野地域農業開発事業所。その後、同建設部の旭川農業事務所に所属し、合わせて7年ほど業務を行いました」
永井さんが扱ったのは水田。田んぼの大型化を進める区画整理事業に携わってきました。
農地と農地の交換を行うことで、
水田を大型化する区画整理事業。
水田の区画整理事業というのは、ひとことで言うと、今ある水田の区切りを改変して一枚の田んぼを大きくしたり、土地の形を整えること。農地の大区画化や集約化により大型機械の導入を図り、作業の効率化、農業生産を高めることが目的です。
「たとえば、ある農家さんが、離れた土地に飛び飛びに水田を持っていたとします。それを一カ所にまとめ、きれいな四角い水田に仕上げれば作業効率は格段に上がります。区画整理では、そうした手法を検討するんです」
とはいえ、水田を動かしてくっ付けるなどシミュレーションゲームのようなことは、当たり前ですができません。では一体、どうするのでしょうか……。
「離れたところにある水田と、メインとなる水田の隣地にある他の農家さんの土地を交換する換地(かんち)という方法があります。航空写真を見ながら、この土地とこの場所を交換すればいいのでは、などと農家の方々と一緒に検討していきます」
土地は農家さんにとってかけがえのないものであり、すべて交換ができるわけではありません。そのことを踏まえつつ、営農へのメリットを伝えていくことも、重要な仕事なのだそうです。
農家さんの要望を受け止めるなか、
感謝の言葉をいただけるうれしさ。
水田農業が営まれている地域には、水路やダムなどの維持・管理を行う組織として都道府県知事の認可を受けた土地改良区という法人があります。区画整理をはじめ、農業振興に関わる事業はこうした団体などが窓口になり、農家さん個人と調整しながら事業を実施していくことが一般的なのだそうです。
「そして、地域の多くの農家の方々と常に向き合い、個々の要望にも耳を傾けながら、ベストと思われる事業内容を検討していきます」
農地の整備内容には国の基準、マニュアルなどがあるため、要望どおりの内容にはできないケースもありますが、できる・できないの判断を下すだけでなく、できない場合でも、可能な限り農家さんの課題に対応できる代替案などを示していくのだと永井さん。
「しっかりと説明して納得いただき、”作業がやりやすくなった。ありがとね”など、感謝の言葉をいただけると、それまで苦労した甲斐があったと、うれしくなりますね」
個々の農家さんだけでなく、場合によっては町全体に関わる大きな規模で農地の改良に携われる責任と、そしてやりがいがある。永井さんの言葉に力が入ります。
人事、リクルートの部門に異動。
経験を踏まえ仕事の魅力を伝える。
水田は、”水を貯める”という機能が必須となる特殊な農地ですが、区画整理によって土地を改変することで、その機能が失われてしまう危険性もあるのだそうです。
「水が抜けやすくなってしまう場合は、それを抑えるための特殊なシートを埋設したり、畦畔(けいはん=あぜ)の幅を広げて水漏れを防ぐといった対策をとっていきます。こうした技術的な対策という面からも農業に貢献できることが、難しくもおもしろみです」
これまで現場で経験してきたそうした話を、永井さんは今、実感を込めて就職活動を行っている若い世代に伝えています。同じ農業水産部内の農業設計課企画係という部署へと異動し、2022年からは、部門内の職員の人事や新卒採用を担当しています。
「私たちが行っている仕事は、一般の方にはあまり接することがなく、その意味からわかりづらい側面があると思います。”どんな仕事をするのでしょうか” ”どんなところにやりがいを感じますか”といった学生さんからの質問に、自分のこれまでの業務経験を踏まえて説明し、仕事の魅力を伝えています」
現場を知っていることが、リクルートの面でも役立っているのだと話します。
広い視点で北海道農業を考える。
食料の安定供給に貢献する仕事。
測量の仕事をしている父親の影響もあり、土木の分野に興味を抱いたという永井さん。地元の農業高校に進み、農業土木を学んだことが、今に至るきっかけとなりました。
「高校のカリキュラムとして実施された教育支援パートナーシップの一環で、北海道開発局の方に、当時建設中だった夕張シューパロダムをご案内いだきました。スケールの大きな現場を目の当たりにし、”こんなに大きな仕事に携われるんだ!”と驚き、興味を抱きました」
工事の規模だけでなく、大所高所からものごとを見て、地域の産業や人々の暮らしに役立つ仕事ができる国家公務員に魅力を感じ、学んできた農業土木の知識が活かせる北海道開発局を目指したのだそうです。
「転勤をはじめ、人事をとおして道内各地の建設部とやりとりをするなかで、農業部門だけではありますが、北海道開発局全体の業務についての知識も得ることができ、視野が広がっています」
北海道の農業全体を俯瞰する。土木への興味から始まり、食料の安定的な供給への貢献へと、永井さんのフィールドも、そんなふうにスケールアップしているようです。
シゴトのフカボリ
国家公務員技術職(農業担当)の一日
8:30
出社。人事・リクルート、研修情報などのメール確認
9:30
新卒採用のために学校を訪問し、業務内容・魅力などをアピール
12:00
昼食、休憩
13:00
職員の移動に関する事務、名簿作成、局内への研修会情報の発信など
17:15
終業・帰宅

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具

関数電卓
人事・リクルートなどを担当している今の部署ではあまり使いませんが、現場の管理をしていた頃は、図面を確認するため、角度やルートの計算ができる関数電卓が必須でした。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

あいさつは、当たり前のことですが、人事関係の業務を通して、本局や各開発建設部の上司や職員とのやりとりが増えるなか、特に大切にするようになりました。すべては、あいさつから始まります!

国土交通省 北海道開発局

北海道において国土交通省が行う公共事業の実施、各種計画の調査、災害予防、環境の整備、農林水産省が行う公共事業の実施などを担っています。

住所
北海道札幌市北区北8条西2丁目 札幌第1合同庁舎
TEL
011-709-9216
URL
https://www.hkd.mlit.go.jp/

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お仕事データ

「国」に関わるスケールの大きなシゴト。
国家公務員
国家公務員とは
国民のために予算を有効に運用し、
暮らしやすい社会づくりに貢献。

国に勤務する公務員として、国全体に関わる業務を行うのが国家公務員。内閣府や財務省、法務省、外務省といった国家機関に在籍し、治安や外交、税金関係、農業、工業、商業、労働、厚生、社会福祉、教育、文化など、国全体の行事や国民に関わる業務の企画立案から手続き、運用、事務処理を担います。国家公務員の種類は大きく分けると総合職と一般職と専門職の3つ。総合職は制度や法律の改正案、政策案のとりまとめなど、いわゆる「キャリア官僚」。一般職はその実行・運営役を担うイメージです。一方、専門職は、「刑務官」や「国税専門官」などの専門的な知識を必要とする仕事。このように職種や業務内容の幅広さは国家公務員の魅力の一つです。ただし、いずれも、国民のために予算を有効に運用し、暮らしやすい社会に貢献するという使命があります。
※その他、選挙や国会の議決によって選出される大臣や副大臣、自衛官や裁判所職員といった「特別職」もあります。

国家公務員に向いてる人って?
国や国民に役立ちたいという思いが強く、
責任感も携えたリーダーシップが必要。

国家公務員は、日本国憲法によって「国民全体の奉仕者である」と定義されています。そのため、常に公正な視点を持ち、国や国民の役に立ちたいという奉仕の精神を人一倍持っている人に向いているでしょう。国の政策や法律に関わるなどスケールの大きな業務に携わることから、強い責任感を持って自ら進んでいけるリーダーシップも求められます。多くの仕事は日本の未来にも影響を与えることもあるため、グローバルな視野と柔軟な発想力も不可欠です。

国家公務員になるためには

国家公務員になるためには、国家公務員採用試験に合格することが必須。自衛官や裁判所職員などの特別職はそれぞれの機関が採用試験を実施します。国家公務員採用試験には、総合職試験(院卒者試験)・総合職試験(大卒程度試験)、一般職試験(大卒程度)、一般職試験(高卒程度)、専門職試験、経験者採用試験があります。合格後に希望する官庁を訪問し、面接試験に合格すると採用です。

※国家公務員の試験については、詳しくは人事院のホームページをご確認ください。https://www.jinji.go.jp

ワンポイントアドバイス
国家公務員を目指すなら、
英語を勉強しておくのもオススメ。

一般的な国家公務員を目指すにあたり、特別な資格は必要ありません。ただし、英検やTOEICといった英語力の証となる資格は有利に働くようです。というのも、グローバル化が進み、訪日外国人の数も増えているため、英語力の高い人はプラスの評価。平成27年度からは、「総合職試験(院卒者試験・大卒程度試験)」のすべての区分において、TOEFLやTOEICなど指定の英語試験のスコアに応じて、最終合格者の決定の際に一定の得点が加算されます。英語力を高めておいて損はないといえるでしょう。