小野 怜太さん
インタビュー公開日:2023.11.13

お客様が選んだオプションパーツを、
ピカピカの新車に取り付けていく仕事。
まだ、ナンバーの付いていない新車が、ゆっくりと作業場に入ってきます。と、いきなりドアが開けられ、2人のスタッフがインパネを外し、配線を引き出し始めました。どこか、不調なのでしょうか。新車なのに?
「いえ、修理ではなくて、これからオプションパーツを取り付けるんです。ドライブレコーダー、ETCなど、いわゆる電装品と呼ばれる機器などが多いですね」
自動車ディーラーの敷地内にある千代田サービス販売の恵庭営業所で、純正部品を中心に、納車前の車にパーツをセットすることが仕事、と話すのは、ちょっとビジュアル系イメージの小野さん。入社から2年半、今では現場の主力メンバーとして活躍しています。
「成約済みの新車が運ばれてくると、まず、下回りに錆止めのアンダーコートが塗布されます。それが乾くと、私たちの仕事が始まります。ディーラーさんから指定されたパーツを取り付けた後、新車点検が行われ、納車のために運ばれていきます」
新車を購入し、オプションパーツを選んで納車を心待ちにしているお客様の喜ぶ顔を想像しつつ、また新たな車への電装品などの取り付けが始まります。
作業してみないとわからないコツがある。
慣れと経験が求められる職人的な世界。
「あおり運転が問題になっていることもあり、ほとんどの車にはドライブレコーダーが付きますね。ETCも今では当たり前、エンジンスターターの取り付けも多いですね。さらに、エアロパーツ、ルーフキャリアといった電装品以外の取り付けも担当しています」
SUVからスポーツ車、営業用のバンまで車種は多種多様。さらに、それぞれにグレード設定があり、タイプごとに取り付け方も配線などの仕様も異なることが多いのだとか。
「各パーツには必ず、取り付け要領書という作業マニュアルが付いてきます。内装などの外し方、パーツの取り付け方などが記されたものですが、実際に作業してみないとわからないコツなども多いんです。例えば、ハードな走行を想定したSUVだと、内装を止めている爪が硬くて外れにくかったり、また、配線のコネクターが下に入り込んで見えなかったり。いかに経験するかがものをいう世界ですね」
内装にビス止めするためのアンカー(土台)を打って取り付ける室内カーテン、接着をよくするために、表面の汚れをとる脱脂が必要になるドレスアップパーツなど、慣れが必要な作業も少なくないと小野さん。「パーツの取り付け」と聞き、比較的単純な作業をイメージしていましたが、実に職人技的な部分も多いことがわかりました。
集中し、没頭して仕事に取り組めること。
自分に合った働き方ができる職場を発見。
バイト、バスケ、バンド。この三つに没頭した高校時代だったと振り返る小野さん。当時から、そしてまさに現在も、音楽で成功したいという思いを持ち続けているのだと、打ち明け話をしてくれました。
「バンドで食えればと思っていましたが、うまくいくかどうかは、まったくわからない。だから、ダメだった時のことを考え、手に職を付けようと、卒業後は整備士を目指して専門学校に進みました。もともと車が好きだったことも大きかったですね」
ところが、やはりバンド活動に没頭していたいという気持ちが募り、専門学校を途中で辞めた小野さん。ハローワークで見つけた魚市場の仲卸の仕事に就き、音楽を続けていました。けれども今度は、人間関係に悩み、退職。そのタイミングで、求人サイトで見つけたのが千代田サービス販売でした。自分で電装品の交換などをした経験があったことも、興味を持った背景にはあるそうです。
「他人の車であるということに加えて、新車を扱う今の仕事は、常に緊張します。でも、だからこそ集中し、没頭して取り組めるところが、自分には合っていると感じます。職場に来たくないと思ったことがないんですね」
スタッフ同士が良好な関係で、居心地がいい、と笑顔を見せる小野さんです。
納車を待つお客様を意識しての作業。
安心するまで確認するという習慣。
電装品やパーツを取り付けるのは、納車を心待ちにしている誰かの車。単に傷を付けないというだけでなく、作業の一つひとつに気を配ることが必要なのだと小野さん。
「特にボディそのものにダメージを与えないように、という部分に関しては細心の注意を払います。車内に持ち込む工具が、万が一落下してしまうことまで想定し、毛布を巻いたり、マスキングを施したりします」
特に、デリケートな塗装が施されているような場合は何重にもマスキングを行うそうです。また、『この部分は、傷つきやすいので注意が必要』など、作業を行って気づいたことがあれば、みんなに知らせて共有することも大事なのだといいます。作業ミスがダメージに繋がることもあるので、常に「その先にいるお客様」を意識して、どんな場合でも安心できるまで確認する習慣を身に付けたと話します。
2人1組で行うパーツの取り付け作業。
時間を短縮できた達成感がやりがい。
パーツの取り付け作業は、基本的に2人1組。1人が運転席に座ってETCを担当、もう1人は助手席でドライブレコーダーを取り付けるなど、分担して作業を行うのだそうです。
「1人が何かを取り付けるためにインパネを外したタイミングでもう1人も自分の作業を行うというふうに、連携して行います」
取り付けるパーツによって標準の作業時間が算出されていますが、あうんの呼吸でその時間を短縮できた時の達成感が、やりがいにつながっているのだと小野さん。
「新型車は発売前に、試乗車へのパーツ設置を通して触れることができます。新たに作業を覚える必要がありますが、初めてのことに取り組むのはワクワクしますね」
バンドで全国ツアーを行い、メジャーデビューを目指しているという小野さん。それは、見知らぬ土地で観客の前に立つワクワクと似ているのだと話します。バンド活動で休みを取ると現場に迷惑をかけてしまう。だからアルバイトにしてほしいと頼んだこともあるといいます。
「正社員でいい。失敗しても戻ってこられるじゃないかと応援していただいて。それも今の仕事を続けられている理由なんです」
正確さとスピード感。ラウドロックのドラマー、小野さんならではのセンスが、繊細な仕事で躍動しているようです。
シゴトのフカボリ
自動車電装作業員の一日
8:45
出勤、朝礼
9:00
パーツ取り付け作業開始
10:30
休憩
10:40
同作業
12:00
昼休憩
13:00
パーツ取り付け作業
15:00
休憩
15:10
同作業
17:45
作業終了、退勤

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具

七つ道具
インパネや内装パーツを外し、電装品などを取り付けていくための七つ道具。いずれも、数々の作業を経て手になじんだものばかりです。しっかりと養生を行ってから作業を開始します。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

バンドでの成功を目指しつつライブを重ね、難易度の高い作業もこなせるようになり、仕事にも全力で向き合う。どの時間も今は、とても大切なものですし、これからも自分の生き方を大事にしていきたいと思っています。

千代田サービス販売株式会社

空調・暖房設備を中心とした住環境事業、モバイル端末・OA機器を扱う通信事業、ドライブレコーダー設置などの電装事業を展開しています。

住所
北海道札幌市西区西町南1丁目2番1号(本社)
TEL
011-667-8191
URL
https://www.chiyoda-ss.com

お仕事データ

車のトラブルを未然に!
自動車整備士
自動車整備士とは
クルマの故障を修理し、
定期的な点検で事故を未然に防止!

乗用車やバス、トラックなどさまざまな自動車を整備し、故障を修理するほか、定期的なメンテナンスや調整、分解や組み立ても担当。仕事は大きく分けて「点検整備」、「緊急整備」、「分解整備」の3つ。「点検整備」は、車検や定期点検でベルトやブレーキの摩耗、オイルの状態などをチェックして、消耗した部品を交換。「緊急整備」は、急を要する事故や故障による整備・修理のことです。「分解整備」は「オーバーホール」と呼ばれ、エンジンやミッション(変速機)など自動車の重要な機器を分解し、点検して不具合や故障箇所などがあれば整備・修理します。

自動車整備士に向いてる人って?
最新の技術やメカニズムを
学ぼうとうする向上心が必要。

クルマや機械の構造・仕組みに興味があることは大前提。ここ最近は自動運転技術をはじめ、自動車業界の進化が目覚ましいことから、新しいメカニズムやテクノロジーを積極的に学ぼうとする向上心が必要です。自動車整備士の仕事には地道な作業も多いので、コツコツと取り組む忍耐強さも求められます。

自動車整備士になるには

国家資格の「自動車整備士」取得が必須。高校卒業後、国が定める自動車整備士養成学校(2年制の自動車整備士専門学校や自動車短期大学など)に進み、自動車整備士技能検定(二級)に合格した上でディーラーや整備工場などに就職するのが一般的です。4年制の専門学校や大学には一級の受験資格が得られるところもあります。また、養成学校を卒業せずとも、実務経験を重ねた後に資格を取得するのもOK。詳しくは国土交通省のホームページをご確認ください。
http://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk9_000003.html

ワンポイントアドバイス
自動車整備士の資格の種類。

実は自動車整備士の資格といっても種類はさまざま。レベルは「1級自動車整備士」「2級自動車整備士」「3級自動車整備士」があり、ほかにも各々の分野について専門的な知識・技能を有する「特殊整備士」も。一般的に求められる2級自動車整備士のなかでも、「2級ガソリン自動車整備士」「2級ジーゼル自動車整備士」「2級自動車シャシ整備士」「2級二輪自動車整備士」に分類されます。自動車の技術革新が進んでいる今、より高度な自動車整備ができる1級自動車整備士が注目を集めています。

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